布団叩き片手に。   作:田中滅

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おかしいな………バンビちゃんってこんなに変なキャラだっけ?


第一話 突撃!お隣の朝御飯!味噌汁は唐辛子味?

「一心く〜〜ん。助けてくれ〜〜」

 

「………………何をやらかした、今度は」

 

クロサキ医院。二分程前に消し飛んだ真宮家の隣にある開業医兼三児の父親が営む町医師である

 

「いやね、バンビちゃんが朝から消し炭を作った挙げ句の果てに我が家の寝室以外の部屋を爆破してくれたのよ」

 

「………………前々から思ってたけどよ。アンタって阿保だよな」

 

一心に真顔で阿保と言われた瞬間、枕の中で何かが切れた。黒崎家に上がり込み、二階から降りてきた次女の夏梨に声を掛ける

 

「……………夏梨。あのアホみたいな遺影を剥がしたいんだけど、リビングに案内してくれるか?」

 

「マク兄。来て早々に死んだ魚みたいな目で話し掛けるやめて欲しいんだけど」

 

「いやぁすまん。其れで朝御飯はなに?朝食は消し炭だったから食い損ねちまってね、腹減ってんのよ」

 

「消し炭じゃないわよ!『バンビエッタライス』よ!おかわりもあるわよ!」

 

「一護にあげな」

 

未だに消し炭をバンビエッタライスと呼ぶ、バンビエッタがおかわりを差し出すと会話に参加していなかった黒崎家の長男である一護を指差す

 

「ダメ!アニキに作ったんだから、アニキが食べるのよっ!」

 

「おっ?バンビエッタちゃんの手料理か、どれどれ-----……………」

 

「お父さーーーーんっ!?どうしよう!お父さんがぁぁぁぁ!!!」

 

バンビエッタライスを摘んだ一心が泡を吹き出したのを見た長女の遊子が駆け寄り、慌てふためく

 

「…………よし、一心くんの財布から三万円程を抜き取った。当面はこれで食い繋ごう」

 

その気絶した一心の懐から財布を抜き取り、中に入っていた現金を懐に仕舞い込もうとする枕の手を一護が掴む

 

「枕てめぇ………飯集りに来た挙げ句、人のオヤジから金を抜き取るとは良い度胸だな」

 

「一護………お前にはやらんよ?」

 

「いらんわっ!というか返せっ!」

 

「ああっ!俺の軍資金!」

 

「やかましいわっ!!!」

 

現金を取り上げ、元の場所である一心の財布に仕舞おうと一護が財布を拾い上げようとした時だった。目を覚ました一心と目が合う

 

「一護ォォォ!!!父さんの財布に何をしたぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うるせぇ!俺じゃねぇよ!元はと言えば、枕のヤツがだなっ!」

 

「枕くんの所為にするとは何事だぁぁぁぁ!あの子はそこで味噌汁を啜っているじゃないか!」

 

「えっ……………」

 

現金抜き取りの犯人だと誤解された一護は説明するが一心の耳には届かない。それもその筈、件の人物である枕はバンビエッタと共に味噌汁を啜っていたからだ

 

「美味いな。遊子ちゃん、これは煮干し出汁だな?」

 

「わぁ!分かりますか?枕さん」

 

「はっはっはっ、味噌汁には詳しくてね」

 

「…………辛味が足りないわね。唐辛子を入れよう、アニキのにも」

 

味噌汁片手に遊子と談笑する枕の隣に座っていたバンビエッタは味噌汁に刺激を求め、胸元から取り出した『バンビエッタ専用唐辛子』と書かれた小瓶を自分の味噌汁に振り掛けた後、枕の味噌汁にも振り掛ける

 

「いやぁ実に美味い………ぶほおっ!?なにこれっ!辛っ!!!」

 

知らずに口へ運んだ枕は盛大に咽せ、口の中を駆け回る激痛で床を転げ回る

 

「アニキ!口が腫れてるじゃない!?誰にやられたのっ!」

 

「ふぁんふぃふぁん………」

 

「ファンフィ?変わった名前ね、通り魔かしら……」

 

「いや犯人はバンビ姉だよ」

 

腫れた口で呂律の回らない枕の言った人物に心当たりがないバンビエッタが首を傾げていると、夏梨が間髪入れずに突っ込みを放つ

 

「あたし?夏梨、冗談はやめなさい。泣かすわよ」

 

「バンビ姉みたいなアホには泣かされないよ」

 

「一護!生意気よ!アンタの妹っ!」

 

「早く食え。そんで食ったら行くぞ」

 

頬を膨らませ、唸るバンビエッタを宥めながらも一護は朝食を掻っ込み、未だにのたうち回る枕の首を掴み、外に飛び出す

 

「…………んむ?ほうこれは……死神の霊圧。近くにいやがるな」

 

「死神………まさかアニキの追っ手?」

 

一護の手から解放され、彼の背後を歩いていた枕が周囲に自分以外の気配を感じ取り、瞳を細めた事にバンビエッタが気付き、問い掛ける

 

「いやいや俺は既に除籍扱い。存在そのものを抹消されとりますんで、追っ手は来てない筈だ」

 

「アニキは何をやらかしたの?あたしみたいに失敗?」

 

「失敗…………簡単に言えばね、何十人の命と自分の命を篩に賭けたギャンブルに大敗したんだよ」

 

「えっ、なに?ギャンブラーだったの?アニキは」

 

「あー違う違う、今のは事の顛末を簡潔に語っただけだ」

 

唐突なギャンブラー発言に距離を置くバンビエッタに取り繕う様に枕は眉を下げ、ため息を吐く

 

「お前の任務失敗よりも重大な失敗をしでかしたんだよ………俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尸魂界(ソウルソサエティ)。死神達が幅を効かす死後の世界。そして、此処は護廷十三隊十番隊隊舎の執務室

 

「なぁなぁ、冬獅郎。十三番隊の朽木ルキアが現世に行ったらしいぞ」

 

「だから何だ。あと名前で呼ぶな、日番谷隊長と呼べ……御飯処」

 

冬獅郎と呼ばれた銀髪の少年が睨み付ける先には机の上に積み上げた大量の料理を食べる少年が一人、彼は十番隊の中でも身形からは想像も出来ない程の古株である御飯処匙乃介、又の名を腹ペコ小僧ともいう

 

「呼ぶわけねーじゃん。何年、何十年、何百年………時を重ねようが俺の隊長はあの人(・・・)だけだ」

 

平らげた皿の間から覗く瞳は、その小柄な見た目には削ぐわない凶暴な飢えた獣を彷彿とさせ、日番谷は息を呑む

 

「隊長ぉ〜!聞いてくださいよぉ〜………って!!!匙乃介!また食べたの!アンタ!?」

 

空間を静寂が支配しようと瞬間、抜群のプロポーションを持つ女性が飛び込んで来る。彼女の名は松本乱菊、十番隊副隊長を務める匙乃介のもう一人の上官である

 

「あっ、乱菊ちゃん。どうしたの?」

 

「そうそう、隊舎前に砕蜂隊長が居たから連れてきたわよ」

 

「……………日番谷隊長。ちょっとお暇をいただきます」

 

「お、おう……」

 

砕蜂と名を聞いた瞬間、改まった態度で半休申請を申し出る匙乃介。しかし時既に遅く、彼の肩を誰かが掴んだ

 

「サジ。今日は朝食を済ませたみたいだな。どうだ、昼食と夕食は私が食べさせてやろうじゃないか。嬉しいだろう?嬉しいよな?嬉しいと言え」

 

「あっ、お腹空いてないんで大丈夫です」

 

「そうか……よし、今から行こうな」

 

「いやァァァ!助けてェェェ!!!枕隊長ォォォ!!!」

 

砕蜂に引き摺られながら、日番谷ではない人物の名を叫ぶ匙乃介。取り残された二人は唖然とするしかなかった

 

「隊長〜、偶に匙乃介が言ってる枕って誰ですかね?」

 

「…………知らん。だが御飯処が信頼を置くほどの存在なのは確か………おい、松本。何をやってる」

 

「一本だけ眉毛が長いのが気になったんで、手入れしてます」

 

「仕事をしろォォォ!!!」




夕飯を集りに来た枕とバンビエッタ。しかし二人に平穏な食卓はない、食卓を脅かすバケモノを前に枕は遂に武器を手に取る!………え?布団叩き?

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