キングダム世界の趙の王族に転生してしまった   作:ROM

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少し変えた7/22


四話 李牧

 

紀元前245年。この年は多くの重大な出来事が起きた年であった。まず秦国では秦王嬴政の異母弟である成キョウが玉座を狙い反乱を起こした。具体的な内容については情報が封鎖されており分からなかったが、嬴政はこれを無事に鎮圧したようだった。ちなみに、呂不韋は反乱を認知し、救援も求められていたが黙殺した。その数ヵ月後、秦軍が魏国へ侵攻。秦の大将軍 麃公と魏の大将軍 呉慶の戦い──後に蛇甘平原の戦いと呼ばれる事になる──が勃発する。序盤は装甲戦車隊が猛威を奮い魏軍優位で進んでいたが、最終的には麃公が呉慶を一騎討ちで討ち取り秦軍の勝利で終わった。

 

一方、趙国では孝成王が相国の廉頗に魏の繁陽を侵攻を命じ、占領に成功した。しかし、このとき、丁度、孝成王が崩御し、子の趙偃が即位(悼襄王)。廉頗を毛嫌いしていた悼襄王は即位と同時に廉頗を三大天から外し、更に前線の将軍を楽乗に交代させたが、廉頗はこれに激怒し、楽乗を攻撃し敗走させた後、魏に亡命した。(楽乗もいなくなった。戦死したとも悼襄王からの罰を恐れて逃げたとも噂されている。)一度に趙国第一の大将軍と第二の大将軍を失った趙はその穴を埋めるために匈奴防衛戦で名を上げていた李牧を新たに三大天に任命。さらに、李牧の推薦により龐煖が三大天に任命される。

 

時代交代は武官だけでなく文官でも起こった。

 

相国であった廉頗がいなくなり相国位が空席になり、文官の事実上の最上位であった左丞相と右丞相は左丞相が引退し、後任に郭開が任命された。これにより郭開は名実共に趙政の最大派閥の長となり、政治に最も影響力を持つ者の一人となった。

 

 

「郭開様、宰相襲名おめでとうございます。」

 

郭開は色々な人間からの賛辞や接待などの対応に忙しくしていた。

 

一方の俺はと言うと………

 

廉頗が魏国に亡命したと言う情報が朝廷内に広がる三日前の夜。

悼襄王の息子 太子・璃の寝室の巨大なベッドの上で寝巻き姿の俺と羌象は話をしていた。

羌象とは暗殺を生業とする蚩尤族の一人で羌カイの姉に当たる女だ。次の蚩尤を決める祭の最中、罠に嵌められ致命傷を受け、死にかけているところを偶然通りかかった俺が救けた。以来恩返しにと、護衛として働いてくれている。

表向きは側仕えの女官として登録されているので今の羌象の服は蚩尤族の民族衣装ではなく、女官のそれだった。

 

二年前の暗殺未遂以前は俺も一人で寝ていたのだが、あれ以降危険を防ぐためにと、夜の間はずっと一緒のベッドで寝ることになった。羌象以外にも複数の護衛が室内で控えているが、彼等は既に契約済みであり、会話の内容を他にばらすようなことはない。璃が契約したのはここにいる護衛だけではなく、手当たり次第に契約しまくっており、その結果現在城内の殆どのものは璃の手駒となっていた。

 

「璃!大事件だ!」

「何かあったのか?」

「廉頗が魏に亡命するつもりらしい!」

「確かな情報か?」

「朱凶からの報告だから確かだと思う」

「そうか………やはりそうなったか」

 

その報告に驚きはない。原作通りになったと言うだけだ。

 

「やはりって…まさかお前知っていたのか?」

 

羌象は、璃が少し前に廉頗と秘密の会談をしていたことを思い出し、魏国への亡命の件を前から知っていたのではないかと考えた。

 

「ああ、知っていた。だが、これでいい。考えあっての判断だ」

(………(ジー))

「理由は三つある。一つは、悼襄王と廉頗との仲が予想以上に悪かったからだ。たぶん、今回諌められたとしても、また同じようなことが起こる。それでは王の不況を買うだけで意味がない。

 

二つ目は、時期が悪かった。知っての通り、王が廉頗を更迭したのは任命の儀の直前だ。郭開が王を諌めれば決定が覆っていた可能性はあるが、同時に王の不況を買っていた可能性が高い。そうなれば、任命の儀で郭開が左丞相になれなかった可能性がある。その危険は犯せなかった」

「でも、城内は殆ど璃の手に落ちてるんだから決定を覆すことも出来たんじゃないか?」

「趙国は良くも悪くも王の権力の強い国だからな」

 

もちろん、今言った理由の大半は建前である。一番の理由は、王騎を原作に則り殺すためだ。その為に原作との解離はなるべく少なくしておきたい。信が既に趙国にいるので、原作まんまとまではいかないが、仮に信がいないことで政が反乱で死んだなら秦国が中華統一なんて事をしなくなり、主のいない王騎も戦場に出てくることはないので、どちらに転んでも問題ないと言う案配だ。

しかし、原作知識を前提としたものなので言うわけにはいかない。それっぽい理由をでっち上げるしかない。

 

「それに趙国には李牧がいる。今は中央からは遠い匈奴防衛戦で戦っているが、おそらく廉頗の後任の三大天には李牧がつくことになるだろう。あいつなら廉頗の穴を埋めてあまりある」

「──!!?智将と言うのは聞いてたが、李牧とはそれほどの人物なのか?」

「俺もあったことがないから噂程度しか知らないが噂が事実ならかなりの智将だ。郭開もえらく評価していたしな。───ところで、李牧が何故智将と呼ばれるようになったのか知ってるか?」

 

話を変えるためにそんな事を言う。

 

「匈奴防衛戦で大きな戦功をあげたからだろ」

「そうだ。だが、初めから智将と呼ばれていたわけではない。むしろ初めは無能と呼ばれていたんだ。実際に李牧は一度官吏を首になっている。少し詳しく話してやろう」

 

 

○年前

李牧は官吏として雁門郡に来てから、これまでの前任者の作戦を根本的に見直し、徹頭徹尾徹底した籠城策を取った。さらに、一兵卒に至るまで勝手に戦うことは許さず、破ったものには厳しい罰を与えた。この李牧の籠城策は上手くはまり、長年安定的に国境を守備することができたていたが、この時代、被害が少ないと言うのは中々評価されないものであった。

そして、そんな消極的な命令に不満に持つものは多く、兵の中での李牧の評価はかなり悪かった。李牧には考えあってのことだったが、それを理解できるものはいなかったのだ。

 

「今の官吏は臆病者だ。」

「全くだ。いつも籠城、籠城、籠城。これでは何時まで経っても勝てないではないか」

「そんな弱腰だから匈奴の奴等が調子に乗るのだ」

「戦えば我等が負けるはずがない!おれが一蹴してくれる!」

「待て!勝手に戦えば厳罰だぞ!」

「くっ!」

 

その噂は趙の王都 邯鄲にいる国王の耳にまで届いた。

 

「最近新しく官吏についた男、何といったか?」

「李牧でございます」

「そうだ李牧だ!あのうつけ、匈奴ごとき蛮族に臆して好きなようにされてると聞くぞ!なんたる無能の臆病者か!今すぐ更迭せよ!」

 

李牧は更迭され、新しい官吏がやってきた。新しい官吏は攻めてくる匈奴を追い払うべく勇んで部下を率いて指揮を取った。しかし、ここで思いもよらないことが起きるのである。

 

数ヵ月後

 

「戦っているのに何故か被害が籠城しているときより増えている」

「しかも、減る兆しが見えない」

「くそ、どう言うことだよ!?」

「最近じゃあ、城壁の外で家畜の放牧すら出来なくなった」

 

その情報は邯鄲の国王の元にも届けられた。

時の王は自分の非を認められる程度には良き王だった。

 

「まさか李牧はこうなることが分かっていたのか?」

「恐らくはそうでしょう。でなければ、一兵卒に至るまで統制する理由がありません」

「むう、」

「いかがいたしますか?」

「仕方あるまい。李牧を官吏に戻すのだ」

 

 

李牧は官吏に戻ることを初めは断ったが、既に王命は下っていると言われれば固辞することは出来ず、邯鄲にまでやって来て、王の前に膝まずいた。

 

「そちが李牧か」

「はい。私が李牧にございます」

「呼ばれた理由は分かっておるだろうが、改めて命じる。官吏に戻るのだ。」

「慎んで拝命いたしました。ですが、一つだけ条件があります。私が今までやっていた籠城策を許可していただきたい」

「よかろう。お前のやりたいようにやるがよい」

 

 

匈奴防衛戦の前線 雁門郡の城

 

「李牧様が戻ってからまた被害が減った!」

「流石は李牧様だ!」

「俺は初めから信じていたけどな!」

「あはは、よく言うぜ」

 

こうして、再び被害は減ったのである。

 

だが、ここで終わるなら李牧はただの智将止まりで終わっていた。少なくとも、三大天にはなれなかっただろう。なにせ、結果はともかく、やっていることはただの籠城なのだから。

 

李牧の恐ろしい所はこの先を考えたことだ。李牧はとある策を使い匈奴の被害を無くしてしまったのである。

 

 

 

匈奴防衛戦の前線 雁門郡の城

執務室で李牧は部下からの報告書を見ていた。

 

「李牧様、今月の被害をまとめました」

「ありがとう、カイネ。………ふむ、被害は昔と比べ随分減りましたね」

「はい!李牧様の言う通りに籠城時に行動を明文化したのが実を結びました。それに、兵の一人一人が籠城策こそ最善だと理解してくれたのも大きいかと!」

「そうですね。ですが、やはり被害は皆無にはならない。そして、これ以上減らすことも難しい」

「へ?」

 

てっきり喜ばれると思っていたカイネは李牧の言葉に?マークを浮かべる。

一方、李牧は顎に手を当てて思考する。その頭の中で数多の策が編み出され、却下されていく。そして、しばしの熟考の末、再び頭を上げた。

 

「カイネ、今から私の言う数だけ馬と車と槍を集めてください。それと弓兵もです」

「た、戦うのですが?」

「今すぐではありません。まず教練をする時間が必要です。それが終わるまでは今まで通りの籠城策を続けてください」

「し、しかし、籠城策は上手くいってますよ」

「私にも考えあってのことです」

 

李牧は敢えて明言は避けた。

自分が一から全てを説明するのは簡単だが、後身の育成をするのも将の役目かと思い直したからだ。

 

「カイネ、覚えておきなさい。戦とはただ勝てば言いと言うものではない。重要なのは勝利の先に何を得るか、何をなすか。その目的が分かっていなかったから、前任者はただ悪戯に兵を損傷させるだけになってしまったのです」

「目的ですか」

「どう言うことかは自分で少し考えてみてください。宿題ですね」

 

 

 

 

半年後。

 

「李牧様!見張りから連絡が来ました!また、匈奴が攻めてきたようです!」

「数は?」

「一個小隊です!これから速やかに城内へ戻るよう誘導します!」

「いや、まだ動く必要はありません。匈奴が肉眼で見えるようになったら、家畜は城外に放置したまま民だけ場内に運んでください。但し老人や病人などは理由をつけて今の内に城内へ入れておいてください」

「よろしいのですか?それでは家畜が奪われてしまいますよ?」

「ええ、これも作戦です」

 

やって来た匈奴の兵は放置された牛や羊などの家畜を見て、狂喜乱舞した。

 

「わははは、奴等家畜を放置して逃げていくぞ!」

「奪いまくりの取りまくりだぜ!」

「愉快!愉快!」

「腰抜けどもめ!」

 

 

当然、匈奴の小隊長は、その日の話を匈奴の王へと報告した。

それを聞いた匈奴の王は李牧を侮り大軍を率いて城に進軍することを決める。しかし、それこそ李牧の望む行動であった。既に彼の向かう場所は李牧が半年かけて築いた死地となっていたのだ。

 

匈奴軍は潜ませていた伏兵から思わぬ挟撃を受け、散々な目に遭い撤退を余儀なくされる。さらには、撤退経路すら李牧は読み切り、伏兵に次ぐ伏兵により、軍は壊滅的な被害を受けた。この一戦だけで匈奴は十数万もの騎兵を失ったのである。

 

 

本拠地に戻った匈奴の王はその損害の多さに頭を抱えた。

 

「くそ、李牧め!奴はとんだ策士だ!はめられた!」

「復讐しますか?」

「いや、李牧がいる限りあの城は落ちん。お前らも手を出すな」

 

匈奴の王は部下に手を出さないように命令をだし、以後十数年趙の北方から匈奴の被害は無くなったのである。

 

 

 

 

 





キングダムでの李牧の評価は両極端ですが、この ssでの李牧は最強の智将です。廉頗や王騎や王扇などよりも強いです。
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