いつもより短いのは都合
side:No
ヘヴィーとヴァリネッタは、ホースの先の外に設置してある魔力蓄積装置へと向かっていた。
魔界では、下界よりも多く空気中に魔力が漂っている。そこから研究所内のタンク──供給機に魔力を送り、そして魔力を供給する。しかし、供給機が何かしらの不具合で動作しない場合、大抵の原因は蓄積装置の方にある。魔力によるパイプで蓄積装置と供給機は繋げてある為、影響を及ぼせる箇所がどちらかしかないからだ。そして、研究所の中は外からの影響を受けない。そして、内部には誰もいないことを確認している。であれば、供給が停止しているのではなく、蓄積が出来ていないことになるはずだ。
「にしても、とんでもねえ奴と知り合いになりやがったなお前」
「何の話だ?」
道中、ヴァリネッタの呟きにヘヴィーは不可解だと言いたげな声を返す。影星の事だろうか。悪魔を全滅させた事か、もしくは一人でここに来る勇気か。並の人間では無い、が。
「悪い奴でもないんだがな」
「俺が言いたいのはそこじゃねえ」
「では何だ?」
呆れ返っているんだか何だか分からないヴァリネッタに、ヘヴィーは上手く意図が汲み取れずにその言葉が出てきた理由を考える。感情には疎いのだから、言葉や表情で何を伝えたいのかが分からない。少しはこちらの考えも読んで欲しいものだと思って、直ぐに無理だと思い直した。
「
「影星も…か?」
そこまで多くないはずだが…と、考えるヘヴィー。
ヘヴィーは『創造』の才能と技術、ヴァリネッタは『破滅』の才能と技術。
みのりには才能や技術は備わっていないが、元から魔力を有さない分、エネルギーを利用した型に嵌らない力を編み出せる。魔力が無くても力が使えるのだから、重宝されて当たり前だ。
「…だが、一体何だ?みのりと同系統では無いのだろう」
「ああ、そうっぽいな。つかそれあいつに言ってもわかんねえだろ」
「説明するしかないと…面倒だな」
「本音出てんじゃねえよ」
特に意味の無い雑談も交えながら、目的地まで向かう。だが、遠目で不審な影が何体か漂っているのが見えて足を止めた。文字通り真っ黒で、影の集合体のようなそれらを見ながら、ヘヴィーは首を傾げた。
「…あんなに黒い奴…いたか?知り合いに」
「まず前提として悪魔は知り合いじゃねえ。にしても不思議だな…いたら奇妙すぎて覚えてると思うんだよな」
「同感だ。となれば…あれはなんだ?」
躊躇いなく影に近付くヘヴィー。その後を、ナイフを構えながらヴァリネッタは追った。
「こんな所で何をしている?私はその装置に用があるから退いてくれると有難いのだが」
どちらが顔かも分からないが、影は声をかけたヘヴィーの方へと這い寄る。咄嗟に危機を感じ、ヘヴィーは後ろへ下がった。直後、先程立っていたところの地面が融ける。
「大丈夫かヘヴィー」
「問題ない。…それよりも、あれ」
「エネルギー弾…だな。悪魔が使う」
悪魔は影星によって全て消滅したのではなかったのか?というか、これ程黒い悪魔は見た事がない。どちらも不干渉という事で、魔界に研究所を建てている。何もしていないのだから、害を与えられることはあってはならない事である。
悪魔のような影が何度か体を震わせると、次々とその場に同じ様な影が現れる。約20体ほどの影の集団。2人いれば時間もかからず始末できる程の量であることを加味し、討ち滅ぼす事にした。意味の無い先制攻撃に妨害。放っておく程、優しくない。
「さて…では行くぞ、ヴァリネッタ。魔力は使えない物と考えろ。マジックショットで一掃する」
「使わなくても行けんじゃね、数多くねえし格下だろ」
「油断すると足元掬われるぞ」
「分かってるっての」
ヘヴィーは手元に鎌を出現させ、それを両手で握る。
ヴァリネッタは自身の魔力のみで生成された、50cmはあるであろうかというナイフを構える。
そして、影に向かって一言。
「先に手ぇ出したのはそっちだからな。…容赦しねえぞ」