ありふれてないシノビ達 異世界で覚悟を示す   作:なんとなく考えて書いてみました

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暗幕は上がり舞台が始まる

 

 口の中の水分が渇き、武器を握る手が震える、ツーと汗が流れ、地面が揺れ始め、木々を噴き飛ばし地面を貫き空から飛来し奴らが攻めて来た。

 

 月の光は奴らを照らさない見えるのは聞こえるのは数え切れない無数の赤い瞳と自身の鼓動。

 

 それは、木々の隙間を埋め尽くす大勢の魔獣達の影であった。

 

 誰かが息を呑んだのと同時、全ての混合師団の面々が同じ事実を察した。そして全員の意思が統一されると、彼らの視線が先頭にいる存在へと投げかけられる。

 

 ――先制攻撃、その命令を待っているのだ

 

 彼らの顔は今か今かと前を見る。

 

 その期待に応えるため彼女は短剣を自らの手に突き刺す、

 

 そして、

 

 開戦を宣言する様に最大火力を叩き込んだ、

 

 

「奥義 帝国式開伝『戦姫緋龍騎士(せんきひりゅうきし)』」

 

 

 手から流れる血が腕、胴体、脚と全身を侵食し最後に頭部を纏い月夜に反射する鮮やかな緋色の鎧を創り上げた。

 

 迫る魔物たちを眼の前に緩やかに緩慢に

 

 けれど繊細に腰の剣を引き抜き横に一閃

 

 剣の残影から五つの真紅の龍が出現し地面を空をそして、魔物群れを喰らい尽く。

 

 剣を納めて、息を吸って

 

「いくぞおぉぉぉぉ!!!」

 

「「「「おぉぉぉぉーーー!!!!」」」」

 

 大地が揺れる、大楯を地面に突き立て、全身で支え構え槍を握り魔物を待つ。

 

「構えぇぇぇぇつつ!!」

 

 そして、衝撃、体が吹き飛ばされそうになるも耐える、靴を削りながら、ひたすらに、力を噛み締め歯茎から血が流れる。

 

「突きぃぃぃぃぃ!!!」

 

 ついに、進撃は止まり槍を持ち、盾と盾の間から魔物の心臓(魔石)に向けて突き刺す

 

 魔物の死体が重なり壁を作り一歩ずつ前に前にと進みながら、ヘルシャー帝国樹海戦線が始まった。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おいおいおい、何事かと思えば」

 

「「グリッドさん!」」

「「「隊長!」」」

 

 頭上で優雅に浮かんでいるのは、全てが同じ美しい造形の顔を持ち銀の翼を羽ばたき、滝のような殺意を放ってくる神の使徒の集団。

 

「市民の避難は?」

「は!すでにこの地域一帯の避難は終わっています!」

「その調子で他地域も頼む、それとあれは黒衛隊が受け持つと連絡を」

「はっ!ご武運を!!」

「諸君らにも武運を」

「「「はっ!!」」」

「ヒビキくん、カナデくん準備いいかね?」

「りょうかい!」

「分かりました」

 

 しかし、呑気に待ってくれたりはしないか、

 

 空から、暗闇の中さながら雨のように落ちてくる分解する銀の羽根、上級魔法の数々、一つでも撃ち漏らせばヘルシャー帝国に甚大な被害が及び、人に当たれば死に至る可能性もある。

 

「言霊を」

「「キエロ!!」」

 

 ヒビキとカナデの言霊術によりヘルシャー帝国の結界が、銀の羽根が、様々な魔法が、双子の視界に入る全てが消えた。

 

「すみません、結界ごと壊しました」

「ごめん!使徒まで届かなかった!」

「いえ上出来です」

 

 顔を上げ使徒達をみる、使徒達は攻撃を止め停止、そして頭の中に声が響く周りを見れば同じ様に困惑しているカナデとヒビキがいる、おそらくこの場にいる者達に語りかけている。

 

『これより、我らが同胞の為、ヘルシャー帝国を潰す。懺悔と後悔を味わいなさい』

 

 同胞のため?いやあとで考えろ今は、

 

「ならば、あなた方には帝国の土の味を知って貰おう」

 

 

 

「手伝います。重力千倍」

 

 後ろから声が聞こえると、空から使徒達が落ちてきた、

 

「貴方は勇者パーティーの」

「八重樫雫です。後、長い間止められない、、ので、、、早く!お願い!します!!」

 

 何をしたのか分からないが、使徒達は何かに押し潰され動くことが出来ていない、避難はすでに終わっている。

 

 私のでは、殲滅能力に欠ける。多少の被害もやむなしか。

 

「了解した。2人とも奥義の使用を派手にぶちかましなさい」

 

「「はい!!」」

 

 双子は腰からナイフを取り出し自身の心臓に突き刺し引き抜く、刺した穴から血が吹き出し地面に広がる。

 

 血の池が双子を中心に広がり、心臓から流れる血は上半身を覆い殻をつくり、そうして双子は言葉を綴る。

 

「奥義 帝国式開伝『緋陽(ひよう)緋霊(ひれい)宵闇魄(よいのみはく)』」

      

 宵の月に照らされて映る全ての影法師から

 

 浮かび上がる魂魄がフラフラゆらゆら舞い踊る

 

 血の波紋の音色を聞き、緋色の魂を灯火に、

 

 冥界の炎陽が顔を覗く

 

 

「奥義 帝国式開伝『蹂躙(じゅうりん)極煌(きょくこう)骸鎺(むくろばく)』」

      

 血の池から這いずり現る骸骨達が

 

 カチカチ、歯を鳴らし重なり嘯く

 

 破壊し、破滅し、絶望し、滅亡せよと

 

 哀れな骸の剣を汝の元に。

 

「「尺骨(しゃっこつ)炎炎(えんえん)億万(おくまん)国綱(くにつな)」」

 

 殻が砕け散り2人で剣の柄を握り空へと掲げる

 

 骸が重なり創り上げた骨の剣は

 

 冥界の炎を纏い、歓喜し、絶叫する、

 

 ゆらめく冥界の灯火に従い剣を振り下ろす

 

 結果、奈落を作り上げた。

 

「このまま一気に行きますよ」

「「はい!」」「えぇ」

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 大仰に開けられた扉から会場に入り私のドレス姿に、会場の人々が困惑と驚きの混じった声を上げる。私が選んだ光を吸い込みそうな漆黒のドレス、似合っていればいいけど、、

 

 あぁ、あと私だけではないか

 

 隣を歩くバイアスの姿は軍事服に彼の背丈程ある巨大な戦斧に腰の長剣、どうしようもないくらい婚約発表には向いて無い格好。

 

 会場は取り敢えず拍手で迎え入れたものの、何とも微妙な雰囲気にドッキリ成功とでも考えているのか、ニヤニヤと笑っている。

 

二人は壇上に上がる。

 

 司会の男は、困惑を残したままパーティーを進行させた。私とバイアスの様子を見て、今にも笑い出しそうなガハルドの挨拶が終わると、会場に音楽が流れ始めた。さて挨拶回りとダンスタイム、私達が意図して作り出した微妙な雰囲気を払拭しようと流麗な音楽が会場に響き渡る。

 

 音楽の旋律に合わせて腕を脚を回して踊る。

 

「いゃ〜いい顔だったな」

「クソガキはどちらですか」

 

 未だ、ニヤニヤと笑うバイアスに溜め息を吐く、確かに好きにして、と言ったがこんないかにも「争いに来ました」なんて格好で来ないで欲しかった。

 

「悪りぃが、凡人は最大限の準備と覚悟がいるんだよ、お前ら(シノビ)に挑むならな」

「‥別に構いません。挨拶回りはどこから行きます?」

「俺の嫁のとこから!」

 

 今までの悪い笑みでは無く、子供のような純粋な笑顔が溢れる、

 

「分かりました。基本は貴方の後ろで待機してます」

「よし、いくぞ!」

 

 そこからは、バイアスのお嫁さん達に揉まれた、「これからお願いしますね」「私の独占できる時間が」「……ぃぃ」「ふーん、かわいいじゃ無い」等々。

 

 そして、今夜なにをするのか話したのかそれぞれの応援方法でバイアスを鼓舞していく「別にあんたのためじゃ無いけど、あったから貸すわ」「私だと思って持ってて下さい」「………ん」「頑張りなさいよ」「き、、気をつけて、、」等々、窮屈な挨拶回りのカンフル剤にはなった。

 

 その中、楽しげな演奏が始まりそちらを見れば会場の主役は南雲とユエであり、誰もが幸せそうにくるくると踊る二人に注目していた。

 

「傍から見れば完全に二人の婚約パーティーですね」

「はっ別にいいんじゃねぇの?どうせ婚約なんてただの口実だろ?」

「口実では無いと言ったら?」

「お断りだ、俺の嫁達が黒くなる」

「………そうですね」

「えらく考えたな、どうでもいい、と答えると思ったが」

「いや、なんかちょっとあまりにも光すぎて良心に針がチクチクと」

「お前に良心なんてあるのか??」

「ありますよ、ハイリヒ王国民限定で」

「くはは、そうだったな」

「挨拶回りは終わったのでは?」

「まだアイツらが残ってる」

 

 演奏が終わり贈られる拍手に優雅に礼を返したハジメとユエが、仲睦まじく手を繋ぎながら仲間の元へ戻って来た。そこへどうやら競り勝ったらしいティオが進み出て、期待に満ちた眼差しをハジメに向ける。

 

 しかし、ティオの期待はあっさり裏切られた。

 

「よぅ、はじめまして南雲ハジメ」

 

そう、ハジメに声を掛けてきた者がいたからだ。

 

 その相手はこの国の皇太子バイアス・D・ヘルシャーだった。

 

「今日のパーティーの主役がパートナーと離れてどうした?」

「なぁにちょっとした挨拶回りだよ、、、八重樫と天之河はいないのか」

「気分が悪いとかで大事をとって休むそうです」

 

 事前にこのことを聞いていた白崎は が答えると小声で何か呟くと。

 

「正解だなそれ」

「え?」

「いや見たかったなぁ、親父が求婚した相手と、再戦を望んだ奴」

「気になってたんですか?」

「まぁなぁ〜、あぁ悪かった話の途中だったな。おら色男、嫁のダンスのエスコート頑張れよ」

「嫁じゃねぇ、変態だ」

「こ、このタイミングで、そう来るとはっ! どこまで弁えておるご主人様じゃ! はぁはぁ……んっ」

 

 誰もツッコミを入れずスルーした、がティオとハジメを何度か往復し何か納得したのか頷き

 

「そなの?まぁ俺らがどう足掻いても盤上の駒なんだし精一杯やろうぜ」

 

「は??」

 

 そう意味深な言葉を残してバイアスは去っていった。この言葉を南雲達は理解しきれない。もしも、この言葉を聞いたのが別の人でも同じだろう。

 

 その考え至ったとしても、彼女の全てを知らないと「有り得ない」と言って切り捨てるだろう。

 

 だが、彼女の恐ろしさを知る人達ならこの言葉があればすぐに確信を持てる、そういう決定的な証拠になる。

 

 だが、その言葉が無くても黒衛隊は優秀だ、もうそろそろ気づくはずだ。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 彼らの先頭にいるのは月明かりが反射して腰まである紅い髪が靡き獰猛に狂暴に刃を見せる黒衛隊第二席のルイ・ヴェルその人、混合師団が押し始めたが、その雰囲気は何故かピリピリと怒気に包まれている。

 

「何かおかしい」

 

 冒険者達から提出された書類、グリッドを含むシノビ大隊の巡回で入手した魔獣の残りと妖魔の気配、それ等に対応する為に兵站を作り上げ武器を用意し、人数を揃えた。

 

 その全てがうまくいき過ぎている。そうなる様に皆が努力してくれたから、で考えれば良いがこの場の責任者である事からこそ、別の可能性も考え無いといけない、、、

 

 

 

 倒しても倒しても追加されていく使徒を相手取り一振りで3体持っていくが6体追加された。

 

 だが、勇者も参加して避難も終わり兵士達も集まり出した、このまま続ければ殲滅できる

 

「しかし…」

 

 心に余裕を持てたから再度浮上した「誰の命令か」同胞と言っていた点からエヒトでは無い、なら神の使徒同士の念話で?

 

 それとも、、、

 

「「まさか」」

 

 2人に共通する点は無い、片方は自由人もう片方は生真面目、油と水とまでは行かないがそれでも方針や計画が真逆でぶつかり合うそんな関係、共通しているというのは4年前のあの日、帝国襲撃事件を全容を知っている点、だから辿り着いた細く千切れかけていた糸を掴み繋ぎ一つの可能性を見つけた。

 

 見つけてしまったら、無かったことにはできない、疑念は直ぐに確信に変わっていく。

 

「「王が危ない!」」

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 そろそろ気づいた人も出るでしょう。

 

 これはあの日の再現です。

 

 侵撃を続け魔王城まで迫り追い詰められた魔人族達の反撃による帝国襲撃それに乗って攻めてきた神の使徒に皇帝が対応した帝国襲撃事件とその後の魔王城半壊の。

 

 城戸から得た情報と私の情報を比べて金の冒険者を向かわせ魔物を追いやり、ハルツィナ樹海にいる魔物と合流させ八雲と藤原から拝借した札で数を増やし黒衛隊と混合師団を樹海に追いやった。

 

 神籬で半使徒となった中村恵里に禁術をぶつけた時に神の使徒に接続出来たのは、偶然の産物ですが、決闘した土地に放ち黒衛隊の2人を確実に巡回しているもう1人も、そちらに注意が向く。

 

 1人は戦えない、1人は彼らに、1人は不明、、

 

 ですが、

 

「準備は終わった」

 

 壇上にガハルドが上がり、そこでガハルドは意味ありげな視線を私に向ける。

 

「さて、まずは、リリアーナ姫の我が国訪問と息子との婚約を祝うパーティーに集まってもらったことを感謝させてもらおう。色々とサプライズがあって実に面白い催しとなった」

 

樹海の前線と城下町の戦いでは事の重大さに気がついた2人の奥義によって文字通り消し飛ばすが数は一向に減らない。

 

「パーティーはまだまだ始まったばかりだ。今宵は、大いに食べ、大いに飲み、大いに踊って心ゆくまで楽しんでくれ。それが、息子と義理の娘の門出に対する何よりの祝福となる。さぁ、杯を掲げろ!」

 

嫁たちからの激励を受けて震える手をポッケに隠し入れて、これからの勝負に心を燃やして一歩ずつ進み、

 

 そして

 

「この婚姻により人間族の結束はより強固となった!我等に「異議あり!!!」あぁ!?なんだぁ…バイアス、なんか文句でもあんのか?」

 

「大有りだクソ親父」

 

 戦斧を両手で持ち地面スレスレまで持っていき構える。

 

「そうか、テメェとの喧嘩は初だな」

 

 グラスを上に投げ腰の剣を抜き上段で構える。

 

「あぁそうだな」

 

 ヘルシャー帝国の原則、強い奴がなにやっても良い、ガハルドに勝てばそいつがどんな奴であれこの帝国の王になる。

 

 異議を通したければ勝つしか無い、

 

 グラスは空中を舞い、入っていたワインをばら撒き天井近くまで上がり、重力に従い落ち始め、

 

 静まった会場に鳴り響くガラスの破砕音

 

「「親子喧嘩だ!手ェ出すな!!」

 

 戦斧と長剣の衝突で机が椅子がガラスが人が余波で吹き飛び全ての光が消え失せ、会場は闇に呑み込まれた。

 

 

 

 さぁ始めましょう。

 

「あの時と同じ世界を変えるのに5分も要らない」

 

 創り上げた舞台の幕を下ろすため。

 

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