(1)太陽と満月、死んで悪魔と天使の声を聞く
太陽の家族は家で俺を待っていた。
俺は曜子(ようこ)さんと火鞠(ひまり)ちゃんと
水聖(すいせい)くんの3人と合流できた。
「曜子さん、このあとどうする?」
「自宅に太陽宛の手紙を残して避難所にいきましょう」
「そうだね。念のため手紙を残して出発しよう」
「電車は動いてないだろうから
太陽は歩いてここまで帰ってくるんだよね」
「たぶん......
会社は神保町だから今は東京駅を越えたくらいの......」
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
太陽は走っていた。
神保町から東京駅を通り、隅田川も渡ったところだ。
両国あたりまで来ていた。
「はやく火鞠と水聖に会いたい」
心の中でそう思いながら走り続ける太陽。
正義感の強い太陽は敵国Xが許せなかった。
いや、敵国Xの総書記が許せなかった。
独裁国家は独裁者が悪いと思っているからだ。
国は悪くない。
そこの国の権力者が悪いのだ。
いつの時代も苦しむのは国民だ!
太陽は怒りがこみ上げてくる。
―――――― 一線の光が目を奪う ――――――
垂直にきれいな一線が光り輝く。
同時に遠く先から深紅の夕焼けが
拡がりを見せて襲ってくる。
「あっ、死ぬっ」
と脳裏によぎる。
その瞬間、すべてがスローモーションになる。
覆いかさなる深紅の光が太陽を包む。
「曜子、火鞠、水聖」
と思うと同時に死にたくないと思った。
悔しかった。生きられないことが。
許せなかった。こんなことをする独裁者が。
生きたい!生きたい!
死ぬとわかっていてもそう願う。
生身の人間では到底叶わぬ願いだった。
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
どこからともなく声が聞こえる。
「では独裁者として自分で
国を変えて見せてみよ」
「おまえの想像できない世界でだ。
ここは変えることが容易ではない世界だ」
「おまえの理想の世界が成したならば
もう一度前の世界でのリスタートを
約束しよう」
声が消える...
漆黒が徐々に太陽の意識を包み込む......
「... ライト様 ......ライト様 .........ライト様」
太陽は倒れ込んでいた。
周りには見たことのない人間らしき者が
取り囲んでいる。
泣きながら叫んでいる。
身体がずっしり重く、頭もぼーっとして
はっきりしない。
「ライト様! ライト様が蘇ったぞ!」
周りは騒ぎ出す。
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
太陽が被爆すると同時にこの近くにも
一線の光が発散する。
「あっ、だめだ」
満月(みつき)の脳裏にそれだけがよぎる。
掃き出し窓の遠く向こうから
一線の光と同時に深紅の波が押し寄せてくる。
「守らなきゃ」
満月は振り返る。
太陽の家族を助けたいと思っても
助けられないことは直感でわかっている。
でも助けたい。
生きていてほしい。
助かってほしい。
曜子さんと火鞠と水聖に手を伸ばす。
間に合わないとわかっていても伸ばす。
守りたい... 守りたい...... 守りたい.........
生身の人間には守れるはずもない出来事だった。
満月は天に召される感覚に陥っていた。
身体が横になり浮いている。
身体は動かないが意識はある。
どこからともなく声が聞こえてくる。
「守りたいなら復活して守りなさい」
「すべての罪をあなたが引き受け、
すべてを守りなさい」
「新しい世界で守り切れたのなら、
今度は現世でも守り切れるでしょう」
声が消える......
光が徐々に満月の意識を包み込む......
「ゴーン......ゴーン......ゴーン......」
鐘が鳴り響く。
満月は目を覚ますと、顔の真正面に
光が差し込む。
その向こうにはステンドグラスが
きれいに輝いている。
満月は仰向けになっていた。
楽しんでいただけたらぜひご評価をお願いしまーす(´∀`*)