転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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70話 バルジの島への再突入

「なるほどな。話は分かった……。だが、俺はお前達に力を貸すつもりはねえ。どうせ力を貸しても、危機が去ったらまた平気で恩を忘れるに決まっているからな」

 

あの後俺達は、マトリフ師匠の住まいである洞窟の中で状況を説明したが、原作通りマトリフ師匠は俺達に協力的ではなかった。

 

しかし、そのマトリフ師匠の言葉にダイが反発する。

 

「そんな事ありません! 自分の事ばかり考えている人間が全てじゃありません! アバン先生の仲間だった人なら、それが分かるはずです!」

 

ダイがマトリフ師匠を、その透き通るような純粋な眼差しで見つめる。マトリフ師匠は、ダイのその透き通るような青い瞳を見つめられ、息をのんでいる。

 

……分かるよ、マトリフ師匠。俺も以前その瞳に救われたことがあるから。ダイのあの澄んだ眼差しに見つめられると、目が覚めるというか、頭が洗われるような気がするんだよな。

 

何なんだろうな、あれ。(ドラゴン)の騎士の力? いや、違う気がする。多分だけど、バランに見つめられたって気持ち悪くなりこそすれ、頭が洗われるような事にはならないと思う。ダイにしか備わっていない、純粋な何かのような気がする。

 

全く、俺が女だったら思わずダイに惚れてしまう所だ……。

 

「私からもお願いします。マトリフ殿。これまでのパプニカ王国のマトリフ殿への振る舞いを、パプニカ王家を代表して謝罪いたします。どうか、私達に力を貸していただけませんでしょうか」

 

レオナ姫もマトリフ師匠に頭を下げた。見事なものだな。レオナ姫って俺より1歳年下の14才だろうに、既に為政者としての立ち居振る舞いを取るべき時に取れている。

 

「謝罪の話はもう、どうでも良いんだよ。別にお前やその親父に、何かされた訳じゃあないんだからな。しかしお姫さんよ、言っちゃあ何だが、その囚われの人間っていうのは、あんたにとっちゃあただの臣下な訳だろう? 何だってわざわざ敵の待ち構えている所に向かう必要があるんだ?」

 

このマトリフ師匠の問いかけに、アポロさんはグッと唇を噛みしめて、エイミさんは顔を俯かせる。

2人の様子をチラッと見ながら、レオナ姫はそのマトリフ師匠の問いかけに答える。

 

「確かに、氷漬けになったマリンは私にとってただの臣下に過ぎません。ですが、ただの臣下でも私が心から信頼を寄せている臣下です。私達は、パプニカ王国を魔王軍の手から取り戻そうとしているのです。そんな私達が臣下1人助け出すことができなくて、どうして国を取り戻すことができましょう?」

 

「へっ。おためごかしな言葉は良いんだよ。お前は為政者だろう。為政者なら国のため、あるいは自分のために、時には何かを切り捨てなければならん時だってあるはずだ。今がそうだとは思わねえのかよ?」

 

……厳しい。厳しいな、師匠。父を亡くしたばかりの14歳の少女に放つ言葉では無い。とてもではないが、先ほどマァムのお尻を撫で回していた人間の放つ言葉とは思えない。

 

しかし、レオナ姫はその詰問にも堂々と答えた。

 

「確かに、為政者なら時には何かを切り捨てなければならない時もあるでしょう。ですが、私は今がその時ではないと信じています。何かを切り捨てる……。それは、ありとあらゆる手段を講じて、それでもどうにもならない時にとる、最後の選択でなければなりません」

 

マトリフ師匠は、そのレオナ姫の言葉を聞いた後、俺達アバンの使徒、いや、俺の顔を見て今度は俺に問いかけた。

 

「おめえらは、どうなんだ? お前達がアバンの野郎の仇を取ろうとしているのはさっき聞いたが、バルジの島にはその仇はいねえんだろう? この国の人間でないお前達が、ただのパプニカ王国の一臣下である女を助けにいく必要は、無いんじゃないのか?」

 

……マトリフ師匠の言うことも分かる。氷漬けになったのがレオナ姫だったならともかく、縁もゆかりもないパプニカ王国の臣下1人のために、俺達まで危険を犯してついて行く必要はないだろうって話だ。

 

レオナ姫やアポロさん、エイミさん、バダックさん、それに周りのパプニカ兵の皆さんもマトリフ師匠の言葉に一理ある事を理解しているのか、俺がどう答えるのかを固唾を飲んで見守っている。

 

俺がチラッとダイ達を振り返ると、皆お前に任せるという顔をしている。それを見て俺は、マトリフ師匠に答えた。

 

「そうですね。確かに俺達はアバン先生の仇を取る事を目的としています。ですがそれは、延いては魔王軍の脅威を打ち砕くという事を意味します。先ほどのレオナ姫の言葉ではありませんが、1人の女性の命を救えずして、魔王軍の脅威を打ち砕けるのかという話です。……それに、俺は今の状況を逆に好機とも捉えています」

 

「ほう、好機……」

マトリフ師匠が続けろという表情で俺を促すので、俺は続けて考えを述べた。

 

「敵の指揮官、氷炎将軍フレイザードは本来オーザム国の侵略を担当していたはずです。しかし、フレイザードは今回自軍の戦力の大半をオーザム国に残したままバルジ島にやってきています。これは、敵指揮官とその軍団の分断を図らずも敵自身が行っている事になります。明らかな失策です。確かに、氷炎結界呪法やその他にもどんな罠が存在するのかは分かりませんが、それ以上に俺はこの状況を好機と判断しています。

後は、……そうですね。これは俺個人としての話ですが、バルジの塔を脱出する際に、氷漬けになったマリンさんに必ず救出に戻ってくると約束をしたからというのもありますね」

 

「ポップ君……」

アポロさんが、俺の言葉に感動したようにつぶやいた。

 

「――けっ! 甘いんだか、計算高いんだか、どっちかにしろってんだ。……だが、まあ良い。そういうのも俺は嫌いじゃねえぜ。手伝ってやるよ、その女の救出とやらをな」

 

良かった。マトリフ師匠のその言葉に、レオナ姫を始めとするパプニカ一行の皆さんの表情が明るくなった。ダイ達も安堵した表情をしている。

 

……と、思っているとマァムが何やら言いたそうな表情で俺を見つめている。

 

「ど、どうかした、マァム?」

 

「……ポップ。あなた、氷漬けになったのが、マリンさんじゃなくてアポロさんだったら、助けに行くなんて言い出さなかったんじゃないの?」

 

その言葉を耳にしたパプニカ一行が、俺達の会話に聞き耳を立て始めたのを俺は感じた。

 

む? アポロさんが氷漬けになっていたら? 俺はアポロさんの顔をじっと見つめた。……氷漬けになったアポロさん。全くシンパシーを感じない。うん、無いな、確かに。

 

「うん。確かにアポロさんが氷漬けになっていたら、放っておいたかも」

 

「――おい! それは無いだろう、ポップ君!」

アポロさんが、慌てた様子で俺に抗議をした。そのあまりの情けない表情がおかしくて、俺はつい吹き出してしまった。

 

その様子を見ていたダイ達やパプニカ一行も大爆笑だ。

 

「……全く、ポップは綺麗な女性を見たらすぐにいい格好を取りたがるんだから。ふふふ……」

 

マァムがそう呆れたように呟きながらも、一緒に笑っていた。

 

 

 

 

 

「さて、何から話そうか? とりあえず、あの戦士にかけた変身呪文(モシャス)の魔法は何だ? お前は何を隠している?」

マトリフ師匠は、眼光鋭く俺を見つめている。

 

「隠しているなんて、そんな大げさなものじゃないですよ……」

その眼光の鋭さに俺は、若干引き気味に答える。

 

今、俺は洞窟を出た砂浜の上で、マトリフ師匠と2人きりで言葉を交わしている。あの後、バダックさんには氷炎結界呪法の源である氷魔塔と炎魔塔を破壊するための爆弾製作を依頼して、ダイにはマァムとヒュンケルに協力してもらって空裂斬の修行を行うよう伝えた。

 

その後、マトリフ師匠がこいつと魔法使い同士話をしておくことがあると言って俺を外に連れ出して、現在に至る。

 

 

 

「なるほどな……。あいつがパプニカを滅ぼした張本人の不死騎団長か。そりゃー、やるせないな」

 

「はい。本人もレオナ姫による断罪を望んでいます。今は、非常事態ということでまだ正体を明かすつもりはありませんが、フレイザードを倒した後は……」

 

「まあ、そこから後はお姫さんとあいつの問題だ。……あまり何もかも、てめえで抱え込もうとするんじゃねえぞ」

 

「はい。お気遣いありがとうございます。それで、……マトリフさん。お願いがあるんですが。……俺を弟子にしてくれませんか?」

俺はそう言って、マトリフ師匠に頭を下げた。マトリフ師匠に会ったらずっとお願いしようと思っていた言葉を、ようやく伝えることができた。

 

俺のその言葉に、マトリフ師匠はチラッと俺を見て答えた。

 

「……ああ、良いぜ、弟子にしてやるよ。アバンでは、おまえを魔法使いとして指導するのに限界があったんだろう。俺がお前をその先に連れて行ってやるよ」

 

「――! ありがとうございます!」

……良かった。思いのほか、すんなりと弟子入りを許してくれた。

 

「へっ。しかし、何を教えてやるとしようか。とりあえず、ギラ系、イオ系、バギ系の極大呪文は必須か。だが、時間がねえからな。まずはギラ系からにするか。後は、奥の手の極大消滅呪文は……さすがにまだ早いか。となると、後は重圧魔法……」

 

マトリフ師匠が、俺に教えてくれる魔法を指折り数えながら楽しそうにしている。へー、意外にマトリフ師匠、教える事が好きなんだろうか。あ、でもあの呪文は遠慮しておこう。

 

「あ、マトリフ師匠。せっかくですが、極大消滅呪文は怖すぎるので遠慮させていただきます。重圧魔法とか他の魔法から是非お願いします!」

 

「なっ!? お、お前、極大消滅呪文を知ってんのか!?」

マトリフ師匠が、鼻水を垂らして驚愕の表情をする。

 

この後俺は、マトリフ師匠に俺が極大消滅呪文(メドローア)に辿り着いた経緯を説明したが、その最中にフレイザードによる宣告が島に響き渡った。

 

その宣告の内容は、氷漬けになったマリンさんの命が持って明日の正午までと言うことだった。今が昼過ぎという時間だから、後24時間弱といったところだ。

 

このあたりの情報は、事前に皆に伝えていたから新しい驚きは無かった(原作知識だが、氷に触れることで把握したとか適当な事を言ってだ)。

 

そして救出作戦の決行は、今日の深夜に決まった。それまでに、バルジ島へ再突入する人選、パーティー編成など考えることは山ほどある。

 

それに、俺は俺自身の能力向上を図らないといけない。俺はマトリフ師匠にお願いして、決行までのわずかな時間にいくつかの魔法を契約させてもらう事にした。

 

 

 

 

 

今俺達は、バルジ島に再突入する人選の相談を、マトリフ師匠の部屋で行っていた。救出作戦決行2時間前だ。

 

「じゃあ、再突入は8人で良いな。俺の持っている船と、ポップの作る氷の船でちょうど8人乗れるだろう」

マトリフ師匠が俺たちの顔を眺めながらそう言った。

 

突入する人間は相談の結果、俺達アバンの使徒4人と、レオナ姫、アポロさん、エイミさん、バダックさんの、合わせて8人に決まった。ミイラ取りがミイラになってはいけないから、武器や鎧の無くなったその他のパプニカの兵達の皆さんはここで留守番だ。

 

師匠の所有している小舟は4人乗りだったが、俺が氷系呪文(ヒャド)の魔法で新たに氷の船を作り出すことで、8人での突入が可能となった。氷の船で移動するのは、デルムリン島からラインリバー大陸に移動する際にも行っているから、何の問題もない。

 

「私達は良いけど、レオナまでバルジ島に行くのはどうなのかしら? さすがに、危険すぎじゃあ……」

 

「そうだよ、レオナ。レオナはここで待っていた方が良いんじゃあ……」

 

マァムとダイは、姫さんまでバルジ島に行く事に若干反対の様子だ。ちなみに、マァムがレオナ姫の事を呼び捨てにしているのは、本人たっての希望だ。

 

当然俺も、レオナ姫本人から改まった口調をやめて欲しいとお願いされたから、さすがに呼び捨ては勘弁してもらって、原作同様『姫さん』呼びをさせてもらうことになった。口調もダイ達と接する際の話し方にしている。

 

なお、ヒュンケルだけはどれだけ言われようが「レオナ姫」と呼ぶ事とその口調を直そうとしなかったから、最後は姫さんの方が折れていた。

 

「ちょっとダイ君、マァム! 私だって賢者の端くれなのよ! 回復魔法だって、アポロ達も使えない回復呪文(ベホマ)が使えるのよ。大事な臣下を救いに行くんだから、私だって行く権利があるわ!」

 

そんな姫さんの剣幕に、本来なら止めるべき立場のアポロさんやエイミさんも困った様子でいた。まあ、俺は姫さんがここで大人しく待っている人間だとは思っていないので、最初から説得するつもりもなかった。

 

「ダイ、マァム、姫さんの意思は変わらないさ。案外ここにいるより、俺達と一緒に行動した方が安全ということもあるかもしれないぜ? 敵の一番の狙いは姫さんなんだろうし」

 

「でも、ポップ君。ここにいたら大魔道士マトリフ様の庇護を受けられるわよ。その方が姫にとっては安全なのでは……」

エイミさんが一縷の望みをかけて俺にそう言った。

 

甘いな、エイミさん。認識が足りないぜ? 俺はエイミさんに、その認識が誤りである事を指摘した。

 

「確かに、ここにいれば師匠の庇護は受けることができるでしょう。ですが、その代わりに皆さんの大切なレオナ姫が師匠のセクハラによる被害を受けてしまいますよ? ああ、セクハラというのは、師匠がいつも女性に対して行っている性的な悪戯の事です。どうです、その光景が容易に想像できませんか? 俺にはできますよ。レオナ姫の胸が師匠に揉みしだかれ、そのお尻を撫で回される。そんな羨まし……いや違った、けしからん光景が」

 

俺のその言葉に、姫さんが心底嫌そうに両手を胸の前で交差して、師匠から距離を取る。エイミさんも、その光景が頭に浮かんだのか二の句を告げずにいる。マァムは「今、羨ましいって言おうとした?」とブツブツ言っている。マァム、それは聞き間違いだ。……後でフォローしておこう。

 

「ですよね、師匠?」

俺は師匠を振り返り、いい笑顔で問いかけた。しかしその瞬間、俺の頭に師匠の持っていた魔法の杖が振り下ろされた。

 

「痛ってー!! ――いきなり何するんですか、師匠!?」

 

「何するんですか、じゃねえよ! テメエなんざあ、破門だ、破門! 俺がいったいいつ、そんな事をしたよ!?」

 

「しているじゃないですか! 今日出会ってからでも、マァムの胸とお尻を2回ずつ、姫さんのお尻を1回、エイミさんの胸を2回も揉みしだいたりして! ――ああ、こん畜生!」

 

「な、何でお前がそんな事知っているんだよ!?」

 

「知っていますよ、そりゃー! だいたい、どうやったらあんなに素早くタッチ出来るんですか!? あれ、絶対魔法使っているでしょう! 俺、分かるんですからね! 師匠なら、今度俺にも教えてくださいよ!」

 

「馬鹿野郎! あれには高度な魔法技術が必要なんだよ! お前にはまだ早え!」

 

「出来ますよ、俺にだって! もったいぶらずに、教えてくれたって――」

 

 

 

 

 

「「「……」」」

いつの間にか、わめき散らす2人を周囲の人間は無言で見つめていた。

 

「マァム、ちょっとあの変態師弟を静かにさせてくれないかしら? 話が進まないわ」

レオナは汚物を見るような目でわめき散らす師弟を眺めてから、彼らの保護者と思われるマァムに言った。

 

「……ええ、分かったわ、レオナ」

 

マァムは、右手に装備したメタルフィストから炎を立ち上げながら、2人に近づいていった。

 

 

 

 

 

「……そ、それでいったい何の話をしていたんだったっけ?」

俺は、頭にできた特大サイズのたんこぶを手で押さえながら姫さんに尋ねた。マァムときたら、最近何かあったらすぐにメタルフィストで攻撃してくる。絶対俺の頭、10円はげが至る所に出来ているぞ。あんな武器、作るんじゃなかったな……。

 

「私が、皆と一緒にバルジ島に行くというという話よ、ポップ君。君は賛成なんでしょう?」

姫さんは、何故か幾分俺のことを冷たい目で見ている。

何故俺が冷たい目で見られるんだろう? 俺は師匠と違って、姫さんにセクハラなんてしていないのに。

その師匠はといえば、頭に大きなたんこぶを拵えて、まだ意識を失ったままだ。

 

「ああ、そうかそんな話だったよな。うん、賛成だよ。ただ、パーティー編成は変えた方がいいと思う」

 

「パーティー編成? 私達パプニカ組4人とダイ君達の4人がそれぞれ炎魔の塔と氷魔の塔を目指すんじゃなかったかしら?」

姫さんの言葉に、アポロさん達も頷いている。

 

「それだと、少しパーティーのバランスが悪いと思う。ほら、姫さんの方はバダックさんを除いたら全員頭脳労働派だろう?」

 

俺のその言葉に、バダックさんが「儂を除いたら全員頭脳労働派? では儂は? グヌヌヌ……」と呻いている。俺はその様子をことさら無視して、更に続ける。

 

「そして、俺達の方だけど、俺達の方は俺達の方で、俺を除いたら全員が脳筋集団だ。ああ、脳筋っていうのは脳が筋肉でできているって言う意味の褒め言葉な」

 

「脳筋……。それって褒めているの?」

 

「……」

 

ダイとヒュンケルは俺の言葉に若干不満そうにしている。マァムは……。

 

「……。――はッ!? 今、私も脳筋の中に含まれた……!?」

 

……今、気がついたようだ。

 

「なるほど……。確かにそう言われると、バランスが悪いかもしれないわね。それで? ポップ君はどうした方がいいと?」

 

「俺達のパーティーから、ヒューイをそちらに回したらどうかな? ヒューイは接近戦の達人だ。賢者揃いの、そちらにいた方が役に立てると思う。こっちは、接近戦ならダイとマァムがいるから」

 

まあ、そのマァムは今「誰が脳筋よ、誰が……!」と言いながら、俺の足の甲をグリグリと踏みつけている訳なんだが……。

 

「そうすると、私達の方は5人で、ダイ君達の方は3人になるけど、良いのかしら?」

 

「もちろん。敵の狙いは姫さんの可能性が高いんだから、それでも少ないくらいだ。勝手に決めたけど、ヒューイもそれで良いかな?」

 

「俺は構わん。だが、接近戦が出来る人間がレオナ姫のパーティーに必要というのなら、ダイでも良かったのではないのか? ダイも、レオナ姫を近くで守りながら戦いたいのではないのか?」

 

ヒュンケルにそう問われたダイは、少し首をかしげながら俺を見上げた。

 

「ポップは、俺じゃなくてヒュン……じゃなかった、ヒューイの方がレオナ達のパーティーに入った方が良いと思ったんだろう?」

ダイの、その曇りのない澄んだ眼差しが、姑息な事をしようとしている今の俺には眩しく感じた。

 

「……そうだよ。ダイも納得してくれるか?」

 

「うん、もちろんだよ! ヒューイ、レオナ達のことをよろしくね!」

 

「ああ、無論だ」

 

そうして、パーティー編成も終わった。

 

 

 

俺達はその後、気絶していた師匠を起こして海岸に向かった。目覚めた師匠は「誰だ、マァムにあんな物騒な武器を持たせた野郎は?」とブツブツ言っていたから、俺は心の中で謝っておいた。

 

海岸には1艘の小舟と、1艘の氷の船が浮かんでいる。ゴメはここに置いていくつもりだったのに、ピィ、ピィ鳴いて一緒に行くと言って聞かなかったので、ダイの鞄に入っていてもらう事にした。

 

「よし、じゃあ、全員乗りな! 俺が魔法でバルジの大渦を超えて、島まで一気に飛ばしてやるよ」

 

師匠のその言葉を受けて俺を除く全員が船に乗り込んだ。

 

そして、俺が最後に氷の船に乗り込もうとすると、師匠が話しかけてきた。

 

「おい、待ちな、ポップ」

 

「どうしました、師匠?」

 

「マァムから聞いたぜ。お前、ロモスでは賢者と呼ばれていたらしいじゃねえか? だが、賢者なんぞより俺の大魔道士の肩書きの方がずっとドスが利くだろう? お前、これからは大魔道士と名乗っちゃあどうだ? 俺が許すぜ?」

 

「大魔道士……ですか。うーん、いえ、……やめておきます。その肩書きは師匠だけのものです」

大魔道士……。とても中二心をくすぐられる響きだ。だけど、俺はその肩書は唯一無二の俺の師匠だけのものにしておきたいと思った。

 

「けっ、欲の無えこった。まあ、良い。じゃあ、行くぞ! しっかり掴まってな!」

 

途端に、俺達の乗った船がバルジの島向かって突き進んでいく。

 

俺は、頬に当たる潮風を感じながら、これからの事を考えていた。

 

何かやり忘れていることはないだろうか? ダイには、空裂斬の修行を原作以上に行ってもらえたはずだ。ヒュンケルは最初から仲間として計算できるが、鎧の魔剣を失っているので、対魔法戦には不安がある。マァムは武闘家としての修行を積んでいるので、原作以上に活躍するはずだ。

 

クロコダインは? 分からない。クロコダインに関しては生きているかどうか、魔王軍を抜けたかどうかも不明だから、頭数に入れることができない。

 

俺はどうだ? 俺も、マトリフ師匠から覚えたかった魔法のいくつかを教えてもらうことができた。これで、たとえハドラーが相手だとしても遠距離でやり合う限りは、遅れを取ることはないはずだ。

 

大丈夫なはずだ。やれることはやり尽くしているはずだ。

 

……だけど、俺はどうしてだか不安な気持ちを抑える事ができなかった。

 

 

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