転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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39話 原作開始 1年前 自称北の勇者との出会い

 

「うわー、これがリンガイアの城塞都市ですか。すごいですねー」

 

船から降りた俺は、目の前に広がるリンガイアの城壁を見上げてそう感嘆の声を上げた。

 

「ええ、そうです。港も含めて町としての機能は全てこの城壁に囲まれた中に建築されていると聞いています」

 

俺に続いて船を降りたアバン先生が俺に説明してくれる。俺達のいる港には他にも多くの船が出入りしていて、旅人や船員が周りを忙しそうに移動している。

 

俺はもう一度城壁に目をやった。

前世で城塞都市というと、名前は忘れたけどクロアチアにあった城塞都市を想像するけど、このリンガイア国の城塞はそれを彷彿とさせるな。

 

うーん、中世ヨーロッパ風か。ロマンだなー。

 

俺とアバン先生は、オーザムからここまで送ってくれたレイドさんに別れを告げ、町の中心部に足を進めた。町の中心部には大きな城がそびえ立っている事が、その大きさからここから見ただけでも分かる。

 

「あそこにリンガイアの王族が住んでいるんですね。先生の言われていた北の勇者という人もそこにいるんですか?」

 

「どうでしょう? 私が聞いた人物は、王族では無くリンガイア国の一将軍のご子息と聞いていますので、城には住んではいないかもしれませんね。いずれにしても、リンガイア国王には一度お目通りをしようと思っていますので、まずは城を目指しましょう」

 

そんな会話をしながら俺達は城に向かう。周りには大勢の商人や買い物客が、馴染みの店で買い物をしている様子が見て取れる。

 

やはり中央大陸だけあって、人の出入りはオーザム国の比では無さそうだ。ベンガーナ国と並び称される大国というのも頷ける。

 

アバン先生によると、リンガイアの町の住民は、ベンガーナの町とほぼ同数の約2万人と言うところらしい。

 

「アバン先生は、リンガイア国王とは面識があるのですか?」

 

「いえ、前大戦の際にはリンガイア国に立ち寄りませんでしたので、リンガイア国王とは面識がありませんね。色々と情報交換がしたいので、会って頂ければ良いのですが」

 

そうなのか。アバン先生はどこにでも出没しているイメージがあったが、ここは違うらしい。しかし、魔王ハドラーを討伐したアバン先生の名前ぐらいは知っているだろうから、会ってもらえないと言うことがあるのだろうか? 

 

俺のそんな怪訝な表情を見て、アバン先生は更に言葉をかけてくれた。

 

「リンガイア国王は、貴族意識の強い国王と聞いています。私のかつての功績は認めたとしても、現在の私は元カール騎士団の一員という身分に過ぎません。もしかすると、面会を断られることも覚悟する必要があります」

 

「……なるほど。でも、世界の情勢が不安定になっていることにリンガイア国も気づいているでしょうし、どうにか会って話を聞かせてくれると良いですよね」

 

「そうですね。私もそれを期待しています」

 

そんな会話をしながら城に向かっていると、直ぐに城と町を繋いでいる木製の橋の上まで俺達はたどり着いた。

 

この城は周囲を水の張った堀に囲まれており、四方に堀を跨ぐ形で木製の橋が架けられている。城から伸びたロープが橋に繋がれているので、いざという時は橋を跳ね上げて、町から城への侵入が出来なくするような事も出来るのだろう。

 

橋の左右に立っている兵士に、国王への面会を希望する旨をアバン先生が伝えると、そのまま橋を渡って直ぐの所にある受付で申請をするように言われたので、俺達はおとなしくそのまま橋を渡った。

 

受付で、アバン先生が兵士の人に渡された書類に必要事項の記載をしているのを、俺は少し離れた所から眺めていた。

ベンガーナの町では1時間ほど待てば国王のところまで案内されたけど、さて、リンガイア国ではどうかな?

 

書類を書き終え兵士の人と少し会話をしていたアバン先生が、俺の所に戻ってきた。

 

「どうでした、アバン先生? 会って頂けそうですか?」

 

「それが、会って頂けそうではあるのですが、どうやら面会日は2日後になりそうです」

 

「2日後、ですか。面会希望者が多いんでしょうか? なかなか忙しいんですね、国王ともなると」

 

「そうですね。まあ、会って頂けるだけ良しとしましょう。それでは、今日は町で宿を取って、町を少し散策しませんか。私も初めて来る町ですので、どのような品物が店に並んでいるか興味があります」

 

おお、良いね。俺も町をゆっくり見て回りたいと思っていたからありがたい。

 

その後俺達は、城の近くでそこそこの規模の宿を見つけ、宿泊の手続きをした後、町に散策に出た。

 

「……ふむ。この町はベンガーナの町に比べて、盾や鎧などの製品に良い品物が揃っているような感じがしますね」

 

「そうですね、初めて見る鎧や衣類がありますね」

 

今俺達は、宿を出て最初に目に付いた服飾店を訪れ、品物を確認している。

 

「これなんて、ポップに似合うのでは無いですか?」

 

アバン先生はそう言って、棚に陳列されていた服を俺に見せてくれた。その服は、値札に『みかわしの服』と書かれていて、その名の通り薄手で動きやすそうで体力のない俺には丁度良さそうに見えた。ちなみに今の俺の服装は旅人の服だ……。

 

「へー、良いですね、これ。軽そうですし、動きも阻害されなくて」

 

俺はその服を手に取って見たが、肌触りも良く実に着心地が良さそうだ。

 

「どうやら、気に入ってもらえたようですね。では、この服は私からポップへのプレゼントと言うことで」

 

そう言いながら先生は俺からその服を受け取り、そのまま店員さんの所まで向かった。

 

「えっ! ちょ、ちょっと待って下さい、先生! その服、結構高いですよ。そんな悪いですって」

 

そうなのだ。その『みかわしの服』、値札の裏に3000Gと書かれていた。3000Gと言えば、この町の宿屋の宿泊料が食事込み200Gなので、その15倍だ。

 

ちなみに旅人の服は70Gなので、40倍以上だ。さすがにそんな高級品をアバン先生に買って貰うのは申し訳ない。

今の旅人の服も、ほつれているところを直したらまだまだ着れる。

そう思ってアバン先生を止めたんだが……。

 

「何を言っているんですか、ポップ。弟子に必要な防具や武器を用意するのは、師匠の務めの一つですよ。おとなしく受け取っておきなさい」

 

俺が止めようとすると、アバン先生が何を言っているんだと言わんばかりの呆れた表情で俺を振り返って言った。

 

「い、いや、でも……」

 

俺がなおも食い下がっていると、アバン先生は続けて言った。

 

「……これぐらいしか私がポップにしてあげられることは無いんです。少しは私に師匠としての役割を果たさせて下さい。ね、ポップ?」

 

アバン先生はそう優しげな表情で俺を諭してくる。これぐらいしか出来ることが無いって、そんな……。俺は先生から沢山のことを教えて貰っているのに。

 

だけど、これ以上抵抗しても先生の顔を潰すと思った俺は、ありがたく先生の申し出を受け入れることにした。

 

「分かりました。アバン先生、ありがとうございます。大切に着ますね」

 

俺の返事に満足したアバン先生は、その服を店員さんに渡した。

 

「お買い上げありがとうございます。この商品は、賢者の国パプニカ国から入荷した商品でして、きっとお客様にお似合いですよ」

 

店員さんはそう言って、その服を俺の体格に合わせるので、3日後に受け取りに来て欲しいと言われたので、俺達はその店を離れた。

その後も俺達はいくつかの店を見て回り、旅の消耗品を購入したり、変わった食材を購入したりした。

 

翌日は、アバン先生とリンガイア郊外にある小さめの森に探索に出かけた。

 

この森は魔物が生息してはいたものの、まだ邪気の濃度がそれほど濃くないのか、あまり積極的に攻撃的に攻めてくる事も無かったので、俺はアバン先生を相手に修行をつけて貰っていた。

 

俺はまだ賢者育成コースの卒業試験である『魔法の使用禁止』期間中なので、主に棍での修行をつけて貰った。やはり俺には、地竜閃はなかなか難しい。

 

先生が手本を見せてくれるが、そもそも闘気を十分に棍に纏わせることが出来ないし、どうにかして大して強くも無い闘気を棍に伝えられても、今度はそれを必殺のタイミングで解放することが出来ない。

本当によくダイは、こんなのを1日で習得したよな。自分の才能の無さが嫌になるよ。

 

そうやって、1日中アバン先生との修行に明け暮れ、とうとう王様との面会日を迎える事になった。

 

今俺達は2日前に手続きをした城の受付の前にいる。

 

アバン先生は、朝から自慢のくるくるカールをいつも以上に丁寧にカールさせ、身だしなみに気をつかっていた。

アバン先生から「どうですか?」と問われたが、俺にはいつものカール具合と今日のカール具合の差が分からん。

とりあえず、良い笑顔で「最高です」と親指を立てて褒めておいた。

 

そんな事を考えていると、1人の兵士が城の中から現れて、俺達に告げた。

 

「それでは、これより王の御前に案内いたします。あ、お付きの方はこちらでお待ちください」

 

ん? お付きの方というのは俺のことか? あれ、俺は王様のところには案内されないんだ。てっきり俺も、アバン先生と一緒に王様に面会するんだと思っていたぜ。

 

俺が首を傾げて考えていると、横のアバン先生がその兵士に言った。

 

「すいません。面会希望は私と弟子であるこの子だと伝えていたはずですが。何かの間違いでは無いでしょうか?」

 

「いえ、間違いではございません。王に面会希望があったことをお伝えすると、高名なアバン殿には会う価値を認めるが、その弟子まではその必要を認めない、とおっしゃられましたので。大変申し訳ありませんが、お弟子の方はこちらでお待ちください」

 

……なるほど、そういうことか。まあ、確かに魔王を倒した世界の勇者アバン先生と俺では比較にもならないわな。

俺は特に憤ることも無く冷静にそう分析し、横でなおも兵士に食い下がろうとしているアバン先生に声をかけた。

 

「アバン先生。俺のことは良いですよ。面談の目的は、アバン先生がリンガイア国王とお会いし、世界の情勢を情報交換することですから。別に俺はいなくても問題ないはずです」

 

「しかし、ポップ……」

 

「良いですって、アバン先生。それにもともと俺みたいな平民が王様に会うなんて、胃が痛くなるような経験でしか無いですし。俺はその辺をぶらぶらして、先生が戻ってくるのを待っていますよ」

 

「ポップ……。分かりました。確かに目的はリンガイア国王との情報交換です。今回はその目的を優先することにします。それでは、ポップ。申し訳ないですが、こちらで少々お待ちください」

 

アバン先生は俺にそう言って、兵士の人に連れられて城の中に入っていった。

 

王様と会うのが気後れするというのは、本当の話だ。中にはフォルケン王やライオネル王みたいな気さくな王もいるが、基本的に他者の生殺与奪の権利を持つ人種と会う事に、俺は苦手意識を持っている。

これは、俺がもともと階級社会の無かった日本という国で生きていた経験があるからなんだろうか? うーん、良く分からないな。

 

「――おい!」

 

……うん? 

 

俺が、どうして王族と会うのに苦手意識を持っているのかを考え込んでいるうちに、いつの間にか背後から俺の肩を掴んで声をかけてきた者がいたことに、今更ながら気が付いた。

 

俺が肩を掴んでいる手の持ち主の方を振り返ると、そこには、剣を腰に差した俺と同年代くらいの少年が立っていた。そして、少年の背後には、20代くらいと思われる兵士が4人いる。

 

「……えっと、自分に何かご用でしょうか?」

 

とりあえず、この少年が代表者かなと思い、俺は少年に話しかける。

「ちっ! 何度も声をかけたというのに、この僕を無視をするとはどういうつもりだ、お前?」

 

少年はイライラした様子で俺にそう返事をする。何度も声をかけた? いかんな、考え事をしていて全然気が付かなかったらしい。

 

「それはすいませんでした。少し考え事をしていたもので、全く気づきませんでした。俺は、ポップと言います。あなたは?」

 

「魔王ハドラーを倒した勇者アバンとその弟子が、この時間に陛下に面談に来ると聞いた。お前はその弟子か?」

 

ああ、なるほど。アバン先生の噂を聞いたのか。

 

「ええ、そうです。自分がそのアバン先生の弟子になります」

 

「……ふん! お前のような貧弱な体格で勇者アバンの弟子が務まるのか。これでは、勇者アバンの実力も知れるというものだな」

 

少年は馬鹿にした様子で俺にそう話しかける。後ろの兵士達もそれに同調するように、笑い声を上げる。俺は、自分が貧弱な体格なのは自覚しているから特に腹も立たなかったが、アバン先生がけなされていると思うと、ついカチンと来てしまった。

 

「……確かに俺が貧弱な身体なのは否定しませんよ。ですが、どこのどなたか存じませんが、俺が貧弱だからと言って、師であるアバンまで貧弱と決めつけるのは少し発想が飛躍しすぎていやしませんかね? あなたの頭の方こそ貧弱なのでは?」

 

俺がそう反論すると、少年は顔を真っ赤にして怒鳴った。

 

「お前! 僕を侮辱するのか!?」

 

同時に、背後の取り巻き達も喚き始めた。

 

「貴様! ノヴァ様を侮辱するか!」

 

「ノヴァ様! この者は我らが……」

 

ノヴァ? へえ。ノヴァっていうんだ、この子。どうやら兵士達から心酔されているようだけど、今のところただの増長した小僧って感じしかしないけどね。いや、まあ俺も小僧なんだけど。

 

「……待て、お前達。おい、お前ポップと言ったか。僕の名前はノヴァ。人呼んで『北の勇者』と呼ばれているが、聞いたことは無いか?」

 

ノヴァと名乗った少年は、背後の兵士達を制して、俺に声をかける。

 

……北の勇者だって? マジかー。俺達、こんな自意識過剰なガキに会うためにはるばるリンガイア国まで来たことになるのかよ。

実力の方は良く分からないが、性格最悪じゃないかよ。

 

大体、何が人呼んで『北の勇者』だよ。自分で言ってんじゃねえよ、恥ずかしい奴だな。

 

「へー、ノヴァさんとおっしゃるんですね。それで自称『北の勇者』だと。凄いっすねー。ほんとびっくりしました。俺なら恥ずかしくて自称なんてできません。あ、それじゃあ、俺は忙しいんで、これで……」

 

俺はこれ以上こいつらと関わり合いになるのはごめんだと思い、そう紳士的に挨拶してその場を離れようとしたんだが、……そうは問屋がおろしてくれなかった。

 

きびすを返した俺は再び肩をガシッと掴まれてしまった。

 

「まあ、待ちなよ。せっかく高名なアバンの弟子に出会えたんだ。この機会に僕達と武技の交流を図らないかい?」

 

額に青筋を浮かべたノヴァが俺にそう声をかけてきた。

 

はー。

 

俺は内心でため息をついた。どうしてこうなったんだろう……。

 

 

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