転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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55話 妖魔司教の暗躍

 

~~~ロモス近郊 魔の森 深部~~~

 

「ぐおおー! 不覚!! あの小僧ども! 良くも俺にこれほどの傷を!」

 

魔の森の深部にある洞窟内に建造された、魔王軍『百獣魔団』の基地内で手負いのクロコダインが激高していた。

 

クロコダインは、昨日アバンの使徒と呼ばれる人族と戦闘を行い、深手を負わされ退却を余儀なくされたのだった。深く切り付けられた彼の左腕は、未だに傷が癒えていない。

 

クロコダインにとって誤算だったのは、勇者と呼ばれるダイという名の人間に加えて、その仲間にポップという魔法使いがいたことだった。彼の上役とも言える魔軍指令ハドラーからは、その魔法使いの事を聞いていた。しかし、クロコダイン自身が戦士という事もあり、後方から魔法を放つだけの吹けば飛ぶような人間について軽視していた事は否めなかった。

 

しかし、先の戦闘では、その魔法使いの知恵と多彩な魔法に翻弄された結果、敗れたのだとクロコダインは悟っていた。

 

あの魔法使いは、勇者から引き離さねばならない。そうしなければ、ただでさえ強力な勇者の力が何倍にも跳ね上がってしまう。女の方はどうでも良い。あのおかしな飛び道具も、あの程度の魔法しか発しないのであれば歯牙にも値せん。

 

しかし、どうやって……。クロコダインは思案をするが、有効な解決策が思いつかない。

 

そんな時、突如洞窟内に聞きなれない足音が聞こえてきた。クロコダインは、足音のする方向に目を向ける。

 

「キィーヒッヒッヒ。ずいぶんと荒れておるのう、獣王クロコダインよ」

 

甲高い耳障りな声を上げて現れたのは、背の低い醜悪な外見の魔族だった。その魔族の名は、ザボエラと言った。魔王軍六軍団の一つ、『妖魔師団』を束ねる魔族だった。

 

「ザ、ザボエラ! 貴様、何故ここに!?」

 

「ヒーヒッヒッヒ。そんな事、決まっておろう。クロコダイン、お前に策を授けてやろうと思ったのよ」

 

「何!? 策だと! ふざけるな、貴様ごときの手助けなど必要ないわ!」

クロコダインは、このザボエラという男の戦い方を知っていた。

 

決して自らの手を汚そうとせず、敵を卑怯極まりない手口で倒すこのザボエラという男の戦い方は、クロコダインが絶対に認める事が出来ないものだった。

 

「ヒッヒッヒ。そのような事を言っていて良いのかの? 見ておったぞ、先の戦闘。敵は、ダイとか言う小僧に加えて、ポップなる魔法使いもいたではないか。さすがの天下のクロコダインも、あの二人を同時に相手にしては分が悪いのではないかの?」

 

「ぬっ! ――くっ。そ、それは……」

ザボエラのその言葉は図星であった。

 

「まあ聞くがよい、クロコダイン。儂がここに来たのは、ハドラー様の指示なんじゃよ」

 

「な!? ハドラー殿が!?」

 

「そうじゃ。ダイだけならともかくあの魔法使いまでとなると、いかなお主でも不覚を取るかもしれんとおっしゃられての。蛇の道は蛇というじゃろ? あの魔法使いの事は、魔道を究めた儂に任せておくとよい」

 

「ぬ! く、くく……。し、しかし……!」

 

ザボエラは、自分の言葉がクロコダインの心の内を確実に捉えていると確信し、満足げな表情で言葉を続ける。

 

「……あのポップとかいう小僧、気になったので儂の方で調べてみたわ。すると、あやつの出身はギルドメイン大陸ベンガーナ国のランカークスという名の村じゃったぞ」

 

「……それが、どうしたというのだ、ザボエラ」

 

「ヒッヒッヒ。分からんか? ランカークスという村は、ギルドメイン大森林の直ぐ近くじゃ。ほれ、おぬしの探しておったライオンヘッドも、その森に生息しておらなんだか?」

 

「なっ!? そ、それでは、まさかあの魔法使いがライオンヘッドを!?」

 

クロコダインは、驚愕の表情を浮かべてザボエラを見下ろす。

 

「おそらく間違いあるまいて。儂が調べたところ、5年ほど前に彼の地でライオンヘッドの進化種バクーモスが討たれたという事じゃ。しかも、討伐したのはまだ小さな童じゃったとか。どうじゃ、あの小僧がやったとは思わんか?」

 

クロコダインは、ザボエラの言葉を聞いてわなわなと震えている。自身が右腕にと思いずっと探していたライオンヘッドを、あの魔法使いが倒しただと? ありえない話とは思わなかった。先日のあの魔法使いの戦闘能力からして、十分にあり得る話だと思った。

 

そんなクロコダインを余所にザボエラは更に話を続ける。

 

「儂も、あの魔法使いには煮え湯を飲まされておるのじゃよ。1年ほど前にベンガーナ攻略の楔としようと部下を1人派遣しておったのじゃが、いつの間にか壊滅させられておったわ。口惜しい事よ。おそらくそれも、あの魔法使いが関係しておると儂は考えておる」

 

そう言いながらも、ザボエラは失った部下について髪一つも哀悼の念は抱いていなかった。彼が考えていた事はただ一つ。

 

『あの魔法使いを研究材料として手に入れたい』

 

それだけだった。

 

ザボエラは、先の戦闘でポップが行使した数々の魔法にいたく興味を持った。

 

防御力変動呪文(スクルト)防御力変動呪文(ルカニ)敏捷力変動呪文(ピオリム)……。

 

いずれの魔法も、15年前の大戦時はともかく、現在の人間界ではほとんど使用する者のいない魔法だった。更に、おそらく氷系呪文(ヒャダルコ)だと思うが、見た事のない氷結魔法に突風を生み出す魔法。

 

あの一戦を見ただけで、あの魔法使いにはまだまだ魔法の引き出しがあるとザボエラは見ていた。

 

あの魔法使いなら、儂の超魔生物に関する研究の良いモルモットになる。既にザボエラは、あの魔法使いを手に入れた後の研究内容を想像し悦に入っていた。

 

「そういうわけで、儂もあの魔法使いには因縁があるわけよ。じゃから、あの魔法使いへの対処は儂に任せておくがよい。それで、ダイという小僧の方じゃがの、ここは一つ、儂が策を講じる故、協力しようではないか?」

 

クロコダインは、このザボエラの申し出に消極的ながら承諾をするが、この後ザボエラから聞いたダイに対する策のあまりの非道さに声を荒げた。

 

しかし、もはやこのザボエラの手を取る事でしか、自身の軍団長の地位を安寧たらしめるものは無いと判断し、最終的には自身の武人としての誇りに蓋をしてその手を取ったのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『■■様、お見事です!』

ドラゴンの首を切断した少年の背後から、そのような声がかかる。これで、この日3体目のドラゴンの討伐となる。周囲には、自分以外にも多くの兵士が存在し、皆が侵攻してきた魔物と対峙している。

 

だが、少年は不満だった。その理由は、今日は必ず敵の指揮官の首を取ると決意して■■の町を出発していたからだった。どこにいる、指揮官は? 指揮官を探して首をめぐらす■■の前に、一人の壮年の男が姿を現した。

 

『……驚いたな。私の軍団がこの戦線を抜けずにいた理由が、まさかこのような少年にあったとは……』

 

その男は顔に奇妙な飾りをつけており、背中には柄がドラゴンを模した形状をした剣を背負っていた。

 

少年は、その男を見た瞬間から臨戦態勢に入った。一目見ればわかる。目の前の男が尋常ならざる腕の持ち主だと。

 

『お前は誰だ! 僕は■■国戦士団団長 ■■だ!』

少年は、ともすれば萎縮してしまいそうになる自分自身を鼓舞するために、目の前の男に声を張り上げた。

 

『そうか……。いかに腕が立つとはいえ、まだ子供。場合によっては見逃してやらん事もなかったが、一国の団長という地位にあるのならそうもいかんな。少年よ、人間に生まれてきた不運を嘆くのだな』

 

『――何を!』

 

『私の名は竜騎将バラン! お前達人間に宣戦布告した、魔王軍六大軍団 そのうちの一つ超竜軍団の団長よ!!』

目の前の男はそう言い放ち、背中の剣をスラリと抜き放った。

 

『くっ……!』

 

少年は、目の前のバランと名乗った男から発せられる凄まじい圧に気圧された。初手から全力でいかなければやられる。そう感じた少年は、自身の握りしめた剣に全力で闘気を込めていく。

この技さえ決まれば、どのような相手だろうと勝てる。それほど少年はこの技に絶対の自信を持っていた。

 

『……ほう』

バランがほんの僅かに感嘆の声をもらす。それは、自身がこれまでに戦ってきた敵の中で、闘気剣を使いこなすレベルの戦士は両手で数えることが出来る程度でしか無かったからだった。

 

真っ直ぐな目をしている。自分の子も生きていれば、このような目をする戦士に育ったのだろうか。バランは、既に失ってしまった自分自身の拠り所とも言うべきだった愛しい存在を思いだしていた。

 

『はーー! 喰らえ!! ――ノーザン・グランブレード!!』

 

少年は大きく剣を振りかぶりバランに突進する。その手に握られた剣は、まばゆいばかりの光を発していた。

 

バランはその攻撃に対して微動だにしていない。少年はそれを油断から生じた好機と見てとり、一撃で仕留めるべくバランの首筋から入りわき腹に抜けるよう剣筋を調整し、全力で打ち込んだ。

 

――ズガーン!!!

 

凄まじい衝撃音が戦場に響くと同時に、闘気剣が炸裂した結果の余波とも言うべき爆風が少年とバランを中心に広がっていく。

少年の背後で魔物と戦っていた兵士達も、その衝撃音と凄まじい爆風に思わず戦いの手を止めて、自分達の誇る隊長を見つめる。

 

少年は勝利を確信していた。この技でこれまで倒せなかった敵はおらず、しかも完全に無防備な所に剣が入った。どう考えても、バランなる敵の指揮官はその身体を両断されているはずだった。

 

……爆風によって巻き上げられた土煙が晴れる次の瞬間までは。

 

『馬鹿な!? 僕の闘気剣が……! ど、どうして……!?』

少年の目に映った光景は、何故か粉々に砕けた剣と、完全に霧散した自身の闘気だった。

 

驚愕の表情でバランを見ると、バランの周囲には薄い闘気の気流のようなものが微かに見えた。

 

『少年。お前を強者と認めよう。だが、所詮それは人族の中での話。竜の騎士には通じぬ』

 

その言葉と共に、バランは少年に対して剣をただ一振りした。

 

鮮血が宙を舞った。

 

『……ガフッ!』

 

少年は口から吐血し、ゆっくりとその場に膝をついた。

 

既に少年が致命傷を受けていることは明らかだった。バランは少年への関心を無くし、自軍に対して攻勢に出るよう指示を発した。

 

『さあ、ドラゴンよ! 立ちふさがるもの全てを蹂躙せよ! 超竜軍団、前進!!』

 

 

『■■様! 貴様、良くも■■様を!  ――! ぐぁああー!!』

 

バランは、自身に向かってくる兵士達をただ無造作に切り捨てていく。

 

少年は、背後から聞こえる仲間の兵士の断末魔を耳にしていた。しかし、助けに行きたくとも地面に膝をついた姿勢のまま少年は一歩も動くことが出来なかった。

腕一本動かすことが出来ない。身体が徐々に冷たくなっていく事を少年は自覚していた。

 

ここで死ぬのか……。父さん、すみません。僕は国を救う勇者にはなれなかったようです。

 

勇者……。

 

その言葉が頭に浮かんだ少年は、半年前の勇者との出会いを思い出していた。ただ、あの時は勇者と邂逅したのは一瞬だった。どちらかと言えば、勇者の弟子の方が少年の記憶に色濃く残っていた。

 

……誰だったっけな、あいつ。

 

少年の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

そこは、日の指す所の一切ない牢獄だった。広さは3m四方ほどか。正面には鉄格子、周囲の壁は固い岩盤がむき出しになっている。

 

その牢獄に一人の少年が囚われていた。少年の歳は15歳前後と思われた。

 

少年は、何故自分がこのような場所に囚われているのか理解が出来ないでいた。自身の名前が思い出せない。過去を思い出そうとすると、途端に少年を頭痛が襲った。

 

自分の身体を見下ろすと、いつの間にやら身に覚えのない黒い鎧を身にまとっていた。違う、自分はこんな鎧を身に着けたことは無い。自分が身に着けていた鎧は……うっ! 再び少年を頭痛が襲った。

 

少年は、先ほどまで不思議な夢を見ていた。夢の中で少年はドラゴンと戦っていた。しかし、何故か自身の名前や国の名前が聞き取れなかった。まるでその瞬間だけ雑音がかかっているかのように。

 

少年がこの牢獄で意識を取り戻した時、既にこの牢獄内には香炉のようなものが焚かれていた。甘い吐きそうな匂いがする。少年はその匂いに顔をしかめた。

 

 

 

「ザボエラ様、良くお越しになりました」

 

「ヒッヒッヒ。リンガイアで拾った道具が気になってのう? 首尾の方はどうなっておる?」

 

「はっ。捕えてからこれまで魔香を絶やしておりませんので、そろそろ自分が何者か分からなくなっている頃でしょう。刷り込みにはちょうどいい時期かと……」

 

「そうか、そうか……」

 

少年が鉄格子の向こうから聞こえてきたそんな会話に耳を澄ませていると、その声の主が暗闇の向こうから現れた。

 

「ザボエラ様。仰せのとおり昨日まで蘇生液につけておりましたので、怪我の方は既に回復しております」

 

「どれどれ? ほう……。思った通り頑強そうな身体をしているではないか。これならその鎧の実験台に使えそうじゃの。ヒッヒッヒ……」

ザボエラと呼ばれた背の低い魔道士の出で立ちをした男が、少年を鉄格子の向こうから値踏みする。少年はその様子を、ただ虚ろな目で見つめていた。

 

「ヒッヒッヒ。さて、お前は自分の名前を憶えておるか? ん?」

 

「名前……。分からない……。あなたは僕の名前を知っているのか?」

 

「知っておるとも。お前の名は、ザイード。儂の大事な大事な息子よ。ヒーヒッヒッヒ」

 

ザボエラは、とても大事にしているとは思えない目で、鉄格子越しにザイードと名付けた少年を見つめる。

 

「ザイード……。それが僕の名前……。そして、あなたが僕の父さん」

ザイードと名付けられた少年は、ようやく最後のピースが見つかったかのように、すっきりした表情を浮かべてザボエラを見つめ返した。

 

「そうじゃ、儂がお前の父じゃ。これからは儂のためにその命の限り尽くすのじゃぞ。ヒーヒッヒッヒ」

 

ザボエラは首尾よく少年に刷り込みができた事に満足して、甲高い声で笑い声をあげた。

 

そして、後少しでもう一人、魔法の扱いにたけた実験材料を手に入れられるかと思うと、その笑い声も止まらなかった。

 

「これで儂の研究も一段と完成に向けて進むじゃろうて……。 ヒーヒヒヒ……」

 

 

 

 

 

~~~~ベンガーナ王国 ランカークス村~~~~

 

side スティーヌ

 

 

「お買い上げいただき、ありがとうございました。またお越しください」

 

私は、ロングソードを購入していった冒険者風の戦士にそう声をかけた。最近ランカークス村周辺に出没する魔物の行動に変化が発生している。以前は個別に行動することの多かった魔物が、最近では集団で出没するようになった。

 

その不穏な変化のためか、最近では武器は陳列すればするほど売れるようになっている。だけど、私はそれを素直に喜ぶことが出来なかった。

 

私達の息子ポップが、ランカークス村を旅立ってはや1年が過ぎた。あの子はもう15歳になっているはず。もうだいぶ背も伸びただろうか? 旅立つ時は私と同じくらいの身長だったけど、もう追い抜かれているはず。会ってみたい……。

 

あの子からは2、3ヶ月に一度の頻度で手紙が届けられるから、無事で旅を続けている事は知っていた。その手紙には、ベンガーナ国を出国した後、テラン国、オーザム国、リンガイア国を旅している事が書かれていた。

 

そして、今から1ヶ月ほど前に届いた手紙では、これからアバン様の故郷であるカール王国に向かうといった内容が書かれていた。

 

手紙を読む限り、特に危ない事をしている様子は見られなかった。ある町ではたこ焼きという新しい食べ物を作ったとか、とても偉い方と鹿狩りをして楽しかったとかそんな事しか書いていない。

 

でも、私はあの子の旅がそれだけで済んでいるはずはないと思っていた。あの子はとても優しい子だから、多分私やジャンクが心配しないように本当に危ない事は書いていないのだろう……。

 

だから私は、今ランカークス村周辺で起こっている不穏な気配が、世界規模で発生しているかもしれないことを心配していた。あの子の周辺でも何か危険なことが迫っていないかと……。

 

 

私がそんな事を考えながら、いつものように帳簿に売り上げを記入していると、『チリンチリン』という音と共に店のドアが開いた。

 

「やあ、スティーヌさん。特に変わりはないかい?」

 

現れたのは、このランカークス村の自警団で隊長をされているライナー隊長だった。

 

ポップがランカークス村にいた時、ライナー隊長にはポップがとてもお世話になった。主人のジャンクに言わせると、ポップの方がお世話をしていたんだと言っていたけど、私はそれは違うと思っていた。

 

ライナー隊長は、とても経験豊富な方だ。その豊富な知識を、惜しげもなくポップに教えていただいていた事を私は知っていた。ポップもそんなライナー隊長の事をとても慕っていたし、私もそんなライナー隊長にとても感謝していた。

 

「ええ、特に変わりはないですよ、隊長さん」

 

ライナー隊長は、こうして時折私達の様子をうかがいにやって来てくれる。もちろん私達の家だけではなく、他の家々に対しても同じことを行っている。隊長の、『村を守る』という責任感の強さに、私はいつも頭が下がる思いでいた。

 

ジャンクも口ではああ言っているけれど、心の底ではライナー隊長を始めとする自警団の皆さんの事を頼りにしている事を私は知っている。何故なら、ジャンクはいつも自警団の方に下ろす武器は絶対に売り切れないよう確保しているし、その値段もほとんど利益が出ないくらいの値段で売っているからだ。

 

「それなら良かった。……ポップは今頃どの辺りを旅しているんだろうな?」

ライナー隊長はこうして時折、ポップの近況を私達から聞きたがる。ふふふ、ライナー隊長にとって、ポップは弟分のように思われているみたいで、私はそれをいつもおかしく思う。

 

「そうですね……。手紙は届くのが遅いですからね。今頃は、カール王国も出国しているのかもしれませんね」

 

「そうだな。まあ、あいつの事だから、きっと行く先々で何かしらやらかして回っていると思うんだがな……」

まあ、私達のポップをそんな風に言うなんて……。でも、可笑しいわ。私もライナー隊長のその言葉に否定できないところがあると思ってしまった。

 

「くすくす……。そうですね。でも、無事でいてくれたら、私はそれだけで十分です」

 

「まあ、そうだな。確かにそれだけで十分だな。ああっと、スティーヌさん。俺達自警団は、明日から1週間ほど隣町まで隊商の護衛に行く予定なんだ。ちょっとその間、村の警備が手薄になるから、家の戸締りなんかはしっかりとやっておいてくれよな。ジャンクにもそう伝えておいてくれ」

 

「分かりました。お気を付けて行ってらしてください」

 

ランカークス村の自警団は、周辺の町でもなかなか見られないほどの人材が揃っているらしい。

だから、この付近で商売をしている隊商の皆さんからも、よく指名で護衛依頼が入ることがある。

 

隊長さんとしては今の時期は村の警護に専念したいらしいけれど、隊商の護衛もこなさないと、村に届けられる物資の量にも影響するため、それはそれでとても重要な仕事らしい。

 

私はライナー隊長を見送って、隣の工房で剣を打っているジャンクに先ほどのライナー隊長の話を伝えに行った。

 

 

 

 

 

その4日後の事だった。初めて見るお客さんが、来店されたのは。

 

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」

 

 

「ヒッヒッヒ……。探し物ならもう見つかったわ……。ヒーヒッヒッヒ……」

 

……え? 私が覚えているのは、この直後に強い光が私を襲ったという事だけだった……。

 

 

 

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