『あい、わかった。さて、給料分は仕事をするか』
『主、行ってくる』
主の部屋から三日月と骨喰が出て、骨喰が軽くお辞儀をして主の部屋の襖を閉めた。
日本刀の中で最も美しいとされる天下五剣の一振り、三日月宗近。
顎に手を置き、何か考えている。
記憶のある頃の俺を、唯一知る一振り。
『主には許可を貰い、召集をかけたのだが、あいにく皆遠征や特命調査に出払っていて…』
三日月の様子を伺いながら、申し訳無さそうに話すと驚いた顔を見せてふふっと三日月は笑った。
『いや、なに。これだけ居れば十分だ。山姥切国広たちもすぐ見つかるだろう』
『フン、何故この俺が偽物くんを探さねばならんのか』
三日月の背後から来たのは、山姥切長義。腕を組み、少し苛立った物言いをした。
行方不明の山姥切国広はこの刀を模して打たれた刀だからだろうか。山姥切長義は何かと強気だ。
『遠征中に姿を晦ますなど…あるものか』
『ほう、俺はじじいだからな。よく、皆に心配をかける』と骨喰の頭を触れ、長義を眺める三日月。
三日月に頭をポンポンと撫でられる。何だか不思議な気分になる。
そんなやり取りをみて長義がため息混じりに話す。
『…天下五剣の嫌味か?』
『はっはっは』
『フン』
『お、いたいた。三日月、何だ?楽しそうじゃないか』
『鶴丸』
鶴丸国永、三日月とは刀工繋がりなのか、生まれが近いからかいつも声を掛け合っている。
『ちょうど今、単独遠征から帰って来たんだが、主から直ぐに三日月の所へ行けと言われてな』
『鶴丸、今からまた出陣だ』
『出陣?はぁ、全く。この本丸の主は刀剣男士を馬車馬のように働かせる』
『出陣ばかりで、退屈か?』
『いや、なに本丸でゆっくり過ごすのも良いが、驚きが足らない。次から次へと予想し得ない驚きは実に嬉しいものだ。今回の出陣もそれと同じ』
『鶴丸国永』
『おー。骨喰藤四郎、元気そうだな』
『帰還して早々ではあるが、共に遠征部隊の探索を頼む』
『あぁ、大船に乗ったつもりで任せておけ』と鶴丸が骨喰の頬をグリグリと撫でる。三日月より乱暴なので、突き放す。頬が痛い。
『では、参ろう』と三日月が高らかに笑って、刀に手を置き歩き出す。
出陣の儀
『三日月宗近。打退が多い故三日月と呼ばれる。よろしく頼む』
『骨喰藤四郎。すまない、記憶がほとんど無いんだ』
『俺こそが長義が打った本歌、山姥切。どうかしたかな?そんなにまじまじと見て』
『鶴丸国永だ。俺みたいなのが突然来て驚いたか?』
特別編成、出陣!