ありふれてないシノビ達 異世界で覚悟を示す   作:なんとなく考えて書いてみました

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シノビは揺るがない

 

 雑多。

 

 それがヘルシャー帝国の特徴だろう。

 

 決して暗く淀んでいるわけでも荒んでいる訳でもなく、皆それぞれやりたい事をやりたいようにやるという自由さが溢れているような賑やかさがあった。何があっても自己責任、その限りで自由にやれ!という意気がある。

 

 そんな中、光輝達勇者パーティーとハジメ達は帝国に攻め入り捕らわれたハウリア族を取り返しに来ている。

 

 傍らで、不安そうな表情をするシアにそっと手を伸ばし、ほっぺをムニムニしてやるハジメ。シアはほっぺムニムニもお気に入りなのだ。ハジメは、嬉しそうにしながらも若干、不安さを残すシアに冗談めかしていう。

 

「捕まっているなら取り返せばいいだけだ。安心しろよ、シア。いざとなれば、俺達が帝都を灰燼にしてでも取り戻してやる」

「ん……任せて、シア」

「ハジメさん、ユエさん……」

「いやいやいや、灰燼にしちゃダメでしょう? 目が笑っていないのだけど、冗談よね? そうなのよね?」

「雫ちゃん、帝都はもう……」

「諦めてる!? 既に諦めてるの、香織!?」

「そんな事する前にあなた達が死ぬに一票」

 

 雫の隣で燃えるような赤い髪を黒に変え頭に2つ耳を生やし、亜人として変装し雫について来ている魔人族特別隊隊長カトレアは市場で買ったジュースを雫と分け合いながらハジメ達にの行動に釘刺す。

 

「この国に来る前に言ったこと忘れたの?約束守れないならあたしは帰るよ」

 

「ちっ、ルールは守るさ」

 

 それは1日前、ハジメが造り上げた飛空艇フェルニルの作戦室での話、全員の視線はホワイトボードに記入されているヘルシャー帝国の情報に集まる。

 

「えぇーこの通りヘルシャー帝国は多種族が共存した実力主義の国ね」

「奴隷売買が盛んってきいたんだが?」

「正確には盛んだった、ね。ガハルドが皇帝になってから次第になくなった。詳しく調べると皇帝に比べたら人も亜人も魔人も神すら等しく弱者だからって、だからこそ実力至上主義が自然と広まったって言える。どんなに底辺でも成り上がれるから」

「神すらもか、、、それはなんと言うべきか」

「傲慢?そうね、けれどそれを言ってしまえるほどに彼は強い、実際に皇帝になってからまずしたことが国にあった聖教教会をぶっ壊すことだったし、その後教会に攻め入られてもガハルド1人で返り討ちにした」

 

 其処でカトレアは一息入れハウリア救出における危険人物を上げ始める。

 

「まずガハルドの親衛隊、通称黒衛隊の6人彼らひとりひとりが一騎当万以上の実力を持ち尚且つ、それぞれに独自の権力が与えられている為、完全にランダムエンカウントのクソゲーになってる」

「独自の権力って何処までの?」

「皇帝の命令も無視できるくらいの」

「んだそれ。名前とかは?」

「分からない。王女さんなら分かるかもだけど、あーけど3に関する役職を持つ人が黒衛隊の1人って噂がある」

「噂しかねぇのか」

「逆に言えば、それほどまで完璧に情報統制が出来てるなんて、工作員達とかも優秀なのかも」

「どうしよう恵里っち!頭に入るけどなんも分かんないぃ!」

「んー、救出作戦の難易度はテストで100点取るくらい難しいってこと」

「やばー!」

 

「恵里それは少し違うよ」

「え?」

「まだ残ってるだろ、なぁカトレアさん」

「ええ、その通り黒衛隊を相手に1人で勝てるそれが帝国最強ガハルド・D・ヘルシャー。彼は1人で国を潰せる」

「…つまり?」

「期末テストで900点以上かな」

「恵里っちー!」

「あ、はは、、」

 

 学期末に行われる全9科目の定期テスト満点で900点なのにそれ以上?

 

「そ、、そんな」

「それをどうにかする為のお前、で良いのか?」

「雫に頼まれたからね、仕方ない。代わりにあたしのだすルールは守ってもらうから」

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「約束その1」

「暴れない、だろ分かってる」

「えぇ、その通り、此処はもう敵地暴れればすぐに勘付かれる。まぁ、、暴れなくても、、、」

「どうかしましたか?」

「シア、前」

「え?わぁ!」

 

 後ろ向きで歩いていたシアが首輪をつけたオオカミの女性と衝突しシアが転ぶ。

 

「ご、こめんなさい!」

「あー、、、嫌こっちこそすまないな。代わりと言ってはアレだが、これタダでもらってくれ」

 

 渡されたのはアイスクリームをロール状にしてその上に複数の鮮やかなフルーツが置いてある、

 

「ありがとうございます!やったー!ユエさん!見てください美味しいそうです〜」

「そうだね」

「わりぃな金は払う」

「いや前を見てなかった私も悪かったからお金は要らない、それよりも君が彼女の主かい?」

「あ?あぁそうだ」

 

 ハジメに顔を近づけ小声でアイスを食べているシア達に聞こえないギリギリの声で喋りかける。

 

「見た所初めて観光に来たろ、首輪、、がな今帝国で流行してるんだが、あの形状は〜その夜のベッドでメチャクチャにしてって」

「錬成」

 

 夢中でアイスを食べているシアに気付かれないように作り直す、無色の宝石が新たに嵌め込みそれに伴いわかりやすく、奴隷であると示していた首輪は、一瞬で誰もが羨むほど綺麗で美しい首輪に。

 

「ふぅ、助かった」

「いやいや、別にいいよ。にしてもあのデザイン」

「あぁ、アンタのを真似させてもらった。良いデザインだったからな」

「ふふ、まぁね、自慢の家族からのプレゼントだからね」

 

 大事そうに首輪を撫でながらはにかみ笑う。

 

「げぇ」

「ん?」

 

 何かの気配を感じたのか八重樫、天之河が視線をはにかんでいる亜人の奥を見て、カトレアはそそくさと八重樫の背後に隠れる。

 

 その子達は3人が見た限り突如として何も無い場所から突如として現れ亜人に抱きついた。

 

「「お母さ〜ん!ただいまー!」」

「ん、ヒビキ、カナデおかえりなさい!今日ははやかったねぇー」

「偉い人が来るから早く帰れーって」

「何か重大で大切な話をするーって」

「そっかそっか、ちょっとご飯の用意するから待っててね」

「「はーい」」

 

 いそいそと屋台を片付けながら家に戻り姿が見えなくなる。

 

 双子は天之河達に向き微笑む。

 

「彼らだよ」

「彼らだね」

 

 双子が両手を合わせて足で地面を鳴らして周囲が暗くなる。

 

 賑わう商店の音が小さくなり消える、そして、周囲に人っこ1人いなくなった。

 

 双子の1人が片足を斜め後ろの内側に引き、スカートの裾を持ち上げ、双子の1人が片方の腕を胸に、もう片方を後ろに当て、丁寧に頭を下げ言葉を綴る。

 

「ようこそ、勇者パーティー御一行」

「ようこそ、奈落に落ちた怪物たち」

「ガハルド皇帝直属の親衛隊、通称黒衛隊が1人第五席ヒビキ」

「同じく黒衛隊が1人第六席カナデ」

 

「「人と亜人と魔人が入り交じる実力至上主義の軍事国家ヘルシャー帝国にようこそ」」

 

「「歓迎致します」」

 

「「「な!?」」」

「言ったでしょ、最初からバレてる可能性があるって、、(あーもしかして)」

「それでは本題に入らせてもらいます」

「本題?」

「はい、わざわざ種族を偽り入国した」

「「そこの魔人族にたいして幾つかの質問を」」

「計画を速めるか、雫ちょっと離れといて危ないから」

「黒衛隊って」

「平気平気クソガキに負けるほど耄碌してない」

 

「そうか、舐められてるな、カナデ」

「そうね、舐められてるよ、ヒビキ」

 

「「猫耳似合わないんだよおばさん」」

 

 互いの敵意で結界がヒビ割れ砕け散り元の人通りに戻る。が3人の周りには人が通らないのか、わざと人が避けているのか、、

 

「「「決闘だ!!」」」

「同意と見て宜しいですね!!」

 

 地面が隆起して1回2回そして3回目で地面から飛び出たのは黒のズボンに白の服そして赤い蝶ネクタイの爺さん。

 

「只今よりこの勝負は決闘として認定しました!!よってこれよりガハルド皇帝公認決闘審判員レフ・エリーが審判を務めさせてもらいます!!

それではーーーーーーー決闘開始ーーーー!!!」

 

「まだ23だっつのクソガキ」

 

「「べーーーーだ!!」」

 

 手に持った剣を振り上げ攻撃するカトレアと守るヒビキとカナデ、その衝突により起こった衝撃により壊れる屋台が出てくるがそれを越える程、周囲の声は盛り上がっていく。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 カトレアは自らを犠牲にして、南雲ハジメ達に救出作戦の実行をさせた。

 

 松明の光しかない、廊下には格子のはめ込められた無数の小部屋の中には捕えられたハウリア族は居ない、それどころか看守すらいない。

 

「誰もいませんね」

「彼女が言った通り」

「八重樫達からの連絡だと、兵士達も対応に追われているって連絡が来た」

 

 勇者パーティーは、その場で待機して何かあった時のバックアップをしてもらうため通信機で連絡するが、決闘は祭りになって新しく屋台が出来たり、賭けをしていたり、スポーツ観戦している感じと気の抜けた返信と共に周囲の歓声も聞こえた。

 

「だが、ハウリアや看守も居なくなってるのはわからねぇ」

 

 罠をスキルと魔法で突破して松明では無い魔法の明かりが溢れている扉に辿り着く、中からは怒号や嘆き、様々な声がきこえてきた。

 

「だいたいさぁ〜みんなちょっと私を軽く見過ぎ!私さ偉いんだよ!ガハルド直属だよ!なのにさ!「ちょっと看守お願い」ってタメ口でしかも仕事放り投げる理由が決闘の応援したいからって!そりゃさ!ヒビキちゃんとカナデくんは可愛いよ!?可愛いけどさ!なんかさ!あるじゃん!?私にもさ!入隊したのは私が先なんだよ!先輩なんだよ!うぅ〜なんで私だけぇ〜」

「かぁ!なんだ舐めらるのが嫌なら殴って上下関係を解らせれば良い!ウチらのボスはそうだったぞ!!」

「そうだ!そうだ!死な無い程度にボコボコにすれば世の真理にめざめさせてくれるぞ!」

「愚痴は吐き出しとけ!溜め込むだけ損だからな!!」

「う〜君たち優しいねぇ!嬉しいよー!ほらほらどんどん飲みなどんどん食べな!今日は私の奢りだよ!!」

「「「「あざーーす!!」」」」

 

 酒やつまみ、肉や魚料理が机に並べられ宴会を開いて騒ぎまくっていた。

 

「それでさ、どんな訓練だったの?」

「あー!?そりゃ族長見せてやってくださいよ!」

「いよ族長!やっちゃって!!」

「んんっ!それじゃこの。深淵蠢動の闇狩鬼ーーカームバンティス・エルファライト・ローデリア・ハウリアが我々ハウリアの目を覚させてくれたボスの言葉を「この先、〝ピッー〟されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ! 今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ! 貴様ら全員〝ピッー〟してやる! わかったら、さっさと魔物を狩りに行け! この〝ピッー〟共が!」

「待って!それ此処でしたらいろんな人から目ぇつけられて給料引かれる奴だ!!」

「ますます言動がボスに似てきたな!」

「だよな!ボスが乗り移ったみたいに!」

「まぁ、ボスならそもそも捕まらねぇし、捕まっても全部ぶっ壊して出て来るけどな!」

「ぶはははは、なにそのボス規格外過ぎて笑える!!激ヤバだ!鬼じゃん!?」

「いや鬼だから」

「いやいや悪魔だろ!?」

「バカが、それなら魔王が似合う」

「魔人族の魔王と同列な訳ないだろ」

「じゃあなんなのよww!?」

「紅き白髪の神罰代行者(ディバインパニッシャー)

 

 周囲の空気は電流が走り一瞬で静まり返り静寂が訪れ、

 

そして、

 

「「「「さすが!!族長だ!!!!」」」」

「「「俺たちに出来ないことをやってのける!痺れるぜ!!」」」

「ふ、当たり前だ!しかし、ロンド派と狂飆派そして新たなパニッシャー派、この中から我らがボスに相応しい二つ名か話し合おうじゃないか!!」

「でぃべ……なんだって?」

 

 雷鳴の様な拍手と喝采が牢屋中に響き渡り、酒や食べ物、果物がどんどん無くなり声もそれに合わせて更に大きくなる。

 

「これ助ける必要あるのか?」

「…帰る?」

「一応逃げれ無いと思うので…助けてあげて下さい……」

 

「…おい、お前ら帰るぞ」

 

「「「「「「「ボス!?!?!?」」」」」」」

 

「しんにゅうしゃ!?」

 

 椅子に座っていた女は腰に付けていた剣を座ったまま引き抜くが途中で止まり、立ち上がりに机に膝をぶつけ、溢れた酒に滑り転けて剣がすっぽ抜け、地面に顔から激突しようとするが、

 

「なんの!」

 

 倒れる体を回転させ背後から倒れかけていたのを変え両足、及び片手の三点を地面に着けて着地し、立ち上がる。

 

「ふっ」

 

 が、すっぽ抜けた剣の柄が頭を直撃しフラつき床に捨てられていたバナナの皮をおもいっきり踏み締め、滑る

 

「あっ」

「「「「「「「あ」」」」」」」

 

 ゴンっ!!

 

 

「むきゅ〜」

 

 いい音と気の抜けた声が部屋を静寂にして、名も知らない酒飲み女が、勝手に、1人で、滑り転げて、頭を地面にぶつけて気絶した。

 

「「「「「「「………」」」」」」」

 

「……お前らとっとと帰るぞ」

 

「「「「「「「Yes,Sir!!!」」」」」」

 

 惚れ惚れするような敬礼をした。そして、躊躇いなくアーティファクトで作り出したゲートをくぐっていき、死者を出さずヘルシャー帝国の地下牢でハウリア族の噂は、夜から朝方まで大騒ぎになった事は言うまでもない。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「以上で報告終わりまーすヒック」

「ご苦労」

「はっウップ」

「まだ飲んでるのか」

「ちゃんど仕事はじましたよ」

 

 そう言って頭の上にバナナが乗った女は再び酒を飲む、実際手元の資料にはハウリアがあそこまで凶暴化した理由、その背後にいる人、何故ヘルシャー帝国に攻め入ったか、侵入経路までこと細やかに書き記されている。

 

「ふーんなるほどなぁ、迷宮攻略者の南雲ハジメに300年を生きる吸血鬼のユエ、それらと引けを取らない身体能力を持つハウリア族のシア、攻め入った理由は生存を勝ち取るためぇ?いい理由じゃねぇか、そうは思わないか?王女さんよ」

 

 机を挟み対面にいるリリアーナはガハルドが見ている資料と同じものを見ながら微笑みを崩さず対応する。

 

「最弱種族と呼ばれているハウリアが此処まで凶暴化したんですよ。それに新しい黒衛隊の1人もハウリアですよね。面白くてなによりです」

「ふ、はは、入って来たばっかなんだがなもう知っているのか、まぁ確かに面白い、それに、この様子だとまた攻めに来るだろうなぁ」

「ふふふふ、そうかも知れませんねぇ」

「いやぁ、楽しみだぜ!その日が待ち遠しいぜ!」

「えぇ待ち遠しいですね」

 

(うぅ、がえりだい)

 

 2人の話し合いはピリピリといつ爆発するか分からない時限爆弾の様なもの、その声音がその一挙手一投足で世界が歪んで見える。

 

 もう酒を飲んでも何も感じない、アルコール中毒では無く生命の危機で手が震える。

 

 シノビとして実力が芽生えれば否応無しに耳に眼に入る3人の逸話。

 

1人で国を潰せてその実力は未だ天井知らず

 

  最強 ガハルド・D・ヘルシャー

 

彼が居れば軍の全てが一騎当千のエース級に

 

  最狂 フリード・バグアー

 

実力も戦い方もベールに包まれ誰も知らない

 

  最恐 リリアーナ・S・B・ハイリヒ

 

 そのうちの2人がこの場で各々の思惑をぶつけ合う。

 

 既にお互いの腹のうちは話し合っている。

 

 リリアーナが来た目的はひとつ大戦を引き起こす国を止めるため。

 

 ガハルドの目的はひとつあの日の退屈が裏返った勝負をもう一度。

 

 皇帝は玉座に座る存在として全ての挑戦を待つ

 

 女王は強かにこの世、全ての情報を調べ上げて待つ

 

 命を賭ける刹那の瞬間の為。

 

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