転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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42話 原作開始 1年前 花の都 カールの町

 

「アバン先生、花びらが舞っていますね」

 

俺の視界に、上空をひらひらと舞う花びらが映っていた。遠目に見ると帯状に連なっているように見えてとても綺麗だ。

 

「ふふ。それは、ほら、あそこから飛んできたものですよ」

 

アバン先生はそう言って、遠くを指さす。

俺はその指の先に視線を向けて、ようやく気が付いた。

 

「――! アバン先生、あれが……」

 

「ええ。あれが、……カールの町です」

 

その町は美しかった。

俺は、遠くに見えるカール王国の首都カールの町を、海岸線沿いに整備されている街道から遠望していた。

町は、外縁から中央にかけて徐々に地盤が高くなっており、その中心には白い大きな城がそびえ立っていた。それは、まるで白鳥が翼を広げたように感じられる城だった。

 

カール王国は街道がよく整備されていて、今も海岸沿いに石畳で整備されている街道を多くの旅人や商人が移動している。

 

石畳のため、馬車なども移動しやすそうだ。この移動する人の数や、街道の整備状況だけ見ても、カール王国女王フローラ様の手腕が分かるような気がした。

 

「町の人口はベンガーナより少し少なく、約1.5万人と言ったところでしょうか。町の大きさは同じぐらいだと思いますよ」

 

アバン先生も、見えてきたカールの町並みを目を細めながら、懐かしそうに見ている。

 

「今日はアバン先生のご自宅に行くんでしたっけ?」

 

「ええ。私の家は、カールの町の外れの方にあります。執事のドリファンがいるはずですから、いったんそこに向かいましょう」

 

へー、執事がいるんだ。アバン先生は貧乏貴族って言っていたけど、さすがにそこは、家を管理してくれる人を雇っているんだな。

 

俺とアバン先生は、カールの町に足を踏み入れた。初めて見るカールの町並みに俺はキョロキョロしながら歩いているが、アバン先生は慣れた足つきでするすると進んでいくので、俺は遅れないように慌てて後を追いかけた。

 

俺は、町の人達に目を向けたが、皆特に生活に不安を抱いている様子は見られない。井戸のそばには、まさに井戸端会議しているおばさん達がいる。

こういうところは、世界が違っても同じ光景なんだなと思い、俺は微笑ましい気持ちになった。

 

それに、町の至る所に花が植えられているのも良いな。さっき外で見た花びらはやはり町から飛んできたものだったのだろう。

女王様が治めている町だからだろうか、俺はこの町を形容するのに『花の都』という言葉がふさわしいと感じた。

 

大きな通りに出ると、そこには様々な店が並んでいた。

うわ、大きい建物があると思ってよく見ると劇場じゃないか、これ。

 

すっげー、劇場なんてこの世界に来て初めて見たよ。そこには、バロック調で作られた5階建てくらいに見える大きな劇場が建っていた。

これは凄い。ベンガーナの百貨店にも負けてないぞ。その劇場の壁には、常設公演の演目を書いたポスターが貼られていた。へー、面白そうだな。

 

「ほら、ポップ。ちゃんと付いてこないと迷子になってしまいますよ」

 

アバン先生が、ポスターを見つめていた俺の肩をポンと叩いた。

 

「すいません、アバン先生。でも劇場があるなんて凄い町ですね、先生」

 

「ああ、この劇場はカールの町の象徴のようなものですね。時間があれば一緒に見に行きましょう。なかなか楽しいですよ」

 

「本当ですか、楽しみです!」

 

うわ、劇なんて前世でも見たことないよ。楽しみだな。歌劇団みたいな人達がいるのかな?

 

それから、徐々に小さな通りにアバン先生が歩みを進め、やがて1軒の屋敷の前で足を止めた。

 

「ここですよ、ポップ」

 

アバン先生がそう言って、その屋敷の前で俺を振り返る。俺はアバン先生の背中越しに前方に建っている家をのぞき見る。――うわ、でか!

 

「うわー、広いじゃないですか、アバン先生。庭もこんなに広いし、立派な屋敷ですねー」

 

俺はアバン先生の屋敷を初めて見てそう感想を抱いた。いや、実際思っていたよりずっと広いし、庭もちょっとした訓練なら余裕で出来そうなくらい広い。

なんていうか、白い洋館のような感じだ。庭は今、綺麗に手入れされていて、色とりどりの花が花壇から咲き誇っている様子が見て取れた。

 

「それほどでも無いと思いますけどね。さて、ドリファン。今帰りましたよ」

 

アバン先生は、そう屋敷の扉に向けて呼びかけて、呼び鈴を鳴らす。すると、それほどの時間をかけずに、扉が静かに開き、扉の奥から執事服姿のおじいさんが現れた。ああ、この方がドリファンさんなんだな。

 

「ようこそお帰りなさいませ、旦那様。それに、ポップ様ですね。どうぞいらっしゃいませ。私、屋敷の執事を務めておりますドリファンと申します。以後お見知りおきを」

 

「あ、い、いいえ。ご丁寧にありがとうございます。ポップです。今日はご厄介になります」

 

突然ドリファンさんに丁寧な挨拶をされちょっと焦った俺は、どもりながらも挨拶を返した。

 

「ただいま帰りました。ドリファン。長い間家をお任せしてすいませんでしたね」

 

アバン先生がドリファンさんに声をかけるが、ドリファンさんは、軽く首を振って答える。

 

「いえいえ。これしきのこと何ほどのこともありません。それより、旦那様。3日前より旦那様にお会いしたいという方がいらっしゃっておりまして、旦那様のお戻りをカールの町でお待ちになっていらっしゃいますよ」

 

「私に? ふむ、どちらの方でしょうね」

 

「何やらパプニカ国王からの旦那様宛の親書を預かってきているとか。旦那様からのお手紙で、カールへのご帰還が近いことを把握しておりましたので、私がその事を使者の方に伝えたところ、それでは数日この町に滞在すると言われまして。滞在場所を聞いておりますので、後程、旦那様のご帰還を伝えて参りましょう。本日夕刻頃にお会いなされますか?」

「ええ。それで結構です。宜しくお願いします、ドリファン」

 

「承知いたしました。それでは、それまではどうぞごゆっくり過ごされ、旅の疲れを取ってください。」

 

ドリファンさんが屋敷の中に俺達を案内してくれるので、アバン先生と俺はその後ろに続いて屋敷に入って行った。

 

屋敷の中はとても清潔に維持されていて、調度品も華美すぎる事もなく、実に良い感じで適度に飾られていた。ああ、なんかとても落ち着く雰囲気だな。俺は一目見てこの屋敷を気に入った。

 

「ポップは、その部屋に荷物を置いて少し休んでいると良いですよ。私は少し手紙を書いていますので、ゆっくりしていて下さい」

 

「分かりました、アバン先生」

 

俺は、アバン先生に指し示された部屋に入った。俺の入った部屋は普段ゲスト用の部屋として使っているようで、部屋には、ベッド、一人用のソファ、テーブルが備え付けられていた。

おそらく先ほどの執事のドリファンさんがいつも清掃してくれているんだろう。

本当に塵一つない部屋でびっくりした。

 

俺は、自分の汚れた服でベッドが汚れてしまわないか気になったので、荷物を下ろした後、軽く服に着いた汚れを手ではたいてから、ベッドに腰をかけた。

 

うん、ほどよく弾性のある良いベッドだ。

 

俺がベッド脇の小窓に目をやると、ちょうどドリファンさんがこの屋敷を出て、町の方に向かう様子が見えた。

おそらく先ほどのパプニカ国王からの使者とやらにアバン先生の帰還を伝えに行ったのだろう。

 

アバン先生にお客さんか。それもパプニカ国王からの親書を携えた……。どんな内容の手紙なんだろう? 

 

パプニカ……。

 

レオナ姫がいる国だったよな。アバン先生にどんな用なんだろう? 

 

ん? レオナ姫? 何かを忘れているような……。

 

――あ!

 

思わず俺はベッドから立ち上がり、声を上げてしまった。そうだ、確かアバン先生がダイの家庭教師をするためにデルムリン島を訪れたのは、確かパプニカ王国からの依頼じゃなかったか? 

 

時期は忘れたけど、何年か前にデルムリン島に赴いたパプニカ王国のレオナ姫をダイが助ける出来事があったはずだ。

 

その事件から、レオナ姫がダイをきちんとした勇者の教育を受けさせようと、アバン先生にダイの家庭教師を依頼したんじゃなかったか? 

細かい部分はあまり覚えていないが、大筋はあっていると思う。

 

……まてよ、という事は、今この国に来ているパプニカ国王からの使者って、その要件は……。

 

いけない。こうしてはいられない。

いよいよ原作が動き出す可能性が高い。俺の修業は十分か? 今の俺の手持ちで、これからの魔王軍との戦いを乗り越えられるのか? 

 

俺は、いよいよ原作が動き出す可能性が高いと知り、急に自身の能力に不安を覚えてしまった。

 

……いけない。どうして俺はもっとアバン先生との旅の中で自身の修業を行わなかった。……だめだ、過ぎ去ったことを後悔しても仕方ない。

大事なのは今後だ。

 

よし、まずは修行だ! 俺は部屋の中で座禅を組み、魔法能力向上のための瞑想を始めた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……ポップ、ポップ。……ポップ、いい加減瞑想をやめて目を開けなさい。 ――ポップ!」

 

――わ! 俺は突然大声で名前を呼ばれて驚いて目を開けた。

 

すると、目の前にはあきれた様子のアバン先生が俺を見つめて額に手を当てて嘆いていた。

 

「……アバン先生?」

 

「全く……。どこまで深い瞑想をしていたのですか? ゆっくり休んでいなさいと言っていたでしょう」

 

アバン先生は、苦笑しながら俺にそう話しかけてきた。

 

俺はそのアバン先生の言葉を不思議に思いながら部屋の様子を見ると、何やら部屋が薄暗くなっている。

 

あれ、どうしてだろう? 

俺の不思議そうな様子を見て、アバン先生が俺にさらに声をかける。

 

「今は、もうすぐ夜になろうかという時刻ですよ。……全く、食事の用意が出来たので声を掛けに来たのですが、返事が無いものでしたので覗いてみたら、まさか瞑想をしていたとは。いったい、いつからしていたのですか?」

 

「いつからでしょう? この部屋に案内されてから、それほど時間は経っていなかったかと……」

 

俺は、瞑想中ずっと魔力の光跡を体の中で追跡していたが、これほど長い時間経っているとは思わなかった。もうすぐ夜という事は、ざっと5時間ほど瞑想していたという事だろうか?

 

「修行に熱心なのは良い事ですが、休む時には休まないと身体に悪いですよ。……ほら、お腹が減っているのではないですか? ドリファンが腕によりをかけて作ってくれた料理が出来ていますよ。一緒に行きましょう」

 

アバン先生は俺をそう誘った。食事……。

 

ぐー……。

 

そこに思いいたると、不意に俺のお腹から音が鳴った。

 

「ははは。ポップのお腹は正直ですね。さあ、早く行かないと冷めてしまいます。行きましょう」

 

「はい、アバン先生」

 

俺はアバン先生に続いて、部屋を出た。食堂と呼ばれる部屋に移動している間に、俺はアバン先生に聞いてみた。

 

「そういえば、アバン先生。パプニカ国王からの親書を持ってきた使者の方とはお会いしたのですか? どのようなご用件だったんですか?」

 

「ええ、少し前にお会いしましたよ。その件については、食事をしながらお話ししましょう」

 

アバン先生は、少し俺を振り返りそう俺に返事を返してくれた。

 

「分かりました」

俺は、自分の予想が外れてくれるといいのにと思いながら、アバン先生の後ろを着いて行った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「それで、パプニカ国王からの使者の件ですが……」

 

アバン先生がそう言って俺に話し出してくれたのは、食事を終えた後の食後の1杯をいただいているタイミングだった。

 

食事はとても美味しかった。提供された食事はカールの伝統料理だったらしいが、ドリファンさんが1人で作られたそうだ。

執事業に加えて料理もお手の物って、ドリファンさん、めちゃくちゃレベルの高い執事だな。

 

俺が美味しかったとドリファンさんに伝えると、控えめな笑顔で「お口にあって恐縮です」と言っていた。

アバン先生も、久しぶりのカール料理に大満足の様子で、俺たちは会話も控えめにしばらく美味しい料理を味わっていた。

 

「ラインリバー大陸にあるロモス王国から海を挟んで南にデルムリン島という小さな島があるようなのですが、その島に住むダイという名の少年に家庭教師をして欲しいというのが、パプニカ国王からの依頼でした。いえ、正確にはパプニカ王国第一王女のレオナ姫からの依頼ですね。何やら、以前レオナ姫がその島で儀式を行っている最中に危険が迫った際に、その島に住むダイという少年に助けられたようです。とても有望な少年なので、勇者として大成するようぜひ指導をしてほしいと」

 

アバン先生は、俺にそう言った後、飲みかけの紅茶を口に含んだ。

 

とても有望な少年ね……。それは、そうだろう。ダイは、あの北の勇者とは違う。正真正銘の勇者だ。

 

俺は心の中でそう思いながら、しかし、やはりこのタイミングで原作開始かと思い若干胃が重くなるのを感じていた。

 

「……ポップ?」

 

俺がそんな風に思考していると、アバン先生が訝しげに俺に問いかける。おっと、いけない。

 

「ああ、すいません、先生。まさか、そんな話だとは思わずついぼんやりとしてしまいました。デルムリン島の勇者候補生ダイですか。それで、先生はその依頼をお受けになったんですよね?」

 

アバン先生がこの依頼を断るはずがない。俺はそう確信して先生に聞いてみた。

 

「ええ、受けましたよ。書簡で経緯を拝見しただけですが、そのダイという少年なかなか見どころがありそうですからね。歳はポップより3歳ほど下だと思いますよ。お会いしたら、兄弟子として導いてあげてくださいね。」

 

「もちろんです、アバン先生。それで、いつそのデルムリン島に行く予定なのですか?」

 

俺は、旅の準備もあるので、そこを確認しようとアバン先生に聞いてみた。

 

「それがですね、ポップ。……実は明日にでもこの町を出てデルムリン島に行こうと思っています」

 

「明日ですか!? それは随分と急ですね……。何か事情があるんですか?」

 

「ええ。明日がちょうど週に一度のロモス王国への南回りの定期船の日であるということが1つ、それと……」

 

なるほど。この世界、そう頻繁に定期船が出ているわけではないから、明日を逃すと1週間後となると、多少無理をしてでも明日出発したいと考えても無理はないな。

 

「それと? 他にどのような理由があるのですか?」

 

俺は先生が言いよどんだもう一つの理由を聞いてみた。

 

「もう1つの理由は……、これは私の勘のようなものなのですが、もはや魔王軍の侵攻に一刻の猶予もないのではと私は考えています。……ですので、少しでも早くそのダイという少年の指導を始めたいというのが2つ目の理由です」

 

そうなのか。アバン先生は肌感覚でそろそろ魔王軍に明らかな動きが出始めると感じているんだな。

 

……やはりそうか。

 

実をいうと、俺もそんな感覚を持っていた。アバン先生と共に旅を始めた頃は、まだ邪気の薄い魔物と邪気の濃い魔物が混在していたが、次第に全体的に邪気の濃い魔物が大勢を占め出したと、旅を続ける中で最近感じ始めた。

 

「……分かりました。では、今日にでも旅の準備をしないといけませんね。この時間でも開いている店はどこがあるでしょうか? 今からでも調達に……」

 

明日出発するとなると、旅の準備が必要だ。既に辺りは暗くなってしまっているが、これだけの規模の町だ。

24時間営業のコンビニとまではいかないまでも、遅い時間まで開いている店もあるのではないだろうか。

 

俺は、この町に詳しいアバン先生にその店の場所を聞いて、調達に行こうと席を立とうとしたが、アバン先生に手を挙げて止められた。

 

「いえいえ、その必要はありません、ポップ。明日この町を発つということは、ドリファンに既に伝えています。今回の旅の準備はドリファンに任せておけば大丈夫ですよ」

 

「え、でもドリファンさん、ついさっき紅茶を持ってきてくれていたじゃないですか。そんな時間どこに……」

 

俺はいくらドリファンさんでもこの短時間で準備をするのは難しいのではと思ったが、どうやらアバン先生の考えは違ったらしい。

 

「いえいえ、ドリファンならこれくらいの事は問題なく対応できます。彼は、この家で3世代にわたって仕えていただいている執事中の執事ですからね。今回は彼に任せて、我々は明日からの旅に備えてわずかでも英気を養っておきましょう」

 

アバン先生は笑顔を浮かべて俺にそう言った。……まあ、ドリファンさんの事を良く知るアバン先生がそう言うんだ。特に問題はないんだろう。

 

「分かりました。でも、アバン先生。せっかくカールに戻ってきたのに、フローラ女王様にお会いできたんですか? 明日出立する前に会ったりは……」

 

「それなんですがね、どうやら城で聞いたところではフローラ様はカール北部のサババなどいくつか国内の町を視察中らしく、明後日になるまでカールの町に戻ってこないらしいんですよ」

 

「そうなんですか。それは残念ですね。せっかく近くにいるというのに……」

 

そうなのか、フローラ様は国内を視察中か。ついていないな。アバン先生も、フローラ女王様も互いに会いたかっただろうに。

 

「まあ、手紙は城にいた側近の方に渡しておきましたから大丈夫ですよ。フローラ様ならこの情勢下でしかるべき対策を取ってくれるはずですし」

 

 

「アバン先輩! 帰ってきているんでしょう。俺です、ホルキンスです!」

 

俺がアバン先生と会話をしていると、玄関の方からそんな声が聞こえてきた。ホルキンス? 誰だろう? アバン先生のお知り合いかな?

 

「おや、ホルキンスさんが来たようですね。大方城の兵士から私の帰還を聞いたのでしょうね。ああ、ホルキンスさんというのは、ここカール国の兵士長をされている方ですよ。昔はよく一緒に調練をしたものです。 ホルキンスさん、少しお待ちください!」

 

アバン先生はそうホルキンスと名乗った扉の向こうにいる人物に声をかけて席を立った。

へー、兵士長か。ということはだいぶ強いんだろうな。

 

「ポップ、あなたは先に部屋に戻って明日に備えて早めに休むと良いですよ。今日はもう瞑想はいけませんよ。休む時には休まないと。私は少しホルキンスさんと話をしておりますので」

 

「分かりました。では、ドリファンさんは旅の支度をしてくれているようですし、俺が何かつまみになりそうなものだけ作って部屋にお持ちしますよ。食堂お借りしますね」

 

「ああ、ありがとうございます、ポップ。では、お言葉に甘えますね。簡単なもので良いですからね」

 

その後、俺は食堂で簡単なお酒のつまみになりそうなものを作り、アバン先生とホルキンスさんの談笑している部屋に持って行った。

 

その時簡単にホルキンスさんに挨拶したが、ホルキンスさんという方は20代くらいのとても強そうな剣士といった雰囲気を漂わせている人だった(間違いなく接近戦では負けるな)。だけど、話してみるととても気さくそうな方で、アバン先生の事を本当に尊敬しているという雰囲気が伝わってきた。

 

ホルキンスさんには、俺より少し年上くらいの歳の弟さんがいるようで、今度会ったら是非仲良くしてやってくれと俺の肩を叩いて言った。

 

あまりお二人の会話を邪魔してはいけないと思い、俺は直ぐに退出したが、その晩は2人して随分と長く話し込んでいた様子だった。

 

アバン先生も、久しぶりに故郷の人と話が出来て楽しそうだった。フローラ女王様と会えなかったのは残念だったけど、これから迎える魔王ハドラーとの戦いの後、ゆっくり話すと良いだろう。

 

俺は、間近に迫った魔王ハドラーとの戦いを頭の中でシミュレートしながら、その日は早めに就寝した。

 

 

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