キングダム世界の趙の王族に転生してしまった 作:ROM
せめてssでは強キャラにしたい!と思って書いたら、王扇みたいな性格になってしまった……
それでも良いと言う方はどうぞ。
馬陽の戦い 作戦会議
大きな地図が机上に置かれ部屋に集まった面々を見回し、茶髪の三十代前半程のイケメン──李牧が音頭を取った。
「忙しい中集まって頂き感謝します。今回の会議では半年後に行う予定の秦国侵攻戦の作戦会議を行います。まず、戦の概要の前に今回の戦いの目的について説明しておきましょう」
「目的?領土を奪うことではないのか?」
「いえ、それはあくまでついでです」
領土の拡大をついでと言いきる李牧は、やはり普通の武将とは違った考えを持つ。
「今回の戦の第一目的は墜ちた趙国の武威の復活」
予想していなかった言葉に、周囲がざわつく。
李牧は喧騒が収まるのを待ち、厳しい口調で説明を始める。
国を代表する武将の損失は国の武威の失墜に等しい。そして、戦国の世で武威の失墜した国は他国から侮られるだけでなく、才人も集まらなくなり、さらなる国力の低下を招く。
現在趙国は、一度に趙国第一位の廉頗将軍と第二位の楽乗将軍を失い、その国威は大きく損なわれた。
「長年趙国を攻守に置いて支えてきた二人の大将軍の損失は計り知れない痛手です。
列強各国の支配者はこう思っているでしょう。「趙は今が攻め時だと」
能ある民草はこう思っているでしょう。「趙へ行っても先はないと」
そして、それは紛れもない事実です」
李牧の厳しい言葉に場に集まった人々は顔色を険しくして、背筋を伸ばす。
ついさっきまで、新米のまだ年若い李牧に、侮りを見せていた老将も、今では李牧の言葉を真剣に聞いていた。
李牧はそれらを見渡し、厳しい口調で更に続ける。
「今我々に必要なのは速やかにこの国の武威を復活させ、趙国侮り難しと列国の雄に思わせること!そのために、現在中華で最も恐れられている王騎の首を取る!それが今回の戦の目的です!」
★
李牧の演説にしばし唖然となる一同。
李牧を田舎者と無意識に下に見ていた者も、彼の戦歴から並々ならぬ智略を持っているのは知っていた。しかし、まだ年若い年齢と優男然とした容姿から頭だけの男だと思っていたのだ。しかし、今行われた威風堂々とした演説は李牧が頭だけの男ではなく、王騎にも劣らぬカリスマを持っていると気付くには充分だった。
しかし、それでも中華の中央で戦ってきた武官達の王騎に対する恐れを覆すほどではなく、武官の誰もが李牧の案に賛成することはできずにいた。それほど、彼らの持つ王騎への恐れは根強く大きかったのだ。
そして、一人の男のやや頼りない声を切っ掛けに、次々と及び腰な意見が上がる。
「───だ、だが、王騎の首を本当に取れるのか?六大将軍最強とまで言われた男だぞ」
「そうだ。秦の怪鳥!あの男は本物の怪物だ。俺は昔戦場で戦った事があるがまるで悪魔のような強さだった」
「秦に侵攻し、武威を復活させるのはいいが、負ければそれこそ趙国は終わるのではないか?」
「北方にいた李牧殿は知らぬやもしれぬが、あの男は他の将軍とは強さの格が違う。どれだけの城と将が打ち取られてきたか。中華に名を馳せる大将軍なら他にもいる。格は落ちるがそこらで満足すべきではないか?」
彼等の反応は李牧の予想を上回る程の物でなかったが、しかし、李牧の推定よりも王騎と言う男への畏怖は強いことを察し、李牧は王騎に対する警戒を一段上げた。だが、だからこそ、倒す価値があるとも思う。
李牧は一つ息を吐くと今度は静かな口調で語り出す。
王騎。
──年に──した。
──年に──した。
──年に──した。
──年に──した。
──年に──した。
李牧は、調べあげた王騎の戦歴や取った作戦、人物関係、部下の質などについて淡々と語る。そのあまりの詳しさに聞いていた面々はぎょっとした。一体どうやってそこまで調べたのかと。
「私とて伊達や酔狂で王騎の首を取るなどと言ってるわけではありません。その難しさも貴殿方が抱く畏怖も充分に分かっています。しかし、その上で絶対に勝てると断言します。私は今までもこれからも絶対に勝てる戦しか始めません」
最後に、なんだか王扇のような事を言い、演説を締めくくる。そして、ようやく、戦略の話へと移る。今までの問答は部下と自分との現状共有に加え、中央の人間の王騎へ抱く感覚を正確に知るためのものだった。そして、その問答のお陰で、自分の予測よりも王騎に対する恐怖が大きいことが分かり、それは必ず戦場でも兵士に影響を及ぼすだろうと李牧は考える。しかし、それでも、李牧は自分が勝つと言う確信は揺るがなかった。
「今回の戦いの肝となるのは北方の騎馬兵の速さです。先程述べた王騎の戦歴からも分かる通り彼は中華の中央を主な戦場としています。私達にとっては非常にありがたいことに彼は北方の騎馬兵とも匈奴とも戦ったことがない。だから、彼等の馬の速さを知らない。そこに付け入る隙がある」
王騎ほどの経験と武勇と智略を有する将ならば戦場の様子から罠の気配を察し、伏兵が仕込まれている事まで気付くだろう。そして、伏兵を探るために兵を出すはずだ。そして、その上で、自分ならば伏兵が到着する前に勝てると考え、罠のある場所へと来る。
李牧はそこまで王騎が読みきることまでを読んで戦略に組み込んでいた。それを聞いて漸く彼等の顔は明るくなる。
「もちろん、これは戦略の柱であって細部については後程語ります。その前に魏加さん、貴方に一つ頼みがあります」
「私にですか?」
「ええ、中華十弓の貴方にしか頼めない重要な頼みです」李牧は続ける。「この戦争では最後に王騎と龐煖の一騎討ちとなります。その時、後ろから王騎を射ってください。それで王騎を確実に殺せます」
この時代、一騎討ちに横槍を入れるのは、将の顔に泥を投げつけるような不義理であり、殺されても文句を言えない事だった。それを状況が切羽詰まったからやるのではなく、初めからヤれと言うのは、武将の誇りを踏みにじるような命令である。
その信じられない李牧の言葉に、その場にいた武官は大きくざわめいた。
「李牧殿!それは幾らなんでも卑劣が過ぎると言うもの!」
「さよう!その様な虎狼のような手段を使わずともこの作戦なら勝てますぞ!」
「何より誇り高き趙兵の誇りが傷付きます!」
そんなもの成果で幾らでも洗い流せる!李牧は口に出掛かった本音を何とか飲み下す。今それを言ったところで、不満を煽るだけなのは目に見えている。
李牧にとって武将の誇りなど勝利の前では何の重みもないが、部下を説得するためには彼等を納得させる理由を述べねばならない。
「貴殿方の意見は重々承知しています。私とてこのような命令は心が痛みます。しかし、どんな清廉潔白な言い分を述べようと負ければ只の負け犬の言い訳に成り下がる。この戦いは趙国の今後を決める重要な戦いです。負けるわけにはいかない。勝たねばならない。そして、手段を選んで勝てるほど王騎は甘い相手ではない!それは貴殿方が一番理解しているはずです。───どうか、勝つために多少の不名誉は享受してください。頼めますか、魏加さん」
果たして魏加は頷いた。
「ええ、そこまで言われては断るわけにはいきませんね。お任せください。この魏加、命に変えましてもその大役努めてみせましょう」
それから半年後。
趙国のとある村。
ぼろっちい小屋のような家に住む漂と言う少年は、街である噂を耳にして急いで家へと帰ってきた。家の前では予想通り、親友であり、同じ夢を抱く幼友達の信が素振りをしていた。
「おい!信!ついに来たぞ!俺達の初陣だ!」
武将の考え方
王騎「絶対に勝てる戦などありませんよンフフフ」
王扇「私は絶対に勝てる戦にしか興味がない」