side:影星
学園まで辿り着いたはいいものの。
雨飾がどこにいるかは全く知らねーんだったわ。どしよ。
「あれー、こんな時間にどうしたのー?」
急に後ろから声をかけられる。会った事ないな、この声…しかも気配に気付かんかった。<聞き耳>を使わなかったのもあるかもしんねーけど、それを抜いても気配を悟らせなかったこいつは…
「雨飾ってやつに会いに来たんよ、今そいついるか?いるならどこにいるのか教えてくんねーか?」
「…雨ねぇ?……もしかして、お前守護者の味方ー?」
「は?何の話してんの」
急に守護者とか言われても分かるわけねーだろバカなのかこいつ。
とか思ったけどそういや別世界から来た事言ってなかったわ。
「私他の世界から来たんよ、まー信じねーかもしんねーけど」
「…ほかのせかい?」
予想通り、何とも言い難い表情に変わる。何を表してるんか全く分かんねー顔。
「…お前って帝国生まれなのー?」
「は?いや待て何の話してんだお前」
帝国とかどこの話?それどこ?え?どこ??何帝国??私の知らんやつやん絶対…話拗れとるやろ。
「だからー、お前は帝国から来たんじゃないのっ?」
「その帝国を知らねーんよ私は」
今度は「あれぇ」と声を漏らし、何かを考え始める。
こいつにとって他の世界はその『帝国』か『帝国以外』かなんか?なんだその『俺か俺以外』みたいな思考。
「…敵?」
「んん?一旦話整理しよーぜ。私はその『帝国』ってとことは別の世界から来て、そんで用があって雨飾ってやつに会いに来た。OK?」
「ふーん…それで、敵?」
こいつが全くわからん…こういう時は<心理学>っと…
しかし、分からなかった。
なんつーか、出来なかった?
感情がねーのか…もしくは、種族の差……
ん、種族の差?
そういやこいつ、眼がなんか人間とは違うような…
「どっちなのー!答えて!」
「お前もしかして人工的に造られたか?」
やけに機械的で金属感のある瞳。
不自然な程に白い肌。血色が悪いとかそういう意味じゃねーんだ。
「そうだよー?でも何で知ってるの?やっぱり敵だからだよねー?じょーほーしゅーしゅーは大切って言ってたもん!」
「いや見れば分かることやし…つか敵じゃねーよ別に。ま、お前が私に喧嘩売るってなら話変わるけどな」
「ふーん…」
話しながら、私の斜め後ろをチラチラと見る。
そっちの方になんかありそうやな…ま、でも泳がせとくか。
「…ほんと?」
「別に私はお前と戦ってもいいけどなんもねーぜ」
「…そっか」
後ろから別の気配。
視線の方向からか。やっぱいたんやな、他の誰かが。
正直受け止めれる気しかしない。が、この状況は挟み撃ちだしもし戦闘になったら面倒くさすぎる。
…でもそういえば、さっきの肉体の保護、まだ使えんな。
スルーでいっか。
「お前ら戦闘意思あるんか?それなら2VS1でも受けてやるぜ」
空気を斬る音が聞こえる。割と速い攻撃みてーだな…でも、防げるんやから問題なし、と。
後ろで刀が弾かれる感覚。舌打ちと、刀を鞘に仕舞う音。
「ごめんなミリア、通らなかった」
「だいじょーぶだよ、犀架ねぇ」
後ろを向く訳にもいかねーか。どーしたもんかな…
「お前らが思ってる様な平凡な人間じゃねーんだぜ、私」
戦闘に持ち込まれたら流石にやべーな。向こうは二人、こっちは1人。プラスで相手は1人人外、体力勝負や魔力勝負になったらまずい。
「だからぁ、別に私は戦ってもいいぜ?」
退いてくれねーかな…最悪本気出して力で押す事も考えるべきか…?でもマシンガンもライフルも置いてきちまったし…勝率は展開次第じゃマジで0やな…
「まーでも…今の防がれてんだしこれ以上やろうとは思わねーだろーけど」
退くか、それとも…来るか?
「……一応紅葉さんに言うだけ言って、見逃すのが1番だろ」
「むぅ…はーい。じゃあじゃあっ、犀架ねぇが紅ねぇに言ってくれない?ミリアは雨ねぇの所に行ってくるから!」
…危なかったな。流石に今戦うとなると、厳しかったし退いてくれて助かった。とりあえず早いとこ用件済ませてとっとと帰るか…
「その必要はないけど。っていうか…ここで何してるの?」
寮の方から足音と声が近付いてくる。
「雨ねぇ!」
…やっぱ魔王は何かがちげーな。何か…何だ?
…<心理学>、一応試してみるか…
「あー…もしかして雨飾さんの知り合い…?」
「一応ね。僕に何か用?」
「…」
寒気がした。
こいつとは違う。
分からない、出来ない、じゃない。
…何だ、この。
言葉にならねー違和感。
…感情が…ねー、のか?
もしそうなら…こいつは何が
「聞いてる?」
「あーちょっと考え事してたわ、頼みてーことあるんやけどいいか?」
普通に聞けば感情は籠ってるように聞こえるその声。だが<心理学>で1度分かってしまえば、全てが演技。
「この靴にナイフ仕込んでついでになんか効果つけといてくんね?」
手に持っていたスペアの靴とナイフ2本を押し付ける。
「別にいいけど」
受け取ってくれた事を確認して、言うなら今だと心に決めた。
「雨飾、ついでにちょっと聞きてーことあるんよ。でも不都合やし、他の所で2人で話さねーか?」
「いいよ」
感情がないと恐怖も感じねーのか。普通、2人で話そうなんて言ったら多少は警戒するやろ。しかも、最初に会って殺されそうになった相手だぜ?
それなのに即答?
「…んじゃ、案内してくれ」
「分かった。…あ、ミリアと犀架は帰ってて?間違ってもついてこないように」
「はーいっ!」
ミリアと犀架…どっちがどっちかはわからんけど。
「今度会ったらやろーぜ」
「だってよミリア。次はお前の玩具になってくれるらしいぞ」
「わーい!新しいお人形楽しみだねーっ!」
1人は手を振りながら軽やかな足取りで走っていく。
「じゃあな、雨飾さん。あーあと、師匠にもよろしく頼んだ!」
もう1人は、それだけ言い残すと闇に紛れて姿を消した。
「…君が何を話したいかは知らないけど。着いてきて」
靴とナイフを手に持って、寮の方へ戻る雨飾。
私は、その後ろを着いて行った。
影星side多くてごめん