side:ショゼット
随分ゆっくり寝て、影星はまあ起きてるかなー、って見に行ったら、手紙が1枚。
『ちょっと魔界行ってくるわ後よろしくな☆』
…?
…よく分からなかったから、とりあえず紅葉さんに報告してみた。そうしたら、「別にいいんじゃない」って。魔界はよく分からないけど、影星なら何となく生きてそうだからそこまで気にしないことにした。
それで、その後紅葉さんが
「ちょっと気になる事があるから調べてくるよ。好きに過ごして待っていて」
とか言いながら、結構沢山の人を連れて行っちゃった。だから、今学園にいて私が知ってるのは、夜鴉さんと觜霊さんと天萊さん。女の子が1人残ってくれただけでも有難い。特に…夜鴉さんは苦手。
「ショゼット、少し何処かに出かけませんか?」
特にする事も無く、ベッドに腰掛けているとノックの後に扉が開かれて、
「う、うん…い、行きたい…」
ベッドから降りて、一応念の為にライフルを背負う。街中で撃たなかったら大丈夫だし、注意とかもされなかったし…?多分…
「では、参りましょうか。そうですね…行ったことのない場所…少し歩きますが、洞窟があるんですよ!そこにしませんか?」
「ど、洞窟…いきたい…たのしそう…!」
「洞窟探検しましょうか!」
「う、うん!」
昇降口までの道を歩きながら、天萊さんに道とか見所とかを教えてもらう。話を聞いてるだけで、楽しそうだなあって思って、行くのが楽しみだ。
…だけど、校舎から外に出た時。
私と天萊さんは見てしまった。
黒っぽい玉虫色の伸縮性のある柱状のものが、滲み出るように這い出てくる。その体は原形質の小泡で出来た不定形の塊で、体全体から微光を発していた。上を見れば、漂っている直径5m程の球形。どっちも大量にいる。
嘲るような叫び声。
『テケリ・リ!テケリ・リ!』
──ショゴス、玉虫色の悪臭──
「なんですか…あれ」
「…しょ、ごす」
警戒する様に体勢を低くした天萊さんに、私は震える声で返す。
詳しい事は分からないけど…そうだ、影星に電話…!
私はスマホを取り出す。何をしようとしたのか凡そ察してくれた天萊さんは、どこからか亡霊を召喚し…て?
え、亡霊を召喚…?
「ザフキエル!夜鴉と觜霊を!」
ザフキエルと呼ばれた亡霊は、校舎の方に物凄い速さでふわふわ浮きながら飛んでいく。
そして、私を守る様に前に立ち、更に五体の亡霊を召喚した。
その隙に影星に電話をかける。
1コールがとても長く感じて落ち着かない。早く出て欲しいという焦りから、スマホを握る手に力が入る。
『どしたんショゼ、私なら平気だぜ』
「う、うん良かった…あのね、大変なんだ」
『大変?何が?』
帰ってきてくれなんて言わない。
言わないけど…
助けて、ほしい。
「あの、えっと…学園に…
大量のショゴスが…」
『はあ!?紅葉はどこ行ったんだよ!?』
怒鳴り声にびっくりして、思わずスマホを耳から離す。ショゴスが一瞬こっちを見たけど、亡霊達が上手く意識を逸らしてくれた。
「紅葉さん達、調べに行きたいことがあるって…それで今、私の他には觜霊さんと夜鴉さんと天萊さんしか残ってなくて…」
『半分以上が出払ってんのかよ無能やなあいつら…』
影星がぐちぐちと言っている。けど、私側は正直そんな事を気にしている場合じゃなくて…
「どうしよう影星…!」
電話越しで、熟考してる雰囲気を感じる。天萊さんも心配そうにこっちを見てて、申し訳ない。
『ショゼ、そいつらに言ってくれ。気絶で済ませろ、残りは私が殺すって』
影星からの言葉に、意図は分からないものの答える。影星が言うってことは、きっと何か意味がある。
「わ、わかった…!ショゴスってどんな装甲があるん…」
…あれ?影星からの応答が無い…
と思って、スマホを見て唖然とした。
画面が真っ黒で、電源ボタンを押しても反応しない。
まさか…こんな所で充電切れた…?使ってないのに…!
「大丈夫ですか?」
「う、うん…」
そう答えて、私は背中に背負ったライフルを構える。多少のダメージになればいいな…
「夜鴉と觜霊に来てもらいましょう」
「うん…あ、そうだ」
影星に言われてた事、伝えないと。
「影星が、気絶で済ませろって…」
天萊さんは頷いて、亡霊を1度こっち側に引き寄せた。誘導されてショゴスもこっちを見る。
「2人がここに来るまで持ち堪えられますか?」
「…うん、頑張る」
片手にライフルを構えたまま、一応体術で戦えるようにもしておく。影星程じゃないけど、一応私だって戦える…方だ。
「危なくなったら補助しますよ。それに…こんな所で死なせたりなんかしたら、貴方と一緒に来た人に何か言われるかもしれませんし」
そう言って、天萊さんは楽しそうに笑う。余裕そうで凄い…
でも、影星はきっと私を信じてくれてる。だから私も、頑張らないと。