暗闇の林の中。
黒い影と戦うのは長曽祢虎徹だ。
遠征途中に部隊と離れてしまった。
隊長の山姥切国広の姿はない。
長曽祢の目の前には、時間遡行軍が行手を阻んでいた。
敵の大太刀が雄叫びを上げながら刀を振り回すと、他の時間遡行軍が間合いを詰めてくる。
太刀筋の勢いを殺して隙を突くが、びくともしない。
長曽祢はこの本丸に顕現してまだ日が浅かった。
『…このままでは』
と、ぽつり呟いた一瞬。大太刀の首に一閃。
敵の後ろから山姥切国広が切り落とした。
『何をしている。合流が遅い』
『すまない。人の体と言うのは慣れるまで時間が必要のようだな』
『フン、まぁいい。次からは離れるな』
辺りの様子を見回すと、林の奥から無数の赤く光る瞳がこちらの様子を伺っている。
山姥切国広は裾で刀を拭い、長曽祢虎徹は敵に向かって刀を構えた。
『あぁ、命令には従うさ』
『一気に片付けるぞ……』山姥切国広が駆け出す。
本丸。
【入電】
【出力開始】
【…ややこしいな】
【大丈夫だよ、水心子なら。落ち着いて。ほら、通信できるよ】
【え、もう繋がってる?…………よし。特命調査の出陣を要請する。放棄された世界、歴史改変された天保江戸への経路を一時的に開いている。変則的ではあるが、各本丸は1部隊5名で編成し、1843年の天保江戸への出陣。そこで我々と合流し、任務を遂行せよ。なお、本作戦への参加は任意だそうだ。…だが、政府に実力を示しておきたければ挑むべきだろう】
【水心子、そろそろ通信の限界だ。伝え忘れたことはないかい?】
【実力のある刀剣男士の派遣を頼む。合流地点で待っている】
入電が切れる。
『時の政府が事前に知らせてきた、特命調査だね。もちろん、この俺を部隊に…え?ダメ?なんで!可愛くしてるからさ…ね?』
大広間、上座にこの本丸の主(審神者)と御簾越しに本日の近侍、加州清光が上目遣いで会話している。
『加州、図々しいぞ。主、この調査こそこの俺を。あなたの敵、その悉くを血祭りにしてあげましょう』
加州の左隣に座っていた長谷部が、胸を張って訴えてくる。
『え?…その編成は既に決定してて政府に伝達済み?』
『なーんだ。…ふふ、楽しみだなー』
『まるでもう既に編成されてる様な物言いだな』
『だってそうでしょ?この本丸の中で一番可愛くて、ちょっと扱いにくさはあるけど使える刀ってさー。俺しかいないでしょ?』
『どうだかな』
主が自室へ下がる。頭を垂れ見送る二振り。
程なくして骨喰が大広間へとやってきた。
『骨喰。どーしたの?』
『主は自室に戻ったか…。近侍は加州だったな。報告だ。山姥切国広が率いる遠征部隊の行方が分からなくなったようだ』
『何⁉︎』驚く長谷部。
『え、消えちゃったってこと?』
『こんのすけが言うには、折れてはないが気配が遠く、追いきれないらしい』
『ふーん』
『これから主に頼んで、三日月を中心に部隊を組み、遠征任務遂行の手助けをしようと思う』
『へぇー大変だね。それはそれは』少し思案顔の加州。
『主に頼んでくる』
『あ、あぁ』
骨喰が部屋を出て、主の部屋に向かった。
『山姥切国広たちの部隊か。珍しいこともあるものだな』意外だな、と腕を組んで話す長谷部。
『何かあったのかもしれない…けど、俺には特命調査って言う重大な任務が待ってるからさ〜』
『加州、あまり図に乗るなよ』
ここは2205年。
歴史改ざんを目論む歴史修正主義者による過去への攻撃が始まった。
時の政府はそれを阻止するため、審神者(さにわ)なるものを各時代へと送り出す。
審神者とは物の心を励起する力を宿す者。
その技によって生み出されたのが、
刀剣男士。
『あー。川の下の子です。加州清光。扱いにくいけど、性能は良い感じってね』
『山姥切国広だ。なんだその目は。写しであるのが気になると』
『へし切り長谷部と申します。主命とあらば何でもこなしますよ』
『長曽祢虎徹という。贋作だが、本物以上に働くつもりだ。よろしく頼む』
いざ刀剣乱舞、はじめよう。