異世界探索記   作:紅色の落ち葉

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厨二満載


魔界調査 ─神様の奇跡─

 side:No

 

 研究所の中で、影星とみのりは外を眺めながら話し合っていた。

 

「あれどうする?」

「どうも何もな…ヘヴィー達帰ってこないし」

「そうなんよ、私的には外出てあいつら殺したいけどな」

 

 相変わらずの影星の思考に、みのりは苦笑しながらも相槌を打つ。

 

「それは俺も思う。何があるかわかんねえから早めに排除しときたい」

「んじゃ殺るか、行こーぜ」

 

 言うが早いが研究所を飛び出す影星。手から黒い何かが落ちた事にも気付かない。そして、多少足元がふらついたのをみのりは見逃さなかった。恐らくは、催眠魔法の影響だろう。あのままは危険だと、すぐさまみのりも後を追った。

 

 外に出ると、影が一斉に影星とみのりの方を向く。数を数えるのが馬鹿らしい程の多さ。その中に、影星は見覚えのあるシルエットを見かけた。

 トリュー・アイデライラ。間違いなくそれだった。そして、影星は推測を立てる。

 間違いなくこの影は、第三者の手が加わった人為的な物。尚且つ、あの量を一度に復活させる事が出来るとなると、相当な魔力が必要になるはずだ。まだこの世界の魔力に馴染めていないからかは分からないが、少なくともそんな莫大な魔力は感じなかった訳だし、そもそも魔力を吸い取るこの場所でこんな事が可能なのか?恐らく答えはNoであり、であればまた別の世界からのものだろうと結論付ける。あくまで推測に過ぎないが、一方でこれは正しいだろうと探索者としての第六感を信じ、また人為的であれば先程よりも強いと仮定し──

 

「みのり…いやいっか、穂ちょっと手伝ってくんね?気絶で頼む」

 

 ──らしくなく支援を頼む事にした。

 

「別にいいが…さっきも言ってたよな、なんで気絶なんだ?」

「殺したら私が強くなるからだよ、ってことでよろしくな」

 

 みのりに勝手に告げると、1人で影の軍へと突っ込む。そして、適当に近くにいた影の腕を掴むと、鳩尾辺りに蹴りを叩き込む。同じ個体であれば耐えきれない蹴りを、いとも容易く受け切る。影星は影星で、余りにも硬すぎるその影を危険視しすぐさま腕を離した。

 そして、仕掛けた本人がこれを見ているかを確認する為に影を蹴り飛ばして笑う様に声をかけた。

 

「こんな事やらねーと戦えねーとか哀れやな。魔力ねーと戦えねー雑魚なんか?」

 

 その瞬間、明らかに影の挙動が変化した。

 今までは、みのりの方も伺いながらも最初に攻撃を仕掛けてきた影星の方を注視していた。

 その影が、一斉に影星の方へと牙を向いたのだ。

 間違いなく、操った第三者がいる事の証明になった。

 

「こんなやっすい挑発に乗るなんてさあ

 

 戦わなさすぎて脳萎縮でもしちまったんか?」

 

 刹那、影星目掛けて大量のエネルギー弾が放たれる。しかし、何度も見た技を食らう訳がない。背後に飛び、全て躱してみのりの隣へ降り立った。

 

「間違いなく今の誰かがいた。それにあいつらめちゃくちゃかてーな」

「それじゃあ俺削りきれねえだろ、俺がいても足手まといになるだけじゃねえか?」

「んーまあ確かに私基本一人で戦う方が何も気にしなくて楽なんやけど」

 

 そう前置きして、影星は戦闘態勢を整えながら不敵な笑みを浮かべた。

 

「信じてなかったら任せねーだろ」

「星辰…ああ分かった!」

 

 言い切ってみせたみのりに、影星はこの先の関係を決定づける一言を放った。

 

「信頼してるぜ、(あいぼう)!」

「…!俺も信頼してるぜ、星辰(あいぼう)!」

 

 その言葉に、一瞬驚いたみのりだったが直ぐに戦闘態勢に移行しながら笑顔で応える。

 そして、影星の言葉が、みのりに大きな影響を与え、新たな能力の開花へと導いた。

 

 

 みのりをこの世界に転生させた女神は、主神に言われた数刻前の言葉を思い出す。

 

『2度も無罪の人間の命を散らす真似は二度とするな』

 

 思い出して深い溜息をつきたくなった。が、よく考えてみれば自らの手違いで再び殺さなければいいだけでは?ならば、自衛できる能力を与えて後は放置でも問題あるまい。仕事は山積みだ。1人にそこまで構っている時間的余裕は無い。

 適当に能力を付け加える。元よりこちらの住民だ。小国の管理とはいえ神なのだから、能力の源を渡す事は簡単な事。

 軽くみのりに変化を促した後、女神は国の境の壁に凭れそのまま眠りに落ちた。

 

 そして、能力の源と、出会いを讃えた奇跡が混ざり合った。

 その能力の源は具現化し、みのりに力を与える。

 

 隣に立つべき存在が現れた、この出会いこそ、真の奇跡。

 その奇跡という、不確かで曖昧な存在が、その身に宿った。

 

 【神様の奇跡】。

 

 それが、彼女に齎された力だった。

 

 

「うわっ!?」

「な、穂どうした!」

 

 突然、みのりの体が眩い光に包まれる。何者も寄せ付けないその光は、数秒で粒子を散らしながら消える。

 体に馴染む新たな能力。魔力という性質を持たないからこそ、自由な形として嵌ったモノ。

 

「大丈夫だ、ただの新しい能力らしい」

「らしいって…それ大丈夫なやつなん?」

「ああ、多分」

 

 流れ込んでくる新たな能力。詳細を理解したみのりは、アイコンタクトで影星に合図を送る。その意味を正しく汲み取った影星は、寄ってくる影にエネルギー弾を発射し、足止めを行う。

 

「合わせろ星辰!」

「よくわかんねーけどOK!」

 

 蠢き出した影の前に飛び出すと、みのりは即座に、今まで影で作り続けてきた自身の力の一端を、何の躊躇いもなく放った。

 

「【付術(エンチャント) : 雷電(サンダーボルト)】」

 

 言葉に呼応し、激しいエネルギーが一瞬で広がる。それは止まることを知らず、奥の影まで一体残らず影響を受けた。殺さないまでの威力に抑えられた為に、殺せなかったと認識したエネルギーは性質を変え、獲物全てに麻痺の効果を与える。

 

 影星は、意識を集中させ、やはり不可能では無いのだと実感する。

 

 HP(たいりょく)を削り、MP(まりょく)を生み出す。

 

 そのMPを異質に形にし、影星とみのりの正面に巨大な鏡を生成し、その鏡に合わせ、みのりが燦爛たる光を生成した。

 鏡が光を1点に収束する。

 

 急速に膨張する光の矛先は、身動きの取れない影。

 

「【魔鏡(リフレクト)】」

 

 二人の声が重なる。

 相手へ向けた人差し指が、互いに触れ合った。

 

「【光の中の希望(ライトニングスター)】」

 

 言葉と同時、抑え込まれていた光が放出される。

 光速で迫る光の束を受け切れるはずもない。

 

 数秒後、過ぎ去った光と影は、跡形もなく消えた。

 正しく全滅。

 

「がは…っ」

 

 気が緩んだのか、無理矢理に魔力を生成した事が祟り、腹部から鮮血が服に滲む。

 

「星辰…!?」

「平気だぜ、これ以上悪化もしねーだろ」

 

 焦ったみのりが抑えるよりも早く、影星はさっさと服の袖で隠し、研究所へと足早に戻る。

 みのりもその後を追いながら、包帯やら消毒液やらの場所を思い出していた。

 

 しかし、2人が研究所に帰った時には既に、魔力供給機は作動済みであり、何にも支えられなかったホースが地面に這い蹲っていた。

 ホースを拾い、指示通りに魔力を吸引する。

 帰れる分だけの魔力があればいい。多くは必要ない為、早々に供給を引き上げた。

 

「んじゃ、私そろそろ帰るわ。ショゼの方気になるし」

「待てお前それで行くのか?」

「ショゴス如きに今更負ける訳ねーから大丈夫だぜ」

「あっおいちょ──」

 

 止める前に、門の創造で消えた影星を見送って、みのりは取り出してきた包帯と消毒液を床に置く。

 そして、深く溜息を吐くと、ごろりと寝転がった。




次回はショゼ…の覚醒…になるね
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