転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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45話 勇者育成コース 修行開始

~~~~修行1日目~~~~

 

デルムリン島は、美しい島だった。南国特有の植物が生い茂り、島の中央付近には煙を噴き上げる火山、そこからは綺麗な小川が海に注いでいる。

 

浜に出ると一面エメラルドグリーンの海が見える。昨日は、バタバタしていてゆっくり見て回る余裕も無かったが、俺は今日は早起きしてじっくり島の様子を見て回ってみた。

 

浜辺の方に目をやると、ダイが早速アバン先生との修行を開始していた。

 

ダイが、自分の頭の大きさほどもありそうな岩を3つも身体にくくり付けて砂浜を走っている。

 

さすがは、短期集中スペシャルコースだ。詰め込み具合が半端ない。ちなみに、俺は朝食後の訓練から合流する予定になっている。

俺は、日課にしているアバン流棍殺法の型を一通りなぞった後、ブラスさんの所に向かった。

 

「おはようございます、ブラスさん」

 

「やあ、お早うポップ君」

 

俺は、ダイの住まいである洞窟の台所に当たる所で朝ご飯の用意をしているブラスさんに声をかけた。

 

「手伝いますよ、ブラスさん」

 

「それはすまんの、ポップ君」

 

ブラスさんは恐縮しながら俺に言ったが、特に他にやることはないのでそのままブラスさんの手伝いを始める。

 

「ポップ君は、アバン殿に師事して長いのかね?」

 

「そうですね。大体1年と少しという所でしょうか。ブラスさんは、いつからこの島に?」

 

俺は、ブラスさんとそんな雑談を交わしながら一緒に朝食の準備を行った。

 

 

朝食の後、俺はダイと接近戦の訓練を行った。

 

いや、竜の騎士のDNAってすげえわ。俺は棍、ダイは木剣で互いに手合わせをしたんだけど、俺が優勢だったのは最初の30分ぐらいで、後は終始押されっぱなしになってしまった。

 

なんて言うのかな、同じ手が通じない感じなんだよな。一度かかった手には次は絶対にかからないから、俺の技の引き出しが無くなってしまうと、後は防戦一方になってしまった。

 

その後は、海に向かって氷結系魔法を放つ訓練だった。

 

俺は、特に問題なく向かってくる波を一発で凍らせることが出来たが、ダイは水割り用の氷かな? と言いたくなるような小さな氷が飛び出るだけで終わってしまった。

 

正直、今のダイに魔法の訓練は必要無いのではと思ったが、一応ダイは戦士育成コースではなく勇者育成コースを受講しているのだから、その辺りは避けて通れないのだろう。

 

 

昼食後は再び接近戦の訓練だ。もう俺ではダイの相手が出来ないので、アバン先生が相手をしている。

やはりダイは、魔法より接近戦で光るものがある。

先ほどは、もう少しでアバン先生に1本入れられるかもという惜しいところまでアバン先生を追い込んでいた。

 

そんな二人の様子を横目に見ながら、俺は少し早めに修行を切り上げて、晩ご飯の用意を始めていた。

ブラスさんが自分が用意すると言っていたが、今日だけはさせてくれと頼み込んでいたんだ。

 

そう、今日は、昨日バタバタしていて使えなかった米を使った料理を作るつもりなのだ。

 

俺が米を炊いて、同時に鍋をぐつぐつと煮詰めていると、今日の修行を終えたダイがアバン先生と帰ってきた。

 

「お帰り、ダイ。修行どうだった?」

 

俺がダイにそう聞くと、ダイはヘロヘロになった身体で、それでも嬉しそうに言った。

 

「……へへ。俺、大地斬出来たんだよ、ポップ!」

 

「おぉ! やったじゃないか、ダイ!」

俺はダイの成果に驚いた。昼間ダイが大地斬を岩に向かって放った時には、アバン先生の渡していた安物の剣が見事に折れてしまっていたが、とうとう岩の切断に成功したらしい。

 

俺はダイを褒め称えながらも、同じ初伝の技を俺は半年以上かかってようやく会得したのに、ダイはわずか1日で会得した事実に、俺とのあまりの才能の差に若干落ち込んでしまった……。

 

「ポップ。食事の用意ご苦労様です。ずいぶんと良い匂いがしておりますが、これがポップが数日前から作りたいと言っていた料理ですか?」

 

アバン先生が俺にそう声をかけてきた。そう、その通りだ。この料理が俺がずっと作りたくて出来なかった料理……。

 

「ええ。そうなんです。……さあ、丁度出来た所ですので、みんな手を洗ってきて席に座ってください」

 

俺はダイ達の住居である洞窟の中のリビングに当たる場所に料理を並べていく。

 

「ポップ。これなんて料理? 凄く変わった匂いがするね。良い匂いだけど、なんかちょっと辛そうな……」

 

「ピ、ピ、ピィー?」

 

「ふうむ。嗅いだことのない匂いの料理じゃの」

 

「これは、……以前いただいたカレー粉を使った料理ですね?」

 

ダイ達が、口々に目の前に置かれた料理について質問をしてくるので、俺は料理の説明をしてあげた。

 

「ふふふ。これこそ、インド人もびっくり、至高のメニュー。……カレーライスです!」

 

「イ、インド人? それ何人? 魔物?」

 

「ピィィィー?」

 

「インド? 聞いたことがありませんね?」

 

口々に疑問の声を上げるが、今はインドのことはどうでも良いことだ。いかん、いかん。ついテンションが高くなって、余計な事まで口走ってしまった。

 

「ま、まあ、そんなことより食べてみてくださいよ」

 

俺は、そんな皆に出来たてのカレーライスを勧める。

 

「どれどれ……。こ、これは……!」

 

「うわ、美味しいー! あっ、でも辛! 後から辛さが! でも、美味しい!」

 

「ふーむ。これは中々複雑に香辛料を混ぜ合わせておるようじゃの。実に美味じゃ」

 

良かった。皆にも好評なようだ。ダイには、若干辛さがつらいようだ。ふっ、まだまだお子ちゃまだな。さあ、俺も頂いてみよう。

 

「……うん。美味い。やはり、カレーライスは正義だ……」

 

俺は自分の作ったカレーライスを自画自賛した。今日作ったカレーライスは、正確にはシーフードカレーだ。

シーフードの具材は夕方海に生息するデルムリン島の魔物に頼んだら、直ぐに大量の伊勢エビやホタテなどの海の幸を捕ってきてくれたので、ありがたくそれらを使わせて貰った。

 

「いやー、ポップ。これは実に美味しいですね。まだおかわりはありますか?」

 

「ええ、もちろんです、アバン先生。まだたくさんありますから、いくらでもおかわりしてください」

 

俺はアバン先生に追加のカレーライスをよそおいながら、言った。

 

「お、俺も! 俺も頂戴、ポップ!」

 

「ああ、良いぜ。育ち盛りなんだから一杯食えよ、ダイ」

 

ダイも辛さに汗を吹き出しながらも、カレーライスのおかわりを求めてくるので、山盛りで追加してやった。

ふふふ、この味が分かるとは、一つ大人の階段を上ったな、ダイ。

 

 

結局その晩は、皆でお腹がはちきれるほどカレーライスを堪能して、就寝した。

 

~~~~修行2日目~~~~

 

この日も朝からダイは、アバン先生と模擬戦を行っている。アバン先生も、ダイには魔法より接近戦を中心に鍛えた方が良いと判断したようだ。

まあ、魔法なら俺が大抵の魔法を使えるからな。俺としても、ダイに接近戦で上達してくれると嬉しい。

 

ダイは、ずいぶんと大地斬を使いこなし始めたようだ。闘気剣は、適切なタイミングで適切な場所に打ち込まないとその威力が半減する。

 

俺がしばらく地竜閃を使いこなせず、四苦八苦していたのはそれが理由だ。だけど、ダイはそれらを肌感覚で着実に掴み始めている。

 

本当に大したものだ。

 

俺は、ダイとアバン先生が訓練している側の木の下で、静かに瞑想して魔法の訓練を行っていた。うかうかしていると、直ぐにダイに追い越されてしまう。

原作で、ポップが着実に上達するダイを見てそわそわしていた気持ちが俺には良く分かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ふー、ずいぶん大地斬を使いこなせるようになりましたね。たった、2日間で見事な進歩ですよ、ダイ。ちょっと休憩しましょう」

 

アバンは、そばに置いていたタオルを手に取り、自身の汗を軽く拭き取った。

 

「ありがとうございます、アバン先生。 ……? あの、アバン先生。あれなんですけど、ポップは一体何をしているんですか?」

 

休憩と聞いたダイはその場で座り込んだが、不思議な光景を見て思わずアバンに声を掛けた。

 

「あれ? ああ、あれですか。あれは、ポップの魔法の修業ですよ。魔法使いは、よく修行の一環として瞑想を行います。瞑想をすることで、自己の魔法力を高めたり、魔法威力を向上させることが出来るんです」

 

アバンは、ダイが指し示す方向に目を向け、そうダイに返答をした。

 

「……そうなんだ。でも、凄いなポップ。ただ目をつむって座っているだけなのに、少し空中に浮いてる……」

 

「ふふ。あれはポップが集中して瞑想している時の癖のようなものですね。本人はそのことに気が付いていないと思いますよ。おそらく、有り余るほどの魔法力が無意識に身体全体から放出され、そのためにほんの少し空中に浮いているんだと思います」

 

「……癖。集中して瞑想すると空に浮かぶなんて、すごい癖だね、アバン先生」

ダイは、そのアバンの返答に驚きながらつぶやいた。

 

「ねえ、アバン先生」

 

「何ですか、ダイ?」

 

「今日の修業を始める前に、魔法はポップが補ってくれるから、あなたは剣技を鍛えましょうって言ったと思うんだけど、ポップはどうして俺のために魔法を使ってくれるのかな?」

 

そのダイの問いに、アバンは少し考えた後、口を開いた。

 

「それは、……ポップがずっと勇者のための魔法使いになる、と口にしてきたからですよ」

 

「……勇者のための魔法使いになる? ポップがそんな事を?」

 

「ええ、そうですよ。ポップは、本来ならとっくに私の弟子を卒業して賢者として独り立ちしていてもおかしくない実力者です。それがこうして今でも私の弟子として行動を共にしていたのは、彼が自身のパートナーとなる勇者を探していたからですよ。つまり、ダイ。あなたの事です」

 

「ポップが俺を探していた? ……でも、俺なんかがポップのパートナーで良いのかな? ポップはあんなにすごい威力の魔法を軽々と使うのに。ポップなら、俺なんかよりずっと良いパートナーが見つかりそうなものなのに……」

 

ダイは、ポップの方を見つめながらそう口にした。ダイは昨日ポップと接近戦の稽古をしたが、最初はポップの手数の多さに苦戦を強いられたが、次第にその戦い方に慣れて、最後にはポップを圧倒する事が出来た。

 

だけど、ダイはそれでポップを上回ったなどと到底考えることが出来なかった。

 

ポップが本気を出したら、つまり魔法を使ったら、自分なんてあっという間に負けてしまうということは肌感覚で理解していたから。

 

アバンは、ダイを優しい瞳で見つめ、口を開いた。

 

「……そうですね。確かに現時点では、ダイはポップのパートナーとしてはレベル差がありすぎるかもしれませんね」

 

ダイはアバンを振り返り、予想していた答えだったことに思わずうつむいてしまった。

 

そんなダイを見て、アバンはさらに口を開く。

 

「……ですが、それがなんだというのですか、ダイ?」

 

その言葉に、ダイが顔を上げる。

 

「今ポップに実力が及ばないのなら、追いつけばいいだけの事です。あなたには無限の可能性があります。その可能性を引き出すために私が教師をしているのです。そして、いつかあなたが『魔法使いのための勇者になる』と、ポップに宣言してあげたら良いのですよ」

 

そう言って、アバンはニコッと笑顔を作りダイにVサインをして見せた。その様子にダイは思わず笑みを浮かべて言った。

 

「……うん。そうだよね。いつか俺がポップに、ポップのための勇者になるって言ってやれるように強くなったらいいんだよね」

 

「ええ、その通りです。あなた達は、互いに弱点を補って強くなっていくと良いんですよ。それがパーティーというものです」

 

「うん! ありがとう、アバン先生! さあ、続きをやろうよ、アバン先生! 俺、もっともっと強くなるから!」

 

ダイは勢いよく立ち上がり、アバンに修行の続きを迫る。

 

「その意気ですよ、ダイ。それでは、意気が揚がったところで、私のスーパーな必殺技を披露するとしましょうか」

 

アバンはにやりと笑い、ダイにそう声を掛けた。

 

「え!? スーパーな必殺技!? 見たい見たい。どんな技なの、アバン先生!」

 

「ふふふ。この技は下手に受けると、木の枝とは言え大怪我を負う可能性がありますからね。しっかり集中していてくださいね」

 

そう言って、アバンは木の枝を逆手に構えて、ダイに向かい合った。

 

「……むううん! ――アバンストラッシュ!」

 

アバンが、逆手に構えた木の枝をダイに向かって振りぬくと、すさまじい衝撃波がダイを襲った。

 

「――うわ!」

 

自身を襲った衝撃波によって、ダイは海に吹っ飛び派手に水しぶきを立ち上げた。ゴールデンスライムがそのダイを心配して、「ピーピー」と叫びながらその上空を旋回する。

 

その後海から顔を出したダイは、自身を吹っ飛ばした先ほどのアバンの技を早く自分も使いこなしたいと思い、かすかに笑みを浮かべていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「うーん、いやー食べた食べた。ブラスさん、ご飯すごく美味しかったよ。ありがとうございました」

 

俺は、今日の晩御飯を準備してくれたブラスさんにそうお礼を言った。実際、今日の晩御飯は猪肉のステーキがメインのガッツリ系のご飯で、とても食べごたえがあって美味しかった。

 

「なんのなんの。ポップ君も育ちざかりじゃからの。いっぱい食べんといかんよ。……こりゃ、ダイ! 相変わらずニンジンを残しおって。ニンジンも食べんと、強い勇者にはなれんぞ!」

 

「もう、じいちゃんは相変わらず口うるさいなー」

 

ブラスさんとダイのやり取りに、俺とアバン先生は思わず笑い声をあげる。

 

 

さて、ご飯も食べた事だし、今日のメインイベントをやりに行くとするかね。俺は、ダイとアバン先生に声を掛けた。

 

「アバン先生、ダイ。今日はお風呂を用意したから、一緒に入りに行きませんか」

 

「お風呂? それって何、ポップ?」

 

「うん? ダイはお風呂を知らないのか? 普段身体を洗う時、どうやっているんだ?」

 

「身体を洗う? それなら、昨日みたいに、川に入って身体を洗っているよ」

 

ダイは、何を当然のことを聞くんだろうという表情で俺の問いに答える。

 

マジか。そりゃー、この島に給湯器付きの湯船があるなんて思っていなかったけど、まさかそんな自然児みたいなことを毎日していたなんて。

いや、実際ダイって自然児そのものだからあながちおかしいという訳でもないか。

 

これは、是非ダイに、温かい湯につかる楽しさを味わせてあげないとな。

 

「お風呂っていうのは、温めたお湯の中に入って、1日の体の疲れを取るものだよ。論より証拠だ。もう準備できているからよ、これから行こうぜ。あ、ブラスさんも良かったらどうですか?」

 

「ポップ。先ほどどこかに行っていたようでしたが、お風呂を作っていたんですか?」

お風呂に入った経験のあるアバン先生が俺にそう問いかける。

 

「ええ。昨日は時間が無かったから水で流しただけでしたからね。今日はじっくり皆でお湯につかりたいと思って、大きめの湯船を用意していますよ」

 

「それは楽しみですね。ダイ、せっかくポップが用意してくれているのです。一緒に行きましょう。ブラスさんも、是非」

 

「う、うん」

 

「儂まで良いんじゃろうか?」

 

「もちろんですよ、ブラスさん。お風呂はみんなで入ると、より楽しいですから」

 

俺はブラスさんにそう返事をして、俺の作ったお風呂のある川近くまで皆を案内した。

 

 

 

 

「……これは、気持ちがいいのー」

 

「うん、すっごく楽しい! これがお風呂なんだね!」

 

ブラスさんは、湯船につかりながら本当に気持ちがよさそうにくつろいでいる。そして、ダイはと言えば、広い湯船の中をバシャバシャと泳いで実に楽しそうだ。全く、1日中身体を動かしているだろうに、元気なことだ。

 

「ポップ。随分と大きな湯船を作りましたねー」

 

アバン先生も頭にタオルを乗せ、実に気持ちよさそうにくつろいでいる。……自慢のメガネは湯気で真っ白だけどな。

 

「ええ。せっかくなんで、みんなで入れるように大きめにしました」

 

この湯船は、俺が泥沼呪文(ドロヌーバ)鉱石抽出呪文(トンネラー)といった手持ちの魔法を組み合わせて作ったものだ。

 

大きさは、5m四方程度もある。オーザムで避難施設を構築するために毎日のようにこれらの魔法を使ったことで、この程度の大きさのものなら目を瞑っていても作れるようになった。

 

そして、湯船を作った後は最後に熱湯呪文(メラータ)の魔法で熱湯を注いで完成さ。

 

「魔法ってこんな使い方もできるんだね。俺、魔法って敵を倒したり怪我を治したりするぐらいしか思っていなかったよ」

 

ダイがプカプカと湯船に浮かびながら、そんな感嘆の声をあげる。

 

「はは。世間一般的にはそう思っている人が多いと思うよ。……だけど、魔法ってさ、もっと自由なものだと俺は思うんだよ。戦いだけで魔法を使うのってもったいないって言うかさ、もっと生活を便利なものにするために使う魔法もあっていいと思うんだよ」

 

俺は、ダイに日頃から思っている魔法についての考えを口にする。

 

「ふふふ。ポップの魔法に対するアプローチはかなり異質だと思いますが、私はその考えに賛同していますよ。マトリフと会えば、実に気が合う事でしょうね」

 

アバン先生がそう言ってくれる。マトリフ師匠か、俺も早くお会いしたいよ。色々な魔法を覚えた俺だが、それでもまだあの人から学びたい魔法はたくさんある。

 

「マトリフ殿……ですか。聞いたことのある名ですな。かつてアバン殿と共に魔王と戦った世界一の魔法使い、でしたかの」

 

ブラスさんが、マトリフ師匠をそう評する。

 

「へー。そんなすごい人がいたんだ。……でも、俺にとってはポップが世界一の魔法使いだよ。だって、こんなすごい事を簡単にしちゃうんだもん」

 

ダイが再びバシャバシャと泳ぎながら、うれしいことを言ってくれる。

 

「ふふふ。確かに、ポップの魔法力と柔軟な発想は世界一と言ってもいいかもしれませんね」

アバン先生まで、俺を持ち上げてくるよ。

 

「やめてくださいよ、アバン先生まで。……ところで、アバン先生。明日はダイとどんな修行をする予定なんですか?」

 

俺は、くすぐったい話題を変えようと、アバン先生に明日の予定を聞いてみた。

 

「そうですね。ダイはもう大地斬は完全に身に付けましたからね。明日からは、アバン流刀殺法の中伝にあたる「海波斬」の修業に移る予定です」

 

……やはりな。実際の所、俺はこの話をするために今日みんなで風呂に入る機会を作ったともいえる。

 

「え、もう次の技を教えてくれるんですか、アバン先生。海波斬って、どんな技なんですか?」

 

「海波斬とは、アバン流刀殺法最速の剣技であり、実体のない炎やエネルギー体を攻撃するのに適した技ですよ、ダイ」

 

「最速の剣技!? うわー、早く覚えたいなー」

 

ダイは、アバン先生が言った最速の剣技に、好奇心を抑えきれない様子だ。

 

「アバン先生。実体のない炎やエネルギー体を切るということは、攻撃魔法をダイにかける役が必要なんじゃないですか? 良かったら、俺がダイの修業相手を務めますが」

 

俺は、アバン先生にそう提案してみた。

 

「そうですねー、確かにその役をポップがしていただけるなら、私はダイへの手ほどきに集中できますね。では、お願いできますか、ポップ?」

 

「もちろんです、アバン先生。ダイ、明日は俺が修行の相手を務めるからな。頑張って、海波斬を覚えろよ」

 

「うん、ありがとう、ポップ! 俺頑張るよ!」

 

……良かった。どうにか、明日のダイの修業の相手役を務めることになった。そう、俺の目的は最初からこれだったんだ。

 

明日、ダイが海波斬を覚えるということは、俺の記憶が確かなら海波斬を習得した直後に、魔王ハドラーの襲撃があるはずだ。

 

原作では、アバン先生はダイの修業相手としてドラゴラムの呪文を使っていて、そのせいで大幅に魔法力を消耗した状態で魔王ハドラーと対峙することになった。

 

だけど今回、俺がダイの修業相手を務めることで、アバン先生は万全の状態で魔王ハドラーと対峙できるはずだ。

 

明日の戦いで、絶対にアバン先生を失ってはならない。アバン先生は、これからの魔王軍との戦いに絶対に必要な人だ。

 

俺は、湯船の中で密かに拳を握りしめていた。

 

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