転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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随分前に8割がた書き上げていたもののお蔵入りさせていた閑話を、加筆修正して投稿します。


219話 閑話⑳ 57年越しの答え合わせ

チチチ……という小鳥の囀りと穏やかな日差しが差し込む質素な造りの城の屋上。1人のローブを羽織った高齢の男が、その城の屋上に備えられたサロンの椅子の背もたれに手をかけながら、ゆっくりと腰を下ろした。

 

「よっこいしょっと……」

 

男は、ようやく膝が楽になったのか、自身の膝を労るようにそっと膝に手を置いた。その様子を見て、その男と小さなテーブルを挟んで向かい側に座っていた壮年のように見える男が、クスクスクスと笑う。その壮年の男は、今ゆっくりと椅子に腰を下ろした高齢の男と違い、引き締まった逞しい体躯をしていた。

 

「ははは。ポップ、そんな声を出しながら椅子に座るなんて、もう年寄りみたいだよ?」

 

「馬鹿! 俺はもう72だぞ! 十分年寄りだよ! たくっ、ダイの方がおかしいんだよ。何だよ、その見た目は。お前だって来年には70だろう? なんで、そんなに若々しいんだよ!? 俺なんて、もう白髪の方が多いんだぞ!」

 

ダイと呼ばれた壮年の男は、その言葉に目をパチクリさせた。今この場にいるのは、共に同じ歳月を重ねたかつての英雄 大賢者ポップと勇者ダイの2人だった。

 

「うーん、感覚でしか分からないんだけど、(ドラゴン)の騎士って、戦うために生まれてきたような存在だから、なんだか普通の人より若い時代が長いみたいなんだよね」

 

その言葉に、「お前はサイヤ人かッ!!」と即座に突っ込みを入れるポップ。

 

「サ、サイヤ人? 何だよ、それ。でも、ちゃんと歳は取っているし、寿命の長さは皆と一緒だよ」

 

「そうか……。それなら、まあ良かったな。何事も順番は大事だからな。子供より長生きするってのが幸せな事とは、俺は思えんよ」

 

「うん、そうだね。俺もそう思う……」とダイは幾分表情を引き締めて、刎頸(ふんけい)の友であり兄とも慕っているポップの言葉に頷く。そして、不意に疑問を感じたのか、ダイはポップに尋ねる。

 

「そう言えば、今日はマァム達は一緒じゃ無いの? いつもテランの離宮に来る時は、マァム達も一緒に来るのに……」

 

「いや、皆夕方までにはこっちに来るよ。メルルとエルサはちょっと故郷に寄ってから来るって言ってたし、マァムは、5日前からカールの騎士団へ武術指南に行っていてな。孫のアーバインの性根を鍛え直してくるって言っていたから、今もギリギリまでしごいているんじゃないかな。」

 

その言葉に、ダイはクスクスと笑う。

 

「しごくって……、そうか。先月の大武術大会の事だね。噂は聞いたよ。今、パプニカじゃあ『霊長類最強の女武闘家が、今のたるんだ戦士達に活を入れるために重い腰を上げた』って噂で持ちきりだよ。俺もマァムが出場するって知っていたら、久しぶりに大会に出たのに。そういう事は前もって言っておいてくれよ、ポップ」

 

「馬鹿、出たくて出たわけじゃ無いんだよ。だいたい、今のお前とマァムが決勝で戦ったら、伝説の第1回大武術大会の再来じゃないか。そんなカードが実現したら、世界中から人がロモスに集まって、とんでもない事になるぞ」

 

「ははは、確かにそれは困るな」と、ひとしきり歓談するダイとポップ。30年以上前にパプニカの離宮となったテランのかつての王城。外壁を緑の蔦が所々覆い、小鳥の囀りが時折メロディーを奏でるかのように聞こえる森の奥。彼らがいるその離宮の屋上では、そんな穏やかな時が流れていた。

 

ポップは、眼下に見える庭園とその周囲を囲む緑豊かな森に目を落としながら口を開いた。

 

「しかし、マァムもそうだが、うちの嫁達は皆若いよ。この間なんて、ネイル村に遊びに来た孫達とロモスの町に揃ってお茶をしに出かけたは良いが、やれ若い子にナンパされたとか、やれ孫の姉に間違えられた、とかやいのやいのはしゃぎながら戻ってきたぜ」

 

「ははは。そう言えば、この間一緒に山を登った時、ポップが疲れてマァムの背中におぶさっていたら、マァム、お爺ちゃんの介護をしている孫娘に間違えられていたよね」

 

「お前、人の古傷に平気で塩を塗るような事を言うんじゃないよ! あれからちょっとは俺も、身体を鍛え直してるんだよ!」

 

思わず椅子から腰を上げて、ダイに対して詰め寄るポップ。ダイは、「ごめん、ごめん」と笑いながら謝りつつ、幾分姿勢を改めてポップに正対した。

 

「なあ、ポップ、覚えてる?」

 

「……何をだよ」と、椅子に座り直しながらポップは怪訝そうに問い返す。

 

「ほら、魔王軍と戦っていた時にさ、父さんと一緒に過ごした翌朝にポップが俺に言ってくれた言葉さ」

 

「……随分前の話を持ち出したな。そんな事あったっけな? もう忘れたよ……」と、ほんの少し顔に陰りを帯びた表情でそう返事をするポップ。そんなポップの返答を聞いて、ダイはジィッと幼少期より変わらない蒼い瞳でポップを見つめた。

 

「な、何だよ、ダイ。仕方ないだろ、そんな昔の事……。忘れたって――」

 

「……嘘だね。絶対にポップは覚えているだろう?」と、しどろもどろになるポップの言葉を遮るダイ。そしてダイは、そのまま懐に手を入れて、1通の手紙を2人の間にあるテーブルの上に滑らせた。

 

その手紙に見覚えがあったのか、ポップの頬が僅かに引き攣るように固まる。

 

「この手紙を、昨日ゴメちゃんが俺に渡してくれた。ポップ、この手紙、自分が死んだら俺に渡してくれって、ゴメちゃんに頼んだだろう」

 

ポップの顏に現れる感情を一つも見逃すまいと、ダイがポップの顔を直視したままそう言葉を続ける。

 

互いの間に束の間の沈黙が流れる。その沈黙が過ぎた後、ポップが降参する様に手を挙げて口を開いた。

 

「やれやれ、ゴメの奴。あれほど俺が死んでからって言っておいたのに。裏切り者め……」

 

ポップはそう言って、今はダイの孫達とのパトス湖でのキャンプに付いていって不在のゴメに悪態をついた。その様子を見ながら、ダイはポップを諭す様に口を開く。

 

「なあ、ポップ。俺、あの時ポップが言ってくれた事、一語一句覚えているよ。父さんが小言ばかり言うって俺が愚痴を言ったら、ポップが『お前もいつか、子供を持てば分かるよ。バランの、親父さんの気持ちがな』って言ってくれたよね」

 

「……ああ、確かにそう言ったな……」と、ダイと視線を合わせないままふてくされたような顔で口を開くポップ。

 

「あの言葉の意味がさ、初めて子供が俺の名前を呼んでくれた時に分かったんだ。ああ、父さんもあの時こんな気持ちだったんだろうなって……。だから、父さんと2人で過ごしたあの夜の記憶は、俺にとって本当に宝物なんだ」

 

「そうか……。良かったな、ダイ……。だけど、ごめんな、ダイ。俺は本当はもっとお前に――」

 

「――もっとじゃない!」

 

ダイが突然上げた大声にポップはビクッと身体を振るわせて、動きを止めた。そんなポップにダイは更に声を張り上げる。

 

「謝るなよ、ポップ! 俺、ポップからたくさん、本当にたくさんの物を貰ったんだ! 父さんとの一夜もそうだ! 俺は、あの日の思い出が胸にあるから、今もこんなに胸が温かいんだ。だから、ポップ! お願いだから、謝るな! 俺はポップから謝られるような事、何一つされてないッ!」

 

そう声を張り上げるダイの両目からは、涙が止めどなく溢れていた。

 

「ポップがいてくれたから、あの日の父さんとの思い出が今でも俺の胸の中にあるんだ。何だよ、この手紙! ミスをしただって!? 俺がそんな事でポップに謝って欲しいと、ポップは本当に思っているのかよ! これだけ長く一緒にいて、そんな事も分からないのかよ!」

 

そして、そのままダイは「ポップは優しすぎるよ……」と涙を零した。

 

そのダイの目から零れる涙を見たポップは、遠い昔にデルムリン島でダイを泣かせてしまった時の事を思い出したのだろうか。憑き物の落ちたようなあの時と同じ優しい瞳で、ダイを見つめ返していた。

 

「……うん、ごめん、ごめんな、ダイ。……俺、またお前を泣かせてしまったな」

 

「ほ、本当だよ。いつまで俺を泣かせたら気が済むんだよ……! こんな姿、子供達に見られたら笑われるよ。責任取れよな!」

 

70前後の男達が、そうして互いの肩を叩きながら泣き笑いの表情を浮かべていた。

 

 

 

「そう言うわけだから、もうこの手紙は処分するからな……!」

 

目をまだ赤くしたままのダイが、テーブルの上に置いてあった手紙を、以前ポップから教わった紙飛行機の形に折りたたんで、そのまま屋上テラスから外に向かってヒラッと放った。

 

折良く離宮の上空を涼やかな風が吹いていたためか、その紙飛行機は風に乗って遠くまで運ばれていった。その徐々に小さくなっていく紙飛行機をじっと見つめていたポップがボソッと呟く。

 

「……うん。手違いはあったけど、これで思い残す事はなくなったかな。ふっ、いつか俺が死んだ時に残す辞世の句がようやく決まったぜ」

 

「なんだよ、辞世の句って……。そんなの、まだまだ考える必要ないじゃないか。長生きしてくれよ、ポップ」

 

「長生きはするさ。文字通り、命を張って掴んだ平和な世界なんだ。出来るだけ長くこの世界を満喫しないとな」

 

そう返答したポップは、誰ともなく「『ダイの大冒険』が好きだったあいつがこの世界を見ればなんて言うかな。ふふふ、俺は医師免許を取れなかったけど、あいつはどこかの離島でドクターが出来ていたら良いけどな……」と呟いた。

 

そのポップの呟きを拾ったダイが「医師免許……? ドクター……?」と聞きなれない単語に首を傾げるが、ポップはそれには直接的に答えを返さず、ただ悪戯を思いついたような顔でニヤッと笑みを浮かべた。

 

「ちょっ、ポップ……。俺、ポップがそんな顔をしたら大抵ろくでもない事に巻き込まれていた気がするんだけど……」

 

ポップと出会ってからかれこれ60年近くになるダイは、そんなポップの笑みに若干及び腰になって、椅子を後ろに引いた。無理も無いだろう。ダイには、数えたら両手の指で足りないほど覚えがありすぎた。自身の結婚式前日のバニークラブへの強制連行と余興時の騒動、医療大学での突然のバンド演奏の無茶ぶり、コスプレの強要、破邪の洞窟踏査への突然の誘い、資金集めの握手会やサイン会、勝手に自分の名前を冠した書籍の発刊などなど、それは枚挙にいとまが無かった。

 

そして、よくよく考えたらポップに謝ってもらう事はたくさんあったな、とダイが思い直していたら、ポップが「違う、違う。お前が昔の事を話題にするものだから、俺もちょっと思い出しただけだよ」と手を左右に振った。

 

「思い出した……? 何をさ?」

 

「忘れたのか? 俺は覚えているぞ。いやー、俺も老い先短い身だからさ、お前から随分前に質問された宿題に回答しておかないと、死んでも死にきれないって思ってさ」

 

「老い先短いって、膝を悪くした以外は元気じゃないか……。宿題? 俺、ポップに何か質問したっけ?」と、全く身に覚えての無いダイは頭に疑問符を浮かべて、ポップに問い返す。

 

「ああ、しっかりとな。何だ、本当に忘れたのか? ほら、魔王軍との戦いの時にさ、ロモスからパプニカに向かう船の中で、お前俺に質問したじゃないか」

 

「えー、随分昔の話だな。そんなのもう覚えてないよ」と答えながら、ダイは湯気の立つ紅茶をひとくち口に含んだ。それを見てポップは、先ほどより更に深い笑みを浮かべて言った。

 

「お前さ、あの時俺に、“『ぱふぱふ』って知ってる?”と尋ねただろう?」

 

ブフッー!

 

盛大にダイの口から吹き出された紅茶の滴が、離宮の屋上にキラキラと舞った。

 

「ご、ごほっ、げほっ、が、がふぁっ!!」

 

これほど動揺したのは、レオナが双子を出産した時以来かも知れないと言うほど、激しく咳き込むダイ。あまりに咳き込み過ぎて、そのダイの鼻からも鼻水が溢れ出ていた。

 

「ちょ、ポ、ポップ。いきなり何を……」と、口元を手で拭いながらそう恨めしげな顔をポップに向けるダイ。そんなダイにポップは、相も変わらずニヤッとした笑みを浮かべていた。

 

「いきなりも何も、確かにお前、あの時俺にそう質問しただろう。で、10年後に教えてやるよって言っておいて、そのままになってたから今教えてやろうと思っただけだよ。何かおかしいか?」

 

その言葉に、ダイは幾分顔を赤らめて言葉を返す。

 

「あ、い、いや、確かに言ったさ。うん、言った。思い出した。だ、だけど、もう今更じゃ無いか。もうあの質問の答えは良いよ……」

 

そう答えながらダイは、気持ちを落ち着かせようと、再び紅茶をひとくち口に含む。しかし……。

 

「へーー。と言う事は、ダイ。お前、もうその答えに自力でたどり着いているな、さては?」

 

ブフッー!

 

再び盛大にダイの口から吹き出された紅茶の飛沫。

 

「ご、ごほっ、げほっ!」

 

再び激しく咳き込み涙ぐむ勇者に、彼の永遠の相棒である大賢者の追及の手は緩まない。いつのまに席を立ったのか、ダイの側に移動したポップは、そのダイの耳にそっと口を近づけて、まるで悪巧みをするかのように囁いた。

 

「で、ダイ。誰にそれを教えて貰ったんだ? やっぱり姫さんか? それとも愛人か?」

 

「愛人なんているわけないだろ!」

 

「だよな。という事は姫さんって事だな? ん、どうなんだ……?」

 

「そ、それは……」

 

「それは……?」と、黒い笑みを浮かべダイの答えを促すポップ。

 

しかし……。

 

ドガァッ!!

 

「「――痛っ!!」」

 

突如、離宮の屋上サロンに鈍器で何かを思いっきりぶん殴ったような音がこだました。

 

そして、同時に頭を抑えて悲鳴の声を挙げたのは、ダイとポップの2人だ。

 

その側で、「ぜえ、ぜえっ!」と、息も絶え絶えの様子で両の拳を真っ赤にして仁王立ちするは、新生パプニカ王国 初代女王を長年勤め、パプニカ史に残る名君と謳われたレオナその人だった。

 

その強く握りしめたレオナの両の拳が開くと、中から握りやすそうな卵型の石がゴトッと音を立ててこぼれ落ちた。それを涙目で見たポップが、大きく膨れ上がった頭のこぶに手を添えながら文句を言う。

 

「痛っーーー! あのなあ、姫さん! いい歳して、いい加減にその石を握り込んで殴るのをやめろよな! 俺だってもう若くないんだから、マジでポックリいって死んじゃうっての!」

 

「いい加減にって言うのは、私の台詞よ、このエロ賢者!! 君こそ、いい歳して馬鹿な事を言っているんじゃないわよ! かつての英雄の大賢者と勇者がこっそり密談していた内容が、あんな下ネタだったなんて事を今の諸王が知ったら、皆ショック死するわよ!!」

 

ある意味レオナの言葉は正しかった。レオナ自身も今代の英雄にして不世出の2人がひそひそと膝を突き合わせて密談していたら、すわ新たな脅威の前触れか、と思ったものだ。それが、2人の背後に忍び寄って耳を澄ませてみたら、二人は『ぱふぱふ』がどうのこうのと真剣な表情で議論しており、思わずレオナは気絶しかけていた。

 

「痛ったいなー。ポップが殴られるのは自業自得だけど、俺まで殴る必要はないじゃないか、レオナ」

 

ポップに続き、頭に大きなたんこぶをこさえたダイが、やはりそれを痛そうに抑えながらそうぼやく。しかしレオナはそんなダイにもキッと厳しい視線を浴びせて、「――お黙り!!」と声を張り上げる。

 

「あなた達は連帯責任のようなものよ! だいたい、何であの時本物の私を見つけられなかったのよ、ダイ君!」

 

「――! いつの話を蒸し返すんだよ、レオナ! それはもう、何十回も謝ったじゃないか! だいたい、あれはポップがいけないんだよ! 真・変身呪文(シン・モシャス)だなんて訳の分からない呪文を開発するから!」

 

「おやおや、俺のせいにしてはいけないな。二人の間に真の愛情があれば、あの程度の試練は乗り越えられたはずなんだ。そんな事だから、俺達にベストパートナー大会で1,2,3位を掻っ攫われるんだよ」

 

ポップに一笑に付された事で、まるで頭から湯気が出た様に錯覚するほどレオナが激高する。

 

「言ってくれたわね、ポップ君! ダイ君、今からでも遅くないわ! 今年のベストパートナー大会に飛び入り参加してリベンジするわよ!」

 

「ええっ!? それはいくら何でも無茶だよ、レオナ! 俺達何歳だと思っているのさ!」

 

「大丈夫よ! ダイ君はまだまだ若く見えるし、私だって20そこそこの小娘に負けない肌の張りをキープしているわ!」

 

そのレオナの発言にポップとダイが顔を見合わせて、同時に「いやいや……」、と手をパタパタと左右に振った。

 

「いくら何でも20に負けない発言は無理があるだろう、姫さん。……無い、無い。悪いこと言わない。恥かくだけだからやめとけって」

 

「うん、さすがにそれはちょっと。でも、大丈夫だよ、レオナ。肌はちょっと皺が目立つようになったけど、年齢からしたら十分綺麗だから」

 

悲しいかな、その2人の言葉は、更にレオナを激高させただけだった。

 

「キーーーー!」と、奇声を上げて暴れるレオナを、彼女の背後に控えていた側仕え達が必死に抑える。

 

「い、いけません、レオナ殿下! 治療士様から、興奮したら血圧が上がるので抑えるように、と言われているでしょう!?」

 

 

 

そんな騒動が離宮の屋上で巻き起こっていた時、突然離宮の裏庭から大きな音が響いた。その音に、ダイが首を傾げる。

 

「今のって、瞬間移動呪文(ルーラ)の着弾音だよね? ノヴァかな?」

 

「いや、ノヴァじゃないな……」

 

そう言ってポップは上空を見上げる。そこには雲以外何も映っていなかったが、大賢者であるポップには常人では見えない何かが見えているのだろう。

 

「魔法の残滓からすると、多分エイミさんだな。って事は、ヒュンケルも一緒だろう。あの振動音、あいつ、また完全装備でやってきたな。ただのお泊り会に、あんなフルプレートの鎧は必要ないだろうに。いつまで経っても、常在戦場の気持ちが抜けない奴だな」

 

「ふふふ、でもヒュンケルらしいじゃないか。あの歳でまだフルプレートの鎧が装備できるんだから。すごい事だよ」

 

「まあ、確かにな。俺じゃあ、あれを持ち上げる事すら出来ないってのにな。さて、それじゃあヒュンケルの顔を見に行こうぜ。あいつも俺と同じで、白髪だらけになっているからな」

 

そう言って立ち上がるポップに続き、ダイも腰を上げる。

 

「何言ってんだよ、ヒュンケルの白髪は昔からじゃ無いか。ポップと一緒にしないの」

 

「だってお前、俺と姫さんだけが年寄り臭くなっているなんて、悔しいじゃ無いか!」

 

「私を君と一緒にすんじゃないわよ! 私はまだ社交界で、『あら、殿下お若いですね』って言われてんのよ! ちょっと、聞いてんの、あんた達!?」

 

「で、殿下! お気持ちを穏やかに! また血圧が上がってしまいます!」

 

 

 

そんな騒動が時折起こりつつも、皆が平和な日常を満喫している大魔王戦役後の一幕だった。

 

 




これで本編で回収できなかった伏線の一つを回収したつもりです。今回は彼らのかなり晩年を描いていますが、次に投稿する際はもっと若い彼らを描写しようと思います。ではでは。
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