刀剣乱舞 小噺 かりそめの撫子   作:一之瀬 萩

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一時帰還

主の部屋の前。聞き耳を立てる長谷部。

それを呆れた様子で見届ける加州、まんば。

『何を話しているんだ…全然聞こえない』

『長谷部。気になるのは分かるけど、それってかえって失礼なんじゃない?』

『黙れ、加州』聞こえない苛立ちが声にこもる長谷部。

『俺たちの捜索部隊が結成されてたなんて…そんなに時間をかけたつもりは無いんだが』顎に手を当て考え込む山姥切国広。

『遠征に出て行って、半月以上帰って来てなかったんだよ?』

『そうなのか…』

『その間に特命調査が始まって〜…って、いつになったら本戦に行けるんだろ?』

『三日月の報告が終わったら、じゃないか?』

出入り口に誰かが立った。襖が開く。

咄嗟に長谷部が退く。

『では、また何かあったら呼んでくれ』と三日月が柔かに部屋から出てきた。

一礼して襖を閉める。

『三日月』

『おお、山姥切。怪我は無いか?』

『それはこっちの台詞だ。アンタのことだ、何か隠してるんじゃないか?』

『はっはっは。いや何も隠してはない。少しばかり、主に確認しておきたいことがあってな』

『確認しておきたいって何を?』

『おお、加州。今の近侍はお主だったな。では、その耳に入れておいてくれ』

『何だ、早く言え』

『長谷部、せっつかないの』

『お主たち、主から頂戴した御守りは持っているか?』

『コレのこと?』と素早く懐から取り出す、加州。御守りに飾りが施してある。

『何だ、コレは!主からいただいた大切な御守りになんてことを!』

『デコってて可愛いでしょ』

『何が可愛い、だ!ふざけるのもいい加減にしろ』まあまあ、と三日月が宥める。

『で?この御守りが、なんだ?』山姥切が真っ直ぐ三日月を見る。

『この御守り、戦地に出ると淡く光を放つ』

『そ、そうだったのか?』

『へー。知らなかったー』

『だが、妙なことが起きてな』

『妙なこと?』まんばが三日月を見る。

『淡く光を放っていたのは、山姥切たちが姿を晦ました遠征先に着いた時。何度か敵とも交戦しながらその光を頼りに捜索していたんだが…』

『?』

『妙な格好の敵が現れてな。我々はその敵を殲滅させるべく後を追った』

『うん、それで?』

『敵は黒い甲冑を着ていてな。なかなかに強く、倒せなんだ』

『おい、怠慢は許さんぞ』

『まぁ長谷部、最後まで聞いてくれるか。俺はその後鶴丸に頼んで跡を追ってもらったが、鶴丸もその手に御守りを持って敵を追った』

『敵に捕まってるって思うよね』加州が相槌をうった。

『まぁ、そうだな。それに鈴の音がずっと響いておった』

『鈴の音?』

『ああ』

『ふーん。それとこの御守りがどういう繋がりがあるの?』

『その後は…鶴丸だけが知っている。俺が言ってることは推測にしかならん』

『良いから、早く言え』長谷部が先を急かせる。

『この御守り、我々が助けを求めている時に光を放つのではないか、と』

『と、いうことは、この御守りは依代』

『そう、この御守りさえあれば何が起ころうとも本丸にいる主に、自分の状況を知らせることが出来る』

『な⁉︎』

『そんなこと出来ちゃうの?コレ』まじまじと御守りを見つめる加州。

『我が本丸はの依代は御守り。他の本丸では、鈴…とかな』

『それで?その後どうした』長谷部が腕を組む。

『黒い甲冑の敵はその鈴の音のする方に逃げて、鶴丸と一騎討ち…となる筈が、鈴の音の先にその黒い甲冑の主であろう女が出てきた』

『女の、敵⁉︎』

『さよう』

『そんなの、歴史上の人物でしか無いでしょ。え?いや、生身の人間?』

『一戦交えるその時、時間遡行軍が現れ囲まれたが…』喋る三日月の肩をぐいと掴んで引っ張り、後方から現れる鶴丸。

お互いに頷き、話の先を鶴丸が語る。

『戦おうとしたその時、女が鈴を鳴らして時間遡行軍を引きつけて囮となり、俺は無事に三日月たちと合流。めでたしめでたし』

『鶴丸国永』長谷部が窘める。

『よ!突然現れて驚いたか?』

『黒い甲冑の、その後は追わなかったのか?』山姥切国広が問いかける。

『ああ、逃げてくれって言われてな。時間遡行軍も俺に見向きもしないで、鈴に引き寄せられるように居なくなってしまった』

『引き寄せられるように、か』山姥切が俯き、考え込む。

『その時に御守りを落として、拾おうとしたら…』

『したら?』加州が促す。

『光っていたはずの御守りが、光を失った』

『え?じゃ、もうその時にはまんばちゃんたちはバラバラになっちゃってたってこと?』

『さぁ?それは分からない、が。俺は妙な感覚がしたんだ』

『はて、それは?』聞いてないぞ、と三日月。

『あの光は、あの女の敵に反応しててたんじゃないかって』

『何?』山姥切と長谷部が鶴丸を見る。

『共鳴』

『ああ、共に似た物同士が共鳴し合っていた。そんなことが起こりうるのか、主に確認を取っていた』

『主は?なんて?』

『主も判別付けがたい、と』

『まぁ、実際戦ってる最中に御守りなんて見てないし、共鳴しあっていたかどうかも定かじゃない。ただ、相手の女は俺のことを知っていた』

『え?』

『随分と前から俺のことを知ってるような口ぶりだった。まあ、その後時間遡行軍に囲まれて長くは話すことが出来なかったんだかな』

『その女は一体何者なのか』と考え込む長谷部。

『今、主が政府に何者なのか調べてもらうと言っていた』

御守りを見つめる山姥切。

『まんばちゃん、どうかした?』

『陸奥守たちを探しに行く。加州、一緒に来てくれ』

『いや、俺は特命調査があるからぁ』

『今の近侍はお前だろう。主に出陣要請をしたいからついてきてくれ』

『本当、いつになったら行けるんだろ』

 

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