転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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9話 原作開始 9年前 ジーンの捜索

ランカークス村の東にある川の対岸に広がる森。

 

この森は、ギルドメインの森とも呼ばれている。大陸の名を関するこの森はとても広く、深い。この森の奥地はそのままギルドメイン山脈に繋がっている。

 

俺は初めてこの森の前に立ち、その威容に圧倒された。こいつは、前の世界でいう、富士の樹海のような感じだな。何かこう、森から呼ばれているような不思議な感覚に陥るよ。

 

ていうか、ルッツ達は前にこの森に入ったことがあるって言ってたけど、よく子供だけでこんな森に入ったな。危なすぎるだろってつい聞いてみると、以前入ったときは自警団だったルッツのお父さんが付き添ってくれていたそうだ。

 

そうか、そりゃそうだよな、いくらなんでも子供だけで入るには森が深すぎる。

 

「ここだよ、ここからジーンは森に入っていったはずだ」

 

「うん、私もそう思う……。あっ見て! 草が倒れてる! きっとジーン君だよ」

 

なるほど、確かに草が森に向かって倒れている。それもついさっきできた跡のようだ。

 

「そうだね、ここから入ったって事で間違いなさそうだ。じゃあ、僕が先頭に立つから、後ろを離れないようについてきてね。後ろからルートを言ってくれたら良いから」

 

「うん、分かったよ。」

 

俺たちは、俺、ライカ、ルッツの順で森に入っていった。いくらなんでも、森の中といっても、それほど深い位置にある木の実ではないと思うんだけど、どうだろう。早めに見つけられると良いな。ジーン、無事でいろよ。

 

「あ、その木のところから右に進むんだよ」

 

「この道だね。了解」

 

ルッツが後ろから進むべき道を指示してくれる。

ここまでのところは順調だ。

 

「もう少しだよ、ポップ君。ジーン君もこの道を通った跡があるから、もうじき見えてくるはずだよ!」

 

俺たちはその先へ足を踏み入れていった。そうして歩いていると、荒い息遣いが俺たちの耳に聞こえてきた。

 

「ポップ君、この声!」

「間違いないよ、ポップ!この先にジーンがいる!」

「分かった!急ごう!」

そう言って、俺たちは歩みを速めた。

 

そして、俺たちが藪をかき分けた先に、ようやくジーンを発見することができた。

 

ジーンは何故か地面にしりもちをつく姿勢で前方を凝視していた。俺たちはそのジーンの隣から声をかけた。

 

「ジーン! 全くもう心配かけて!」

 

「本当だよ、ジーン! どんだけ食い意地がはってるのさ!」

 

「ジーン君! 私たちに嘘までついて! 帰ったらお説教だからね!」

 

急に現れた俺たちに、ジーンはびっくりするような目を向けてきたけど、すぐに安心したのだろう。そのまま目に涙を浮かべて、座った姿勢のまま俺たちに言った。

 

「ごめんよ~みんな。どうしてもクコの実が食べたくて、駄目だと思ってたけど来ちゃったんだよ~」

 

「全く君ってやつは……。何にしても無事でよかった。さあ、もうじき暗くなる。早く帰ろう」

 

「あっ、待って待って。何か変なんだ。ほら、聞こえない? 耳を澄ませてみてよ?」

俺はジーンに手を貸して、彼を立ち上がらせようとしたが、おかしなことを言ってきた。何か聞こえるって?

 

俺たちはなんだなんだと顔を見合わせた後、ジーンが凝視していた藪の方に耳を集中させた。すると、確かに、「ニャー、ニャー」と子猫のような泣き声が聞こえてきた。

 

しかし、こんな森の中で子猫? 怪しさ満点だ。なるほど、ジーンはこの声にびっくりして腰を抜かしていたのか。

 

俺たちは再び顔を見合わせた後、少しずつ前進し、その藪をかき分けてみた。すると、そこにいたのは、子猫・・・ではなく、キラーパンサーの幼体、ベビーパンサーだった。

キラーパンサーというのは別名『地獄の殺し屋』とも呼ばれ恐れられている虎によく似た容姿の魔物だ。そのキラーパンサーの幼体であるベビーパンサーも、姿形はまだちょっと大きめの猫と言えないこともない容姿だが、成獣になると今の何十倍という大きさに成長するだろう。

 

そのベビーパンサーが、片足を獣用の罠に挟まれ、身動きが取れず声を出して鳴いていた。

 

「かわいそう……。これに挟まれて動けなくなっていたのね」

 

ライカがそう呟いて傍に近づこうとしたので、とっさにそれを止めた。

 

「駄目だ、ライカ! こんな見た目でも魔物だ! 不用意に近づいたらいけない!」

 

「そうだよ、ライカ。ポップの言うとおりだ。それに、今はこんな見た目でも将来はとっても大きくて危険な魔物になるんだ。情けは禁物だよ」

 

「どれどれ? なんだ、俺こんな小さな魔物にビビってたのか。ビビって損しちゃったな……」

ジーンまでのんきなことを言い出したぞ。お前、さっきまで腰抜かしてたじゃないか。

 

「でも、このベビーパンサー? っていうの? とってもおとなしそうよ? そりゃあ、将来怖い魔物になるのかもしれないけど、今は悪さしてないんでしょう? このままにしておくのは、かわいそうよ!」

 

まあ、ライカのいう事も分からないでもないけど、将来的に人間に敵対する魔物である以上、このままただ開放するというのもまずいよな、と思いながら、再びじっとベビーパンサーを見つめる。

 

すると、確かに何故か悪い邪気のようなものがこの魔物からは感じられなかった。といっても俺はそもそもこの世界で魔物に会ったのがこいつが初めてで、他と比べようがないから正直よく分からんとも言える。

 

でも、確かに原作でもデルムリン島に住む魔物は気の良い魔物ばかりだった。この辺りに住む魔物も、そういう魔物ではないとも言い切れないよな……。

 

俺がそう悩んでいる間も、子猫、もといベビーパンサーは幼気な瞳でこちらを見上げながらニャーニャー鳴いている。

 

うーん……、仕方ないな。今回はジーンを助けに来たのが目的なんだから、無益な殺生は控えておくか。

 

「分かったよ、ライカ。今回はジーンを助けに来たんだし、このベビーパンサーは助けてあげよう。」

 

「ありがとう、ポップ君! じゃあ、この子の足を挟んでいる罠を外してあげましょうよ!」

 

「了解。ルッツ、ジーン、ちょっと手伝ってくれないか?」

俺が2人に声をかけると、2人とも軽く頷いて、そばに来てくれた。

 

男衆の3人がかりでようやくベビーパンサーの足を挟んでいた金具を取り外すことができた。

 

金具から解放されたベビーパンサーはそのまま逃げだすのかと思いきや、そこに座り込み、挟まっていた足を舌で舐めはじめた。あれ、怪我しているのかな? まあ、あれだけ強力な金具で挟まれていたんだ、怪我ぐらいするか……。

 

俺は、ベビーパンサーの足元に体をかがませ、手をこの子の足に当てた後、「回復呪文(ホイミ)」と唱えた。その瞬間、緑色の光がこの子の足を包み込んだ。その間、ベビーパンサーは気持ちよさそうに目を細めておとなしく横たわっていた。

 

「どうだい? 歩けるようになったかい?」

 

ホイミの残光が収まってから俺はベビーパンサーに声をかけた。

 

すると、ベビーパンサーは言葉を理解したかのように、すっくと立ち上がり数歩軽快な足取りで歩いて見せた。

 

「すっごーい! ポップ君が回復魔法使っているところ初めて見た。ポップ君の魔法って、人間だけじゃなくて、魔物にも効くんだね!」

 

「うん、僕も初めて見たよ。回復魔法ってすごいんだね」

 

「お前、すごい魔法使えんだな! 今度俺のでべそも直してくれよ!」

 

3人が俺に三者三様の賛辞を送る。ジーン、ちなみにでべそは怪我じゃないから治らないからな!

 

俺たちがわいわいと会話しているうちに、ベビーパンサーは近くの茂みに移動していった。俺はその様子を見て声をかけた。

 

「もう人間の罠に引っかかるんじゃないぞー。それと、大きくなってもできれば人を襲わないでくれよー」

 

「パンサーちゃん。また会おうねー」

 

「おい、もう脅かすんじゃないぞ!」

 

「あまり森の入口の方に来たら駄目だよ。危ないものがいっぱいあるからね」

 

そう皆で声をかけて、さあ帰ろうと振り返りかけた瞬間だった。

 

その茂みがガサガサっと明らかに巨体が揺らしたと思われる揺らめきを発した。

 

俺は瞬時に警戒態勢を取り、「みんな、俺の後ろへ!!」と声をかけた。急に緊迫した俺の声に皆一瞬きょとんとした表情を取ったが、直ぐに反応を示し、俺の後ろにすばやく移動した。

 

俺はみんなのその動きを横目で見ながら、そのまま目は目の前の茂みを凝視していた。そして、不意にそれは現れた。

 

そう、それは立派な成獣になったキラーパンサーだった。

 

俺は背中を冷たい汗が流れるのを感じていた。文献では知っていた。話にも聞いていた。しかし、この大きさは俺の予想を超えてきた。姿形は虎によく似ているが、大きさはけた違いだ。3倍近くはあるんじゃないのか?

 

俺は、必死でこの魔物から皆を守るための手段を考えていた。俺の手持ちの攻撃呪文と言えば、氷系呪文(ヒャド)真空呪文(バギ)だけだ。こんな時に、攻撃魔法の手札を増やしていなかったことを後悔するがもう遅い。今持っている手札で勝負するしかない!

 

そんなことを必死で考えている間、不意になぜキラーパンサーはまだ襲ってこないんだと疑問に思った。

そう思って、相手を凝視していると、先ほどのベビーパンサーが、キラーパンサーの足元に駆け寄って、じゃれ始めたのだ。そして、キラーパンサーもそんな様子のベビーパンサーを大きな舌で舐めはじめた。

 

あれ、もしかして、このキラーパンサーって……。

 

「ねえ、ポップ君。もしかしてこのキラーパンサーって、パンちゃんのお母さんかお父さんじゃないのかな?」

 

俺もそんな予感がした。いやいや、その前にライカ、もうベビーパンサーの名前がパンちゃんになってるんですけど? なんで君はそんなにフレンドリーになれるの?

 

でも、そうか。俺があまりの巨大さに衝撃を受けて分からなかったけど、このキラーパンサーの目って、よく見るとベビーパンサー同様邪気に覆われていない気がする。ちょっと信じられないけど、何か親しげな瞳でこちらを見つめている。とてもではないが、これからこちらを襲おうと考えているようには見えない。

 

もしかすると、さっきベビーパンサーの足の怪我を治したことで好印象を持ってくれているのかな? そんなことを考えていると、キラーパンサーが俺を案内するかのように顔を振って、後ろを振り返った。

 

俺を誘っている? 無意識に俺はそう感じた。一瞬その誘いに乗りたい誘惑に乗りかけたけど、直ぐに思い直した。残念だけど、今は駄目だ。まずはジーンやルッツ、ライカを安全なところに案内しないと。

 

俺は目で、(今は駄目だけど、また来る。その時は案内を頼む)という意思を込めて、相手の目を見つめた。

 

キラーパンサーはそれを理解したのか、出来なかったのか、判別のしようが無いが、俺が付いてこない様子なのを確認すると、ベビーパンサーを連れて森の奥に帰って行った。

 

ふー、ビビったぜー。出会ったキラーパンサーが好戦的な性格でなくて良かった。ベビーパンサーの命を奪わず、回復までしていて本当に良かった。ライカさまさまだな。

 

「ふー、怖かったねー、ポップ君。でも私、ポップ君がいてくれたからそんなに怖くなかったよ」

 

「初めてキラーパンサーを見たよ。すっごく怖い魔物だったけど、なんていうのかな、きれいだったね」

 

「な、なんでー、全然たいしたことなかったぜ」

 

いや、ジーン、お前また腰抜かして座り込んでるからな。ルッツ、あの魔物がきれいだというのは俺も同意するよ。それに、何か底知れない知性を感じたな。ライカ、俺を信頼してくれるのはうれしいけど、戦闘になっていたらたぶん俺たちは死んでいたと思うぞ……。

 

「と、とにかく危険は去ったみたいだ。さあ、みんなもうじき暗くなる。早くこの森から出よう」

 

「さんせー(×3)」

 

皆の同意を得ることができた俺は、来た道を再び戻り始めた。今度は俺がしんがり。先頭はジーンだ。

 

 

ようやく森を抜け出す事ができたんだけど、待っていたのはランカークス村の自警団のみなさんだった。いやいや、ライナー隊長までいるじゃないですか。……何か嫌な予感するんですけど。

 

「良く無事に戻ってきたな、君たち。さて俺達に何か言うべきことがあるんじゃないのか? 特にジーン?」

 

額に青筋浮かべながら、ライナー隊長が俺たちに声をかけてきた。ああ、これは完全にばれてるな。

 

ちっ、あわよくば、このまま大人にはばれずに、子供だけの冒険の記憶として胸の中にしまっておこうと思っていた俺の計画はもろくも崩れた。

 

「……ごめんなさい。」

 

ジーンが青い顔をして謝った。まあ、そうだな。まずは謝罪だ。そして俺たちもジーンだけに謝らせるような薄情な仲間ではない。

 

「ごめんなさい、ライナー隊長、それに皆さん。ご心配をおかけしました」

 

「ごめんなさーい」

 

「すみません、反省しています」

 

俺たちがそろって謝ったのを見て、ライナー隊長が強くうなずいた。

 

「うん、俺たちが何に対して怒っているかしっかり分かっているな。まずジーン。君は、森に入るのを禁止しているにもかかわらず無断で入った。これが、君が叱られる理由だ」

 

「はい……。すいません」

 

「そして、ポップ、ルッツ、ライカ。君たちは大人に助けを求めることをせず、自分達だけで事を解決しようとした。君たちは子供なんだから、こういう事が起きた時には大人に助けを求めることは、義務なんだ。君たちに何かあったら、どれだけの人が悲しむと思っているんだ?」

 

「はい、ごめんなさい(×3)」

 

俺たちは口をそろえて謝罪の言葉を口にした。まあ、実際あの時大人に助けを求めていたら、結果救出に行くまでに時間がかかりすぎ、森は暗くなって、その間ジーンが無事でいられた保証はなかった。だけど、それでも子供だけで事にあたることは自殺行為と言って諌めてくれているんだろうな。

 

「うん、しっかり反省しているようだな。だけど、仲間を心配して、危険な森に探しに行くその根性は誉めてやろう。よく頑張ったな。ジーンも、きちんと友達にお礼を言っておくんだぞ」

 

ライナー隊長の怒りは少しおさまってきているように感じた。自警団の他のメンバーも怒っているというより、子供達の友情を見て少しほっこりしている感じだ。これはいけるかも?

 

「はい……。皆助けに来てくれてありがとう。皆がいなかったら俺今頃ここにいなかったよ」

 

「良いんだよ、ジーン。俺たち友達だろう?」

 

「そうだよ、ジーン君。私たち友達なんだから」

 

「水臭いよ、ジーン」

 

俺達は、このいい雰囲気のままこの場が収まればいいなと思って、感動的なシーンを意識的に作り上げた。よし、ここでとどめだ!

 

「じゃあ、みなさん、お勤めご苦労様でした。それでは、僕たちはこれで失礼します」

 

そう声をかけて、踵を返し始めた俺の頭を、「ちょっと待て……」と言って、ライナー隊長がつかんできた。あ、痛い痛い! ちょっと力強すぎだって、隊長ー! 割れる割れる、いやマジで!見れば他の自警団の方たちも指をポキポキ鳴らしながら、俺たちを逃がさないぞ、と言わんばかりに退路を断ってきた。

 

「お前達、何やら勝手にこの場をまとめて終わりにしようとしていたが、そうはいかんぞ! そこに並べ、お前達!」

 

額に青筋を浮かべながらライナー隊長がどなった。あぁ、やっぱりこのまますんなりと終わりとはならなかったか。残念!

 

結果、俺たちは強制的に横一列に並ばされ、ライナー隊長から熱い拳骨を頭に1発ずつもらった。

 

ジーンは1発もらった拍子に、ポケットというポケットに詰め込んでいたクコの実があふれ落ちてしまい、自警団の皆や俺たちに大爆笑された結果、その食い意地にもう1発だと言って更に拳骨を食らっていた。

 

その後、俺たちは家に戻った後もしっかりと親から説教を食らった。

 

俺は父さんから再び頭に拳骨を喰らった。母さんも泣きながら頭をパシパシと叩いてきた。でも、最後に友達を救いに森に入ったのは勇敢だったなと父さんがほめてくれた。

 

なんかいい雰囲気になったので、調子に乗った俺は、そのままキラーパンサーに出会ったこともしゃべった挙句、再び父さんから拳骨をもらい、母さんからまたもや泣きながら叩かれる結果になった。

 

今日は、幾度も判断を誤った賢者であった……。

 




いっこうに戦闘をしないダイの大冒険。このまま戦闘をしないまま、完結までいく・・・と言うのはさすがに無理か。
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