転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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ホイミを習得してから1年が過ぎました。


4話 原作開始 9年前 賢者への第一歩

あれから、約1年と少しが過ぎた。

 

俺は相変わらず家の手伝いや魔法の修練で忙しく過ごしている。魔法については、とうとう回復魔法の中級に位置する回復呪文(ベホイミ)を覚えることが出来た。回復呪文(ベホイミ)とは、一言で言えば回復呪文(ホイミ)の強化版だ。マイル神父からは、小さい身体で中級以上の呪文の契約をすることは負担が大きいと言われて止められてしまったから、自分で開発出来ないかとずっと研究していた呪文だ。研究の方法は、回復呪文(ホイミ)を発動する時に現れる呪文を紐解くことだった。

 

回復呪文(ホイミ)

 

言葉にするとただの3文字であるが、契約の時に頭に流れ込んできた呪文はもっと長かった。

 

俺は、この呪文が回復呪文(ホイミ)回復呪文(ホイミ)たらしめているものだと確信し、これを単語あるいは文節毎に分析することにしたんだ。

 

終わってみると、驚いたことに俺が魔法の発動の際に、目に見えない魔法発動のための身体内部構造として分類した発火点、制御室、選定室、射出点の4つの文節に分けられることに気が付いた。

 

これは、解毒呪文(キアリー)麻痺解除呪文(キアリク)も同様だった。

 

だとすると、回復呪文(ホイミ)回復呪文(ベホイミ)の違いはその魔法に込める力の違い、つまり制御に値する文節を研究することで、回復呪文(ホイミ)回復呪文(ベホイミ)に進化させられるんじゃ無いかと考えた。

 

おそらくこの考えは間違っていなかったんだろうと思うが、そこから先が難しかった。どうしたらより強い力を込める呪文になるのかをわずかな魔法の知識を元に、文字の構造を少し変えては効果を試すという気の遠くなるような試行錯誤を繰り返し、ようやく、回復呪文(ホイミ)を覚えてから8ヶ月後、今から約4ヶ月前に回復呪文(ホイミ)回復呪文(ベホイミ)に昇華させることが出来たんだ。

 

文節内の単語を変更しこれだ! と確信を持った瞬間、何故か回復呪文(ホイミ)の契約の時に感じたように、呪文が頭に流れ込んできて、俺は回復呪文(ベホイミ)を習得することが出来た。

 

俺が初めて教会で回復呪文(ベホイミ)を使用した時のマイル神父の顔は本当に可笑しかった。驚愕の表情というのはああいうのを言うんだろうな。

 

でも、驚愕の表情を浮かべた後、「……ああ、神よ。何故この時代に彼を…… もしや世界は……」などと何やら物騒な事を言っていたのは忘れよう。うん。その方が良い。それより、マリーさんにものすごい笑顔で「ポップ君、すごいじゃない!」と熱く抱擁されたことを思い出そう。

 

あれは良いものだった。うん、本当にいいものだった。窒息するかもしれないと思ったが、それも良い思い出だ。

 

もしかすると、これからも新しい呪文を開発する度に抱擁してくれるんじゃなかろうか。そうだと良いな。

 

これが俺の初めての魔法の開発だった。おそらく普通に年齢を重ねた上で(マイル神父が言うには早くても12歳とのこと)、魔法の契約をして貰った方がずっと楽に覚えることが出来ただろう。

でも、俺はこの回復呪文(ベホイミ)の開発に労力をかけたことを後悔していない。この開発の過程で俺はとても得がたい知見を得ることが出来たのだから。この経験は、今後の俺の魔法使いとしての人生にきっと役立つはずだ。マリーさんの抱擁も得たしね♪

 

そうそう、魔法発動の射出点のことでもう一つ。

 

かねてより感じていた右手以外、つまり左手からの魔法の発動についても研究は進んだ。やはり俺の予想は正しく、右手以外からも魔法の発動は可能だろうと思う。うん、それはそうだろうな。

大体、左利きの魔法使いだってどこかにはいるだろうしな。これは、とても大きい気づきだ。上手くすれば、同時に右手と左手から魔法を行使できることになる。この技術を会得すれば、今後の魔王軍との戦いで大きな力となる。何せ左右の手から同時に魔法を発動させられたら、1人で2人分の戦力になると言うことだ。

 

だから、回復呪文(ベホイミ)の開発の合間を縫って、左手からの魔法発動にも挑戦していたんだけど、これがなかなかうまくいかない。

 

どうしても右手の発動ルートの方に、魔力が流れて行きやすく、よほど集中しないと左手の射出点の方にたどり着いていかない。これは右手での発動に熟練してしまったことが、逆にあだとなってしまったのかもしれない。

まあ、これについては気長に練習するしかないだろう。原作ポップが最終的に両手で魔法を使えるようになったのかは分からないが、とにかく努力すればどうにかなるという精神で引き続き頑張ろう。

 

さて、俺は今ランカークス村の宿屋に宿泊している、とある魔法使いの部屋の前にいる。

 

なぜかというと、この魔法使いが冒険の合間の手空きの時間に初歩の氷結呪文を契約させてくれる、いわゆるアルバイトをしているという情報を、武器屋の手伝い中に耳にしたからだ。

 

 

~さかのぼること少し前~

 

「本当ですか!? 本当に攻撃魔法を教えてくれるんですか?」

俺は父さんの武器屋で店番をしていたカウンターの内側から、身を乗り出す勢いでそう声を上げた。

 

「ああ、本当だよ。俺のパーティー仲間のユーリカというやつなんだが、時間のある時はちょっとした小遣い稼ぎで、未習得者に魔法の契約を持ちかける事をしているよ。」

 

そう答えてくれたのは、父さんの店に武器を見に来ていた戦士風の青年だった。

 

「そのユーリカさんという方がおられる所は何処ですか!? 僕が行っても教えてくれますか!? まだこの村にいますよね!?」

 

「おいおい、落ち着けって。まず言っておくが、タダじゃないぞ。それなりの金額を取っていたはずだ。確か500Gだったかな? 坊主にその金額が払えるのか? それに契約成功率は決して高くないと聞くぞ。坊主は年齢も年齢だし、まだ契約は無理なんじゃないのか?」

 

俺は500G必要と聞いて少し困った。俺は教会の施療で得たお金はほとんど全額両親に渡しているから、そんな大金は持っていなかった。

当然ながら、年齢が低いから習得出来ないんじゃないかという懸念は一切抱いていないが。

 

俺が困っている様子をみた青年は、「ほらな。だから無理せず、まずはお金を貯めることから始めるんだな」といって諭してきた。

 

でも、俺は焦っていたんだ。

 

前世の知識を思い出してから、これまで1年以上が過ぎた。その間習得できた魔法は回復呪文(ホイミ)回復呪文(ベホイミ)、それに解毒呪文(キアリー)麻痺解除呪文(キアリク)だけ。

 

これでは、賢者どころか魔法使いですらなく、僧侶でしかない。……これではいけない。このままではきたる大魔王との戦いの時に、ダイの相棒としての責を果たすことが出来ない。俺たちが敗れ、大魔王がこの世界を席巻してしまうと、この村の俺の愛する人々が蹂躙されてしまう。

 

それだけは嫌だ。なんとかしなければ。

 

俺が一人どうしたものかと悩んでいると、いつの間にか隣の工房からこちらに来ていた父さんが声をかけてきた。

 

「ほら、必要なんだろう。持って行け」

渡してくれたのは、500Gもの大金の入った巾着だった。その巾着は俺が教会で稼いだお金をいつも入れて、我が家秘密の場所に保管しているものだった。

 

「え、でもどうして? このお金はお父さんとお母さんにもう渡したものだよ。」

 

「ばーか。何言ってんだ。このお金はお前が教会で稼いできたお金だろうが。俺たちはただお前の代わりにお金を管理していただけだ。必要な時に必要な金があるなら、使うことを躊躇するんじゃねえ」

 

……父さん。俺が父さんの言葉に感激していると、家と武器屋をつないでいる扉が静かに開いて、母さんもやってきた。

 

「そうよ、ポップ。私たちはあなたが努力している姿を知っているわ。そのあなたが必要と思うのなら、私たちはどんな協力だってするわ。さあ、店番は私が代わるから、早く行ってきなさい」

 

いつから聞いていたのか、母さんまでそう言って俺の背中を押してくれた。ありがたくて涙が出そうになったぜ。

 

「ありがとう、お父さん、お母さん。お兄さん、そのユーリカさんていう人の泊まっている宿を教えてくれませんか?」

 

「あ、ああ、良いけどよ。でも契約に失敗してもお金は返ってこないんだぜ。本当に良いのかよ?」

 

「構いません。チャレンジしないと確率は0だけど、チャレンジする限り、可能性は0ではありませんから!」

 

 

 

そうして、俺は今ユーリカさんの宿泊している部屋の前にいる。

コン、コン。

 

俺は部屋を2回ノックしてから声をかけた。

 

「お休み中すいません、ユーリカさんでしょうか? 魔法の契約をして貰いたくて来たのですが、いらっしゃいますか?」

 

待つこと数秒の後、返事があった。

 

「あー、はいはい。ちょっと待ってね。今開けるから」

 

そう言って、扉を開けて出てきた人は、20代前半ぐらいの若い青年だった。

 

「初めまして。武器屋に来ていたカインさんという方から、あなたが氷結魔法の手ほどきをしていると聞きました。僕、武器屋の息子のポップと言います。お金もちゃんと用意してきました。だから、僕に魔法を教えて頂けませんか?」

 

「え、君に教えるの? でも君はまだ5、6歳くらいだろう? いくらなんでもその年で魔法を習得するのは難しいんじゃないかな?」

 

ユーリカさんは、困惑した表情で俺を見下ろして言った。

 

そうだろうな、普通はそう言うだろうと思う。だから、俺はあらかじめ用意していた言葉を返した。

 

「大丈夫です。僕はまだ6歳ですが、回復呪文(ホイミ)回復呪文(ベホイミ)、それと解毒呪文(キアリー)麻痺解除呪文(キアリク)も習得しています。契約の儀式を受ける事は初めてではないので、それがどのようなものかは良く分かっています」

 

「そ、そうなんだ。その年でそれはすごいね。でも、今聞いた呪文のラインナップだと君は僧侶の資質はあるように思えるけど、それでは逆に攻撃魔法の習得は難しいと言うことにならないかな?」

 

む、確かにそういう考えもあるか。確かに今の俺の呪文のラインナップを知れば、俺は将来有望な僧侶候補という存在であって、攻撃魔法を駆使する魔法使いの素質があるとは考えづらいか。まれに賢者という攻撃魔法と回復魔法の両方を極めた存在もいるにはいるが、そんな存在はそれこそめったにいないしな。

 

でも、俺は知っているんだ。このポップという身体は攻撃魔法にこそ輝きを秘めていると言うことを。何せ15歳で火炎魔法の上級にあたる火炎呪文(メラゾーマ)を使いこなしていたからな。

 

「確かにそうかもしれませんが、それでも攻撃魔法の習得に挑戦してみたいんです。契約出来なくても、お金はきちんと支払います。どうかお願いします」

俺はこの機会を逃してなるものかと、必死の態度でユーリカさんに頭を下げた。

 

「そうか、それなら俺から断ることはしないよ。まあ、中に入ると良い。直ぐに準備をするから」

そう言って、ユーリカさんは俺を部屋の中に招待してくれた。やった、とうとう攻撃魔法の習得が出来るんだ。楽しみすぎる。

 

それから、ユーリカさんは直ぐに部屋を整えて、契約するための準備が出来た。

 

「それじゃあ、希望しているとおり、氷系呪文(ヒャド)の契約儀式を行うよ。残念ながら俺は火炎呪文が使えないから、それは教えられないんだ。一応先に言っておくけど、金額の500Gのうち、前金として250Gをもらい、成功した場合の成功報酬として残り250Gを貰うことにするからね」

 

「え、でもそれじゃあ、契約に失敗した時ユーリカさんには250Gしか渡りませんが、それで良いのですか?」

 

「ああ、それで良い。俺もさすがにこんな小さな子供相手に、そんなあこぎな商売は出来ないよ」

 

マジか。いい人だな、ユーリカさん。俺の初めての攻撃呪文の契約儀式の手ほどきをしてくれる人がこの人で良かったな。

 

「じゃあ、準備は良いかい、始めるよ」

 

「はい、いつでも大丈夫です。宜しくお願いします」

 

ユーリカさんは魔紙を用意し、その紙を俺の頭に接触させながら、氷系呪文(ヒャド)を発動するための長い呪文の詠唱を始めた。

 

その途端、俺の頭の中に氷系呪文(ヒャド)の術式がすーと入ってきた。ああ、この感じは回復呪文(ホイミ)と同じだな。そんなことを考えているうちに、あっという間に儀式は終わった。

 

「ふー、終わったよ。ポップ君、だったかな? 多分問題なく儀式は終わったと思うけど、どうだい? 氷結魔法は使えそうかい?」

 

「はい、大丈夫だと思います。ちょっと待ってください」

 

そう返答し、俺は右手で氷系呪文(ヒャド)を発動してみた。すると、右手からわずかに冷気が漏れ出し、明らかに右手の周りの温度が急激に下がった感覚があった。

 

「うん、成功のようだね。そのまま最後まで発現すれば氷系呪文(ヒャド)は完成するよ。でも危ないから、ここではやらないでね」

 

「はい、分かりました。ユーリカさんどうもありがとうございました。これ、成功報酬の250Gです」

 

 俺は成功報酬であった残りの250Gをユーリカさんに渡した。

 

「うん、確かに頂いたよ。でも君すごいね。こんなに簡単に儀式が終わったのは初めてだよ。そうだ、これほど短時間で終わって500Gも頂くのは心苦しいから、良かったら俺のパーティーの僧侶からも魔法を覚えてみないかい? もちろん俺の紹介ってことで追加料金は取らないから」

 

マジか!?それは願ってもない申し出だ!

 

「え、良いんですか!? そうしてくれるなら僕はすごくうれしいです!」

 

「そうか、そうか。それじゃあ、そいつ隣の部屋にいるからちょっとここで待っていてくれ」

 

そう言って、ユーリカさんは部屋を出て行った。楽しみだな。どんな魔法を教えてくれるんだろう。

 

そんな事を考えていると、すぐに隣の部屋から女性の方を連れてユーリカさんが戻ってきた。この女性(トワさんと言うらしい)がユーリカさんの言っていた僧侶なんだろう。

 

その後、トワさんに俺の手持ちの魔法を聞かれ、最終的に真空呪文(バギ)を教えてもらえることになった。

 

やった。氷系呪文だけで無く真空呪文まで一度に覚えられるとは思わなかったぜ。ユーリカさん、マジ感謝です! いつか冒険で死にそうな怪我をユーリカさんが負った時には俺が治してやるからな、と俺は堅く胸に誓った。

 

結果として、俺は真空呪文(バギ)の契約も無事成功した。真空呪文(バギ)って、確かドラゴンクエストのゲームでは、敵に与えるダメージの最小値と最大値の差が激しいことで有名だった気がするな。つまり威力が不安定って事で。

 

でも、俺はこの真空呪文(バギ)という呪文は別の呪文と合わせることで、威力が倍々式に跳ね上がるんじゃないかって思っている。これは、本格的に両手呪文発動にむけた修練にとり組まないとな。

 

家に戻った後、俺は自分の部屋で新たに覚えた氷系呪文(ヒャド)真空呪文(バギ)の改良に取りかかった。

 

……そう、改良である。

 

新呪文を覚えた矢先から何を馬鹿なと思われるかもしれないが、俺はこの2つの呪文は改良してこそ、その真価を発揮すると思っていた。

 

そう、新たな魔法の創成である。

 

色々やりたいことはあるが、まずは真空呪文(バギ)の魔法を改良し、無害な突風だけを発生させる魔法を作りたい。これは、真空呪文(バギ)を構成する術式から風の刃にあたる部分を削除することで完成するはずだ。

 

その次は、氷系呪文(ヒャド)の魔法を改良し、水を生み出す魔法を作りたい。そもそも氷系呪文(ヒャド)は大気に存在する水を集めて凍らしている訳なんだから、その行程から凍らせるという行為を抜けば出来るはずだ。

 

両方とも、今ある呪文の術式から何かを引き算することで成功するはずだ。ここで、回復呪文(ベホイミ)を開発した時のあの苦労が役に立つ。ある程度呪文の構成の予測が立つので、そこに限定して呪文を削っていくのだ。

 

 

 

 

 

それから1週間が過ぎた。真空呪文(バギ)については、その風の刃を無くし、殺傷能力を無くした突風だけを生み出す、『突風呪文(パキ)』という魔法をあみ出すことに4日前に成功した。

 

そして、氷系呪文(ヒャド)については、新たに水を生み出す『水流呪文(ウォーター)』という魔法を2日前にあみだした。

 

正直『突風呪文(パキ)』と言う呪文については今のところ、有益な使い道が思い浮かばない。まあ、作り出すのにそれほど苦労しないことは分かっていたので、とりあえず作ってみました的な魔法だ。すまぬ。

 

しかし、『水流呪文(ウォーター)』の魔法についてはやはり絶大な利便性があった。水を即座に作り出すのである。使い道などいくらでもある。例えば、鍛冶の際の水の確保、手や顔を洗いたい時の洗面水、シャワーを浴びたい時の大量の水の確保と数えれば切りがない。

 

そう、『水流呪文(ウォーター)』の魔法は攻撃魔法ではなく生活魔法と考えることでその効果を最大限に発揮するのである。

この魔法をあみだしたことで、我が家はとても便利になったと、父さん、母さん共にすごく喜ばれた。

 

この魔法はいつか落ち着いたら世に公表して、生活魔法として広く浸透してもらえたらと思っている。簡単だしね。氷系呪文(ヒャド)を使える術者はほとんど皆使うことが出来るはずだ。

 

……だけど、全ては大魔王を討伐してからだ。まずは目先の災厄を乗り越えることに集中しよう。

 

 

※現時点のポップの習得魔法  OR:オリジナル魔法

 ホイミ、ベホイミ、キアリー、キアリク

 ヒャド、バギ

 パキ(OR):突風を生み出す魔法

 ウォーター(OR):水を生み出す魔法

 

 




この頃から、ポップは原作に無いオリジナル魔法を次々作り始めます。

ポップを最強の存在にするつもりはありませんが(あまり面白くなさそうなので)、確実に原作のポップよりは強くなるので、そのあんばいが難しいですね。
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