side:ショゼット
外に出てからは、色々な所へ連れていってもらった。
最初に行ったのは、服屋。しばらくこっちにいるかもしれないから、と替えの服を買いに来た。
普段は見ない服があるのをいい事に、みのりをお人形にして服を着せてみた。
チャイナ服?とか、メイド服とか、とりあえず目新しいものは実験体…じゃなくて、着せ替え人形になってもらった。自分が着るのは嫌だったから仕方ない。みのりには抵抗されたけど、そこは影星が力で抑えてくれた。
後は、私と影星用の普段着。それと、いつ使うかは分からないコスプレ的なものもついでに買ってみた。
…全部代金は紅葉さんのお財布からなんだけど。
だいぶ浪費したような気もするけど、影星は「別にいいやろ」と言っていたので…私は関係ないって事で…
その次は、カラオケ。
こっちの世界にカラオケがあった事にもびっくりしたけど、設備が綺麗すぎる事の方がびっくりした。
そして、影星が地味に歌が上手い。3人で点数を競ったんだけど、影星の圧勝だった。私?…さあ、何の話かな…
影星が言うには、「アイドルが知り合いにいるから」らしい。…本当はどうなんだろう?というか、影星って変わった人が知り合いにいるような…
みのりが「今日は昼飯抜きだからな」って言ってたから、ダラダラとドリンクバーでジュースを飲みながら、なんだかんだで5時間程居座ってしまった。
カラオケを出た後、スポーツパーク?みたいな所で遊んだ。
影星もみのりも身体能力が高くていいなあって思ったけど、私だって一応パルクール選手として活動してるんだから負けていられない。
パルクールコーナーもあった。初心者向けだったけど、かなり楽しかった。
2人にもパルクールを見せて、それから教えてみた。
2人とも身体能力と学習能力が高かったから、すぐに上達していくのがわかって、見ているだけで楽しかった。
その途中、みのりが足を踏み外してマットに頭から沈みこんだのはご愛嬌。
そして最後。
夕方。私と影星は、みのりに連れられて、高級そうなレストランまで来てしまった。
既に予約を通していたらしく、あっさりと四人席に通された。
空いた席1つは、買った荷物や影星の謎のバッグ置き場にして、残りの3席を埋める。
料理すらも決まっているようで、しかもフルコース。飲み物は、選べる形式の中にお酒があったからさりげなくそれを…私は成人済みだからお酒が飲める。…けど、影星とみのりはどうなんだろう?
「…2人って、お酒飲めるの?」
「私は全然飲めるぜ」
「俺はー…前の世界の法律じゃ飲めなかったな。今はそんなん気にしなくていいし、多分体的にも飲めるんじゃねえの?」
「…?前の、世界?」
言葉が引っかかって、聞いてみたところ、みのりは他の世界で死んで、この世界に転生してきたらしい。まあ、私も影星もこの世界にワープ?したんだし、そんな不思議なことでもない…のかな?
いや惑わされるな。主人公じゃないとそんなことにはならないはず。
年齢的には大丈夫らしいので、お酒を飲む事にした。
話しながら料理を頂いている中で、一つ知った事がある。
どうやらみのりは影星に負けたという事。その過程で、みのりが殺されそうになった事。
私は影星の代わりに頭を下げておいた。影星はこういうことを悪い事だと思わないから、言っても無駄なんだ。
2時間ちょっとレストランの中に滞在して、お会計をしようと思ったら店員さんから「既に頂いております」って言われて、影星も「は?」みたいな表情を浮かべている。私は言わずもがな。
私達に気付いたのか、みのりは得意気に笑う。
「1回やってみたかったんだよな、こういう事」
「え?助手って無賃労働じゃねーの?」
「おい無賃労働とか言うなそうだけど」
「じゃ、じゃあ…どうやって…?」
「んー?…貯金?」
「大事なお金なんじゃ…」
貯金を使ってまでわざわざ人に奢るって…何で?自分で使った方が、もっと有意義な事が出来ると思うんだけど…
「まあ金の在処はどうでもいいとして。そろそろ帰った方がいいだろ、俺が学園まで送るから」
気が付けば、既に日は落ちかけている。
私と影星は、みのりの後をついて学園まで向かう。道が思ったよりも複雑で、自分一人で帰れって言われたら間違いなく迷うだろうし、例え影星がいても流石に無理な気がしてたから有難い。
…学園までの道を歩いていると。
横にやたら四角い建物を見つけた。
建物を囲うように柵が立てられて、入口は取っ手のない扉。横に何かを翳すものがあるって事は、多分カードがないと入れないんだろう。
情報としてはそれだけなんだけど、それを見たみのりが警戒するような表情をしたことで、ここが平和な場所じゃない事が分かる。
影星もそれに気付いたらしく、みのりを突っついた。
「なああれなんだ?サツ?」
「言い方…とりあえず隠れろ」
近くの茂みに押し込まれる。扉とその周りは見える、丁度いい場所に3人で並んで隠れながら、みのりは声を抑えて話す。
「ここら辺じゃ有名な暴力団のアジトだよ。しかも能力者も多いらしい」
「んじゃ折角見つけたんやし潰すか」
「だから……は?」
みのりの話を途中でぶった切って、影星が茂みから立ち上がる。慌てて2人でしゃがませると、不満ながらも大人しく従ってくれた。
「俺の話聞いてたか?能力者が多いんだぞ?いくらお前でも死にかねないっての」
「行けるやろ、なんならお前ら見てるだけでいいぜ」
再び立ち上がろうとする影星を宥め、尚もみのりは影星を何とか説き伏せようと頑張る。
「それにどうやって入るんだ?扉でも壊してか?」
「それもいいけどー…しばらく待てばメンバー戻ってくるやろ、後着いてくわ」
もう何を言っても聞く耳を持たない。影星は完全に行く気だ。こうなったら、どうしても止める事は不可能だ。仕方ないから、私達もついて行こうかと思ったんだけど。
「…えっと」
「あ、私1人で行くから大丈夫だぜ」
先手を打たれた。ので、大人しく隠れて待つ事にした、けれど。
「もし私が仕留め損ねた奴がいたら気絶させといてくれね?」
との頼み事をされた。私としては影星を中に1人で行かせるのが不安なんだけど…どうせ言っても分からないだろうなあ…
「…ま、もう止められねえか。ほら来たぞ、バレないように気をつけろよ」
「OKそんな馬鹿な真似しねーから安心しろ」
向こうからこっちに向かって歩いて来る人が2人。
黒い上下のスウェットを着た、見た目は普通の人…かな?
思ったよりは違う人達みたいだけど…
「行ってくるわ」
その後ろを<忍び歩き>で着いていく影星。
怪しい人達の1人が、ポケットからカードを取り出して、扉の横の機械に翳した。
2枚の扉が左右に開き、怪しい人達はその中に入っていった。あの黒い服を着た人達は、ほぼこのアジトにいる人だと思っていいのかな?
その人達の後ろについて、何食わぬ顔で中に入る影星。
その時、建物から警報音が鳴った。
同時に、扉が勢いよく閉まる。
影星は建物の中に入ってしまい、幸い挟まれる事はなかったけれど。
「おいまずいぞ!」
「そ、そうだね…!」
私とみのりは慌てて扉の前まで走る。
しかし、辿り着いた時には扉は完全に閉め切られてしまい、うんともすんともいわなくなってしまっていた。
みのりが試しにドアを蹴ってみたけど、まるで効果がない。
「どうするショゼット、俺らもう入れねえ」
「…」
普通に考えて、扉が閉め切られてそれだけなのはおかしい。逃げ場がないんだ、もし中で一酸化炭素中毒にでもなったりしたら?大人しく死ぬ訳が無い。
「…逃げ道があるはず…探してみよう…?」
扉から離れ、奥に向かって歩く。あるとしたらこっち側。
少し調べてわかった事だけど、<聞き耳>を使っても内部の音が聞こえない。
つまり、影星の生死を確認する術がない。
「あんなこと言ってたんだ…死ぬなよバカ…」
今は、影星の無事を祈るしかない。
そう考えて、私達は柵に寄りかかった。
暴力団のアジトに1人で凸った影星!果たして生還出来るのか!!
次回『影星死す!』デュエルスタンバイ!
(全てデタラメです)