side:ショゼット=シュゼット=シェヴァンターレ
お店に向かう道中、私達は2人とも無言だった。
話す事もないし、変に話しかけたら会話が続かなくて気まずいだけになりそう、だから。
並んで歩いているのに、一言も言葉を交わさない私達を見て、周りの人はどう思ったか。
…想像は、したくない、かな。
「あ、着いたよ」
その声で、そちらの方へ視線を動かす。そこには、小さいけれど、可愛くて綺麗な1軒のカフェが建っていた。全体的にパステルカラーで、ゆるゆるとした雰囲気を醸し出しているそこは、それなりに盛り上がっている様に見える。
「ここ…?凄く…綺麗」
思わず、声が漏れる。見た目が私の好みだ。こんなに素敵なところが、この世界にあったんだなと、感心してしまった。
「入ろっか」
「うん…!」
羅刹さんが扉を開ける。チリンチリン、と扉にかかったベルが鳴り、奥から女性の店員さんが出てきた。
「いらっしゃいませ。お客様、2名様でよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「畏まりました。お席ご案内致します」
羅刹さんが、全て店員さんと話してくれたおかげで、私は何もせずに席に着けた。
「ご注文がお決まりになりましたら、こちらのベルを押してください」
そう言って、丁寧に頭を下げて席を離れる店員さん。
「…何食べたい?」
先に、私にメニューを見せてくれる羅刹さん。
目に飛び込んできたのは、チャレンジメニュー。
『チョコ&チョコ 100cmにチョコレートを詰め込んだチャレンジメニュー!』
そう書かれたものが、無性に気になった。制限時間は30分、成功で無料、失敗で100…らいふ?…りふだった。この世界は、円ではなく『りふ』という通貨らしい。
「それ、気になる?誰も成功してないって噂のやつだけど…」
メニューを凝視していたのに気付いたのか、メニューを覗き込みながら教えてくれる。
「気になる、けど…」
失敗することは…私に限ってない、かもしれないけど…
「お金なら気にしなくていいよ。やりたい?」
ここで断る勇気は、残念ながら私は持ち合わせていない。
それに、失敗する可能性があるかもしれない、という程度。やるとなったら、やる。絶対に成功させてみせる。
「…うん」
「わかった。じゃあ、僕は普通のやつにして…飲み物は?」
「…珈琲、かな」
「凄いね君…頑張って」
珈琲を単体で飲むのは好きでは無い。けれど、甘いものと一緒となれば、話は別。それに、好きでは無いというだけ。ブラックだって、私は飲める。
「じゃあ、注文しちゃうね」
羅刹さんがベルを鳴らす。軽い音が鳴って、すぐに店員さんがやって来た。
「えっと…僕はフルーツパフェとローズティーを。彼女は珈琲、それから…チャレンジメニュー」
店員さんは紙にペンを走らせながら、注文を繰り返す。
「フルーツパフェが1つ、ローズティーが1つ、珈琲が1つ、チャレンジメニューで宜しいでしょうか?」
「はい!」
紙をエプロンのポケットにしまうと、店員さんは私の方に視線を合わせてきた。
「確認ですが、本当に宜しいでしょうか?」
お店側が確認を取るくらいのもの…
「…大丈夫です」
…楽しみだ。
影星に比べてしょぼいけど普通に考えてパフェ100cmってやばいよな