ありふれてないシノビ達 異世界で覚悟を示す   作:なんとなく考えて書いてみました

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夢の先にあるのは

 ガハルド・D・ヘルシャーとハイリヒ・S・B・リリアーナの2人の間に割り込み宣戦布告した少し前。

 

 いくつもある塔のてっぺん、誰も来ない小さな一室で、動かない丸まった人影がいる。

 

 人影、いや遠藤浩介は小刻みに震え時おり嗚咽にも似た呼吸音が(こだま)する、

 

 ーー何度思い返す、力に酔いしれ全能感が全身を満たす、その感覚で、恐怖で胃から内容物が吐き出される。

 

 とは言っても起きてから水も食事も喉に入らずただ胃液を吐き出すだけに終わるが、苦く酸味がかった液体が口の中に広がり再び小さくうずくまる。

 

 自分が出した被害、城門は半壊、城門前は未だに魔物の死骸とその惨劇が広がっている、ハイリヒ王国の城下町は全壊、人類の栄光を指し示す城は壊れてないのが不思議なくらいボロボロ、教会に至っては粉々に、人的被害は死者は国王、大臣の教会関係者の20名弱、重傷者3万人の、軽傷者5万人弱の大被害、これを神の大戦における未曾有の大災害として広げたが、実際は、たった1人の人間が悪意を持って起こした事件だ。

 

 裁かれるべきはずの俺は、のうのうと今を受け入れ生きている。

 

 あぁ、あぁ、吐き気がする。

 

 なんで俺は、今動こうとしないんだ、

 なんで俺は、今死のうとしないんだ、

 

 

 なんでおれは、いまもまだいきているんだ。

 

 

 分かっている、何度も試した、首を斬ろうと毒を飲もうと全身を潰そうと、けどその死ぬ一歩手前で何度も思い返すリリィの言葉で体が生きる為に動く。

 

「う、、ぇぇぇ、、、」

 

 本日で通算2桁を超えた嘔吐に胃液は出なくなり吐き気と掠れた声だけが響く、

 

「人間の限界ってどこまでだっけ?」

 

 ご飯をとらなくて大丈夫なのは、1週間ほどだったか?水を取らなければもっと短い筈だけど、体の衰えはまるで感じない。

 

 それどころか、前より力は増加していることを実感する。

 

「なんで、、なんで、、、なんで!?なんでだよ!!」

 

「うぉ、びっくりした」

 

「え??」

 

 誰もいない部屋に誰か入ってきた。

 

 ここは、かなり特殊な場所だ、以前リリィから聞いた話だとここは王族しか知らない秘密の通路の一つで隠れるのに最適の場所だと。

 

 だからこそ、ここに来れるのは

 

「やっぱ、ここにいたか、、お…遠藤さん?」

 

「ラン…デル王子」

 

 日中着ているシンプルながらもところどころに豪華な装飾を付けている服では無く少しダサい学校ジャージみたいな服を着ている。

 

「王子はいりません。ランデルって呼んで欲しい」

 

「えっ、えっとランデル?」

 

「はい」

 

 年相応に元気でにこやかに笑う、だがわずかに目元に残るクマに、こんな少年が連日寝れていないことが分かり自身の胃がきしみ痛くなる。

 

「こんなとこにいたら気分も何も改善はしない」

 

「……いいんだ、俺はここで…ここに」

 

「ふー」

 

 先程までの暗く澱み淀んでいた部屋に、冷たくサッパリとした風が体に当たり、月の光が影を伸ばす。

 

 伸びた影の先にはランデルがこの部屋の唯一の窓を開けこちらを見ている、リリィによく似た表情でしかし、彼女とは違うどこか自身満々のあどけない顔で影が近づき服を掴まれる。

 

なんでこいつが?、まぁこんな部屋に長くいたらそうもなるか」

 

「な、にを」

 

「あんたは、知って考えるべきだ、この国と民の強さと、あんたのこれからについて、な!」

 

「え?は、あぁ?はあああぁぁぁぁ??!!」

 

 直後に感じた浮遊感と頭の上にある地面で自分が夜の空に飛ばされていることが分かった、一瞬で王都に放り出され自分を中心として世界が回る。

 

「ふはははは!大きい声を出せば!案外スッキリするもんさ!!」

 

「ふざけんな!!俺がやったことは絶対にもう!!なくならい!!」

 

「だからなんだ、大事なのはこれからの行動だろ」

 

「しるか!!そんなの!!!考えても考えても!!どう考えても俺が悪いんだから!!」

 

「だから!これから!どうするか!考えるんだろ!」

 

「だから!!罰を与えてくれれば!「罰は!!」……え?」

 

 星に向かって叫び空の旅を続けていた2人だが重力に囚われ旅が終わる。

 

 髪や服がなびき優雅に軽やかに地面に着地したランデルと、受け身をとれず尻もちをついて地面に転がり着地した遠藤。

 

 すぐに起き上がりランデルを睨む、周囲に人の気配は無く、城門に近いため災害の跡が色濃く残り瓦礫が周りを埋め尽くしている。

 

 その中でランデルは口を開く、

 

「罰は、今のあんたにとって麻薬と同じだ」

 

「……はぁ?」

 

「いっとき、罰を与えれば確かにアンタは気が楽になるだろうな。けど再び罪の意識で死にたくなる。そしたらまた罰を求める。これからずっと違うか?」

 

「っ……そんな訳!「ならなんで言い淀んだ」っ!」

 

 図星だった、否定の言葉が喉奥に詰まり出せなかったぐらいに、力が抜け崩れるように膝をつく。

 

 震える体を止めようと力を込めるが余計に震えるだけ、寒さからか、それとも恐怖からか、ガチガチと歯がなる音が耳に入り込む。

 

「なら、、なら、、、どうしたら」

 

 震える遠藤の服の襟を両手で掴み引き上げ眼と眼を合わせ、声を荒げる、ボロボロの彼に届くように、素通りさせないように、ランデルが持っている憤りをぶつける為に。

 

「そんなの一つだけだ!今と向き合え!!遠藤浩介!!辛くとも!!苦しくとも!!血ヘド吐こうとも!!眼を見開き今を受け入れ前に進め!!!

 

それこそが!自分で自分を救う方法だ!!!!」

 

 冷える風が熱くなった2人を冷ます、荒々しい息と震える息をはく2人は落ち着きを取り戻し地面に座り込む。

 

「好きなんですよ」

 

「え?」

 

「この国の灯りが」

 

「あ」

 

 目の前に広がるのは、人々が作り上げる人工的で優しい暖かな灯火が夜空を舞い幻想的な世界を見た。

 

「この災害で亡くなった人に対する供養。ここ数十年教会に邪魔され続けて、この文化は廃れかけたけど、あんたが暴れたおかげで教会は潰れいろんなことが出来た」

 

「やっ、辞めてくれっ!!俺はっ!そんな!できた人じゃない!お前みたいな子から礼を言われるような……」

 

「俺がそう言いたかっただけ」

 

 その顔は真っ直ぐ自分を見てた、髪が風に揺られ目から涙があふれた。 

 

「あれ?なんで」

 

 止まらない、拭っても拭っても、流れ続ける。

 

「泣いていい、というか今まで泣かなかったのがおかしい。いきなり色んな物を背負わされて頭が混乱して、いろんなもん見て聞いて感じて、心と頭の処理が、ようやく終わったんだろ」

 

 止まらない、涙が止まらない、この景色が、この光景が、この情景が、この感情が、

 

「姉、、リリィねぇが言ってました。涙が出るなら一度全部吐き出した方がいいって、そこから明日について考えればいい」

 

「明日…?」

 

「あんたは、これから何をしたい?」

 

「おれは、、、」

 

「そうだ、俺があんたに礼を言いたかった、だからこんな事した。やりたい事したい事なんでも良いアンタは何がやりたいんだ?」

 

 シノビでは無く、シノビガミの器でも無く、

 

 1人の男として、何のために、俺はこの力を使うのか、、誰のために、、、

 

「あっ」

 

 

 決まってる、そんなのたった1人のために、、

 

 

「リリィの為に使う」

 

 

「よく言った兄さん!」

 

「ん?兄さん?」

 

「いやまぁ細かいと事はいいんだよ、それより今ねぇさんは1人でヘルシャー帝国に行って皇帝と喧嘩してる」

 

「なっ!?」

 

「後のことは自分がやっておく、飯食べて武器を持って服着て身だしなみ整えて」

 

 突如として出てきた料理とご飯と服と武器。

 

 数日ぶりにお腹が鳴った、その匂いに温かさを示す白い湯気にゆっくり近づき手を合わせ、

 

「いただきます」

 

 1番最初は油が跳び豪快に焼かれている骨付き肉を手に取り齧り付く肉汁が口の中に溢れ飛び散る、その歯応えがスパイスの風味と合い肉が肉で進む。

 

「うまい」

 

 次は視覚も楽しませようとしている魚の薄造り、一切れとって食べる、油の旨みが口いっぱいに広がった、今度は品がないが一切れでは無く一気に十切れ以上を取り食べる、イカのようなしっかりとした歯応えが、噛むたび出てくる旨みが広がる。

 

「うめぇ」

 

 次に手を取ったのは日本人の魂と呼べるお米、呼び方は違うのかもしれないが、紛れも無く自分たちのソウルフード、まずはそのまま食べる、もっちりとした甘みが稲妻の如く脳に届く、次に肉と一緒に魚と一緒に、進む進む進む。

 

 食べ始めて5分で机一杯に置かれてあった料理は無くなり手を合わせて。

 

「ごちそうさまでした」

 

 今着ている服を掴み脱ぎ置かれている服を羽織る、重厚感のある黒に草花柄の金と銀糸の刺繍に多彩な模造宝石を埋め込まれている、夜の月に映える服を羽織った。

 

「ランデルありがとう」

 

 塔の上であった時とは、ほぼ別人の顔つきに、これならば後を託せる。

 

「リリィねぇを頼みます」

 

「あぁ、行ってくる」

 

 夜の風が頬を撫でる、力が無限に湧いてくる3000メートル富士山と同等の大きさの山が前に地面を踏み締め跳ぶ1時間もかからず登頂、そのまま怪段を登り空を駆ける。

 

 雲を突破して吐く息が白くなり星空に手を伸ばす、輝く星々を眺めながら、背中から地面に落下する。

 

 体勢を変えて星々を背に背負うと、目の前に広がるハルツィナ樹海の一部が砂漠化していた。

 

「あれは、、」

 

 その元凶は今も森林を貪り食らう50メートルを超える超巨大草食獣が無数に存在し砂漠化を広げている。

 

「体をあっためるにはちょうど良い、まず一体」

 

 ランデルからもらった武器を引き抜き落下の威力全てを獣の1匹に受け流し潰れる。

 

 刃渡50センチ振り回しやすく取り扱いやすい、片刃のナイフ、良い武器だ。

 

「隠忍の血統 血社(しえしゃー) 血騰(けっとう)

 

 血社に伝わる血功のひとつ、触れた相手の体液を沸騰させる。

 

 草食獣の血が蠢き泡立ち沸き立ち周囲の獣が燃え出す。そこでようやく獣たちは遠藤を敵とみなし潰しにかかるが、

 

「遅すぎる」

 

 光速で動く遠藤にはスローに見える、右手はナイフを逆手で持ち、左手は右手に軽くかぶせて腰を下げ一拍、嵐を起こして、踏み潰そうとした獣たちはバラバラの肉塊になり、無事だった獣も風により遥か上空へと吹き飛ばされ重力に従い地面に叩きつけられ絶命する。

 

「のこり、に、し、ろく!」

 

 光速で動く、影すら置き去りにして敵を見失った獣は雄叫びを上げ暴れる、だが1匹また1匹ともの言わぬ屍となり数秒で地面に崩れ遠藤1人が立っている。

 

「よしよしよし!」

 

 背後から人の気配がするが無視する、今はただ彼女の元に、

 

 周囲を神の使徒に囲まれるが無視して一歩、空を踏み締め包囲網を突破して

 

 見つけるリリィの姿と剣を振るうガハルドの姿。

 

「リリィ…っ!」

 

 ここで行かなければ来た意味が無いもっともっと速く!!

 

 音速を弾速を光速を超えて空から落ちる。

 

「誰だお前」

「なんで、なんで、君がここに」

 

 剣を避けることはできた。だが、生々しく残る傷跡の数々、もっと俺がしっかりしていれば、もっと速く立ち直っていれば、

 

 その、全てを呑み込んで。

 

「後は、俺に任せて」

 

「まっ「大丈夫だから」……」

 

 心配してくれているのが分かる、その眼から、声の震えから、指先から、だけど、もう大丈夫、俺が揺らぐことはない。

 

 ただひとつ君の為に戦うのなら俺は大丈夫

 

「俺の名前は遠藤浩介。リリィを守る為お前に勝つ」

 

 月の明かりに照らされてナイフを引き抜く流麗な音が鳴り、その場にいる全員の動きが止まる。

 

要人たちの救出が終わり応援に来たこくえい第一席、

樹海から追いかけて来た黒衛隊第二席、

城に飛んだ人を追いかけて来た黒衛隊第三席、

体を引きずり戦いを見に来た黒衛隊第七席、

 

 自分たちのボスの邪魔するなという気配とその男が放つ重圧に全員の動きが止まった。

 

「くは、は、は!!!いいだろう!!俺の名はガハルド!!やれるものならやってみろ!!遠藤浩介!!!」

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