side:No
「ゴミは1つでも3つでも変わんねーよ。纏めて捨てられるだけだろ?」
世界補正の影響もあってか、先に動いたのは影星。
ミ=ゴの背後に一息で回り込んで、<マーシャルアーツ>を乗せたキックを叩き込む。動作的に<跳躍>が出来なくても、この世界での火力であれば、それで充分。
予想通り、ミ=ゴの一体が吹き飛ばされる。
頭の部分についているそれも変形し、一目見て仕留められたと分かるモノになった。
「おいおい、また弱くなっちまったのか?つまんねーだろ、そんなんじゃ」
地を蹴り、軽く背丈を超える。
完全に神話生物を見下ろす構図。
と、一体のミ=ゴが何かを構えた。
電気銃。彼らのテクノロジーに基づいたそれは、狙いを外すことは無い。
…通常であれば、だが。
生憎、影星と彼らの相性は、絶望的なまでに悪かった。
影星は、神話生物を人間に叩き落としたのだから。
1つの銃で変わる程、弱い相手であれば、彼らの同胞は生きていたはずだ。
それが出来なかったということは、つまり。
「はあ?その銃一つで何が出来るってんだよ」
銃ごと、彼本体を砕く。
暴力の前に、テクノロジーが、神話が敗れたのだ。
残るミ=ゴは一体。
「へいへいミ=ゴさんよ、お仲間殺られても手出すほど下等な脳みそしてねーだろ?」
暗に、この戦闘から退けというもの。
しかし、それは面倒だからでも、また勝てないからでもない。
本が気になりすぎているため、ミ=ゴに構いたくはなかったのだ。
その本心は、伝わらなかった。
残りのミ=ゴが、電気銃を向けたのだ。
「へー、戦闘意思はあるんだな。んじゃまあいーや。…死ね、
発射される前に距離を詰める。ミ=ゴは、1つのアクションを取ることすら許されなかった。
ギチリ、と足が食い込む。
電気銃が地に落ちる。
1度のキックで、絶命を確定させたのだ。
「さーてと、終わったか」
辺りには、ピンク色の何かの死骸が3つ。
蝋燭の中心には、分厚く、そして新品同様の綺麗さを保った豪奢な本が、未だ炎を反射して輝いている。
影星は、その本に手を伸ばした。
その瞬間、左手を鋭い痛みが襲う。
見れば、ブレスレットが強く輝いている。まるで、本と共鳴しているように。
手首を強く締め付けられ、徐々に左腕が痺れだす。
「っ…ふざけ…」
右腕だけで本を引き寄せ、表紙を開く。
ブレスレットが弾け飛び、一気に痛みが引いていく。
締め付けられた痕は残ったまま、痺れが治り始める。
「…今の、なんだ…?」
──砕けた時に、力になるよ。
その言葉を思い出して、影星はハッとした。慌てて、もう1ページを捲る。
それを待っていたように、文字列が浮かび上がってきた。不思議と、その文字はスルスルと頭に入ってくる。
=====
クトゥルフ神話〜Real
この本は、貴方様限定の書籍です。決して、誰かに取られることの無いように注意して取り扱ってください。
本の内容は、貴方様にしか読めません。言葉を通しての、情報の共有は対象を問わず可能です。
この本を召喚するには、1マジック・ポイントのコストがかかります。
必要のない時は、この本を手元に置かない事も可能です。その場合のコストは、0マジック・ポイントです。
ここに、貴方様のマジック・ポイントを貯蔵し、それらを使用する事も可能です。
この本は、対象のHPを使用し、文章が展開されていきます。
貴方様の探索を大いに手伝ってくれるでしょう。
=====
「…どういう…事だ」
本から顔を上げた影星は、周りを見て思わず1歩分後退る。
ミ=ゴが…嫌、ミ=ゴだったであろうものが干からびていたのだ。
そして、影星は理解する。
対象のHPとは、『殺した相手のHP』であるということに。
「…もう、戻るか」
本を閉じ、道をそそくさと引き返す。
表紙には、『クトゥルフ神話〜Real』という文字のみが書かれていた。
祝 影星半無双開始
ちなみにここから先はクトゥルフの影星とはなんの関係もありません
続きは私がこうやりたくてつくっただけ