side:影星
あれっきり、私に話しかけてくる奴はいない。奥の奴らはそういうのを心得てるらしく、部外者の私のことも一瞬眺めただけで、声もかけずに素通りしていく。
こっちの方が楽でいい。いちいち絡まれんの面倒くさすぎてやってらんねーからな。
人があまりいないお陰か、<聞き耳>が有効的だ。
その結果、まだ夜になってねーのに騒がしい路地があることが分かった。
嫌でも分かる、か。
確かにこれは、嫌でも分かるな。
声のする方へ向かう。
1歩足を踏み入れた途端、
雰囲気が、変わった。
夜のように辺りは暗く、上から提灯がぶら下がっている。おまけに、そこら中には屋台が大量に開いており、客は道に収まりきらない程の人数が往来している。
まるで、夏祭りだ。
…これのどこが治安の悪いんだ?
「…ここどこなんだよ、ほんとに合ってんのか…?」
雰囲気が変わったせいで、むしろ気味悪く感じるが、戻る訳にはいかない。ここまで来たんなら、何かきっとあるはずだ。
私は、この祭りの終着まで見に行くことに決め、人混みの中に紛れ込む。
と、後ろから肩を叩かれる。
「ここに来るのは初めて?」
振り返ると、青色の髪に、毛先がグラデになってる性別不明のそいつが立っていた。
「あ?…そうだけど」
「なら、危険だから、これをつけておいて」
そう言って、渡されたのはブレスレット。青く、赤く、黄色く、色とりどりに輝くそれは、どうやら光の反射ではなく、自然に光っているらしい。
「これは君を助けてくれる。…私の見たところ、今のままでも大丈夫だとは思うけど…一応保険として」
「なあ」
帰ろうとするそいつを呼び止める。
「どうしたの?」
「…このブレスレットの効果は?」
そいつは、パチリと瞬きをすると、髪の毛に指を引っ掛けてくるりと巻き付けた。
「
その言葉を聞いて、一気に驚きと興味が湧き上がる。
MPと言えば、呪文のようなものを使用するのに使われるものだ。
この世界でも、そういうものは同じなのか?
そういえば、知り合いに少し変わった力を使うアイドルがいたな。
…確か、『門の創造』。
「…あ」
辺りの喧騒で我に返る。話しかけてきたやつは、とっくにいなくなっていた。あまりに現実味のない白昼夢。
しかし、左腕に着けたブレスレットが、現実であることを教えてくれる。
危険だから、そう言っていた。
それは、私が初めて来たから。
初めてじゃなければ、大丈夫なのか?
…分からない。
しかし、一つ分かることがあった。
それは、この祭りの中に、元の世界へ戻る鍵があるかもしれないということ。
もしかしたら、私の気のせいなだけかもしれない。
それでもまあ、動いてみなきゃわかんねーものなんて沢山ある。
今は自分を信じて、正しいと思ったことをすればいい。
─それが、『探索者』の姿なんだろ?
乗ってやるよ。
なあ、
───後悔、するなよ。
次回か次次回位で影星半無双が始まる予定