異世界探索記   作:紅色の落ち葉

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異世界探査

 side:No

 

「…あ?」

 

 思わず、視線を声の方に向ける影星。

 

「…?」

 

 不審そうな表情を浮かべるショゼット。上空にいても、よく通る声は聞き取れたようだ。

 

「お前誰だよ?」

「名前を聞く時はまず自分から。…常識でしょ」

 

 その言葉を受けて、影星はつまらなさそうに一瞥した。

 赤い、否…紅すぎて暗いロングヘアに、紅すぎて暗い瞳。それは相変わらず光を灯さない。冷え切った視線に、能面のように…いっそ能面の方がマシだと思える程の無表情。

 血を吸ったのかと思う程に赤い着物に、着物によく合う下駄の鼻緒も赤一色。

 

「っ…」

「ショゼ!?」

 

 不意に、ショゼットが声にならない呻き声を上げる。

 気を取られすぎて、着地の際に足首を捻ってしまったようだ。

 

「…名前ねえ…キミらが言ってくれたら考えるよ」

「へえ…バカだなお前」

 

 奪い取った銃を捨て、彼女の方を睨みつける。

 

「お前が先に言えば、その命散らさずに済んだのに───」

「やめておいた方がいいよ」

 

 殺意を隠そうともしない影星を止めたのも、やはり彼女。

 

「ボクの名前は後として、キミら自己紹介はしたの?」

「あ?…そうだ、お前らの名前は?」

 

 矛先を先客の2人に向ける影星。敵意よりも殺意が上回っているのが伝わったのか、溜息を吐いて前髪を掻き回す。それから、面倒臭そうに口を開いた。

 

「…俺は夜鴉(よがらす)

「夜鴉な。んで、お前は?」

 

 影星は、さっきまで地面に押さえつけていた彼女に声をかける。

 

「…僕は雨飾(あまかざり)。後勘違いしてそうだから言うけど、僕は女じゃないよ。男」

 

 何秒かの沈黙が流れる。

 影星も、ショゼットも、彼女が女だと信じて疑わなかったのだ。

 それ程までに、女性的な外見と声だったのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 

「…え?」

「嘘だろお前」

 

 ショゼットの純粋に驚いた声と、影星の揶揄う様な声が重なる。

 

「嘘じゃないよ」

 

 呆れた様に否定する彼を改めてじっと眺める。

 かと思えば、何の躊躇いもなく性別の確認に踏み込んだ。

 

「…じゃあお前って胸ねーの?」

「無いよ」

「マジ?信じらんね…」

「気になるなら触ってみる?」

「セクハラだろそんなの…」

 

 とりあえずは満足した影星が、正真正銘女である彼女に視線を向ける。

 

「…お前は?」

「ボクは紅葉(くれは)。これで満足かい?」

 

 名前も赤々しいのかよ、と独り言を吐き捨てた影星は、ショゼットへ視線を移す。

 

「…ショゼット=シュゼット=シェヴァンターレ。ショゼットでいいよ」

影星(かげほし)。あだ名で『キラー』って呼ばれてる」

「ショゼットと影星ね…」

 

 紅葉は、温度のない視線を巡らせると、直ぐに踵を返す。

 

「ついておいで。行く宛てがないんでしょ?…案内してあげるから着いてきて。」

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