一定以上の強さを得た存在の前だけに現れて世界の理を教える系軍服お姉さん 作:りらり
「──あぁぁあぁぁあぁあぁあああ!!!」
「──ぉおおおおおおおお!!」
向かい合い、吐き出される咆哮は2つ。
少女の腰溜めの剣が弾ける。男の上段からの切り下げが放たれる。込められた魔力に、限界を超えて動く肉体。
そして、その一種の交差は──1人の男の体を切り裂いた。
一拍の間の後、男の首がぴちゅん、と弾け飛ぶ。ぐしゃりと力を失った肉体が崩れ落ちた。
そしてそれを見届け少女は、その銀色の長い髪をかきあげるとそのまま地面へ倒れ込んだ。土埃が舞い散る。
「──はぁ、はぁ……はぁ……かった、わ…………」
そして、少女が手を横へと広げる。あらゆる場所が焦げ付き、掘り返された静謐な荒野。
空を見上げながら、そこで一旦体を休めようと──
「──はじめまして、だな?」
──少女の瞳に、唐突に女の顔が映った。
「…………こちら、こそ……はじめ、まして……?」
「おや、冷静だ。またしても奇特な御仁に当たったか?
……ふむ、1つ聞きたいのだが、貴殿は驚いているか?」
軍服のような服を纏った黒髪赤目の女。猫のようにその瞳を細め、彼女は楽しそうにくっ、くっと笑う。少女は地面で大の字を描いたまま、息も絶え絶えに言葉を紡いだ。
「……驚い、てるわよ……なによ、アンタ……」
「ふむ? そうなのか? それしては無口だが」
「……見なさいよ、周り」
「……ほう?」
荒廃した荒野に、穴の空いた地面。立ち上る焦げ臭い匂いに、そして少女の後ろでドクドクと血を垂れ流す男の死体。
「ほほう?」
はじめてそれに気が付いた女は、ニヤリと。それはもう楽しそうに女は笑う。
「──貴様、
「……面白がられるのは……嬉しくない、わね…………仮にも、今私は実の親を殺したのよ」
それを聞き、ギラリと女の目が光る。だが、それを見逃した少女は片手をどうにか動かして地面へ付き、剣を杖にしながらゆらりと立ち上がった。
「……で、貴女なんなのかしら? 敵? 味方? それさえ教えてくれれば……やりやすいのだけれど」
「はて、その問いの答えは測りかねるな。少々待って貰おうか」
考え込むように顎に手を当て、そして何度か悩む素振りを見せると、やがて女は少女へ対し言い放った。
「そうだな……そのどちらでもない、が正解だ」
「私……おちょくられてるのかしら?」
息が整ってきた少女は剣をゆっくりと構える。
(……何故かは分からないけど、やけに回復が速いわ……これなら、もう少し時間があれば逃走くらいは出来るかしらね)
違和感を感じながら、いつもより幾分か軽く感じる剣を一段と深く構える。
それを目にしながらも、女は全く警戒する様子を見せない。
「いや、冗談でも嘘でもない。私の目的を伝えよう。『メルア・セフォンドーラ』」
メルアは目を見開く。そして、苦笑いしながら言葉を零す。
「……なんで名前を、って聞いてもダメそうよね」
「いや、貴様はなかなかに面白い。その程度伝えることも
「なによ。敵じゃないなら、今度は『軍人』とか言い出すつもり?」
軽く服をつまみ、詰まらなそうにそれを一瞥する。そして、女はゆっくりと語り始めた。
「いや、これは……そこまで気にする物でもないな。忘れてくれて構わんぞ。
それはさておき、私の立場の話だ。形式化されてはいないが、それでも敢えて形容するなら、私は──」
そして、女は軽く一息挟み、淡々と告げた。
「──『通達者』だ」