side:ショゼット
折角なので、私もトランプに混ざらせてもらった。
「5勝1敗…悔しいですね」
「は、初めて…勝てた…天萊さん、つよい…ね…」
「ショゼットもつよーい!」
「まあ、中々やるわね…」
「えへ…」
楽しい。遊ぶ事が、楽しい。
私は元から、コミュニケーションを取る事が苦手だった。
そのせいで、昔から友達なんていなかったし、誰かに話しかけようとしても、話しかけられなかった事なんて沢山ある。…いや、それが全て。
唯一の取り柄が体育で、その時だけは楽しかった。寂しい思いをせずに、居られた。
問題なのは、その後だった。
身体を動かすのは好き。
身体を動かすのは得意。
けれど、その動きに、私の体力はついてこられなかった。
運動は好きで、ずっと体力はつけてきたつもりだった。
それなのに、体育が終わった次の時間は、倒れてしまう事が多かった。
先生には、体育はやらない方がいいと言われた。
親には、運動は向いていないからやめろと言われた。
私の事を知る大人は全員、運動から私を引き離そうとした。
私の唯一を取り上げられて、そこからは気力が無かった。
何をするにも面倒臭くて、何かをする気にならなくなった。
運動から離れたせいか、眠る事が出来なくなった。
運動から離れたせいか、食欲が無くなった。
運動から離れたせいか、身体が鉛のように重くなった。
こんなに何も出来ない自分なら、死んでしまおうと思った。
そう決めた時は、身体が動いた。
学校に行って、屋上に向かった。
鍵がかかっていた。
学校では、私を死なせてくれなかった。
絶望しながら家に帰ると、親はいなかった。
キッチンに、包丁が置いてあった。
私はそれで、自分の事を切った。
気付いた時には病院で、私は血塗れでキッチンで倒れていた事が分かった。
結果的に何針か縫ったけど、それだけだった。
退院しても学校には行かず、部屋の中で丸くなって過ごす事が多かった。
ある日、私が何ヶ月か振りにリビングへ降りていった時、ちょうどパルクールの話題がテレビでやっていた。
かっこいいと、楽しそうだと、思った。
前みたいに身体が動かないのは分かっていたけど、やりたかった。
久し振りに、自殺以外で何かをしようと思えた。
それから私は、夜になると1人でトレーニングを始めた。
身体は覚えているようで、3ヶ月もすれば前と同じように動けるようになった。
パルクールが出来るようになりたくて、動ける様になったら今度は公園で練習を始めた。
不思議な事に、前の様に倒れてしまう事がなかった。
年月が経つにつれて、私はどんどん上手くなっていった、と思う。
しばらくして、私に声をかけてくれる人がいた。
その人は、私をパルクールチームに誘ってくれた。
そして、私はチームに入った。
それから家を出て、パルクール選手になれた。
これが、今から4年前の話。
「もう1回やろ!」
美麗さんがカードを配ろうとした時、ドアが開いて觜霊さんと雨飾さん、紅葉さんが帰ってきた。
「ああ、ここにいたのか」
紅葉さんが近付いてくる。
「吾輩の知らぬ間に夜鴉は何処へ?」
「どっか行ったよ!」
羽を羽ばたかせて、悠衣さんは美麗さんの肩に座る。
「ショゼット、キミの親友が帰ってきた。彼女には伝えたけれど、今日はこちらの世界の事情によってパーティがある。キミらも参加していって」
それだけ伝えると、紅葉さんは部屋も伝えず教室を出ていった。
「あ、そうだよ!えっとね…少し遠くなるんだけど、校舎出て寮の所、の1階が大宴会室なんだ!そこでやるよ!」
じゃあ手伝いに行くね!と言って、美麗さんは急ぎ足で教室を出ていく。悠衣さんと一緒に。
「ごめんなさい、私達も手伝いに行かないと。あんた達なら来れそうね。待ってるわよ」
白槍さんも教室を出ていく。後に続いて、羅刹さんと觜霊さん、天萊さんも出ていってしまった。
「お、いたいた」
教室の中を覗き込む、ミルクティー色の髪の毛。
「影星…」
「行こーぜ、道はわかんねーけど私らなら何とかなるやろ」
影星に誘われるままに廊下に出る。
「んじゃ、早速探しますか」
パーティパーティ…大魔王全員出たなそういえば