side:ショゼット=シュゼット=シェヴァンターレ
「い…行っちゃった…」
颯爽と学園を去った影星をぼんやり見ていると、紅葉から声がかかる。
「まあ、とりあえずそうだね。羅刹、ショゼットの事を案内してあげて。雨飾、夜鴉、キミらには話があるから逃げないように」
意識的な冷たい声に、無関係の私まで若干寒くなる。
「え、僕何かしたっけ?」
だというのに、雨飾…さん?は、慣れている様だ。
「さっきの事について。っていうか雨飾、キミに関してはそろそろお灸が必要だって話も出てる」
「ふーん、誰から?」
「ボクから」
と、ここで私は気になったことが1つ。雨飾さんの心境って、何なんだろう。
言い方的に、常習犯…みたいだし。
何を考えているかは分からなくても、感覚で何となくは分かる技能─<心理学>を使って見る事にした。
結果から言えば、何も分からなかった。
紅葉さんの方に対してもやってみた。それでも、結果は同じ。
本当に、何も読めない。
…大切な『なにか』が欠けている?
…気のせい、かな。
「そういう事だから、任せたよ羅刹」
「はーい!」
あ、いけない。話を聞いていなかった。
雨飾さんも夜鴉さんもいなくなっていて、紅葉さんも校舎の出入口から声をかけてくれたらしい。
そのまま、中に入って行っちゃった。
「…………ねえショゼット、どこ行きたい?」
しばらくの沈黙の後、恐る恐る羅刹さんに問われる。どうやら、距離感を探っているらしい。
「…えっと」
一方、私は1対1のコミュニケーションはそこまで得意な方ではない。つまり、これは…
コミュ障同士の…対話…?
いけないいけない。ちゃんと答えないと。
とは言え、どこでもいいが困るのはよく知っている。
そういえば、今日は影星と新しく出来たカフェに向かう予定だったんだっけ?
「あ、えっと…綺麗で、広くて…後、パフェがメインのカフェ…?」
…そんなに都合のいいお店なんて、ないか。
「…綺麗で広いかはわかんないけど…パフェがメインのカフェならあるよ」
「…本当?」
純粋に驚いた。そんなお店があるなんて、思わなかった。
「うん。行く?」
「行く」
何も考えずに即答してしまった。まあ、考えても行かない選択肢はなかったけれど。
「分かった。それじゃあ、案内するからついてきて!」
「うん。…ありがとう」
少し…本当に、少しだけ距離が縮まった気がする。…気がするだけ。でも、何となく羅刹さんは甘い物が好きなんだろうな、と想像はついた。
だって、少し嬉しそうだから。きっと、人と出かけることもほとんどないんだろうな。
─影星と、何となく似ているような気がする。
そんな訳ないか。きっと、紅葉さんに管理されているとかそういう話なんだろうな、大魔王って。
あぁ、こんなこと考えたら失礼だった。折角案内してくれるんだもの。
「早く行かなきゃ閉まっちゃうよ?ランチタイムまでしかやってないんだから!」
こんなに楽しそうな人を置いて考えるなんて、やっちゃいけないよね。
「…早く、行こう」
なら、気づいたってもう少し。
見て見ぬ振りだって、許されるじゃない?