褪せ人になった男がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:アーロニーロ

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序盤が一番書きにくい


その日、俺は……

 

 あれから10数件ほどファミリアを巡りました。情報とか聞いてまわりながらにしては良いんじゃね?って思う程度の件数は巡りましたよ。え?結果?HAHAHAHAHAHAHAHA!

 

 なんの!!成果も!!得られませんでしたぁぁぁぁぁ!!!

 

 思わずアメリカンに笑ってしまうレベルで門前払いを喰らいまくりましたよ!!ええ!わかってましたよ!と言うか気付きましたよ!思い出しましたよ!ロキ・ファミリアの連中に門前払い食らった段階でさぁ!考えてみれば人間、いやこの場合俺を含めたヒューマン族の連中は小人族並みに能力値が劣ってることに!だからって、俺を追っ払った後に悠々とエルフを引き入れてるんじゃねぇよ!嗚呼、腹立つ!あのエルフの「ふ、雑魚が」みたいなあの目ぇ!

 

「フーッ!フーッ!――――スーッ」

 

 よし落ち着け俺、色々と屈辱的だが流石に不審者扱いされるのはごめんだ。どっこいしょと、よし取り敢えず集めた情報を纏めるぞ。

 

 まず初めにこの時代は間違いなく原作スタートから3年前以内の世界だ、断言できる。アストレアの連中が壊滅して『疾風』が暴れ回って指名手配くらったのもあるが、それ以上にジャガ丸くん売ってる露店のおばちゃんから相手の露店に最近になってタケミカヅチ(・・・・・・)と呼ばれている神が入ったと言う情報が入ったからだ。設定読んでた俺が言うんだ間違いない。……多分、きっと、バタフライエフェクトさえ起こってなければ。

 

 時系列は大雑把だが概ねわかった。だけど現状で最もやばいのはファミリアに入れないってことだ。これでは後ろ盾の確保は愚か金が稼げない。これは幾ら何でも致命的すぎる。金稼ぐだけならバイトって考えもあるけど、この世界での俺には過去や経歴は存在しない。そんな人間を雇う酔狂な人間が世の中にいますか?いや、いない、絶対に。いても確実に裏がある。

 

 次にファミリア探しなんだが、こっちに関しては言うまでもなく惨敗である。初めの四軒くらいは頭装備を外して尋ねて突っぱねられましたよ。童顔なこの顔がいけないのかなぁって思ってその後は頭装備ありで尋ねた今度は武器まで向けられました。……まさか、面接なしどころか武器まで向けられるとは思いもしませんでしたよ。一応外して会話してもないな、みたいな顔した後に消えろって言われるしよぉ。

 

「これはちょっと、いや本気で想定外だったなぁ」

 

 少しこの世界で生きることを侮っていたと同時に慢心していたかもしれない。『自分は転生者なんだ』、『多少のご都合主義はあるだろう』って。忘れてたというか考えもしなかった。自分にとってここは現実となっているんだ、なんて。

 

 まあ、それでも面接なしはどうかと思うけどね!?

 

 さてと悩んでもしゃあない。それにいつまでも同じ場所にいても仕方ないし、そろそろ移動しないとね?

 

「悪いな、おっちゃん。店の真横なのに居座っちまって」

 

「……良いけど、大丈夫なのか?坊主」

 

「へーきへーき」

 

「そうか、まあ、なんかあったら話ぐらいには乗るからな?」

 

 やだこのおじさんめっちゃ親切。この世界に来て一番心安らいだ瞬間かもしれん。と言うかそっかー、坊主かー。

 

「そんなに幼く見えるかねぇ」

 

「ん?どうした?」

 

「んにゃ、なんでも。宿に困ったら頼むわ」

 

 今年で21歳なのに坊主扱いされて軽くショックを受けつつも、話しかけてきたのを適当にあしらい、その場を後にしようと振り返った瞬間。

 

「お?」

 

「痛っ」

 

 誰かとぶつかった。……今日は人とやたらぶつかるなぁ、そんな人混みでもないはずなのに。正面からぶつかって、当たった箇所から背丈は160センチ半ばくらいかな、などと思いつつ一言謝ろうと目を向けて……絶句した。

 

「す、すみません!ぶつかってしまって!」

 

 座り込むように倒れた状態からおどおどと謝る姿には先ほどのチンピラのような恐ろしさは感じられない。しかし、問題はその見た目にあった。処女雪を思わせる白髪と透き通るような赤目、俺より小さく兎を思わせるような体躯からは愛嬌すら感じられる。「えーっと?」とこちら心配そうに伺う声からまだ声変わりしてないことも考えられる。

 

「あー、悪いな。疲れてボーッとしてたわ。すまんな、立てるか?」

 

「えっ……あっ、はい、すみません…………」

 

 少年がおずおずとその手を取ると、取り敢えず力を込めて彼を引っ張り上げる。その手は豆の跡がいくつか出来てたが、力はお世辞にも強いとは言えず、体も見た目通り軽かった。というかマジかぁ、いやもう時系列はわかったわ。

 

「なぁ、お前の名前なんていうんだ?」

 

「え?えっと……」

 

 半ば確信しつつも名前を聞いてみた。流石にぶつかった初対面の相手が名前を聞いてきたことに戸惑いを隠せないのかかなり警戒した目でこっちを見てきた。ちょっと焦りすぎと興奮しすぎたな、と反省しつつ適当に誤魔化すことにした。

 

「そんな警戒すんなって。ここで出会ったのもなんかの縁だと思ってな?名前くらいは聞いときたいと思ったのよ」

 

「そ、そうですか?えっと――――ベル・クラネルって言います」

 

 

「そっかーよろしくなぁ、ベル」

 

 適当に返事しがら真っ先に思ったのはこんな即興で考えた言い訳を秒で信じるなんて、人が良過ぎない?だった。目の前の少年の善性を知っているがここまでチョロいと心配になってくるわ。そう思いながら改めて目の前の少年を見る。うん、見間違えるはずがない主人公様だわ。そしてこの反応からすると、

 

「お前もファミリア探しかい?」

 

「お前"も"ってことは、あなたも!?」

 

「ンマー、そんなとこ」

 

 やっぱりファミリアに入る前だな。服装、というか装備もあるがなにより俺の言葉に対しての反応がその証拠だ。ていうか……

 

「?」

 

 んー、かわいい。ショタコンの気は毛頭ないがさっきまでの小動物じみた申し訳なさからの、同類を見つけた時のパァっていう擬音が聞こえそうなくらい明るさのギャップが「あのー?」ん?

 

「お名前を教えてくれませんか……?」

 

 心底どうで良いことを考えていると、ベルがとてもおずおずとこちらの名前を聞いてきた。ああ、そう言えば名乗ってなかったなと思い名前を口にしようとした瞬間、口をつぐんだ。

 

 そうだ名前、名前だ。どうしたもんか。これからの展開を無視して馬鹿正直に答えるのも良いが、一応転生者なんていう特異的な身の上である以上そう言うわけにもいかんよなぁ。悩むそぶりを見せずに何か名前のヒントになりそうなものがないか周りを見渡す。そして、店先のキャンドルに目がつき、思いつく。

 

「『マナ』、『マナ・キャンベル』だ。気軽にマナ、でいいぞ」

 

「マナさんですね!よろしくお願いします!」

 

 自身の本名の名前と姓の始めから取った名前とキャンドルを参考にした性。安直にも程があるなと内心苦笑いしつつも、笑いながら手を差し出してきたベルと握手をする。うーん、眩しい。俺が失ったであろう輝きを目の前に心の目が眩んでいると、

 

「やあ、やあ、そこの二人」

 

 声がかけられた。……おいおい今日はイベント尽くしだな。振り返れば、黒い髪を白いリボンでツインテールにしている背丈が十歳ぐらいの女の子が立っていた。服装は胸元の開いたホールネックの白いワンピースに左二の腕から胸の下を通して体を巻き付けるように青いリボンを結んでいる。

 

 見た目は小学生、よくて中学生くらいの女の子なのだが……デカい。何がとは言わんがデカい、グラドル以上にデカい。溢れるのでは?って思ってしまうレベルで。ベルとお手々繋いで仲良く固まっていると。

 

「あー、んん……。実はボクは今ファミリアの勧誘のようなことをしていてね。ちょうど冒険者の構成員が欲しいなーなんて思ってだねぇ、その、うん、えーっと……」

 

 少しずつ自信がなくなっていってるのか言葉が萎んでいきながらこちらを勧誘してきた。俺たちと同様に断られまくってるせいかやたら原作にある明るさが形を顰めている。というか、神って一眼見ただけでも神だって理解することができんのね。まあ、返答に関しては、

 

「是非とも」

 

「い、いいんですか!?」

 

 YESに決まってる。俺、というかベルもだが。

 

「え?」

 

 めちゃくちゃ意外そうに一柱の神がこっちを見てくる。……なんでそんな顔すんの?小説でしか見たことないからそんな顔されるとすごい困るんだけど。

 

「寧ろ、行き詰まってて困ってたところだ。ありがたくその手を取らせて欲しい」

 

「ぼ、僕も同じくです!というか入らせてください!」

 

 片方は後頭部を描きながら少し気恥ずかしそうに、片方は明るく心の底から喜ぶように、そう答えた。俺たちの言葉に追いつかなかったのか少し惚けたかと思うとすぐに嬉しそうに、花が咲くように笑いながら手を差し出した。

 

「僕の名はヘスティアさ!君たちの名はなんでいうんだい?」

 

 そう朗らかに聞いてきた神に、ヘスティアにベルは少し泣き出しそうになりながら、

 

「ベル……ベル・クラネルです」

 

 そう返した。俺もヘスティアの明るさに触れて軽く笑みをこぼしながら返そうとした瞬間、あることを思い出して固まった。

 

 ヤベェ、どうやって神に偽名を名乗ろう。

 

 この世界の神は全知零能であり俺たち人間の嘘程度なら問答無用で見抜けてしまうのである。ちょっと待って、これはまずい。今このタイミングでヘスティアに嘘ついて疑問を持たれたら。いや、それならまだ良い。最悪、ファミリアに入れないという可能性すらある。それは本当にやめて欲しい。将来性もだが、それ以上にヘスティア以上の人格者ならぬ神格者は知らんのだ。正直に言うのがここでは最適解なのだろう。でも、転生者という身の上から偽名を名乗らざるを得ない。故に、

 

「……マナ・キャンベル、デス」

 

 取り敢えず腹括って少しカタコトになりながら偽名を名乗って自己紹介をする。……ヘスティアの顔を見るのが怖い。どうしよう、あんな明るく笑ってたのにめちゃくちゃ訝しんでたら。今後の展開次第で土下座を視野に入れながら恐る恐る顔を挙げると、

 

「そっか、マナくんとベルくんって言うんだね!よろしく頼むぜ、二人とも!」

 

 疑う素振りを見せずに笑っていながら手を伸ばしてきた。

 

 え?マジ?こんだけ?なんの反応もなし?

 

 えぇ…あまりにも肩透かしな結果なんだけど。身構えてた俺が馬鹿みたいじゃん。まあ、もしかしたら察してくれてて、訳ありだと受け入れてくれたのかもしれないしそれだったらよしってことで。取り敢えず手を取った。

 

 この出会いを俺は幾年もの月日が経っても忘れない。原作を間近で見れるからとか、ここなら安全だからとかではなく、陳腐かつコピペみたいな言い回しをするのであればこの日、俺は確かに『運命』とやらに出会えたのだから。

 

 

 『ファミリア』に誘われ、ヘスティアにベル共々手を引かれてしばらく歩く。途中で路地裏など入り組んだ場所を通るたびにしばらく迷いそうだななんて思っている間に足が止まる。

 

「着いたぜ!ここがボクの拠点さ!」

 

 そう言って着いた先は、教会(廃墟)だった。……うん、知ってたけど思ってた以上に廃墟してるなこの教会。相手が相手ならナニする気?って聞きたくなる程度には。ベルは……口を開けてますねぇ、まあ、そりゃこんな反応もしますよね。明るい時なら趣あるなぁ、で済んだけど今くらいからなおボロく見えるわな。

 

「あははは……、いやぁ申し訳ない」

 

 言葉通り、とても申し訳なさそうにこっちを見てくるヘスティア。それに対して俺は「問題ない」と言うと、ベルも「趣ありますね」と苦笑いしていった。そんな俺たちを連れて教会内部に入る。置かれた十字架らしきモノは砕けて半端な神聖さを放っている祭壇に近づき屈むと、ガコッという音共に床板が外れた。

 

「へ?」

 

「これはまた……」

 

 むふー、という声が聞こえそうなほど自慢気に胸を張るヘスティア。知っていたがこう秘密基地じみたことをされると少し胸が躍る。そんなことを思いながらヘスティアを筆頭に俺とベルは地下室に入っていった。






今日はここまでです。このままだともっと長くなりそうだったため終わり方が中途半端になりました。中々、話が進みませんが次回はステイタス回とダンジョン回となります。
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