キングダム世界の趙の王族に転生してしまった   作:ROM

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ふと思いつき衝動的に書いてしまった。ご都合主義満載の話。

少し変えた7/22


三話 羌象(羌瘣の姉)が仲間になった件

三話① 羌象(羌瘣の姉)が仲間になる話

 

趙国のとある辺境にある川の辺りを一人の子供が歩いていた。年の頃、八歳ほど。農民が着るような茶褐色の襤褸切れを身に付け、両手を頭の後ろで組み、ぼんやりと空を眺めながら行く宛もなく歩いている。その姿はとても高貴な身の上の子とは思えないが、実はこの男、趙国の王族に名を連ねるものであった。

 

「はぁ、雲は良いよなぁ……、自由で……、俺も次生まれ変わったら雲になりたい」

 

男の名前は璃。元々は平和な平成の世に生きる只の小学生であったが、ひょんなことから古代中国の戦国時代を描いた漫画キングダムの世界の、しかも滅亡を控えた趙王国の王族として転生してしまった。

 

璃は転生して現状を理解してから、滅亡を阻止するために奮闘してきた。その結果、得た評価は神童である。

一歳で立ち、二歳で言葉を解し、三歳で本を読み、四歳で走り回る。確かに何も知らないものがそれを見れば神童だと思うのも無理はない。しかし、何度も言うが、璃は只の遊び盛りの小学生、只の平均よりやや下程度の凡人であった。

 

回りからの過度な期待、王族としての振る舞いや礼儀作法、特別興味のない相手との下心の見え透いた会食などなど、王族としての生活は璃にとって結構ストレスの溜まるものだった。そのため、この頃になると、度々護衛の目を盗み一人で脱走し、農民の子らと遊ぶという困った癖が出来上がった。

彼がこのような行動をとるのはこの世界の先を知ってるがゆえの現実逃避、などではなく、自由に遊び回る時間が欲しかったからだ。

 

「王族の生活がこんなに息がつまるとは思わなかった………」

 

一日中、寝ても覚めても護衛と言う名の監視につきまとわれる日々。おはようからお休み、果ては排便の時にまで、付きまとう視線。

 

「飢えの心配がないのは良いんだけどなぁ、流石に息が詰まるよ」

 

これが危険な行為と言うのはさしもの璃にも分かっていたが、これは子供による細やかな抵抗活動なのである!とそんな自己弁護をしながら、ふと、横に流れる川を見ると、澄んだ透明の川の中に赤い線がいくつかあることに気づいた。不思議に思って上流へ向かって歩いていくと、赤と白を基調とした独特の民族衣装を身に付けた女が川に浮かんでいる。しかも、女の回りの川は元が水色だったと思えないほど赤黒く染まっていて

 

「!!」

 

俺は女の姿を目に入れた瞬間川に飛び込んでいた。

あの血の量じゃ確実に出血死してるとか、もう手遅れだとか、厄介事の臭いがするとか、川に飛び込むなら服を脱いでからの方が早く泳げるとか、そんな理性的な判断が完了する前に、俺の体は無意識に動いていた。中学で習って以来一度も使う機会の無かったクロールを使い川を渡る。自分の泳ぎの下手さに苛立ちながら我武者羅に泳ぐ。大して速くも上手くもない動きだが、川幅がそこまで広くなかったこともあり、数分と掛からずに俺は女の元へと辿り着くことが出来た。

 

「────」

 

女の体を掴み、来た道を戻る。

やってみて初めて分かったけど人一人持って水の中を移動するのってかなり大変だ。水の抵抗が倍以上に感じる。全然進まん。腕が使えないから動きにくい。

結局陸まで行くのに行きの倍以上の時間がかかった。

 

「(つ、疲れた……体力ねえなおれ……て、そんな事考えてる場合じゃねえ!)」

 

俺は女を改めて見る。

一目見て重体以上と分かる怪我をしている。体には無数の切り傷。右腕は余程鋭利な刃物で切られたのか肩から先が存在しない。肩が無くなったことで服の支えがなくなり上半身が裸になっているせいでよりいっそうその惨状が生々しく目に焼き付いた。

 

「くそっ!血が止まらねえ!どうすりゃいいんだよ!?」

 

素人知識で止血を試みるが全然上手くいかない。

 

「肩が切られたときってどう止血すればいいんだよ。どこをどう結べば!?」

 

胸が微かに上下しているのを見るに、まだギリギリ生きてるみたいだが、このままでは後半刻も持たずに死ぬだろう。というか、今生きてるのすら信じられないほどの奇跡なのだ。

 

俺は通り掛かった人に大声で医者を呼ぶように呼び掛けた。王都から専属医師を呼べれば一番いいのだが、今俺がいるのは邯鄲から遠く離れた辺境の土地。視察と言う名の小旅行で偶々やって来ただけの田舎だ。しかも、泊まっていた宿からこっそり抜け出してきているので、供の一人もいないときた。

何で俺は供の一人も連れてこなかったんだよ!と数時間前の自分に悪態を吐きつつ、女の上半身を起こす。

出血しているときは患部を心臓より上にするって聞いたことを思い出したのだ。

 

「くそっ、医者はまだ来ないのかよ!」

 

まだも何もさっき呼んだばかりなのでそんなすぐ来るはずがない。それにこんな辺境の田舎ではまともな知識を持った医者がいないことだってざらにある。むしろその可能性の方が高い。何より女の状態が悪すぎる。彼女が助かるには偶然ここの近くの村にこの世界の常識を越えた外科医がいれば何とか助かるかもしれないと言うくらいの状況である。つまりそれはこのまま医者を待っていても女が助かる可能性はほぼゼロだと言うことだった。

 

くそっ!なにか、なにか方法はないのか?

 

璃の年齢はまだ八歳である。前世の常識が未だに抜けきれておらず、世間の荒波も知らず、王の子として今まで大切に育てられてきた璃は人が目の前で死ぬことに強い恐怖心を抱いていた。

 

この世界の常識に囚われてちゃ助けられない!前世の知識を掘り起こすんだ!

 

しかし、前世の自分は只の平凡な小学生である。危機的状況の患者を救う専門知識なんて何一つ持ち合わせていない。

 

くそっ!なにか、なにかないのか?!なにか、あ!

 

そこで脳裏に衝撃が走った。

 

そうだ!俺にはこの世界の常識の外にある異能があるじゃないか!

 

俺の異能 王の恩寵は対象の潜在能力を引き出す力だ。凡人に使えば只成長速度が上がるだけの結果に終わるが、特別な才を持つ者に使えば『スキル』と言う特殊技能を得ることが出来る。もし、この状況を打破出来るスキルを発現することが出来れば助けられるかもしれない。

それは可能性に可能性を掛けたような、奇跡の上に奇跡を積んでいくようなそんな無謀である。しかし、今はもうそれに賭けるしかなかった。

 

俺は女の背中に手を当てる。この能力を発動するには対象の背中に直接触れることに加え、更に口頭での同意を得なければならない。

 

「おい、今からお前と契約をする!上手く行けば助けられるかもしれない!だから契約に同意してくれ!」

 

女の意識はとうに飛んでいた。だから、その声は聞こえるはずがないし、答えが返ってくるはずもなかった。

だが、奇跡は起きた。

か細く消えてしまいそうな小さな声だが確かに女は「うん」と返事をした。

その瞬間女の背中に光が灯り、幾何学的な紋様が背に刻まれる。

 

スキルの習得に必要なのは強い思いと資質。そして女はその二つを持っていた。

奇跡は二度起きたのだ。

光が収まった瞬間、女の身体中の切り傷は塞がり、無くなった腕が瞬く間に再生される。数秒の後には彼女はさっきまで死にかけていたとは思えないほどピンピンとした無傷な体に変わっていた。

 

「う、うう………」

 

女が目を覚ます。その顔はさっきまでの土気色の顔とは異なりしっかりとした生気が感じられた。しかし、どこか夢現のようでもあった。

女はしばしボーッとしていたが、ゆったりとした動作で周囲を確認し始める。

そこは川のほとりの砂利の上。右には整備されてない道があり、東には大きな川、自分の前にはまだ子供の男の子が心配そうな顔で座っている。

続いて、自分の状況を確認する。何故か自分は上半身裸で体の至る部分が赤い絵の具のような液で濡れていた。

女はぐでんと横になった。

 

「なに…これ……夢?」

 

太陽がまぶしい。背中越しに石のゴツゴツとした感触とひんやりとした温度が伝わってくる。こんなリアルな感触まであるとは実に可笑しな夢である。

 

「変な夢」

 

女が夢だと思うのも無理はない。なにせ、女の最後の記憶は次の蚩尤を決める祭の最中、罠に嵌められ致命傷を受けて死んだはずなのだ。にもかかわらず自分は息をしていて、しかも無くなった筈の右腕まで戻ってるときた。これが夢じゃなかったら誰が一体腕を治したと言うのか。

 

「起きたか。身体に異常はないか?あとこれ夢じゃないからな…………」

 

心配そうにする少年の問いに大丈夫だと頷きつつ、現状を考える。少年の話を信じるならこれは夢ではないらしい。確かに死んでるのに夢を見るのも可笑しな話だ。走馬灯にしても長すぎるし、知り合いが一人も出てこないのに見知らぬ少年が出てくるのは意味不すぎる。てことは、ここは天国か地獄?私が天国に行けるはずないし、地獄ってこと。うわぁ、まじかー。仲間にリンチされて死んだってだけでもキツイのに、泣きっ面に蜂だよこれ。神様とか信じてなかったのが悪かったのかな?それとも、罪の無い人間を虐殺したから?でも、あれは蚩尤の試練であって私の意思じゃないし、そこらへん勘定に入れてほしかったよ。

 

ドタバタドタバタドタバタドタバタ!!!

 

地面を通して何者かが此方に走ってくる音が聞こえる。数は二人、おそらくどちらも成人くらいの体格で、一方は荷物を持っている。

 

地獄にしては随分平和だと思ってたが、やはり油断させてから一気に落とす算段だったか。良くある手口である。人の世も地獄もやることは変わらないのか。諸行無常を感じる。

羌象はもう少し寝ていたかったなと思いつつも、何時でも動けるように呼吸を始める。さらに、武器───剣や槍は無いが、幸いにして水に濡れた布はあった。これなら羌族の操布術が使える───、胸を隠すように申し訳程度に少年がかけた布を手に取り、敵の襲撃に備える。

 

(何時でも来い!───来た!──え?)

 

しかし、やって来たのは鬼でも悪霊でもなく、何処にでもいそうな村人風の男と、医者のような格好をした老人だった。

 

「こ、こっちです!こっちに物凄い怪我の女の人が!」

「はぁ、はぁ、走るのは老体に堪える、ふぅ、それで患者は何処だ?ぱっと見いないようだが」

「いや、あの娘ですよあの娘!て、え?た、確かにさっきあの娘の腕が…あ、あれ?」

「はぁ、なんじゃ、白昼夢でもみたんか?お主、まだ昼も真っ盛りじゃぞ」

「白昼夢…?いや、そんなはずは……き、君も見たよね?!」

「見てませんよ」

 

彼女が再生能力を手に入れたなんてバレれば大変なことになるので、俺はしらを切ることにした。

 

「いや、見ただろ!? 君が医者を呼んできてくれって僕に言ったんじゃないか」

「ああ、それはですね………暇だったので旅人を驚かせる遊びをしてたんですよ、テヘペロ」

 

「な!?ま、全く人騒がせな!」

「全くじゃ!」

 

二人は怒って帰ってしまった。

その後、しばらくの間現実だと理解しない女に説明を続け、天然な回答が返ってくる変なループを繰り返し、何度目かの説明の後、仕方無く俺の能力の説明をして、スキルを試させることでようやっと納得してもらった。

 

ちなみに、彼女の名前は羌象と言う。実は説明している途中でもしかしたらと思っていたんだが、やはり原作キャラの羌象だったらしい。

 

羌象の事を簡単に説明すると、飛信隊副将の羌カイの姉で、伝説的な刺客一族、神を身に降ろして戦うと言う飛んでも設定を持つ蚩尤の末裔だ。しかも、羌カイと並び蚩尤族の中でも特に優秀な女で、目茶苦茶強い。

そんな怪物を放っておくことはないので、俺は羌象に仲間になるように頼んだ。命の恩人+能力による忠誠心により、羌象はあっさり承諾する。

 

「いいぞ。元々、恩は返そうと思っていたからな。お前の能力についても他言する気はない」

「助かるよ」

「だが、一つ忠告しておく」

「?」

「お前の能力の持つ危険性についてだ。簡単に言うと忠誠心の発芽が必ずしも良い結果に繋がるわけではないと言うことだ」

「どういうこと?忠誠心を植え付けられるなら悪いことなんて無いんじゃないの?」

「それがまともな相手ならな。だが、世の中には常人には理解できない価値観を持つ者もいる。例えば愛する者を殺して剥製にしてこそ永遠の愛などと考えるものとかな」

 

想像してゾッとした。正直全く予想してなかったデメリットである。確かにお手軽に忠誠心を植え付けられるのは良いことだが、相手を見てやらないととんでもない竹箆返しを食らいそうだ。

 

「まあ、私が護衛に就くからにはそこまで気にする必要はない。仮にヤバイ奴が現れても私が始末してやる。だが、強い武人や暗殺者と契約する時は注意しておけ。手に負えない怪物が生まれる可能性がある」

 

俺はブンブンと首を振った。

最後に少しビビるような話があったものの、羌象を仲間に出来たのは嬉しい誤算だ。彼女は愛人件護衛にしよう。素性が不確かな者を護衛にするのは大変そうだが、あとは郭開に任せれば大丈夫だ。面倒事は全部彼奴が何とかしてくれる。俺の頼れる知恵袋である。

俺は内心ホクホクとしながら、羌象と共に町へと向かうのだった。

 

 

 

 

in 町

 

ガヤガヤ

 

ガヤガヤ

 

町の関所を潜ると直ぐに郭開を見つけた。彼は身体中に汗をかきながらゼエゼエと荒い息で、此方に駆けてきた。

 

「さ、探しましたよ、璃様。一体今まで何処に行ってたのですか?!」

「ちょっとぶらりと壁外を散策してたんだよ」

「な!あれほど一人での行動は控えてくださいと………うんたらかんたら……うんたらかんたら…」

「あー、分かった分かった。お前の説教は長いんだよ」

「私はただ璃様が拐われたのではないかと心配で……うんたらかんたら…うんたらかんたら…うんたらかんたら…」

「あー、悪かったって。ところで、そろそろコイツの説明して良いか?」

「──!………、そう言えば、其方の女性は?見かけない顔ですが」

 

郭開は言われてようやく気付いたというような態度で疑問を呈した。

 

「コイツは羌象。町の探検中に見つけて気に入ったから俺の護衛にすることにしたんで連れてきた。てことで、手続き宜しくね」

 

上司の無茶ぶりで部下が苦労するのはどこの世界でも同じである。後で百面相をする郭開をおいて、俺は宿へと戻った。

 

あー、今日は疲れた。早く帰って寝たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話② 暗殺未遂事件

一年後………。

 

九歳の時。俺の暗殺未遂事件が起こった。夜も深夜を回った頃、唐突に寝室に暗殺者が雪崩れ込んできたのだ。数にして100以上、一族単位で数えれば10以上もの暗殺一族がやってきた。呂不韋も真っ青の暗殺者のバーゲンセールであった。あの時は本当にもうダメだと思った。明らかに人一人を殺すために用意する量ではない。

 

退路もなく、あったとしても逃げられる俊足もなく、絶体絶命な状況に俺は天を仰いだ。

それが合図になったわけではないが、その瞬間示し合わせたように羌象が天井裏からふっと飛び降りてきたのだ。

 

結果は、今俺が生きてることからも分かるだろう。暗殺は失敗した。

羌象一人が無双することで暗殺者の尽くは殺された。

 

暗殺者の一人として雇われていた朱凶の長は、羌象の人知を越えた暗殺術に、羌象こそ探し求めてきた真の蚩尤であると思い、その場で恭順することを願い出る。なんでも、朱凶は遥か昔から蚩尤を長として仰いできた一族らしい。羌象は面倒そうにしていたが、役に立つならばと恭順を受け入れた。

 

羌象の暗殺術に魅いられたのは朱凶だけではなかった。他にも三つの一族が羌象に死母の誓い(主の命なら親をも殺すと誓うこと)をしたのだ。仲間を目の前で惨殺した相手に恭順する気持ちは理解できないが、暗殺者には暗殺者の価値観や信仰があるのだろう。暗殺者の部下が増えることは俺にとっても困ることではないので、口は出さなかった。

 

その後、二年ほどかけ、羌象は手下にした朱凶ら暗殺一族を使い、大陸中の闇世界に巨大な情報網を築いていくのであった(未完)。




死母の誓いは完全造語です。
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