キングダム世界の趙の王族に転生してしまった   作:ROM

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王騎の武力って公式設定で98もあるんですね。正直もうちょい低くて、大将軍の~みたいな力で超パワーアップしたのかと思ってました。元々地力も龐煖に届きうるものがあったとは驚きです。


この世界の李牧から見た龐煖の強さと王騎との一騎討の結果の予測↓

「龐煖と王騎ってどっちが強いの?」
「龐煖です」
「おお!では予定通り一騎討ちに持ち込めれば龐煖様が勝つと言うことですね!」
「いえ、残念ながらそう単純な話でもありません。王騎も龐煖に近い武を持っている強者です。九年前の様に王騎と闘う前に消耗していた場合負けることも十分にありえます」
「なるほど」
「それに、龐煖は現在、九年前の復讐に囚われています。万極のように恨みを力に変える者もいますが、龐煖は違います。心を無にして闘う供道者にとって復讐心は足枷にしかなりません。その差は録嗚未や渉孟程度の一般的な強者が相手ならば問題にならないくらいのものですが、王騎程の使い手が相手では致命傷になりかねません。だから、早目に助けにいってあげないといけないんですよ」
茶目っ気にウインクする李牧に魏加は「お任せあれ」とニヤリと答えた。


では、本編をどうぞ↓


馬陽の戦い 後半

 

李牧の予想通り、龐煖は王騎に押されていた。復讐に囚われた龐煖は未だに自らの力を出しきれずにいたからだ。そして、本来の自分を取り戻すこともできずにどんどんと龐煖は体力を失っていく。それが苛立ちを増し、剣が鈍るの悪循環。その状況に沸き立つ秦軍と苦い顔をする趙軍。誰の目から見ても趙軍の敗北は時間の問題に思われた。少なくとも今この場にいる者で、違う可能性を視野にいれているものは全てを知る趙荘と、予測により李牧の策を読んだ王騎、そして、普段の王騎の戦を知っているからこそ王騎が戦を早めていることに気付いた騰と隆国だけだった。

しかし、そこまでは同じでも望む結論は違う。趙荘は趙の勝利を確信し、王騎は自分の勝利に自信があった。騰は趙荘の首を取るため猛追し、王騎は龐煖に止めを刺すべく矛を振るう。

 

「いっけー!王騎将軍!」

 

歩兵の誰かが期待に膨らんだ声で叫んだ。

しかし、王騎が龐煖に止めを刺すよりも、騰が趙荘を捉えるよりも早く、「それ」はやって来てしまった。

 

「さて、皆さん。李牧が来ましたよ」

 

 

 

戦っている者に、その言葉が届いた訳ではない。しかし、李牧率いる四万の軍勢の出現は、一気に形勢が秦国不利に傾いたと悟るには過分過ぎる数だった。

特に、経験豊富な王騎軍は兎も角、緊急徴兵された歩兵の士気の低下は著しく、並みの将ならここのまま勝負は決していただろう。総崩れとなり散り散りとなって大敗すると言う無惨な結末で。一度崩れた士気を持ち直すのはそれほど難しい事なのである。

しかし、王騎は並みの武将ではない。武力、知力、経験だけでなく、カリスマも天下一流の大将軍。崩れかかった士気は王騎の檄によりひっくり返った。

 

「この声を聞く全王騎兵に告げます!敵の数は私達のおよそ十倍!ならば一人十殺を義務付けます!敵十人を討つまで死ぬことは許しません!皆獣となって戦いなさい!いいですか!ここからが王騎軍の真骨頂ですよ!この死地に力ずくで活路を抉じ開けなさい!皆の背には常にこの王騎がついてますよ」

 

ビリビリと空気を震わす王騎の声は王騎兵はもとより、一歩兵にまで力を与えた。

李牧は、思ったよりも立て直しの早い戦況を見て、感心する。もっとも手を抜くつもりはないが。

 

「流石です、王騎。ここから士気を持ち直すとは。いえ、持ち直しただけではないですね。今迄で一番と言ってもいい程の士気……」

 

力は準龐煖並、知力は私並、経験は廉頗将軍並、カリスマは天下に並ぶ者無し。さらに、本能型としての勘と智略型としての戦術眼を併せ持つ、まさに、天に愛された怪物。

 

李牧はこの世界の誰よりも王騎の事を高く評価していた。だからこそ、ここで確実に殺しておかなければならない敵だとも思っていた。

 

「やはりそう簡単に死んではくれないようですね、王騎将軍は。魏加さん。頼みましたよ」

「ええ。この魏加の爪痕を歴史に残して参りましょう」

 

魏加が密かに動いたのを見届けて李牧は自軍の指揮に戻った。

 

一方の魏加は王騎の後ろに回り込み、部下に周囲を固めさせ、集中に入る。今も周りでは殺し合いが起こっており、空間は血と汗の臭いが充満し、剣劇と怒号、悲鳴が絶え間無く響き続ける。さらには、魏加の目的に気付いた秦兵が自分を殺すべく殺意と怒号を向け、自分を守る部下達と殺し合いに入る。

間近で聞こえる剣劇と向けられる濃密な殺意。

しかし、魏加の集中が増すにつれ、全ては遠く離れていく。まず臭いが消え、次に音が消え、最後に色すら消える。そんな中で標的の姿だけが鮮明に残る。良く慣れた没入感。次第に遅くなる時間の中で、意識だけが猛烈な速度で駆動する。

 

ゆっくりと王騎が矛を振り上げた─────ここだ!

 

刹那の出来事だった。

王騎が龐煖に止めを刺すべく動くのと、魏加の放った矢が王騎の背に直撃し王騎の体が硬直するのと、その一瞬の硬直を逃さず龐煖の矛が王騎の胸を貫くのは。

 

「ごふっ」

 

血を吹き出す王騎。それを見て魏加の全身に今迄感じたことの無いほどの歓喜が駆け巡る。感動すら覚える達成感だ。あの王騎を……全中華が望びながらずっと叶えられなかった、あの王騎の死を、我が矢で引き起こしたのだ。

 

「くく…我が生涯最高の一矢であった」

 

「てめえ!ふっざけんな!」

 

王恬の怒りの声が響く。ほぼ同時に怒り狂った剣が魏加を殺すべく振り下ろされる。

魏加はそれを目に捉えたが、弓を射った直後であり、極限の集中による疲労と、硬直により避けることは出来そうにない。

 

(しかし、使命は果たした。ここで死んでも悔いはない。後は頼みましたぞ、李牧様)

 

後事の事を李牧に託し、魏加は目を瞑った。

 

「いや、諦めんなよおっちゃん!」

 

王恬の振るった剣は魏加に届く前に差し込まれた剣に止められる。止めたのは信であった。

 

「この女また邪魔を!」

 

そして、伍の仲間も続々とやって来る。

 

「バカ信先走りすぎだ」

「まったく」

「いや、今回は仕方無いだろ。早くしねえと死んでたぞこのおっちゃん」

「うむ、助かったぞ、少女よ」

「まあ、信の暴走は何時ものことですよ。それに、魏加さんとは個人的に知り合いですし、間に合って良かった」

「良かったかどうかは今を生き残ってからだがな」

 

白麗のホッとした言葉に、きょうかいは淡々と返す。その視線の先には恐ろしい数の魏加に向けられる恨みと殺意の目があった。

 

「恐らくここが一番の死地になるぞ」

「そうみたいだな」

「は、望むところだ」

「魏加さんは休んでいてください。かなり疲弊しているでしょう」

「いや、心配には及ばぬ麗よ。私も戦おう」

 

「貴様ら卑怯者の分際で!」

 

「ま、お前の言いたいことも分かるけどよ、こっちも黙って将軍殺される訳にはいかないんだよ。それにお前には初日の借りがあるしな」

 

王恬と信が切り結ぶ。それを合図に乱闘が始まる。とは言え、この入り乱れる戦場で魏加を認識出来ていたのはほんの一握りに過ぎない。その他の殆どの秦兵はただ王騎の致命傷に絶望していた。きょうかいが心配するほどの死地ではなかったのである。さらに、直ぐに王騎を逃がすために軍が動くことで、実際彼等が剣を交えたのは僅かな時間だった。

 

 

 

 

★少し巻き戻る。龐煖が王騎を貫いた直後。

 

「ごふっ」

「…水をさされた。だから戦などはつまらぬというのだ。だが、これがお前の土俵だ。文句は言わせぬ。お前の敗けだ。王騎」

 

龐煖の言う通り王騎の傷は間違いなく致命傷だった。心臓を貫かれ、余命あと幾ばくか。そんな王騎の逃れられない死を感じ取り、秦軍の士気は崩れた。百戦錬磨の王騎兵の中にすら武器を落とす者がいるほどだった。

 

「クハハハ!武器を捨ておったぞ!さァ終わりだ!秦兵を皆殺しにしてやれ!」

 

これで戦が終わる。後は士気崩れた秦兵供を刈り取るのみ。そう趙軍の誰もが思った。李牧ですら希望的観測と思いながらも、恐らくそうなるだろうと思っていた。しかし、

 

「お待ちなさい!─────勝手に敗けを押し付けられるのは心外ですねェ。我が配下達にも怒りを覚えます。武器を落とすとは何事ですか。たとえ何が起ころうと死んでも諦めぬことが王騎軍の誇りだったはずですよ」

「「「「とっ殿ォオオオ」」」」

 

王騎の言葉に再び秦兵に士気が宿り、同時にその場にいた全ての王騎兵に殉死の精神が灯る。何が何でも、如何なる犠牲を払おうとも王騎の死体を持って帰る。王騎兵の全てがそう覚悟した瞬間だった。

だが、すんなり思い通りにさせるほど、この李牧は甘くはない。王騎の演説でひりつく空気を打ち破るように、李牧は部下に指示を出した。

 

「カイネ、狼煙を挙げてください。それだけで各軍団長は分かります」

「は!」

 

カイネの手により紫の狼煙が上げられる。それを遠くで見た李白、公孫龍、万極は秦軍に止めの一撃を与えるべく、一斎に動き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

程なくして、山の中に火が上がる。更には山崩れのような音まで遠くで聞こえてくる。

 

それを見た者達は驚ろき、慌てた。趙軍の中にも慌ててる者が結構いたのが秦軍にとって救いだっただろう。もっとも、「これは私が仕掛けた罠です!気にせずに戦いに集中しなさい!」と言う檄に直ぐに正気に戻ったが。

 

一方の秦軍。もとより殉死を覚悟した王騎兵は驚きはしたものの、死地だった状況が更なる死地になっただけだと開き直り、王騎を運び出すべく再び奮闘した。

 

だが、歩兵は違う。彼等は王騎兵程の精神的タフネスはなく、武器を落とし、膝を折るものすらいた。勝っていると思っていたら、突然死地に変わり、頼みの綱の王騎将軍は致命傷、心折れた所に、王騎将軍の檄で何とか立ち上がり、死地を脱出しようと思ったら、脱出した先も死地であると突き付けられた。実際には森の全てが死地である訳ではないのだが、只の歩兵にそれを解する力はなく、目の前に広がる赤く燃える森が自らの最後を暗示しているように見えた。

 

「もう…ダメだ」

「こんなのどうすりゃいいんだよ」

「初めから罠だったんだ」

 

「終わりましたな、秦軍は」

 

魏加の言葉の通り、もはや秦軍に此処から立て直すのは不可能であった。そも総大将である王騎が死んだのだ。此処からの勝利はありえない。此処からどちらが勝つかではなく、何れだけ生き残るかの戦いだ。

 

李牧は後続に逃げる王騎を追わせ、疲弊の大きい元々いた兵にはこの場に留まり撹乱に殉ずる王騎兵の残党狩りを命じた。

 

「殲滅戦はしないのですか?」

「ええ。後ろから追いたてる程度で充分です」

「それでは蒙武や騰は殺せないでしょう。此処で殺しておいた方が良いと思いますが」

「殲滅しようと思えば此方の被害も大きくなります。しかし、現在の趙国の状況を考えると、兵の消耗は可能な限り抑えておきたい」

「なるほど」

 

廉頗将軍と楽乗将軍、この二人がいないと言う事実が李牧に殲滅戦を躊躇わせた。

 

《王騎side》

 

少し時間は巻き戻る。

李牧の指示により森で火が上がった時。

誰もが一瞬思考が止まる状況の中で、王騎だけは思考を止めなかった。

 

火……火事……いや、罠

 

王騎は李牧の冷静な表情を見て、これが予め仕掛けられていた罠だと気付く。そして、同時に疑問が生じた。

 

何時から………?

 

この戦が始まってから罠を仕掛けたと言うのはまず有り得ない。これほど大掛かりな罠に誰も気付かないはずがないからだ。つまり、戦が始まる前から罠は仕掛けられていたことになる。それはつまり、この戦が始まる前に、現在の山中の軍の配置を予測していた人間がいると言うことである。

信じられないことだが、事実を見つめるとその結論になる。そして、如何なる知謀の持ち主だとしても、事前に軍配置を予測するためには、この山の地理を隅から隅まで詳しく知っている必要がある。だが、それは一ヶ月やそこらで出来ることではない。つまり、秦国が韓国に攻め始めるより前に、今この状況を予測していた者がいると言うことになる。

 

王騎は本物であるが故に、山崩の音を聞いた瞬間、それらを数秒で理解した。そして、この戦を何時から描いていたのか、気になった。今聞くべきことではないことは分かっていたが、自分の死が確定した状況で、自分を殺した男がどれ程の策士だったのか気になったのだ。

 

「最後に一つ尋ねていいですか、趙の軍師さん」

「李牧です」

「そう…李牧」

 

それは王騎が初めて戦場で見せた私心だったのかもしれない。

 

「何時からこの状況を予測していたのですか?」

 

李牧も答える必要はなかったが、静かに答えた。

 

「八ヶ月前です。廉頗将軍が魏に亡命した時点で、私の頭にはこの光景がありました」

 

その答えを聞き、王騎は笑った。完敗だと。

 

 

 

 

 

 

戦は終わった。

大将軍王騎の死、その直下の軍団長五人の内三人の死、そして戦に参加した半分以上の兵の死と言う大きすぎる被害を出した。

蒙武、騰、隆国、干央は生き残ったが、彼等の顔には隠しきれない悲哀があった。

 

 

趙軍が撤退したことで、馬陽の防衛と言う目的は達せられた。それは秦国の勝利と言うことも出来たが、その勝利を喜ぶ者は何処にもいなかった。







乱戦って書くの難しい…
でも、何とか馬陽の戦いを終わらせられました。
この戦いが終わるまでは書こうと思ってたので良かったです。この後は戦後処理を書いたら暫くは休載すると思います。また書きたいことが出来たら書くかもしれません。最後に今迄読んでくれた方ありがとうございました。
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