まだしばらくない
side:ショゼット
影星が出ていってから30分は経った。寝てていいよ、とは言われたけど横になる気も起きない。
影星が帰ってきてないから、勝手に寝るのは申し訳ない気持ちが半分。
後の半分は、家主のヘヴィーさんが起きてる事。
どうやら影星が渡していった銃を2つ使って何か作っているらしい。
みのりは、助手らしく何かを手伝っている。曰く、『明日遊びに行くなら、今のうちに出来る事はやっておきたい』と。私も手伝おうとしたんだけど、よく分からないものが色々置いてあって、壊したら困るから大人しくしている事に。
助手と言ってもそこまで大変な事ではなさそうで、基本は机の整理をしているみたい。後は、たまに設計図?を作ったりするらしいんだけど、その設計図は見せてもらえなかった。
見た目とかはみのりが決めるらしい。
研究所?のメンバーにはヘヴィーさんとみのりの他に、もう1人いるらしくて、その人は来たり来なかったり。
名前は…『ヴァリネッタ・クロスディール』さん。ヘヴィーさんのパートナー?らしい。
らしい、と曖昧な言葉ばっかりなのは、全部みのりから聞いたから。ヘヴィーさんは作業に集中していて、私たちの話は聞いてないみたい。
別にみのりのことを信じてないわけじゃないけど…情報の真偽って、大事だと思うんだ。うん。
「影星、中々帰ってこないね」
「そーれな…もう大分時間経ってんのに」
更に30分程経過し、1時間程度経った頃。
流石に遅すぎるんじゃないかな…?って心配になった私達は、一応外を見てみる事にした。
いや、でも、影星、だし。死んでない、はず。うん、そんな簡単には死なない。
そう思いながら、玄関に向かってそっと扉を開ける。
気配は感じない。やっぱりまだ帰ってきてないのかな…
「心配なら俺が見てくる。ショゼットは窓から帰ってきた時の為にここにいてくれ」
みのりが資料を置いて、こっちに来る。
私が開けた扉から外に出て、影星が帰ってきていないか確認しに行った。
ヘヴィーさん公認の土足OKなこの家は、靴のまま部屋と外を行ったり来たり出来る。
それは、私も知ってる事。
となれば、それを影星が知らない訳もなく。ましてや、1度ここに運ばれた事があるのならば。
「危ね…!」
「うおあ!?」
外で2人の声が聞こえたかと思えば、みのりは開いた扉を通り越して部屋の中まで吹き飛ばされて戻ってきた。
その直後に影星が駆け込んでくる。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇだろ…お前脚力イカれてるって…飛び膝蹴りの時最大限加減したの知ってるんだからな…」
「そんだけ話せるなら平気やな」
どうやら、影星はここまで走ってきたらしく、みのりがちょうど鉢合わせ。勢いを殺しきれなかった影星が、みのりに何を間違えたか飛び膝蹴りを行って、みのりは咄嗟に防御態勢を取ったものの、吹き飛ばされて家の中に戻された、と。
「…大丈夫?」
「…生きてるしセーフ」
既に、能力で回復が始まっている様で、時間はかかるだろうけど寝れば治る、との事なので、みのりは先に寝てもらう事にした。
空き部屋の1つにみのりを寝かせて、邪魔しないように部屋を出る。
戻ってきても、まだヘヴィーさんは作業を続けていた。けど、下手に話しかけると機嫌を損ねるらしいので見なかった振りをしておく事に。
影星が帰ってきたのだから、本当は寝てもいいのだけれど、少し気になる事があるから聞いてみる。
「影星…あの…」
「…言いたい事は分かってんぜ」
影星も、気付いてたのか。
「…<心理学>が…使えない」
「つーかおかしいよな?」
「…うん」
明らかな違和感。使える事は使えるんだけど…
何も読めない。
紅葉さんに関しては、<心理学>をしようとした瞬間に視線を向けられ、怖気付いてしまった事もあるから不確定ではあるけれど。
「…なんで?」
「さあ?」
影星も知らないらしい。でも多分、紅葉さん達は教えてくれないだろうな…
あくまで予測。だけど、個人的には心がないんじゃないかなあ…って思ってる。
「とりあえず寝よーぜ、明日9時から外行くんやし」
「そう、だね…」
貸してもらった部屋に入る。
窓の外からは何も見えないほど暗い。
…不安になる程に。