異世界探索記   作:紅色の落ち葉

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ちょっとこの後も一緒にしようと思ったけど気力尽きたからここでいいや


世界調査 ─上限解放─

 side:No

 

「くっそなんで未来予知されてんだよ!」

「仕組みも分からないか。まあ、無理もない」

「あたら、ない…!」

 

 

 影星が中で一悶着起こしていた頃。ショゼットとみのりもまた、強敵と戦っていた。

 

 影星が中に入り、扉の破壊も不可能であり、正攻法で入る事が出来ないと知った2人は裏口がないかと探していた。しかし、10分もすれば建物の外周は回れてしまう程の大きさであり、裏口のようなものは見当たらなかった。この事から、裏口は地下にある、と結論付け、地下にあるのならばどうしようもない、と大人しく柵に凭れて休むことにした。

 

 その時、近付く足音を聞きつけたショゼットが、背負っていたライフルを構えた。つられて、みのりも戦闘体制を取る。

 現れたのは、同じく上下黒のスウェットを着た人物だった。服装から、組織の一員だと考える間もなく辿り着いた結論に、ショゼットは緊張しながらも対峙した。

 

「部外者か。…即刻立ち去れ。そうすれば不問にしてやる」

 

 ライフルを握りしめたまま何も答えられないショゼットの前に、みのりが立ち塞がり、不敵に笑って答える。

 

「中に1人で凸ったバカな仲間がいるもんで。そいつが来るまでは意地でも退いてやらねぇよ」

「そうか。

 

 それじゃあ死ね。」

「お断りする。」

 

 振りかざされたナイフを受け止め、足首へ蹴りを1発与える。

 影星には1度敗北している。しかし、みのりは能力を持っている。故に、一般人よりも戦闘に長けている。更に、みのりの戦闘経験は決して少なくない。研究所の2人との組手は行っているし、それ以外にも何度か小規模ながらも治安を乱す不届き者は締め上げてきた。

 みのりから言わせてもらえば、影星のステータスがバグっていると言わざるを得ない。

 

 そのような背景があるからこそ、みのりはそう簡単に殺されるとは思っていない。それと同時に、負けるつもりも全くない。ダメージを負ってでもカウンターを喰らわせてやれば、そう長くはかからないだろうとみのりは考えた。しかし、その考えは早くも看破される事となる。

 

 景色が一瞬揺らぐ。

 

「それじゃあ死ね。」

「お断りする。」

 

 振りかざされたナイフを受け止め、足首へ蹴りを1発与えようとする。

 しかし、それより早くナイフから手を離し、キックの射程範囲外へと移動された。

 

「チッ…反応されるか」

 

 掴んだナイフを地面に捨て、面倒くさそうに構えるみのりにショゼットは声をかけた。

 

「みのり…大丈夫?」

「大丈夫だ。危ないから下がってろ」

 

 みのりのその言葉に、ショゼットはライフルを構えながらはっきりと拒絶の意を示した。

 

「…私も戦う」

 

 思わぬ申し出に、みのりは一瞬思考が停止した。

 だが、考えてみればあの影星と一緒に飛ばされてきたのだから、ある程度は戦えるのだろうか。というか、ライフルを普通に持っている時点で少し不審に思うべきだったのか。影星という異端な存在に、少し慣れすぎた様だと内心で苦笑しながら、みのりは念の為に釘を刺した。

 

「分かった、無理はするなよ。それとそのライフル置け」

「…?なんで?」

「こいつだけとは限らないからな。音で気付かれたら面倒だ」

「わかった」

 

 みのりの言う通り、ライフルを地面に置いて隣に立つ。

 

 ショゼットと影星では、経験と潜り抜けた修羅場の場数が違う。ショゼットは、影星よりも自分は劣っていることを自覚していた。だからこそ、頼りきりである事を良くないと思っている。

 守られる事に対して悪い気はしない。しかし、それは影星が側にいる事が前提だ。目の届かないところで死ぬ可能性が無いとは言えない以上、自衛必須の戦いに持ち込まれた場合には、生きて帰ることが出来る保証がないのは事実。

 ここで成長しておかなければ、この先に困るのは自分では無い。

 自分が死ぬ分には構わないが、影星が傷ついても良いのかと聞かれれば答えは否。

 

「2人か。…舐められたもんだ」

「ハッ、笑わせんなお前。お前程度に負ける程俺は雑魚じゃねえ」

「クソガキが調子に乗りやがって」

 

 他人の前では慣れない姿通りの真似をするみのりも、相手に容赦はしないと決めたからか言葉遣いは素に戻っている。

 振り下ろされた拳を正面から受けとめ、関節を狙って蹴りを入れようとするが、その前に手首を捻り手を振りほどき、後ろに下がり、みのりの蹴りを躱す。しかし、それまでは想定内。

 躱される事を前提に、ショゼットが既に背後に回っていた。

 

 景色が揺らぐ。

 

「クソガキが調子に乗りやがって」

 

 振り下ろされた拳を正面から受けとめ、関節を狙って蹴りを入れようとするが、その前に手首を捻り手を振りほどき、後ろに下がり、みのりの蹴りを躱す。

 そして、予想していたように、背後に回ったショゼットの蹴りも躱してみせた。

 

「な!?」

「よ、避けられちゃった…!?」

 

 

 そこからは、まるで次の行動が分かっているかのように攻撃を防がれ、流され、隙あらばカウンター、という相手のペースに持っていかれ、人数有利があるにも関わらず、二人の息は大分あがっていた。

 そして、冒頭に戻る。

 

「こんな事になるなんておかしい…絶対あいつなんか能力使って…」

「で、でも…内容が…」

「…あんなの、未来予知くらいしか…」

 

 そう呟いたみのりは、何かに気付いたように小さく声を漏らす。

 

「…ショゼット、俺に考えがある。乗ってほしい」

「う、うん…」

 

 

──────────

 

「あれだけ啖呵切った癖にこの程度か?」

「まだに決まってんだろ舐めんじゃねえ!」

 

 鳩尾へ蹴りを叩き込もうと、みのりは近距離まで近付き足を振る。それを軽く躱し、片手を掴まれ腕での抵抗も押さえ付けられた上で、腹部に容赦のない膝蹴りを食らい、同時に手を離される。体力を消耗していた事もあってか、その衝撃にみのりの体は耐えきれずにフェンスに叩きつけられた。

 

「かはっ…」

「まずは1人か」

「み、みのり…!」

「余所見しすぎだ」

 

 背後からの殴打をすんでのところで受け止める。しかし、ショゼットは攻撃を受け流すか躱す事で精一杯。攻撃に転じる事は不可能であった。

 

「あ、ぶない…」

「反応速度はいいな。所詮それだけだが」

 

 最早何度目かも分からない景色の揺らぎ。

 

 背後からの殴打を受け止めるも、空いた脛へと蹴り込まれる。

 だが、世界補正がかかっているのはショゼットも同じ。間一髪の所で躱し、その隙に一か八かの賭けに出る。

 一瞬の攻撃の間を狙い、先程みのりが投げ捨てたナイフを拾う。そして、それを相手の足へと投げた。

 ナイフは太腿へ刺さる。顔を歪めながらも、相手は何か能力を発動させようとして──

 

「な…戻らない…!?」

 

 それを見て、ショゼットは速やかにその場から離れる。

 そして、この状況を打開した人物の元へ駆けつけた。

 

「やっとか…攻略に時間かかったぜ、お前の能力」

──────────

遡る事数分前。

 

「あいつの能力の内容は分からない。が、もしかしたらあの能力を攻略出来るかもしれない」

「ど、どうやって…?」

「それを今から説明する。ただ、通るかどうかは分からない」

 

 そう前置きして、みのりは相手の能力の自論と、それに対する対抗策を簡潔ながらも分かりやすく話していった。

 

「あいつは未来予知、もしくは時間を巻き戻した擬似未来予知で俺らの攻撃を避けてる。後者なら多分俺が入り込める。それが出来るか試してみたい」

「う、うん、…私は何をすればいいの?」

「俺があいつに気絶させられた振りをした後、そこに入り込むための準備をする。だから準備の時間を稼いでくれ」

「わ、わかった。頑張ってみる」

──────────

 みのりの瞳は今までの色とは違い、赤紫色に輝いている。その眼が、今までの彼女とは違う事を表していた。

 

「その眼は…上限……解…放……?」

「知ってたのか。まあ今更だけどな」

 

 上限解放。

 

 それは、限られた者にしか扱えず、限界を越えた有り得ない力を得ることの出来る切り札。

 代償を必要とするこの技は、コントロールも非常に難しく、例え上限解放が可能だとしても、力に飲まれ命を落とす者の方が圧倒的に多い事から、この力は伝説として語り継がれている。

 斯く言うみのりも、上限解放に至るまでの時間はかかる。言わば、発展途上の段階。

 しかし、今はその力で事足りる。一介の能力者が、上限解放に耐えられる訳がない。その事は、みのりが1番よく分かっていた。

 この力を使えば、能力に干渉出来る事も理解した上での最適行動。

 それが、彼女の弾き出した答だった。

 

「影星には気絶で済ませろって言われてたからな。その通りにしておくか」

 

 言うが早いが、視界から消えるみのり。ショゼットにも追えないならば、相手が見えるはずもない。身体増強のLv4…4乗の影星でさえ、今のみのりと戦っての勝率は0%に等しい。

 その火力を、相手はもろに食らったのだ。当然、本来ならば無事な訳がない。気絶で済ませろとの言葉がなければ、とっくに蹴り殺していただろう。

 結果として、相手は一瞬で吹き飛ばされ地に転がった。一応息はしているが、完全に気を失っている。

 

 その事を確認したみのりは、上限解放を解いた。

 途端に身体を強く締め付けられる感覚と、早鐘を打つ心臓に苦しめられ、その場に血を吐いて座り込んだ。

 

「げほ、げほっ…」

「だ、大丈夫…!?」

 

 ショゼットは、思わずみのりに駆け寄り、ポケットからハンカチを取り出した。心配そうにみのりを見つめ、受け取れとでも言うようにハンカチを差し出す。

 自らが吐いた血溜まりを一瞥してから、みのりは顔を上げ、それを受け取ると軽く咳き込んだ。

 

「大丈夫だ、ちょっと体に負担かかっただけだからな。休みながら、影星の事待とうぜ」

「う、うん…」

 

 2人揃って地面に座り、待ち人の帰りを暫く無言で待った。

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