異世界探索記   作:紅色の落ち葉

35 / 52
世界調査 ─生きるか死ぬか─

 side:ショゼット

 

 外に出てからは、色々な所へ連れていってもらった。

 

 最初に行ったのは、服屋。しばらくこっちにいるかもしれないから、と替えの服を買いに来た。

 普段は見ない服があるのをいい事に、みのりをお人形にして服を着せてみた。

 チャイナ服?とか、メイド服とか、とりあえず目新しいものは実験体…じゃなくて、着せ替え人形になってもらった。自分が着るのは嫌だったから仕方ない。みのりには抵抗されたけど、そこは影星が力で抑えてくれた。

 後は、私と影星用の普段着。それと、いつ使うかは分からないコスプレ的なものもついでに買ってみた。

 …全部代金は紅葉さんのお財布からなんだけど。

 だいぶ浪費したような気もするけど、影星は「別にいいやろ」と言っていたので…私は関係ないって事で…

 

 その次は、カラオケ。

 こっちの世界にカラオケがあった事にもびっくりしたけど、設備が綺麗すぎる事の方がびっくりした。

 そして、影星が地味に歌が上手い。3人で点数を競ったんだけど、影星の圧勝だった。私?…さあ、何の話かな…

 影星が言うには、「アイドルが知り合いにいるから」らしい。…本当はどうなんだろう?というか、影星って変わった人が知り合いにいるような…

 みのりが「今日は昼飯抜きだからな」って言ってたから、ダラダラとドリンクバーでジュースを飲みながら、なんだかんだで5時間程居座ってしまった。

 

 カラオケを出た後、スポーツパーク?みたいな所で遊んだ。

 影星もみのりも身体能力が高くていいなあって思ったけど、私だって一応パルクール選手として活動してるんだから負けていられない。

 パルクールコーナーもあった。初心者向けだったけど、かなり楽しかった。

 2人にもパルクールを見せて、それから教えてみた。

 2人とも身体能力と学習能力が高かったから、すぐに上達していくのがわかって、見ているだけで楽しかった。

 その途中、みのりが足を踏み外してマットに頭から沈みこんだのはご愛嬌。

 

 そして最後。

 夕方。私と影星は、みのりに連れられて、高級そうなレストランまで来てしまった。

 既に予約を通していたらしく、あっさりと四人席に通された。

 空いた席1つは、買った荷物や影星の謎のバッグ置き場にして、残りの3席を埋める。

 料理すらも決まっているようで、しかもフルコース。飲み物は、選べる形式の中にお酒があったからさりげなくそれを…私は成人済みだからお酒が飲める。…けど、影星とみのりはどうなんだろう?

 

「…2人って、お酒飲めるの?」

「私は全然飲めるぜ」

「俺はー…前の世界の法律じゃ飲めなかったな。今はそんなん気にしなくていいし、多分体的にも飲めるんじゃねえの?」

「…?前の、世界?」

 

 言葉が引っかかって、聞いてみたところ、みのりは他の世界で死んで、この世界に転生してきたらしい。まあ、私も影星もこの世界にワープ?したんだし、そんな不思議なことでもない…のかな?

 いや惑わされるな。主人公じゃないとそんなことにはならないはず。

 年齢的には大丈夫らしいので、お酒を飲む事にした。

 話しながら料理を頂いている中で、一つ知った事がある。

 どうやらみのりは影星に負けたという事。その過程で、みのりが殺されそうになった事。

 私は影星の代わりに頭を下げておいた。影星はこういうことを悪い事だと思わないから、言っても無駄なんだ。

 

 2時間ちょっとレストランの中に滞在して、お会計をしようと思ったら店員さんから「既に頂いております」って言われて、影星も「は?」みたいな表情を浮かべている。私は言わずもがな。

 私達に気付いたのか、みのりは得意気に笑う。

 

「1回やってみたかったんだよな、こういう事」

「え?助手って無賃労働じゃねーの?」

「おい無賃労働とか言うなそうだけど」

「じゃ、じゃあ…どうやって…?」

「んー?…貯金?」

「大事なお金なんじゃ…」

 

 貯金を使ってまでわざわざ人に奢るって…何で?自分で使った方が、もっと有意義な事が出来ると思うんだけど…

 

「まあ金の在処はどうでもいいとして。そろそろ帰った方がいいだろ、俺が学園まで送るから」

 

 気が付けば、既に日は落ちかけている。

 私と影星は、みのりの後をついて学園まで向かう。道が思ったよりも複雑で、自分一人で帰れって言われたら間違いなく迷うだろうし、例え影星がいても流石に無理な気がしてたから有難い。

 

 …学園までの道を歩いていると。

 横にやたら四角い建物を見つけた。

 建物を囲うように柵が立てられて、入口は取っ手のない扉。横に何かを翳すものがあるって事は、多分カードがないと入れないんだろう。

 情報としてはそれだけなんだけど、それを見たみのりが警戒するような表情をしたことで、ここが平和な場所じゃない事が分かる。

 影星もそれに気付いたらしく、みのりを突っついた。

 

「なああれなんだ?サツ?」

「言い方…とりあえず隠れろ」

 

 近くの茂みに押し込まれる。扉とその周りは見える、丁度いい場所に3人で並んで隠れながら、みのりは声を抑えて話す。

 

「ここら辺じゃ有名な暴力団のアジトだよ。しかも能力者も多いらしい」

「んじゃ折角見つけたんやし潰すか」

「だから……は?」

 

 みのりの話を途中でぶった切って、影星が茂みから立ち上がる。慌てて2人でしゃがませると、不満ながらも大人しく従ってくれた。

 

「俺の話聞いてたか?能力者が多いんだぞ?いくらお前でも死にかねないっての」

「行けるやろ、なんならお前ら見てるだけでいいぜ」

 

 再び立ち上がろうとする影星を宥め、尚もみのりは影星を何とか説き伏せようと頑張る。

 

「それにどうやって入るんだ?扉でも壊してか?」

「それもいいけどー…しばらく待てばメンバー戻ってくるやろ、後着いてくわ」

 

 もう何を言っても聞く耳を持たない。影星は完全に行く気だ。こうなったら、どうしても止める事は不可能だ。仕方ないから、私達もついて行こうかと思ったんだけど。

 

「…えっと」

「あ、私1人で行くから大丈夫だぜ」

 

 先手を打たれた。ので、大人しく隠れて待つ事にした、けれど。

 

「もし私が仕留め損ねた奴がいたら気絶させといてくれね?」

 

 との頼み事をされた。私としては影星を中に1人で行かせるのが不安なんだけど…どうせ言っても分からないだろうなあ…

 

「…ま、もう止められねえか。ほら来たぞ、バレないように気をつけろよ」

「OKそんな馬鹿な真似しねーから安心しろ」

 

 向こうからこっちに向かって歩いて来る人が2人。

 黒い上下のスウェットを着た、見た目は普通の人…かな?

 思ったよりは違う人達みたいだけど…

 

「行ってくるわ」

 

 その後ろを<忍び歩き>で着いていく影星。

 怪しい人達の1人が、ポケットからカードを取り出して、扉の横の機械に翳した。

 2枚の扉が左右に開き、怪しい人達はその中に入っていった。あの黒い服を着た人達は、ほぼこのアジトにいる人だと思っていいのかな?

 その人達の後ろについて、何食わぬ顔で中に入る影星。

 

 その時、建物から警報音が鳴った。

 同時に、扉が勢いよく閉まる。

 影星は建物の中に入ってしまい、幸い挟まれる事はなかったけれど。

 

「おいまずいぞ!」

「そ、そうだね…!」

 

 私とみのりは慌てて扉の前まで走る。

 しかし、辿り着いた時には扉は完全に閉め切られてしまい、うんともすんともいわなくなってしまっていた。

 みのりが試しにドアを蹴ってみたけど、まるで効果がない。

 

「どうするショゼット、俺らもう入れねえ」

「…」

 

 普通に考えて、扉が閉め切られてそれだけなのはおかしい。逃げ場がないんだ、もし中で一酸化炭素中毒にでもなったりしたら?大人しく死ぬ訳が無い。

 

「…逃げ道があるはず…探してみよう…?」

 

 扉から離れ、奥に向かって歩く。あるとしたらこっち側。

 少し調べてわかった事だけど、<聞き耳>を使っても内部の音が聞こえない。

 つまり、影星の生死を確認する術がない。

 

「あんなこと言ってたんだ…死ぬなよバカ…」

 

 今は、影星の無事を祈るしかない。

 そう考えて、私達は柵に寄りかかった。




 暴力団のアジトに1人で凸った影星!果たして生還出来るのか!!
 次回『影星死す!』デュエルスタンバイ!

(全てデタラメです)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。