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影星は、獲物をじっくりと眺める。僅か13人。この程度の人数、彼女にとってはなんの脅威にもなり得ない。
「私はお前らと遊びたくて来てるわけじゃねーんだから邪魔すんなよ」
地面が凹む。煙が立ち上る。
一瞬で取り巻きの内の一人の背後に回り込み、<マーシャルアーツ>を載せたキックを鳩尾に叩き込む。吹き飛んだ体に巻き込まれ、後方にいた男も纏めて遠くの柱に叩きつけられる。生死は確認するまでもなく、即死だ。
「おいおいもう残り11人しかいねーじゃねーか、随分よえーなお前ら」
最初は呆気に取られていた彼らも、徐々に状況を理解し始めたのか銃を取り出す。
「てめぇ…!」
殺意と銃口を向けられるも、影星はそれを一笑に付した。
「お前がここを戦場に変えたんだろ?お前がそんな事言う資格なんてねーよ」
「殺せ!」
声と共に11発の銃が乱射される。
しかし、それを全て躱した影星は、高く跳びあがり、敢えてリーダー格から遠いそれをターゲットへ絞る。
所詮、数が多くても、彼女にとっては戦闘を長引かせる要因にしかならない。
ただのどこにでもいるような人間が、敵に回して良い存在ではなかったのだ。
だって彼女は、『キラー』なのだから。
数で押せる程度であれば、恐るるに足らず。
そうではないことに気が付かなかった。
─尤も、気が付いたところで、意味など無かったのだが。
「はいはい当たらない当たらない…っと」
躱す間もなく、上からのキックが炸裂する。頭も身体も一撃で原型を留めない肉塊へと化したそれを見て、何人かは戦意喪失状態へと追い込まれてしまったようだ。
「にん、げん…なのか…?こいつが…?」
「こんな化け物に…勝てる訳…」
「くっ…使えねえぞお前ら!」
リーダー格の男の声も、もう届かない。
影星は、その場で腰を抜かしてしまったのが何人かを把握する為に、戦場を軽く見渡した。
戦意喪失してしまったのは、全部で4人。既に3人殺して、残りの戦闘意思があるのは6人。
「へー、こいつらはもう戦う気がないから命は助けてくれってこと?」
4人はバラバラに頷く。声を出すことも出来ないようで、そこにあるのは恐怖のみ。
「じゃあ逃げたきゃ逃げろよ」
その言葉を聞いて、1人が動いた。足が縺れそうになりながらも、立ち上がって走り出す。
──それで?
「逃げたきゃ逃げろとは言ったけど見逃してやるなんて言ってねーぞ」
地を蹴って後を追う。軽く追い越して、振り向きざまのキックが腹部にめり込む。振り上げた足を素早く振り抜いて相手の体を押し戻すと同時、力強く蹴りあげて上に跳び、未だ残る残党の方へと向かう。
狙うは中心。
躱そうと思えば出来た距離。それでも、彼らは出来なかった。
恐怖で足が竦んでしまっていた。
生きる事を、戦う事を。
諦めて、しまったから。
無慈悲な攻撃は、1人以外を塵と帰す。1人程度で勢いを殺す事など不可能。
生々しい音と、まるで後付け音声の様な騒々しさ。そして、レンズ越しであれば、エフェクトにも見える波紋。それらが辺りに殺戮の残滓を撒き散らす。
「…なんで私がまとめてお前を殺さなかったか教えてやるよ」
──周りを見てみろ。
極軽い音を立て、地面に戻った影星が、視線を誘導するように指先を向ける。
血溜りに浮かぶ大量の肉片。抵抗の跡も見られない、硬い地面。
「…お前があんな事言ったから。本当は死ななくていいやつまで死んだんだよ」
ゆっくりと、地に倒れ伏す男に向かって歩みを進める。
「…悪魔」
相手が吐き捨てた言葉に、影星は嗤った。
「私が悪魔ならお前は悪魔じゃねーんだな?…なら、正義らしく私の事でも殺してみろよ」
すっ、と相手の頭に足を載せる。
「ここはやべーとこだって分かってたんだろ?分かってたのにこんなことするなんてバカだなお前。いいか?…こんなとこに軽々しく入ってくる奴に、軽々しい態度で話しかけちゃダメって命を以て学んだろ?……わかったならその命、今ここで散らせ」
そのまま足に力を込める。
ぐしゃり、という音と、足裏に伝わる肉と骨の感覚。
足が沈み、本来見えてはならないものまで表面上へ現れる。
「…何だ、脆いな」
命が何たるかも、忘れてしまった。
それが本当に、大切なものなのか。
「さて…行くか」
それを蹴り飛ばして、足に生温い感覚を引き摺ったまま、危険な街へと1歩、踏み出した。
このシリーズ現最多文字数がこれ
影星パートは文字数多くなりがち。特に戦闘はね