転生しました! 杜王ちょ……えっ、杜王町じゃないの? 作:サイコロさん
此処は杜王ちょ……えっ、此処シブヤなの!?
突然だが、俺は転生者である。
おっと、明らかに胡散臭いからと言って回れ右をしようとした君たちに言うが、俺は心底真面目なのだ。前世の記憶も穴抜けではあるが思い出せるし、前世の社畜根性や耐性も身に染みている。
だから信じてほしいとは言わないが、もう少しだけ俺の話を聞いてくれないだろうか。なーに、きっといい暇潰しになることを誓おう。
気づいた時は今から十二年前、そう五歳の時に親が新婚旅行でエジプトに来た時であった。
エジプトに着いた瞬間、頭にとてつもない痛みと謎の男の記憶が一緒に流れてきた。三日三晩も続いた謎の痛みは俺にとあることを教えてくれた。
それは、一緒に流れてくる記憶は、俺の前世の記憶だということを。
三日三晩も魘されていたのに、いつの間にか元気に駆け回る様子の俺に親父やおふくろは目を丸くしながらも安堵のあまりに年甲斐もなくギャーギャー泣いていたらしい。
まあ所謂『転生者』みたいな俺には、実はもう一つ重要なことを、いや潜在的な能力を発覚した。
それは持ち主の傍に常に現れ、さまざまな超常的能力を発揮し、他人を攻撃したり持ち主を守ったりする守護霊であり、悪霊であって悪霊ではない存在『
エジプト旅行中、とある事件……というかスタンドバトルに巻き込まれた。ポルナレフの髪型がやたら印象的であったと記憶している。
確か……なんか刀、『アヌビス神』との戦いが最初の出会いだったかな? その後、190cm台の筋骨隆々な大男に囲まれて質疑応答されたけど。
当然、俺の生まれた世界が『ジョジョの奇妙な冒険』の世界だと気づいたのだ。さらに驚くべきことに、俺は彼ら、つまり第三部の主人公率いるジョースター一行、俺が好きな呼び方で言うと『星屑十字軍』と対面したのである。
本当に驚いて思わず二度見したが許してほしい。こう見えて俺はオタク気質なんだ。かなりのジョジョラーなんだ。許してクレメンス。
まあ……。なんやかんやありましては、俺の親による新婚旅行であるエジプト放浪記は幕を閉じ、今は故郷である日本へと帰還しているところであります。
そこで問題発生!
なんと俺が住んでいる場所はどうやら杜王町じゃないんです! なんか『シブヤ』といった東京であって東京じゃない近未来感溢れる日本の中心。
尚、調べてみた結果、一応M県S私市杜王町と存在はしてた。
じゃあ俺が好きな重ちーや「だが断る」で有名なあの人に会えないのか? ご安心ください。どうやらこのシブヤ、ジョジョの原作補正がかかっているのか、杜王町が同化されたのか、見覚えのある小料理屋や服屋がちらほら見かけるので、多分このシブヤにいる筈だ。
つまりあの殺人鬼も存在しているということだ。
誰彼構わず、己の欲望を満たすだけに息をするかのように殺人行為をする平穏を望む者。
生憎様、俺はジョジョキャラだからといって見逃すような腑抜け野郎でもなきゃ、俺が最強だという勘違い野郎でも俺だけに与えられたとかほざく正義気取りでもない。ただ殺人という愚行を行い、誰かを苦しめるクソ野郎がムカつくだけ、それだけなんだ。
だが、俺一人でアイツに勝てるかと訊かれたら素直に頷けない。それまでにアイツは強大な力を持っている。
俺は『主人公』じゃない。
自分が決して勝つ未来は予想できない、反面俺が呆気なく不様に死んでいく未来は安易に予想できる。
もしかしたら原作の補正で俺は殺されるかもしれない、そもそもスタンド使い以外の事故、病気、事件に巻き込まれてぽっくりとあの世へGO To HEAVEN! どこかの神父が目指していた場所へ強制的に連れていかれるだろう。
そんな危険に溢れている世の中に追い打ちかけるかのようなスタンド使いの運命力が作用してくる。
だから俺はスタンドを封印した。
来るべき時に備え、俺が本心から使おうとした時以外は使わないことを誓う。
殴っていいのは殴られる覚悟を持っている者だけだ。俺はまだ
それに、俺の幼馴染みは将来有望な美少女だらけだし、わざわざ彼女らに危険を及ばず必要性無いよね? だから、どうか悪用するスタンド使い、そして誰かを傷つける『覚悟』をしたスタンド使いの方々に一つだけ言わせてください。
俺のこと無視してね♡
東京都内、シブヤ。
夢を持った有望な若者が集まり、音楽を中心としたサブカルチャーが盛んなその街で、ひとりの少年が交差点の巨大ビジョンを見上げていた。画面に映るバーチャル・シンガー『初音ミク』を見て呟く。
それは多くの東京に初めて来た人々が経験することであり、必然にも少年が見上げるのはおかしくないことであった。
「これがシブヤ……! ぼくの新しい生活の場なんだ……!」
少年の期待と羨望に溢れた小声は、無秩序に鳴り響く広告や人々の音で消されたが、それは確かに少年の胸に響いたのであった。
彼の名は
2023年4月、転校初日、ぼくは奇妙な人と出会った。
広瀬康一と呼ばれる少年は目につく全てが新鮮なものに見えて仕方がない。
理由は至極当然、畑や自然が広がっていたあの田舎に比べて、此処シブヤでは山の代わりに高層ビルが聳え立ち、木々の代わりに街灯が等間隔で並んでいる。
そんな劇的に変わった光景を、好奇心旺盛な少年心を抑えるには無理がある。
さらに言えば彼は今年から高校生となる。
最早高校生の新しい生活、まだ見ぬ土地での新しい暮らし、まさにダブルパンチング。ほんの少し知らない土地の恐怖心や不安はあるものの好奇心や新鮮さが上回っていた。
────何しとんじゃキサマ!
────何のつもりじゃ! あァん!?
────立てッ! ボケッ!
ふと公園の小池辺りに、場にあまり相応しくない乱暴な口調と怒鳴り声が聞こえてきた。
それは四、五人の明らかなヤンキーと一人のリーゼントが特徴的な男がなにやら揉めていた。
────この池のカメが冬眠から覚ましたようで見ていたんです。カメってちょっとニガテなもんで……。
そうやってリーゼントが特徴的な男性が亀へと手をやるのも、ぷるぷると手が震えて、本当に怖がっていることを示している。
またヤンキー同士のやり取りに目を奪われていたのか、広瀬康一はスマホを覗く男に気がつかなかった。
「うわ!」
ああ不味い。このままでは荷物を撒き散らしてしまう。そう思った康一は今すぐにも立ち上が────る必要がなかった。
「えっ!? あれ? 今ぼくぶつかって……」
「おーい? 大丈夫か」
目の前には足、筋肉によって膨らんだ黒いズボンが喋っていた。
(でっ、でっけぇ~。180台ぐらいはあるぞ)
身長が150台の広瀬康一に対し、目の前の地図を読んでいた男は180台と思うほどに迫力がある体躯であった。
既に
黒色のロングパーカーコートを身を包むようにまとい、両目以外を覆うほどの白仮面をつけ、どうやら下は学生服らしき服装の男に目を奪われていた。
「よそ見していてすまねえな。ちょいと調べものをしていたんだ」
そうやってスマホを見せてくる大男。
少年の第一印象としては怪しげな風貌であるが、見た目とは裏腹にフレンドリーな態度があり、そんなに恐怖心が湧かなかった。
そう一人目は、この男であった。
「ウダラ何ニヤついてんがァ────ッ!」
するとパァンとどこかとなく心地よい音と一緒に荒げた大声が聴こえてきた。
それはヤンキー男のリーダー格の男が、リーゼント頭の男に対して暴力をビンタしながら怒鳴っていた。
「コラ! さっさと脱がんかい! バスが来ちょったろうがッ! チンタラしてっとこの亀みてーに────────」
そう言いながら亀を振り投げ、地面へと叩きつけようとするリーダー格のヤンキー。
その時だった。
「ホゲェェエ────────ッ!!?」
リーダー格の男は他の取り巻きだと思われるヤンキー達へと吹き飛ばされ、コンクリートの壁へと激突する。
ボキッと嫌な音がして、ヤンキーのリーダー格の男は白目を向く。
元居た場所には拳を突き出したポーズを取る、先程ぼくの前にいた仮面の男がいた。
ぼくも、リーゼント頭が特徴的な男も、取り巻きだと思われる田舎臭いヤンキーも、誰もが予測できない状況下、白仮面の男はヤンキー達へ告げるように話しかけた。
「此処では暴力による『喧嘩』は御法度だ。……次やったらどうなるか分かるよな」
最後はボソッと呟いたので聞き取れなかったが、少なくともヤンキー達を怯えさせる程に恐ろしい脅し文句なのだろう。
蜘蛛の子を散らすように逃げまどうヤンキー達を尻目に、仮面の男は亀を小池へと戻していた。
「次会う時は竜宮城の料理を持ってきてくれよなー」
「それはおとぎ話じゃないッスか? それよりも助けてくれてありがとうございます!!」
「おうおーう、威勢がいいな……。てか俺並みの身長あるんじゃね?」
マイペース、そんな性格故に仮面の男はリーゼント頭の男と身長比べしていた。
リーゼントを褒めたり、一年生であることに驚いたり、とにかく落ち着きがなかった。すると思いついたかのように仮面の男は手をポンと叩いて、あっと発言してぼくを呼んできた。
「俺個人の予測なんだが……。確かその学ランの改造具合から、もしかして神山高校の新入生か?」
「! あっ、はい! そうです!」
「おれもッス! てことはあんたは────」
「ああ! 俺は────────」
これが、ぼくのこれからにとって、普通では経験できない数奇なる運命の始まりであった。
「────神山高校二年生、
シブヤ郊外の高速道路。
いつもならば車やらトラックで渋滞を引き起こしているのだが、
とある車は黄色のタクシーであり、『回送』と表示しておりふたりの人影がいた。
ひとりはごくごく普通のタクシー運転手、三十台半ばの男性が車のハンドルを握っており。
もうひとりは白い帽子に白いコートといった白一色の格好をした大男が、メモ帳を開きながら何かを確認するように眺めていた。
「……承太郎さん。もう一度確認します」
運転手は静かに、呟くようにもうひとりの男へと話しかけてくる。
「ご安心ください。先程申し上げたように、財団の情報操作によって盗聴の危険性を
それに納得したのか、もうひとりの男は黙りこくる。
「今回の件は、財団にとって、そしてあなた達にとっても利害は一致する……」
「……」
男の脳内には、あの懐かしの旅路のことが鮮明に浮かび上がっている。
それは夜のエジプト、一族の宿敵である吸血鬼から何もかも
若々しくもそれは確かな決意に満ち溢れ、冷酷であり残酷、そしてスタンド使いにとっての『天敵』とも呼べるような存在。
「