2150年、時の政府は時間修正主義者の動向を水面下に調査していた。
時には、時間修正主義者からの無差別攻撃を受けることもあった。彼らの成すがままの状態から脱却するべく、調査が開始された。
敵の動向を探る内に、その無差別攻撃は過去からの攻撃と断定。時を遡る研究が程なくして始まった。
研究所が数多く併設され、学者や研究者が時間遡行軍という存在を確認する。
さらに研究は進み、試験段階でのテスト本丸が結成される。
数多くの実験、研究、修正を繰り返すことによって物を励起する力を発見、開発した。
そのテスト本丸で発生した審神者たちは多くの研究の礎となった。
研究の成れの果て。残った者もいれば、そうでない者も…。
荒れ果てた家屋の残骸に刀剣男士とソニアが腰を下ろし、ソニアの語りに耳を傾ける。
チリンと鈴が鳴った。
かつてここにも本丸があった。
時の政府が時間修正主義者の攻撃を阻止する研究のために、あったのだ。
程なくして審神者があてがわれた。
それがソニアだ。
『私は気づいたらこの本丸の、審神者の部屋にいました。暗闇の部屋の真ん中に刀が一振り、飾られていて…』
その刀こそが、後に“始まりの五振り”と呼ばれる初期刀だ。
『研究、実験の一環で、目の前にあるその刀を人型に顕現することが出来れば、テストは終了と伝えられていた。私は初期刀を顕現させることができて、晴れてその本丸の、審神者となりました』
『テスト段階の、本丸』
『それの成れの果てが、これか』手を広げて、辺りをさす歌仙。
『テスト段階だったから、結界が上手く出来なくて…』
『試行錯誤している内に、敵に知られた』
『その後は、敵襲が来て…まだ、刀剣たちのレベルは初期段階。次々と…敵の攻撃に耐えられず…』言葉に詰まるソニア。
そうか、とみんなが鎮まる。
『その後は資材を投げ打って、鍛刀、励起して何度も、何度も…!』
『その度に敵に、雷雲と風雪に折られた』マルコがソニアの背中に手を添える。
『だからわしらを見て…』
『驚いた、と言うわけだね』
『鶴丸国永が居たら、まっこと喜びそうな話ぜよ』
『鶴丸国永!そう言えば雑木林の石段で彼と少しだけ喋りました。きっとあなた達を探しに来ていたんじゃないかしら?』
『捜索されるほど、長くはここにとどまったつもりはないが…』
『この本丸は放棄はされているけれど、まだ試作段階の名残りを残していて、違う本丸の時間軸の波動や時空の歪みがここの波動と合って繋がってしまうとこちら側の引力に引きずられてしまうみたい。今回も、きっとあなた達が行くはずだった遠征先の波動とこの本丸の波動が合ってしまった…』
『じゃ、山姥切たちも気付かん内に違う時代との波動が繋がって飛ばされたゆうんか』
『この時間軸にはいない可能性は、高いと思う』
『どおりで。見つからない筈だ』歌仙がため息を吐く。
『こちらから元の遠征先に戻れる方法は無いのか』巴がソニアに問うた。
『こちらから?』
『そうだ…ここにこの本丸の主がいる。ならば、近侍のマルコを我々部隊とを編成して、貴方が我々を元の時間軸に飛ばしてくれないか?』
『ええ!待って!そんなことしたことない!テスト段階だった頃も上手く飛ばせなくて…』
『大丈夫。貴方が彼を、マルコを信じるなら飛べる』
『肩に力入りすぎぜよ。もっと気楽にやりゃえい。その後はわしらに任せちょけ!』
『ああ、わからないがやってみる価値はある。安心してくれ。我々には主から頂いた御守りがあるからな』
『御守り?』
『おう!コレじゃ〜!』と懐から御守りを出す陸奥守。
『僕も、ほら』歌仙も袂から御守りを取り出す。
『御守り…そんなものが今の本丸にあるのね』
『ここには無いがか?』
『この本丸には無い。あるとすれば…この鈴だけ』マルコがソニアの手元に目をおとす。鈴がチリチリッと音を立てる。
『マルコも持っちょるんか?』
『いや、僕は無いよ。ただこの鈴の音がすると迷わずにソニアの元へ行ける』
『ふーん、面白いのう』
『まあ、この御守りも案外そう言った役目を持ってるのかも知れないね』
『役目、とは?』巴が見つめる。
『僕たちがなんらかの…今回のようなことが起きればこの御守りが発動して本丸に帰れる、もしくは深傷を負わずに本丸へと帰還出来る、とかね』
『現時点で帰れてないがの』
『その考えはないな』
『コホン。陸奥守、巴。僕はそうあれば良い、と言ったまでだよ』
『じゃ、やってみよか〜』
『ソニア』
『自信は無いけど、みんなが元の時間軸に戻れますように』鈴に力を込め願う。
出陣の儀
『わしは陸奥守吉行じゃ。せっかくこがなところに来たがやき、世界を掴むぜよ!』
『僕は歌仙兼定。風流を愛する文系名刀さ。どうぞよろしく』
『巴形薙刀だ。数多くの巴形薙刀の集まりがこの俺だ』
いざ、出陣!