side:ショゼット
あれだけ不安に駆られていたのに、ベッドに横になったら思いの外ぐっすりと寝てしまっていた。朝8時半頃、私はヘヴィーさんに起こされた。
「朝になったぞ。起きられるか?」
「……」
…実は私は、朝にとても弱い。夜に練習、朝に睡眠、という生活をしていたからか、夜行性になってしまった。まあ、体を動かせば少しずつ起きられるから大丈夫。
「……うん」
重い体を動かしてベッドを降りる。脱ぎっぱなしにしてあった靴を履いて、何とか体を起こす。
「…影星とみのりは…?」
「みのりは寝起きが悪いからな。影星に起こすように頼んでおいた」
「…家、壊れない?」
まさかそんなはず…という表情のヘヴィーさんは、何かを思い出したのか慌てて部屋を走って出ていった。
数秒後、隣の隣の部屋から大きな音が聞こえてきて、流石にびっくりした。
何事かと思って廊下に出る。扉は全開になっているから通れない。そして見えない。
そっと扉を押して、人1人分通れるように調節してから部屋へ向かい、陰から覗いた。
布団の中では、みのりが頭を手で覆ってガードしているし、影星は後ろからヘヴィーさんに取り押さえられている。
「起こし方というものがあるだろう!全く、油断も隙もない奴だ…」
「だって起きねーんだもん、しゃーねーやろ?軽く頭叩いて目覚ましてやろうと思っただけやし」
「その『軽く頭叩いた』で俺酷い目にあったんだが?痛いんだよお前!何?バカ?」
「バカじゃねーよもう1発行くか?」
…ど、どういう状況?
とりあえず、みのりを起こそうとして『軽く』頭を叩いた…と。そして、その『軽い』攻撃で、みのりは酷い目にあったらしい。
…今から遊びに行くのに、大丈夫なのかな?
「もう三十分もないじゃんか…今ので完全に目ぇ覚めたから支度しようぜ。つか着替えるからお前ら全員出てっくんね?」
「分かった。行くぞ影星」
「わかったっての…」
ヘヴィーさんに強引に引っ張られ、部屋を出てくる影星。
その途中で、2人にバレてしまった。
目線で来いと言われ、私は無言で2人に着いていく。私も後で着替えないと。…あれ?私も影星も急に来たから、替えの洋服なんて持ってないんだった。
「服は私のものを貸すか?サイズが合うから分からないが」
「お前小さいから絶対丈足りんやろ買えばいいし」
「殺すぞ。…所で、所持金はいくらあるんだ?」
…確かにヘヴィーさんは私達より小さい。だから、服を借りても私達じゃ着られないだろうけど…影星ってお金なんて持ってたっけ?
…あ、そういえば紅葉さんに何か投げられてたような…
「金なら紅葉から奪ってきたやつがあるし余裕やろ」
「は?どういう事だ?」
「いやそのままの意味だけど?」
あれ、お金だったんだ…勝手に使っていいのかな…?
「……なんというか……貴様に何を言っても無駄な気がしてきた」
一周まわって呆れ返ったヘヴィーさん。一応、人の話は聞いてくれる事もあるけど…それで言う事を聞いてくれるかと言われれば…違う。
影星は、誰かの命令に従うのは基本嫌なタイプだ。
「…あ、そうだ。影星、これを持って行ってくれ」
「んあ?…なんこれ」
ヘヴィーさんは、キーホルダー並の小さな黒い物体を影星に渡す。手の中に隠せるくらいのあれは…何?
「昨日貴様が持ってきたマシンガンとライフルを使って改造したバズーカだ。拡大縮小を可能とし、弾は周囲の魔力系統を使用する。更に実体のある攻撃は弾くように加工をした。こんなものか」
「なんて?」
聞き取れなかった訳じゃないけど、なんというかその…勢いに負けた。多分影星もそうなんだろう。
「準備出来た…ぞ?」
部屋から出てきたみのりが、私の後ろで固まる。
入りにくい雰囲気なんだ、無理もない。
「…ショゼット、俺らどうする?」
「…ど、どうしよう…?」
時間はもうすぐ9時になる。それなのに、影星とヘヴィーさんがあんな感じだから、出かけようにも出かけられない。
声なんてかけられないし、この状態が何時まで続くのかも分からない。
「やけにこれ軽いよな」
「まあ、最大限の軽量化を行った訳だからな。指が3本あれば使える」
「はえーマジか」
バズーカについて2人で色々な事を話し合っている。まだもう少し…時間かかるのかな?
「ちなみに名前だが…【シャドウ・バズーカ】と仮名をつけてみた」
「お、いいやんその名前。んじゃそれにするか」
「限りなく適当だが大丈夫か?」
「だいじょぶだいじょぶ問題ねーぜ」
私もみのりも、どうすればいいか分からずにただその場に立ち尽くし、二人の会話を聞くことしか出来ない。
「OK、んじゃ行こーぜお前ら」
(恐らく)片手にバズーカ、もう片手には割と大きめのバッグ。
それらを持って、影星は私達より先に家を出る。まだ行先も決まっていないのに、何をそんなに焦っているのかな…少し…不安だ。
「行ってこい。私の事は気にするな」
2人揃ってヘヴィーさんに、物理的に背中を押されて外へ出る。
影星は、何かを考えている表情をしている。
今日の遊びに行く事ではなく、何かもっと重大な何か。
「星辰?」
みのりが心配そうに声をかける。
すると、影星はいつも通りの表情に戻って私とみのりの手を引いた。
「何でもねーぜ、案内よろしくなみのり」
「お…おう」
ちらっと見れば、みのりも不審そうな顔をしている。
然し、次の瞬間には完全に気持ちを切り替えたらしく、楽しそうに笑った。
「俺が色んな所に連れてってやるか〜行くぞお前ら〜!」
引かれた手を、逆に強い力で引っ張っていく。
そうして、3人で新世界へ繰り出したのだった。
次の次は戦闘シーン
ちなみに新たにコストについての話