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ヘヴィーが鎌を振り、影の一体へと突き刺す。しかし、碌に刃が通らず、硬い感触を武器伝いに感じただけ。手応えを感じられずに不満を抱きながら、放たれたエネルギー弾を裂いた。
ヘヴィーの鎌─正確には武器なのだが─は元々遊び半分で作った、ちょっとした武器のつもりだった。殺傷能力はあまり無く、主な用途は魔石を回収する際の道具であり、そして一応武器という代物。だが、作った際に何をどう間違えたのか、はたまたこれは才能と技術が影響を及ぼしたのか。真相は定かではないが、何故か鎌には『全てを切り裂く』という効果が備わってしまった。
たまたま魔石を取ろうと振った時、目の前で空間が文字通り切り裂かれ、ヴァリネッタは勿論、ヘヴィーも尻餅を着いてしまう程には訳の分からない光景だった。その後何度か実験を繰り返し、最終的にはその結論に落ち着いた。
ちなみにこの切り裂くというもの、結果の改竄を含んでいるようで、望むのであれば世界を切り裂く事も出来る。本当に可能か試そうとしたヘヴィーを神の一柱が止めた事もあるが、そんな事は別に今は関係ないので割愛する。
そして、鎌は1部のアクションではその効果を発揮しない。その内の一つが突き刺すという行為であり、今の一撃に改竄の効果は載らない。
それにしても、流石に硬すぎるのではと内心で子供らしくぷくりと頬を膨らませてしまうのは致し方ない。表情に出さなかっただけ許されるべきなのだ。
ヴァリネッタは、手際よく影を刺していく。刺された影は、次から次へと煙を上げてどこかへ消える事からも、絶命している事は明白だろう。簡単に片付く相手でよかった、と思いながら生き残りの影の方へ向かう。
ヴァリネッタのナイフは、本人の魔力で生成されたオリジナル。そして、魔力で作られたナイフは本人の力に準えた『能力破壊』の効果が備わっている。そして、能力だけではなく、能力で作られたものも破壊対象となるこのナイフで、能力を使用し作られた影であればどうなるか。
それが、この答えである。
影は学習していくようで、ナイフから距離を取られ、鎌を薙ぐ動きは躱され、少しずつ攻撃が当たらなくなっていく。かと言って、迂闊に近付けばエネルギー弾を受けてしまうだろう。しかし、鎌もナイフも近距離用の武器。隙をついて懐に潜り込まれてしまえば、高確率で仕留められてしまう。加えて、魔界から研究所、研究所からここまでと全て徒歩で来ている。ヴァリネッタは兎も角、ヘヴィーは体力的にも厳しい。鎌を振り回す事とエネルギー弾を躱す事を考慮して、どれ位持つのか。
エネルギー弾が魔力製であれば躱す必要も無い。しかし、魔力ではない為に2人には躱すか壊すかの2択しかない。
ヘヴィーは有数の魔力吸収体質である。その為、魔力製の攻撃であれば、自身の魔力として変換する事が出来る。ヴァリネッタは吸収こそしないものの、攻撃がすり抜ける為魔力系には何方も強く出られるのだが、魔力ではないものには通用しない。
着実に、戦いにくい土俵へと持っていかれている事に薄々気が付いていた。これ以上、時間をかけていられない。
「…ヴァリネッタ、終わらせろ」
「ハイハイ。てかお前も手伝え」
「嫌だ面倒臭い」
「殺すぞ」
適当に返事をしながら、ヴァリネッタは静かに力を高める。そして、10体程の影を視界に収めると、高めた力を一気に解き放った。
「【
魔力でもエネルギーでもない、正体不明の力がその場で溢れ、辺りを包む。
その力が消えた時には、敵は跡形もなく消滅していた。
「終わったぞ」
「疲れた歩きたくない休もう寧ろ寝よう」
「お前体力無さすぎだろ」
敵が殲滅された事を確認するや否や、地面に寝転がるヘヴィー。こんな所で横になるなと言いたいところだが、ヴァリネッタも疲弊している。とてもじゃないが、ヘヴィーを背負って帰れる訳もない。
「…つか俺ら問題ないか見に来たんだよな?問題なかったのか?」
「ん?ああ、あいつらがパイプを弄っていただけらしい。もう問題ないから休んでも大丈夫だ」
チラと蓄積装置を見ただけで判断したヘヴィーは、今度こそ目を閉じた。ヴァリネッタも、立っているよりはいいだろうと地面に座る。
そうして、いつしか眠ってしまったのだった。
次回!影星&みのり!