異世界探索記   作:紅色の落ち葉

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魔界調査─生力使役─

 side:No

 

 地上に残った悪魔は半分以下。数にして、約300体。一体一体蹴り殺せば確実だが、人数有利を取られている以上、体力が持つか分からない。理想は〈萎縮〉で殺す事だが、全員分の魔力があるかと言われれば答えはNo。というのも、影星は薄らと気付いている事があった。

 

 ここでは、魔力の消費が早い。

 

 それだけでなく、魔力を吸い取られているようにも感じる。このまま時間をかければ、元の世界に戻る為の〈門の創造〉を発動させる程の魔力も残らない。故に、直ぐにでも片付けなければならない。

 しかし、魔力の消費が早い以上〈萎縮〉ばかりには頼れないし、だからと言って身体能力を生かして戦うのにも限度がある。人数、フィールド共に最悪な相性である事は間違いない。

 だからこそ、戦い甲斐があるのだと影星は思う。

 得られる経験や技術は全て自分の力にする、というのが彼女の戦い方(バトルスタイル)。殺した相手の能力を奪う【天誅の殺生】を得てから、その考えは更に加速した。

 戦闘の技術(スキル)は戦闘でしか身につかない。例えどれだけ目の前で見せられたとして、結局は理論ではなく体に直接覚えさせる方が効率良く強くなれる。数多の人間と神格を殺してきて知った事だ。誰に言われるでもなく、彼女が1番よく分かっている。

 大切なのは、実践すること。

 その一言に尽きるのだ。

 不利な局面を破壊し戦ってきた彼女は、制限を受けた戦闘もまた成長へ繋がると分かっている。

 そして、これ程絶好な機会は今までに見なかった。

 

 この戦いが、他者の人生を大きく狂わせた下劣な奴らとの対面であろうとも。

 

 

 

 

 悪魔族の頭領──トリュー・アイデライラは、魔界への侵入者を感知した時内心馬鹿馬鹿しく思っていた。

 ただの人間が、しかも単騎で魔界へやって来たのかと。

 この魔界には『魔界研究所』が存在する。しかし、それを起てた人物は決して干渉してくる事は無かった。故に、面倒な揉み合いは御免だという気持ち1つで、干渉しない事を命じていた。荒らされる訳では無い。ならば、下手に手を出す必要も無い。

 しかし、今日に限っては様子が違った。

 微弱ではあるものの、殺気を纏った塊が空中を徘徊している事を察知した。その為、配下には戦闘態勢を取るように命じていた。

 その矢先、人間が単騎で襲来してきたのだ。驚くなという方が無理である。それでも、空にいるのであれば落とせと言ったところで、空から光の束が高速で、自分だけは見事に外して降ってきたものだから、混乱に陥った頭を懸命に働かせるまでに一体何百の配下が犠牲になった事か。更に、やっとの思いで絞り出した命令に応じた三体─割と強い方ではある─が飛行の衝撃波に為す術なく吹き飛ばされ、上空で焦がされることは想定外。

 それが地上に降りてきた際には地が割れた上に殺戮宣言である。黙って見る事は出来ないのだった。

 

 だが、彼女は赤の他人に殺意を顕に攻撃されるようなことをした覚えなどない。誰かの報復としても、そんな事をされるような行為をした覚えはない。つまるところ、理不尽に襲撃されたと解釈せざるを得ないのであり、であれば容赦をする理由など欠片もないのだった。

 

 

 まずは〈萎縮〉で100体の悪魔にターゲットを絞る。残り魔力の半分を1度に費やし、問題も無く対象を破壊、黒焦げにし生命を断つ。次に、『自身の魔力』に対し、殺した相手の能力──ショゼットとみのりが相手していた敵の能力だが──を使用し【時間遡行】を行う。これにより、再度〈萎縮〉を使える程の魔力まで復元させる事が可能になる。3度目の遡行はない。奪った相手の能力を使用する際には、オリジナルの能力よりも多く魔力を消費する。それは、あの移動能力を試しに使って発覚した事だった。加えて、ここでは魔力の消費が速い。故に、葬れる悪魔は200体。残りは地道に削る他ない。

 2度目の〈萎縮〉。より手間取りそうな悪魔を選別し、今度は矛先をそっちに向けた。

 魔力が一気に削れられる感覚。魔力に関しては素人の影星が感じ取れるのならば、それに悪魔が気が付かない訳がない。

 

 間違いなく、このまま時間をかければ帰れなくなる。そうなる前に1度帰って魔力を補充するのが最善かと判断を下し、門の創造を展開する。

 否、正確にはしようとした。

 

 正面からのエネルギー弾が5発。真っ直ぐに影星を狙って飛ぶ。いくら即時生成と言えど、1秒展開は現時点では不可能。

 選択肢は二つ。ダメージ覚悟で門の創造を展開するか、展開を諦め回避行動を取るか。影星が選択した行動は後者。未知の攻撃を受けてまで帰る事は無い、と言うのが彼女の判断であり、またそれは的中する事になる。

 躱したエネルギー弾は数十メートル後ろの空中で爆散し、その破片は灰のように降り注ぐ。そして、地面に接触した瞬間、地面が融解した。行方を確認しようと後ろを振り返った影星は、惨状に自分の判断が正しかった事を悟る。今の攻撃を直に食らっていたら…と、考えて、数秒前の自分に酷く感謝した。恐らく生きては無いだろう。形が残るだけマシ、消し飛んで当然といった火力だった。

 しかしながら、彼女の中に芽生える1つの確信めいたもの。それが、後に彼女の戦闘スタイルに加わり、より戦術を増やしていくことになるのだが、今の彼女は知る由もない。

 

 残りの100体…トリューは最後に始末する為99体を、どう片付けるか。同士討ちでも構わないような気がして、1人殺した後、そいつを壁にするのもいいかと思ったのだが、よく考えればそれは別に体力の消耗が減る訳でもない。しかし、迂闊に近付けばあの弾を食らうことになる。あれを防ぐ手立てが今の所はない。

 

 ─これを除いて。

 

 手の中の縮小されたバズーカを握り締める。

 ヘヴィーからバズーカを渡された時の言葉は忘れていない。「実態のある攻撃は弾く」との言葉通りであれば、あれだって弾き返せる。見せるのは撃って来た後。そして利用し、ある種の同士討ちを実行する事にした。

 

 

 目に見える様なアクションを阻害するように撃ってくるのであれば、その素振りを見せれば良い。

 ではどうするか。

 危害を加える様な行動を取ればいい。簡単な話だ。一撃の重さは少なからず把握されているはず。ならば、その威力を目の前で振り翳す振りでもしてやれば、直ぐに撃つだろうと予測する。

 片手にバズーカを握り締めながら、敵に向かって走りだす。そして力強く踏み込んで<マーシャルアーツ>を載せたキックを容赦なく放った。

 嬉しい誤算だったのは、構えていた一体に蹴りが命中し、それを中心に衝撃波が発生して巻き込みが多発した事だ。対象も、周囲も無事では済まない。それでも尚、弾は発射される。しかし、それで良い。そうでなければ計算が狂う。

 予定通りにバズーカを拡大しエネルギーを跳ね返す。寸分狂わず放った相手の元へ戻ったそれを見る。予想通り、その場で爆発する。そして可能である事を察した。後は実行するのみ。

 

 正体不明のエネルギーが、影星の手に集中する。何が元になっているかも分からない。根底にあるものすら解析不能。

 そのエネルギーは、形になって光速を超える速度で飛翔する。紛れもなく、エネルギー弾の模倣。否、速度だけで見れば本物以上。であれば、威力が低い訳もない。

 躱せなかった悪魔の体を貫き、エネルギーはその場で暴発する。周囲の悪魔は破片によりその肉体が融解し、瞬く間に姿を失った。1発で、殆ど全ての悪魔が蒸発し、その場に残るは、トリュー・アイデライラただ一体。

 影星は、新たな能力をどこかで得た…例えば、殺した悪魔の中にそういう能力を持つものがいたのだろうと思っていたが、どこにもいなかった。

 この刻を以て、影星は知らぬ間に模倣の才能と技術が開花し、それと同時に数少ない『生力使役(エナジーコントローラー)』として、より戦闘へ固執する事になっていくが、今の彼女がそれに気付くことは無いのだった。




 影星の模倣の才能、実は物理攻撃なら見た瞬間に模倣可能
 え、何影星強くなりすぎって?んな訳
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