転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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今回は別の人物の視点からポップを描いてみました。
こういう形態って結構好きなんですが、話があまり進まないのでやりすぎはいけませんね。


3話 原作開始10年前 side マイル神父

Side マイル神父

 

私が、このランカークス村の神官として派遣されたのは、今から約5年前であった。それまでは、ベンガーナ国のとある大きな町で神官の1人として働いていたが、そこで回復呪文(ベホイミ)を取得した事から、生まれ故郷であるランカークス村への赴任を申請し、それが許可され、今ここにいる。

 

回復魔法というのは、ホイミ、ベホイミ、ベホマといった単純な治療呪文に加えて、キアリー、キアリクなどといった毒や麻痺などに対する魔法も含む。これらの魔法のうち、回復呪文(ベホマ)ははっきり言って別格であって、よほどの才能の持ち主でないと習得は難しい。努力でたどり着ける限界が回復呪文(ベホイミ)と我々神官の間ではよく呼ばれている。

 

私も、18歳で回復呪文(ホイミ)を習得し、その年に神官になった。それから30歳になる直前に長年の努力の結果か、ようやく回復呪文(ベホイミ)を習得できた。この習得スピードについては、一生取得できない神官もいる中、比較的早かったといっていいだろう。

 

まあ、そんなわけで、回復呪文(ベホイミ)を習得したことで堂々と村に凱旋できると考えた私は、30歳を直前にして、生まれ故郷に戻ってきたわけだ。

 

村に戻ってきてからは、村唯一の神官として、村人の不慮のけがへの対応に忙殺された。

 

もともと平和な村だったので、それほどの怪我人が日々発生するわけではないが、やはり私しか神官がいないというのは大変であった。

 

何度も本部の神殿に人員増の依頼を出し、ようやく1人のシスターを派遣してもらったが、彼女の使える魔法は回復呪文(ホイミ)麻痺解除呪文(キアリク)のみであった。もちろんそれでも十分立派なのであるが、やはり回復呪文(ベホイミ)を使える人材がもう1人居ればと思うことはこれまでに何度もあった。

 

日々忙しく過ごす中で、これはと目を付けた村人や旅人には回復魔法の契約を進めてきた。これは回復魔法の使い手がとにかく希少で、少しでも多くの人間に回復魔法を習得してもらいたいという思いからであった。

 

村に戻ってから5年余、8人の人間に声をかけ、5人が契約に成功した。そしてその5人全員が実際に魔法の行使まで行うことができた。8人中5人契約ができたということは、6割以上の成功率ということであるが、通常はよくて3割というレベルである。ここだけの話、他のどの神官よりも高い成功率であることは私のひそかな自慢である。

 

ある時、この村の武器屋の息子であるポップ君が、回復呪文(ホイミ)の契約の儀式をしてもらえないかと突然教会を訪ねてきた。

彼の父親ジャンクは一時期城勤めをしていたが、もともとはこの村で生まれ育った人間だ。私より少し若いとはいえ、顔は何度も見たことがあり知った仲だ。

 

回復魔法というのは正直言いたくはないが、ある程度の血統がものをいう世界だ。親やその祖先が回復魔法の使い手あるいは魔法使いであったという者ほど契約成功率が高いことは、どの神官も知っている暗黙の常識だ。

 

そんなわけで、武器屋の息子である彼に、正直契約成功の見込みはないと思ったのだが、シスターに案内され彼に初めて会ったときに、その考えを即座に捨てることになった。

 

私が、他の神官より高い契約成功率を誇っている秘訣は、相手の目を見ることでその者がもつ可能性をある程度推察できることにある。

 

そう、私はまだ5歳になったばかりのこの男の子の目を見たときに震撼したのだ。うまく言葉にできないが、とにかく深い、深く底の見えない可能性を確かに感じたのである。

 

私は、この子が間違いなく回復魔法の素質を秘めた子だとその時に確信した。というより、回復魔法だけでなく、攻撃魔法にも通ずる力を秘めているということも確信したのである。

 

つまり、それは、賢者である。

 

魔法を扱う者ならだれでも一度はあこがれる存在。それが賢者。しかし、現実は厳しく、攻撃魔法を扱うと、回復魔法がうまく機能しない。その逆もしかりで、凡人にはその両方を扱うことは至難の業なのである。そのため、賢者という存在はとにかく希少であり、私はこれまでパプニカ国に仕事で赴いたときに数人の賢者という存在にあったことがあるのみである。

 

そのパプニカの賢者にしても、回復魔法はせいぜい回復呪文(ベホイミ)まで、攻撃魔法も火炎系なら火炎呪文(メラミ)程度までと、言い方は悪いが器用貧乏というレッテルを張らざるを得ないような賢者がほとんどであって、賢者といってもこんなものかとひそかに失望したものである。

 

そういえば、パプニカにはかつて魔王を倒した勇者の仲間であった凄腕の賢者がいたはずだが、その時私は会えずじまいであった。残念なことだ。

 

話を戻そう。この子は間違いなく本物だ。私の神官人生15年余の経験が言っている。間違いない。

 

幸いこの子もすぐにでも契約がしたいと言ってきたため、まずは親御さんに許可をもらってきなさい、契約手続きはその許可をもらえればすぐにでも行ってあげると言って、家に帰らせた。

 

この子の両親、とりわけ父親のジャンクはこのあたりの仁義を怠るとすぐに頭に血を昇らせる困った人間ということを私はよく知っているので、本当は今すぐにでも契約してあげたかった気持ちを押し殺して、一度帰らせることにした。

 

そして迎えた契約当日。その子は母親に連れられてやってきた。母親もよく知っている。ジャンクにはもったいないような女人である。いったいどこであのような男と知り合ったのだろうか? 彼に騙されて一緒になったのではないか、とても心配だ。

 

今度それとなく夫婦仲を聞いてみるとしようか。おっと、そんなことを考えている場合ではなかった。私自身も契約の結果を楽しみにしていたのだ。早く部屋に案内せねば。

 

契約する部屋にその子を案内した。この年の子にしては驚くほど落ち着いている。普通はもっと不安そうなそぶりを見せるものだが、そのようなそぶりは一切ない。

 

私がこれまでこの村で契約手続きをしてきた者は下は15歳から、上は27歳と、皆この子より年上であったが、この子以上の落ち着きを見せた子はいなかった。これはやはり期待できそうだ。

 

契約の儀式を開始した。あらかじめ用意していた魔紙に、回復呪文(ホイミ)の呪文を流し込みそれを彼の頭に触れさせることで、回復呪文(ホイミ)が彼のもとに流れ込んでいく。

この時、あまりに抵抗が激しいと呪文が相手に流れ込まず、呪文が相手の頭の中で構築されず、契約が失敗したことになる。

 

さて、この子の場合はどうなるかと思い、少しずつ回復呪文(ホイミ)を流し込んでみたが、驚くべきことに全く抵抗をされることなく、呪文は吸い込まれるように、あっというまに彼の中に流れ込んでいったのだ。

 

やはり私の勘は間違いなかった。この子はとんでもない魔法の才能の持ち主だ。

 

 

 

契約が成功したのち、子供は、本当に回復呪文(ホイミ)が使えるようになっているのか心配な様子だった。私からすれば、全く心配に及ぶことのない完璧な契約だったのだが、何分初めてのことだ。不安になる気持ちはわかる。

そこで、この後予定されていた怪我人への施療を一緒に行ってみないかと声をかけたところ、ぜひやらせてほしいという事だったため、一緒に行うことになった。

 

ポップ君の回復呪文(ホイミ)は問題なく発現した。当然だ。

 

しかし、彼が3人ほどのけが人を治したところで、魔力切れに陥ったのは少し不思議に感じた。正直なところ、彼は魔法力ももっと保有しているのではと思っていたからだ。いや、しかし初めての魔法契約だったのだ。十分といえる。

 

初めて魔力切れに陥り辛そうだったので、私は彼に魔法の聖水を提供した。魔法の聖水は、一口飲めば魔力がかなり回復するなかなかの貴重品だが、私は今日はポップ君にそれを与えてあげたい気分になっていた。ポップ君はさっそくその魔法の聖水を口に含んだので、味はどうかと聞いてみると、「……アクエリアス?」とつぶやいていた。……はて? 『あくえりあす』とは何ぞや?

 

ポップ君が付き添いの母親とともに帰路についてしばらくした頃、先ほどの治療のお礼をと、見知らぬ炭鉱労働者らしき人物が教会にやってきた。はて、彼は先ほどの怪我人の中にいなかったと思うのだが。

 

なんと聞けば、彼は私がほんの少し席を外した間に来た急患の患者だったらしい。それも聞けば右足のひざから下を切断していたほどの怪我だったというではないか。

しかし、今私の前にいるこの人間はしっかり両の足で立っている。これはいったいどういう事か?

 

私は話を聞いて放心した。なんと、ポップ君は彼の切断された足をホイミで繋げたというのである。確かに、切断された足も運ばれてきていたこと、移送が迅速であったことなどの幸運もあっただろう。

しかし、それほどの怪我をまさか回復呪文(ホイミ)で治すとは…………。

私なら治せただろうか? 回復呪文(ベホイミ)を使えばどうにかなるか? いや、やはり厳しいだろう。

 

それほどの高難度の治療なのだ、欠損部位の接続というのは。

 

これでポップ君が魔力枯渇状態に陥った理由が分かった。何のことは無い、彼は4人の患者の治療をしていたのだ。しかも一人は足を切断するほどの怪我人だった。なるほど、魔力枯渇にも陥るはずだ。

 

私は、この炭鉱労働者からポップ君に代わってお礼の言葉を受け取った。今度彼が教会に来た時に、まさに涙を流さんばかりにお礼を言っていたと伝えてあげよう。

 

さあ、私も負けてはいられない。少しでも魔法力を向上し、新たな魔法を覚えれられるよう、修行に励もう。彼に恥ずかしくない自分になれるように。

 




次は一気に年代が進むと思います。まだ原作開始10年前なので、飛ばせるところは飛ばさないと、いつまでたっても原作がスタートしないので・・・・・・。
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