~ ショッカー秘密基地・司令室 ~
綾小路 律子
「…ふん、気絶したか情けない」
結城 丈二
「突然あんな現実をみせつけられたんだ。無理もないだろう」
結城 丈二
(悪趣味だとは思うが…僕にそんなことを云う資格はないか…)
死神博士
「これで心が壊れてくれれば洗脳が容易いんだがな」
野本 健
「まどろっこしいな、脳みそを改造すればいいんじゃねえのか?」
死神博士
「そんなことができれば苦労はせん」
綾小路 律子
「筋肉馬鹿は黙っていろ」
野本 健
「なんだと!」
結城 丈二
「二人ともよさないか」
死神博士
「…ところでもう一つのほうはどうなっている?」
結城 丈二
「それでしたら…」
ドカアアアアアン!
野本 健
「な、なんだ!?」
バタンッ!
ゲオルグ・ハインリッヒ
「大変です!」
死神博士
「…何事だ?」
ゲバルト・ハンフリー
「そ、それがもう一人の改造実験体が急に暴れだしまして!」
ゲオルグ・ハインリッヒ
「不用意に近付いた地獄大使が昏倒、現場が大混乱です!」
野本 健
「馬鹿が…。普段あれだけ偉そうにしておいて!」
綾小路 律子
「何が地獄の使いだ…」
死神博士
「そんなことよりお前達も急行しろ。私もすぐに向かう」
綾小路 律子
「わかりました!」
結城 丈二
「………」
死神博士
「…どうした?」
結城 丈二
「…いえ、なんでもないです」
綾小路 律子
「なにをしている、行くぞ!」
結城 丈二
「…ああ」
バタン…。
死神博士
(さて…、ここからどうなる…?)
~ 回想・2週間前・喫茶アミーゴ ~
本郷 猛
「まだ緑川教授とは連絡がとれないんですか?」
緑川 ルリ子
「…ええ、心あたりは全部あたってみたんですけど…」
本郷 猛
「もう音沙汰なしで一週間…心配ですね」
緑川 ルリ子
「警察からも今のところ新しい情報は何も…」
本郷 猛
「俺のほうでも色々あたってみたのですが…すみません」
緑川 ルリ子
「そんな…!こちらこそすみません。猛さんだってレースが近いのに…」
本郷 猛
「いいんですよ。俺にとってあの人は恩師ですから…なのに俺は恩を仇で返してしまった…」
緑川 ルリ子
「助手の誘いを断ったことですか?」
本郷 猛
「…ええ」
緑川 ルリ子
「そのことなら猛さんじゃなくてむしろ立花さんに怒ってましたよ」
本郷 猛
「…そうなんですか?」
緑川 ルリ子
「ええ、この前も「絶対にあいつに今度何か旨いものを奢らせてやる!」って息巻いてました…笑いながら」
本郷 猛
「…そうでしたか」
緑川 ルリ子
「だからそのことに引け目を感じないでくだい。世界一のオートレーサーになる…それが猛さんの夢なんでしょう?」
本郷 猛
「…わかりました。それなら尚更教授を早く見つけましょう」
緑川 ルリ子
「ええ!立花さんにも早く奢ってもらわないといけませんからね」
本郷 猛
「違いない!」
~ 現在・シヨッカー秘密基地 ~
本郷 猛
(……そうだ…俺の……俺の夢は…オートレースの大会で優勝すること……世界一の………オートレーサーになること)
???
「………っ!」
本郷 猛
(…しかし…もう俺の夢への道は…閉ざされてしまった…こんな仮面のライダーなんていやしない…)
???
「………っ!………っ!」
本郷 猛
(……夢だけじゃない…俺は…身体まで失ってしまった……)
???
「………っ!………っ!………っ!」
本郷 猛
(………夢を奪われ……身体を失い…俺に残されたものは…もう何も…)
緑川 弘
「本郷君っ!」
本郷 猛
「…っ!?」
緑川 弘
「本郷君っ!気をしっかり持つんだ!」
本郷 猛
「……緑川教授?」
緑川 ルリ子
「よかった…!猛さん…気がついたのね」
本郷 猛
「……ルリ子さんまで…」
緑川 弘
「話しは後だ!今すぐに…」
ドカアアアアアン!
本郷 猛
「…!?何が…何がおきてるんです?」
緑川 弘
「わからん!が、この基地の中で騒ぎが起きてることは間違いない」
緑川 ルリ子
「私たち監禁されてたんですけど、その騒ぎに紛れて抜け出せれたんです」
緑川 弘
「さあ、早く我々も…ぐうっ!」
本郷 猛
「教授!?…酷い怪我じゃないですか!?」
緑川 ルリ子
「…ここへくる途中で…その…怪しい男におそわれて…」
本郷 猛
「…俺と同じ…改造人間ですね…」
緑川 ルリ子
「………」
緑川 弘
「私のことはいい…それよりも早くここを出るんだ…」
本郷 猛
「しかし…」
緑川 弘
「早くするんだ!ここもすぐに誰かがきてしまう!」
本郷 猛
「…わかりました。ルリ子さん行きましょう」
緑川 ルリ子
「…はい!」
~ ショッカー秘密基地・外周 ~
本郷 猛
「よし、なんとか外に出れたぞ…」
緑川 弘
「はぁ…はぁ…はぁ…」
緑川 ルリ子
「お父さん!しっかりして!」
本郷 猛
「大丈夫ですか!?教授!」
緑川 弘
「…二人とも。私を置いて逃げるんだ…私は…ここまでだ…」
緑川 ルリ子
「そんな!」
緑川 弘
「君たち二人だけならここからすぐに逃げる手段がある…本郷君。君ならもうわかっているはずだ…」
本郷 猛
「………」
緑川 弘
「ルリ子、本郷君…巻き込んでしまって本当に申し訳ない…」
緑川 ルリ子
「そんな…お父さん…」
本郷 猛
「…教授。一つだけ教えてください」
緑川 弘
「…何かね?」
本郷 猛
「俺は…俺の身体は元に戻りますか?」
緑川 弘
「………すまない」
本郷 猛
「………そう……ですか…」
緑川 ルリ子
「私の…!私のせい…!私のせいなんです…!父はずっと協力を拒んでいました…!でも私を人質にとられて…!全部、私のせいなんです…!」
本郷 猛
「………」
緑川 弘
「それは違う!私が悪いんだ!私がアイツの闇に気付いてやれなかった…いや、気付かないフリをしていた…2年前の時点でアイツが暴走するのはわかっていたはずなのに…!」
本郷 猛
「………」
緑川 弘
「本郷君!…君には本当にすまないと思っている…私のことは許さなくていい…!恨んでくれていい…!」
本郷 猛
「…緑川教授」
緑川 弘
「ただ、ルリ子は…!ルリ子だけは…!」
本郷 猛
「………」
緑川 弘
「都合のいい願いだとはわかっている…!しかし…ルリ子は…ルリ子は…私のたった一人の娘なんだ…!」
緑川 ルリ子
「そんな…お父さん…」
本郷 猛
「……緑川教授。正直、俺はまだこの現実を受け止めきれません…」
緑川 弘
「………」
本郷 猛
「…教授に対して、何を云うべきなのかもわかりません…」
緑川 弘
「………」
本郷 猛
「…ですが、教授の最後の願いである、ルリ子さんを守る…それだけは叶えます……俺の命にかけて」
緑川 ルリ子
「………」
緑川 弘
「……ああ、その言葉だけで十分だ…。ルリ子…元気……で…な…」
緑川 ルリ子
「…お父さん?」
緑川 弘
「………」
本郷 猛
「…ルリ子さん。教授はもう亡くなっています…」
緑川 ルリ子
「っ!?そんな!?…お父さん!お父さん!」
本郷 猛
「………」
本郷 猛
(……緑川教授…)
???
「クックック…」
本郷 猛
「…っ!?ルリ子さん、危ない!」
バシッ!
緑川 ルリ子
「っ!?…きゃあっ!?」
シュルルルルルルッ!
本郷 猛
「くっ!糸が絡み付いて…!身体が…動かない…!」
???
「クックック…緑川教授は死んだか…」
本郷 猛
「お前は…あの時の…!」
クモ男
「そうだ俺はクモ男。お前と同じ改造人間だ」
本郷 猛
「………」
クモ男
「本来なら今の攻撃でその女を殺しお前の心を再度壊すつもりだったが…まあいい結果は変わらん」
緑川 ルリ子
「っ!?」
クモ男
「クックック…俺の糸で動けないままその女が殺されるのを見ているがいい」
本郷 猛
「やめろ!ルリ子さんには手をだすな!」
クモ男
「クックック…これはお前の為でもあるんだぞ?」
本郷 猛
「…何?」
クモ男
「クックック…お前はもう人間じゃあない…人間としての未練を残していても苦しいだけだぞ?」
本郷 猛
「………」
クモ男
「ここで抵抗して何になる?ここを逃げ延びてもお前に待っているのは茨の道だぞ?」
本郷 猛
「………」
クモ男
「それよりも、未練を断ち切り、全てを忘れ…改造人間として新たに生まれ変わるほうがよほど有意義だと思うぞ?」
本郷 猛
「………」
クモ男
「夢を奪われたんだろう?肉体を失ったんだろう?お前にはもう何も残ってはいない…違うか?」
本郷 猛
「………黙れ」
クモ男
「…ほう?」
本郷 猛
「俺は…確かにもう人間じゃない…」
緑川 ルリ子
「猛さん…」
本郷 猛
「だが…お前達と同じ改造人間になる気はない!」
クモ男
「クックック…では何になるというのだ?」
本郷 猛
「俺は…」
緑川 ルリ子
「………」
本郷 猛
「俺は…」
クモ男
「………」
本郷 猛
「俺は…」
仮面ライダー
「仮面ライダーだ!」
ブチブチブチッ!
クモ男
「ッ!?バカな!俺の糸を引きちぎっただと!」
ダンッ!
仮面ライダー
「ライダァァァッ!」
クモ男
「っ!?」
仮面ライダー
「キィィィィィック!」
ドオオオオオン!
クモ男
「クギャアアアアアッ!」
ドカアアアアアアン!
仮面ライダー
「…ハア……ハア……!」
緑川 ルリ子
「猛さん!大丈夫ですか!?」
仮面ライダー
「………」
緑川 ルリ子
「…猛さん?」
仮面ライダー
「来い!サイクロン!」
サイクロン
「!!!」
ブオオオオオン!
緑川 ルリ子
「っ!?…猛さん、このバイクは…?」
仮面ライダー
「…これは、連中が俺のために用意した改造バイク…サイクロンです」
緑川 ルリ子
「サイクロン…」
仮面ライダー
「このバイクは俺が遠隔で操作できます。ルリ子さんはこれに乗って逃げてください」
緑川 ルリ子
「…っ!?何を云ってるんです!?…猛さんはどうするつもりなんですか!?」
仮面ライダー
「…俺は戻ります。ここには俺たちの他にも、早瀬や他の人たちが捕まっているかもしれないんです…その人たちを助けないと…」
緑川 ルリ子
「それは…!そうかもしれませんが…」
仮面ライダー
「何より…俺はこのショッカーという組織を…野放しにはできません」
緑川 ルリ子
「駄目です!猛さん…貴方は…」
仮面ライダー
「………」
緑川 ルリ子
「確かに、ここには私達の他にも…早瀬さんや他の人達がいるのかもしれません…!ショッカーという組織をこのままにしておくのも危険です!」
仮面ライダー
「………」
緑川 ルリ子
「でも猛さん…!貴方はそれを言い訳にしています!貴方は…ここで死ぬつもりなんでしょう…?」
仮面ライダー
「…ルリ子さん。おかしいと思いませんでしたか?…さっき何ですぐに緑川教授が亡くなったのがすぐにわかったのか…何であんな見たことのないバイクを操ることができたのか…」
緑川 ルリ子
「………」
仮面ライダー
「それになによりも、今のこの姿…俺はあいつらと同じなんです…」
緑川 ルリ子
「………」
仮面ライダー
「同じなんです…俺はもう…」
緑川 ルリ子
「人間です!」
仮面ライダー
「っ!?」
緑川 ルリ子
「貴方は人間です!誰がなんと云おうと!たとえ世界中の人が認めなくても!たとえ貴方自身が認めなくても!」
仮面ライダー
「………」
緑川 ルリ子
「私が…!私だけは貴方を人間だと認めます…!」
仮面ライダー
「…ルリ子さん」
緑川 ルリ子
「だからお願いです…。命を粗末にしないでください…今は私と一緒に逃げてください…」
仮面ライダー
「………わかりました」
緑川 ルリ子
「………」
本郷 猛
「…ルリ子さん。…ありがとう」
~ 少し離れた場所 ~
男
「なんだ…基地には突っ込まないのか…」
女
「そうみたいね。…貴方はどうするの?」
男
「そうだな…最低限の目的は果たしたんだ。とっととずらかるさ」
女
「そう。なら私も貴方についてくわ」
男
「…なんだ、本当についてくるつもりかよ?」
女
「最初に誘ったのはそっちでしょう?」
男
「まあ、そうだけどよ…」
女
「それで、何か目的地とかはあるの?」
男
「目的地っていうか…もう一度会っておきた奴ならいる」
女
「…どんな人?」
男
「そうだな…一言で云うと…よく当たる占い師だ」
~ ショッカー秘密基地・司令室 ~
結城 丈二
「本郷猛と緑川ルリ子は逃走…捕獲に向かったクモ男は撃退されたようです」
死神博士
「そうか」
結城 丈二
「それと、基地外周の戦闘があった場所で緑川教授の遺体を発見しました」
死神博士
「………そうか」
結城 丈二
「大学の…同級生だったのでしょう?」
死神博士
「…結城。緑川の遺体は丁重に弔ってておいてくれ」
結城 丈二
「…わかりました。それでは…」
バタン…。
死神博士
「………」
死神博士
(ミドリ…。文句は後でたっぷり聞いてやる。先に向こうで待っていろ。私はもう止まるつもりはない…)