転生大賢者の冒険   作:怪盗218

91 / 223
91話 彼らが選んだ道は

~~~~テラン城 フォルケン王私室~~~~

 

 

テラン王国フォルケン王の私室は、質素なお国柄に合わせたかのように必要最小限の物しか置かれていなかった。広さ的には10m四方といったところだろうか。部屋の中央付近には大きめの天蓋付きのベッドが置かれていて、そのベッドの上からフォルケン王が上半身を起こした姿勢でこちらを見つめていた。そして、ベッドの右側には、護衛の兵士であるカナルさんが立っていた。

 

カナルさんは、1年前にアバン先生と一緒にこちらに滞在した時に、特にお世話になった人だ。フォルケン王への忠誠心も高く細やかな事に気のつく気の良いお兄さん的存在だ。今もレオナ姫に続いてこの部屋に入った俺に気づいたのか眉を僅かに上げたので、俺はそっと黙礼を返しておいた。

 

「久しいな、レオナ姫。パプニカ王国も魔王軍の侵略で大変な事になったと聞いたが、そなたの無事な姿を見て、安心したぞ」

 

「ありがとうございます、フォルケン王。パプニカは、一度は魔王軍の手に落ちましたが、こちらにいるアバンの使徒達の助力もあり、どうにか奪還ができました」

 

「ほう……。アバンの使徒……。ふっふっふ。懐かしい顔の者がおるようじゃの。……ポップ、息災じゃったか?」

 

「はい、その節は大変お世話になりました。フォルケン王もお変わり無いようで、安心しました」

 

レオナ姫の後ろにマァムと並ぶ形で控えていた俺は、フォルケン王のその言葉に返事を返した。

 

フォルケン王も俺の事を覚えていてくれていたようだ。今から約1年ほど前に、俺はアバン先生とこの城で2週間あまりを過ごさせてもらった。その間、城の書庫を自由に閲覧する許可をいただいたりと、フォルケン王にはとてもお世話になっていた。

 

「アバンの事は、風の噂で聞いておる……。残念な事であったな……。しかし、そなたは見違えたのう。あれからどれほどの死地をくぐり抜けてきたのか儂には分からぬが、立派な男の顔になった。アバンも、天上で安心しておる事じゃろう……」

 

「いえ……。自分の力及ばず師を死に追いやったばかりか、その師の仇も未だ討つ事の出来ない不出来な弟子です」

 

「そう、自分を卑下するな、ポップ。お主のおかげで助かった者も大勢おるのじゃろう。聞いておるぞ、ロモスでの活躍は」

 

「いえ、それは自分一人の力ではありません。ここにいるマァム、それに勇者ダイの力があってこそでした」

 

「ふむ……。勇者の事も聞いておる。ここには、おらぬようじゃが、今何処に?」

 

ダイは今、テラン城の門の前でメルルとナバラさんが見てくれていた。だが、俺がその事を伝えようとする前に、姫さんが口を開いた。

 

「それについて、相談させていただきたく、参らせていただきました。実は、勇者ダイは、……」

 

姫さんは、フォルケン王にこれまでの事、これからの事について説明をした。そして、記憶を失った勇者ダイを一時匿って欲しいと。

 

「ふむ。パプニカの姫の勇猛ぶりは音に聞いていたが……。あくまで戦うのか? (ドラゴン)の騎士様と……?」

 

「……戦います。テランの皆さんはバランの攻撃を天命か何かだと思っていらっしゃるようですが、私には人間が滅ぼされても当然の酷い生物だとはどうしても思えません! あれは侵略です! 侵略に対しては戦います!」

 

俺も、姫さんの言葉に続いて口を開いた。

 

「レオナ姫の言うとおりです。それに、(ドラゴン)の騎士を信仰している国の皆様を前にして言うことではありませんが、(ドラゴン)の騎士は決して全能の神ではありません。全能で無い以上、過ちも犯します。俺は、時にその過ちを正す事も、必要だと思っています」

 

「過ちを犯すか……。さて、いったい、どちらが誤っているんじゃろうな。だが、良いだろう。そなたらの思った通りにやってみるが良かろう。そなたらが正しいか否かは歴史がいずれ証明するじゃろう」

 

「ありがとうございます、国王!」

 

 

 

「陛下、お話中失礼します」

一人のテラン国の兵士が部屋に入ってきた。

 

「レオナ姫達の友人と申す、ヒュンケルという名の戦士と、大柄なリザードマンが城を訪ねてきております。お通ししてよろしいでしょうか?」

 

おお、来てくれたか! あの2人が揃う事で、ようやくバラン打倒の目が見えてくる。助かった……。

 

フォルケン王は、俺達の様子を見て問題ないと判断したのだろう。報告に来た兵士の方に返事を返した。

 

「うむ、問題ない。ここに通してくれ」

 

 

 

 

 

~~~~テラン城 地下牢獄前~~~~

 

「なんと……。そのような事に。それでさっきは、ダイはあの様な態度を……」

 

クロコダインのおっさんが呻くように言った。おっさんは、さっきダイと顔を会わすなり泣き喚かれてしまい、密かにショックを受けていた事を俺は知っている。まあ、いきなりこんな厳つい顔のワニが現れたら、誰でも怖がるよな。……分かるよ、ダイ。

 

……おっといけない、俺が密かに含み笑いをしていると、おっさんにジロッと睨まれた。

 

「まさかバランがダイの父親だったとは。そして、あの紋章にそのような意味があったとは……」

 

ヒュンケルも俺達の話に驚きを隠せない様子だった。

 

ダイは今、テラン城の地下にある牢獄に入ってもらっている。正直その扱いはどうかと思うけれど、他に有効な案が思い浮かばなかった。だからせめて、ダイが寂しくないようにとゴメにはダイの傍にいてもらった。

 

ヒュンケルが俺に顔を向けた。

 

「それでどうする、ポップ? バランの強さは想像を絶する。それは、お前達も身をもって知ったはずだ」

 

「そうだ、ポップ。いかに俺達が加勢したとはいえ、肝心のダイを抜きに本気のバランを相手に勝つ事は、容易な事ではないぞ?」

 

そのクロコダイン達の言葉に、マァム、姫さん、メルル達も俺の顔を伺う。

 

そうだな、確かに容易な事では無いだろう。だけど、だからと言って諦めるという選択肢は無い。このバラン戦は、ダイと共にデルムリン島を出た時から何度も頭の中でシミュレーションしてきているんだ。そのための準備も出来ている……はずだ。決して、勝算が無いわけではない。

 

「そうだな……。バランの強さは今更言うまでも無いだろう。だけど、俺はバランを倒す策を2つほど提案できる」

 

クロコダインが俺の言葉に驚き、大声を上げた。

 

「あるのか、そんな策が!?」

 

「……ある。皆、よく聞いてくれ……」

 

俺の言葉に皆が意識を集中させたのを確認した俺は、皆の前に指を2本立ててゆっくりと口を開いた。

 

「1つ目は、そんなに難しい話じゃない。俺の手持ちの呪文の中には、バランを確実に倒す事ができる呪文がある。竜闘気(ドラゴニックオーラ)が有ろうが無かろうが関係ない。当たりさえすれば絶対に勝てる。

 2つ目は、正直きつくしんどい策だ。俺達が全力を尽くし、どうにかそこにたどり着けるかどうかという薄氷を踏むような戦いになる」

 

「それなら、1つ目の策で決まりじゃないの?」

姫さんが、議論の余地がないと言わんばかりの顔で発言した。他の皆も、その言葉に頷いている。

 

「ああ、確かに1つ目の策が一番簡単だ。だけど、こいつには1つだけ問題がある。そのバランに喰らわせる呪文、そいつは一切の手加減ができない呪文なんだ。こいつが決まれば俺達は確実に勝利できるが、同時に確実にバランは死ぬ……」

 

俺の言葉に、皆声もなく押し黙った。だから俺は、言葉を続けた。

 

「……正直に言う。俺はダイのためにも、バランを殺したくはないんだ。あんな出会いをしてしまったけれど、バランはダイにとってようやく出会えた肉親だ。生きてさえいれば、いつかわだかまりは解けるかもしれない。でも、死んでしまっては、それもできない。あんな事をされて甘いと言われるかもしれないけれど、俺は――」

 

「――はい、ストップ! もう良いわ、ポップ君。時間がないわ。その、きつくしんどい2つ目の策を教えてちょうだい」

 

「……姫さん」

 

「ダイ君の事を思っているのは、君だけじゃないのよ? 言ったでしょ? 私がダイ君の1番になってみせるんだから! ね、皆? 皆もそれで良いわよね?」

 

その姫さんの言葉に、クロコダインのおっさんが拳で胸を叩いて続く。

 

「もちろんです、姫。ポップ、みなまで言わんでいい! 早くそのしんどい策とやらを言わんか!」

 

そのクロコダインの隣でヒュンケルが、いつものニヒルな笑みを浮かべた。

 

「ふ……。バランにそれほどの事をされてなお、ダイのために奴を殺したくはないか……。お前らしいな」

 

「ふふふ。ポップは、どんな時でもポップね。ね、メルルもそう思うでしょう?」

 

「はい! ポップさんは、昔から少しも変わっていません……!」

 

「皆……。ありがとう……。よし……! じゃあ、きつくしんどい策を説明するから聞いてくれ」

 

俺のその言葉に、皆が再び真剣な表情を浮かべた。

 

 

 

「……以上だ。どうかな? 誰一人欠けてもたどり着けない困難な策だと思うけれど……」

 

「ふむ……。確かに厳しい策だな。だが、他に良案が思い浮かばないのも事実。ヒュンケルはどうだ? お前に全てがかかっていると言っても良い策だが?」

 

「……問題ない。正直に言うと、奴とは真正面からぶつかりたいという思いはあるが、他ならぬダイのためだ。その策に従おう」

 

2人は問題ないようだ。

 

「姫さんはどうかな? 本当なら、戦闘要員でない姫さんまで前線に出したくは無いんだけど……」

 

「ええ、もちろんそれで良いわ。ダイ君のための戦いですもの。私だってやってみせるわよ」

 

「私もよ、ポップ。もう一度バランの竜闘気(ドラゴニックオーラ)を撃ち抜いてやりましょう!」

 

俺達がバランとの再戦に向けて細かな準備を進めていると、メルルも居ても立っても居られないかのように声を上げた。

 

「わ、私も、私も何か出来る事を……!」

 

「メルルとナバラさんにはダイの方を頼むよ。ダイを預けられるのは、メルルだけだ。頼りにしているよ」

 

俺がそうメルルに声をかけるのとほとんど同時に、メルルの全身がわなわなと震えだした。

 

「あ、あぁっ!? 何かが来ます! 物凄い憎悪のエネルギーがこの国めがけて!!」

 

「メルル! どうしたの、大丈夫!?」

 

マァムが突然頭を押さえて座り込んだメルルを心配して駆け寄った。

 

「ふむ……。何か、竜の騎士様以外の者までこちらに向かってきているようだね。どれ、見て見るとしよう」

 

そう言ってナバラさんは懐から水晶球を取り出し、何やらブツブツと呟き始めた。

 

そんなナバラさんを取り囲むように俺達はその水晶球に目を落とした。

 

「姿を……とらえた! 南東の方角から真っ直ぐこのテランに向かって来ておる……!」

 

その声と共に、次第に透明だった水晶球に何かが映り始めた。そして次の瞬間、水晶球にくっきりとメルルの感じた憎悪のエネルギーの正体が映し出された。

 

先頭を、竜に乗ったバランが駆けている。そして、その後ろを3体の魔族が追従している。

 

「こ、こやつらは……!?」

 

「間違いない……。こいつらは、竜騎衆だ……!」

 

おっさんとヒュンケルが、水晶球に映る魔物を見て呻くように声を上げた。

 

「竜騎衆? それって……?」

 

マァムのその問いかけに2人は答える。それによると、竜騎衆とは、バラン直属の配下で魔王軍とは独立した集団らしい。おっさんは、3人はそれぞれ陸戦騎、海戦騎、空戦騎と呼ばれていて1人1人が一騎当千の強者という事を俺達に説明する。

 

まあ、その辺の話は、俺は原作知識で知っていた。その3人のうちの1人が、別格に強いという事も。

 

「おい、どうする、ポップ。やつらがバランに加勢するとなると、あの策は……」

 

「ああ、厳しいだろうな。あくまであの策は、バラン単独を相手取る事を想定した策だ。……だから、奴らを分断する必要があるな」

 

俺はおっさんの問いに、そう答えた。

 

「……分断?」

ヒュンケルが、続きを話せとばかりに、俺を見た。

 

「そう、分断だ。奴らは竜で移動しているから、まだここにたどり着くまでにはそれなりの時間があるだろう。だから、ちょっくら行って来て、バランとその3人の竜騎衆を分断してくるよ。ちょっと待っててくれ」

 

俺はそう言って、皆にじゃあ、とばかりに手を振ってその場を離れようとした……が、気づかれたようだ。俺のみかわしの服の襟首を後ろからグッと掴む存在がいた。……マァムだ。

 

「ちょっと待ちなさい、ポップ。あなた、何を勝手に飛び出そうとしているのよ。もしかして、今1人でバランとその竜騎衆の所に行こうとしていなかった?」

 

「あ、あははは……。……バレた?」

 

「当たり前よ! 全く、何を考えているのよ!?」

 

「いや、分断は必要なんだって。パッと行って、パパッと帰って来るよ。それで、バランはお通しするけど、他の竜騎衆はお帰り願うつもりなんだ」

 

「だから、あなた何を子供のお使いのような事を言っているのよ。そんなかわいらしい対応を取ってくれるようなら、今私達はこんなに悩む必要ないじゃない!」

 

「そうよ、ポップ君! 全く本当に油断も隙もないわね。どうする、皆? ポップ君がいつものごとく無茶をしようとしているけれど?」

 

「目付役が必要だろう。ポップ1人に任せておくと、色々な意味で危険だ」

 

「クロコダインの言う通りだ。ポップに任せておくと、何をしでかすか分からん……」

 

「また無茶をするんですか、ポップさん……? もしかして、私との約束を忘れたとか……」

 

ひでえ言われようだ……。これでも熟慮に熟慮を重ねた上で、行動を起こしているというのに。

 

ていうか、メルルが怖い。え、あの約束ってまだ有効なのかな? 俺、これから無茶どころの話じゃない事をするつもりなのに、参ったな……。

 

「……だそうよ、ポップ君。分断が必要という君の判断には賛同するけれど、あなた1人行かせる訳にはいかないわ。マァム、ポップ君の保護者として一緒に行ってくれないかしら?」

 

「ええ、もちろんそのつもりよ。ポップ、それで良いわよね?」

 

え、マァムって俺の保護者なの? いったいいつから、マァムってそんな立ち位置になったの?

俺が困惑していると、マァムが更に言いつのる。

 

「い・い・わ・よ・ね?」

 

「はい、良いです……」

 

俺に否やがあるはずも無かった。

 

 

仕方ない、じゃあ、俺とマァムの2人で敵さんの分断に行きますか……!

 

しかし、じゃあ、とばかりに今度こそ踵を返そうとした俺を再び呼びとめる声が、背中からかけられた。

 

「待ってください、ポップさん!」

 

……その声の主は、メルルだった。

 

「どうかした、メルル?」

 

俺が振り返ると、何故かメルルは自分自身でも俺を呼びとめた理由が分からなかったかのように、おろおろとしていた。

 

「あ、ご、ごめんなさい、ポップさん。こんな大変な時に……。わ、私、何かポップさんに声を掛けないといけない気がして……」

 

その言葉に、俺はふっと笑みを浮かべてメルルの手をそっと両手で包み込んだ。

 

「ポップさん……?」

 

「心配するな、メルル。直ぐに戻って来るから、それまでダイの事を頼むよ。あいつ、俺の弟分のような奴できかん坊だから面倒をかけるけど、メルルがいてくれるから俺は何の心配もせずに行けるんだ」

 

「ふふふ。メルル、私からもお願いするわ。ダイったら元気だけは人一倍だけど、私達の大切な仲間なの。どうか、お願いね」

 

メルルはマァムに視線を向けて、こくりと頷く。

 

「はい、マァムさん。……必ず。マァムさんも、ポップさんも本当にお気を付けて。私、何だか嫌な予感がして……」

 

「くすっ。大丈夫よ、メルル。ポップには私が付いているわ。今度こそ無茶な真似はさせないから。……それに、今度2人でポップを吊し上げようって約束しているものね」

 

「マァムさん……。はい、……はい! そうですね! 絶対にそうしましょう!」

 

マァムの言葉に、メルルはようやく顔に笑顔を浮かべた。うん、やっぱりメルルには笑顔が良く似合う。それにしても、今何やら気になる事を言っていたな……。

 

「なあ、マァム、メルル。今、俺を吊し上げようとかなんとか言っていなかった? 大賢者、意味不明なんだけど……」

 

「良いのよ、大賢者は分からなくて。ね、メルル?」

 

「ええ、そうです。ふふふ。大賢者さんは、そのままでいてくださいね」

 

そう言って2人は顔を見合わせてくすくすと笑い合っている。うーん、本当に分からないんだけどな。俺を吊し上げるだって? 吊し上げられる事なんてした事無い……、ことも無いかな。うーん、なんか色々とやらかしている気がしてきたぞ。思い当たる事を指折り数えてみたら、片手の指で収まらなくなってしまった……。

 

まあ、良いか。とにかく最後に2人の笑い合っている顔が見られて俺は満足だよ。俺は苦笑いを浮かべながら、今度こそ姫さん達をその場に残して、マァムと一緒に地下牢から地上に続く螺旋階段を上っていった。

 

 

 

 

 

ポップとマァムが去った地下牢……。その地下牢の一番奥の牢獄には、ダイが閉じ込められるかのように押し込まれていた。レオナ達の耳には、その牢獄に押し込まれたダイの発する大きな声が届いていた。レオナは、クロコダイン、ヒュンケル、それにメルルと顔を見合わせ、ほうっと嘆息した。

 

何やら疲れた様子のレオナが、困惑の表情を浮かべたまま皆に意見を伺った。

 

「……ねえ皆、あれ……、どうしたらいいと思う?」

 

「どうしたらと言いましても……、まずは様子を見てはいかがでしょうか……」

 

メルルも、どのように返事を返したら良いものか分からない様子で、頬に手を当てて困った顔をする。

 

「ふむ……。俺は人族の牢獄の作りを知りませんが、最近の人族の牢獄には変わった物があるのですな……」

 

クロコダインは、さも感心するかのように顎を摩りながら、ダイのいる後方の牢獄の方を振り返った。その言葉に、レオナがクワッと両目を見開いて反応する。

 

「違うわよ、クロコダイン! どこの国の牢獄にも普通はあんなのは無いわよ! ポップ君がおかしいのよ!」

 

「しかし、姫。ポップがおかしいのは今に始まった事ではないでしょう。その娘の言うとおり、今は様子を見るしかないのでは?」

 

ヒュンケルの言葉が正しい事を理解したレオナは、それでも再び深く嘆息する。

 

「そうね……。そうするしかないわよね。でもポップ君、多分あれ、勝手にやっているわよ? もしあれがフォルケン王の耳に入ったら、私はどう謝罪したら良いのよ……?」

 

そのレオナの心からの哀訴の言葉に、皆返す言葉もなかった。

 

 

 

テラン城にある地下牢の最奥の牢獄。そこから、ダイの()()()()笑い声が漏れていた。

 

その牢獄……。いや、そこはもはや牢獄と言っていいのか分からない有様になっていた。

 

5m四方に及ぶ牢獄の大半が室内プールになっていた。そのプールには青々とした水が満たされており、小さな滑り台まで備え付けられていた。今、ダイはその滑り台からプールに溜められた水の中に飛び込むという遊びを、喜色満面で何度も何度も行っていた。

 

「あはは。ゴメちゃん、この遊びって凄く楽しいね! 俺、ずっとこの牢屋にいたいよ!」

 

「ピ、ピィィィ……?」

興奮状態のダイに振り回されているゴメは、困惑の声を上げていた。

 

楽しげにプールで遊ぶダイと、それに巻き込まれているゴメ。

 

 

ダイの楽しげな笑い声は、絶えることなくいつまでも続いていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。