褪せ人になった男がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:アーロニーロ
遅れましたあけましておめでとうございます。1日遅れですが今後ともよろしくお願いします。
教会の地下、そういう言葉が出てきて何を想像する?俺はぶっちゃけて言うとジメジメした暗い所を想像する。だからヘスティアに地下に案内された時は少し辟易していた。だけど、決してそんな事は無かった。
と言うか一式家具が揃い、人が生活できるだけの環境が整えられ、上の荒れようから考えるとごく普通と言える生活感溢れる部屋になっていた。そんな地下室でロリ巨乳と上裸の大学生。側から見れば完全に事案である。
一応、弁明しておくが今からおっ始めるわけではない。言ってて悲しくなるが、現在進行形で俺の身体は清いままだ。上半身裸なのも『マナくん、上着を脱いでここにうつ伏せになってくれるかな?』って言われたからだからね?
まあ、脱いだ理由についてだが、ダンまち読者であるものなら誰でもわかると思うが眷属になるに当たっての最重要事項である
「さて、針はーっと、あった、あった……よし。それじゃファルナを授けるよ」
うつ伏せに寝た俺のお尻の辺りにヘスティアがそっと跨った。柔らかい。別の意味で興奮した。知人からとある部位の血の巡りを鈍らせるツボを教えてもらって良かった。うつ伏せの背中に水滴らしきものが落ちる。瞬間、淡くも決して眩しいとは感じないと不可思議な光が背中で弾けた。
「うおっ」
「お?びっくりしたかい?安心してくれよ〜マナくん。見た目が派手なだけだからね?」
情けなくびっくりした俺をヘスティアが軽く宥める。少し恥ずかしかったが、それ以上にこの光から感じる神々しさに少し見惚れていた。いやー、改めて思うけどヘスティアってマジもんの神様なのね。あれ?光が収まってく。ってことは。
「終わりっすか?」
「そ、終わったぜマナくん。今日から君はボクの、いやボクたちの
終わったことを悟って上半身を軽く起こし顔を後ろに向け、確認してみると、嬉しそうに笑いながらいつの間にか持っていた羊皮紙?らしきものをこちらに渡した。
するとそこには!
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マナ・キャンベル(マエザワ・直哉)
Lv1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【エクラズ・ワールト】
・詠唱式【停滞の剣よ、我が敵を貫け】
・単射魔法
【グリント・アーク】
・詠唱式【断ち切れ、輝きの斬波】
・単射型斬撃魔法
【アヴァニム】
・詠唱式【
・速射魔法
・詠唱の変化で能力が変動。
【
【
《スキル》
【】
【
・常時発動型
・ランクアップにつき魔法のスロット数の上限突破。
・取得魔法の保管が可能。
・ステイタスに刻む魔法の選択が可能。
・魔法使用時に効果、威力の超過強化。
・魔力のステイタスに対して超過強化。
【
・常時発動型
・自身の所有するあらゆる無生物を自身の空間へと自在に格納。
・食事や睡眠の必要性を大幅に軽減。
・睡眠を行う際に魔力や体力の回復効率が上昇し、食事をすればステイタスに対して好影響を引き起こす。
・気が狂わなくなる。
【
・任意発動型
・魔力を消費することで熟練度に比例した技を最適解の形で放つことができる。
・器用のステイタスに対して高補正。
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羊皮紙一面に所狭しと書かれた文字があった!
「いやー!まさか眷属第一号が魔法もスキルも三つも持ってる子だなんて!スキルも魔法のアシストがしっかりと出来てるし、バランスがとっても良い!大物になること間違いなしだよマナくん!」
「す、すごいです!初めはスキルはおろか魔法が発現することも滅多にないというのに!」
それを見たベルくんとヘスティアは大興奮!そんな2人に悪いが俺は今はそれどころじゃない。とりあえず紙切れをもう一度眺めてみるが……うん、やっぱり変化なし。
「ヘスティア」
「ん?何だい?マナくん」
「何語っすか?これ」
「何語って……
そこまで聞いて俺は顔を手で覆って天を仰いだ。そんな俺を見てベルは首を傾げて、ヘスティアは「あ」っと言って何か察したような顔をした。はい、すみませんヘスティア様。ご察しの通りです。
「マナくん、まさか」
わたくし、
「読めないのかい?共通語が」
異世界語がわからんとです。
◇
失念してた。そりゃそうだわな、世界が違えば言葉も違うよな。色々と現実離れしたことが起きすぎて忘れてたわ。形的に多分ギリシャ系の言葉だと思うけど……。まあ、仮にギリシャ語だとしてもギリギリ英語ができる程度の能力しか持たん俺では読めんけどなあ。というか、
「いや……まあ…確かに共通語が読めないって子はいるけども……うぅん、まいったなぁ」
本っっっっっっっ当にごめん、ヘスティア!いや、異世界語をこっちから前から出来るようにしとけって思うほうがよっぽど変なんだろうけども。まあそれでもヘスティアからすれば大の大人が文字読めないわ想定外だろうな。
「すまん、ヘスティア。迷惑かけるようで悪いが口頭で読んでくれないか?」
「いや、謝る必要は無いよ。田舎から出て来た子の中には文字が読めない子も居るし。これから少しずつ勉強していけば良いさ」
何この人、女神?って女神だったな。原作読んでるだけでは知ることのできないヘスティアの懐の広さに戦慄していると、ヘスティアにもう一度背を向けるよう指示される。なぜ?と思いつつも素直に背を向けるとまた淡い光が発せられたがすぐに収まり、ヘスティアの手にまた羊皮紙が握られており、羊皮紙を再度渡してきた。話聞いてた?と思いながら再度目を通すと、
「は?」
日本語がそこに書かれていた。え?なんで?なんでヘスティアが日本語を?もしかしてバレた?いくらヘスティアがチョロいとは言え神の目には全てお見通しだったりするのか?恐る恐るヘスティアの方を見る。すると胸を張っているヘスティアがいた。
「ふふん、読めるだろう?黒髪に黒っぽい目をしてたから君はもしかして極東で生まれ育ったんじゃないのかなぁって思ったんだ」
「驚いた……。ああ、これなら読めるわ」
あ、これバレてないな。て言うか極東って日本語あんのね。
「よく知ってたな極東の言葉なんて」
「おいおい忘れたのかい?マナくん。ボクは零能だが全知なんだぜ?下界の子供達の言葉なんて全部把握済みさ」
それもそうですね。流石、神様というよりもヘスティアなのな。こうも簡単にこっちに対応してくれるなんてすごいありがたい。なんで今まで眷属できなかったの?あ、それと。
「ところでヘスティアよ」
「ん?なんだい?」
「この空欄はなんなんだ?」
「……ああ、初めて神の恩恵を刻んだからミスしちゃったんだ。特に意味はないから無視していいよ」
ミスしちゃった、ねぇ。……まあ、今は自分のステイタスを見ますか。
うんうん、なるほどね。魔法に関してはエルデンリングで設定した通りなのかよくわからん。実況者は祈祷タイプのキャラだったから魔術を使うシーンなんざ見たことないし、最後のに関しても詠唱の変化で能力も変化する?って言うのがある以上、設定通りとなるかわからないな。
次はスキルだけど……なんて言うかヘスティアの言う通りバランスがいいなこのスキル構成。【万魔知覚】が魔法を強化して、【戦灰動作】で近接を強化するって感じか?内容を見るに【戦灰動作】はエルデンリングの戦技が使えるようになるのかな?まあ、だいぶ優遇されてるよなぁ、俺。え?【褪人肉体】?気が狂わなくなるって怖いね!んでだ、戦闘スタイル的に中距離でも近距離でもいけるなこれ。なんだったら両方使いこなしてオールラウンダーってのもありだ。
こっちが色々と悩んでいるとベルにもファルナが刻まれたらしい。反応を見るに原作同様、スキルや魔法は無しかな?
「ベル君。一応言っておくけどマナくんが異常なだけでそれが普通なんだ。それにまだスキルとかを持ってないってことはこれから先伸びる可能性が高いってことなんぜ?だからしょげずに頑張ってくれ!」
「神様……わかりました、がんばります!」
フォローも完璧かい。2人の会話を聞いてそんなことを考えた。ちなみに今日なのだが、遅くなってきたためこのままギルドに登録、と言うわけにいかず明日にするそうだ。来てくれたことで普通に歓迎会開いてくれるとか、泣きそう。
歓迎パーティーをしてもらった訳だが、じゃが丸くんとか言うじゃが芋を潰して形を整えて衣をつけて揚げた食べ物が豪華な食べ物だったらしい。リアルにじゃが丸食べれるのは嬉しいけどこれ30ヴァリスくらいなの知ってるからね?貨幣価値がどの程度なのか気になっていると睡眠前に絵本を貰った。しかもルビありの。文字の読み取りを出来るように渡されたのだと気づいた時は恥ずかしい以上に申し訳なさが勝ったよ。因みに寝る場所は互いに決めてソファーにベル、ベッドにヘスティア、敷物敷いた床に俺となり就寝した。
はずだった。
◇
「いや〜、参ったなぁこれ」
上体を起こして思わず俺はそう呟いてしまった。かけられた時計は12時を指している。普段はこの程度の時間まで起きるのは珍しくない。俺が真に困惑しているのは自身が普段から悩まされている眠気にあった。俺は眠気が常人よりかなり強い。昼寝と称して11時ごろに一度眠って起きたら16時なってたり、寝過ぎが理由で遅刻しかけるなんてザラだったくらいは。なのに、
「ぜっんぜん、眠くならねぇ」
一向に眠くなる気配がない。目が冴えてるっていう訳ではない。むしろ眠ろうと思えば眠ることはできると確信できる。ただ、ひたすらに眠気が来ないのだ。そしてこうなった理由に身に覚えがある。
「スキルの【褪人肉体】だよなぁ…これ」
多分というか絶対に確信できるほどには影響している。スキルの一文に睡眠の必要性の大幅軽減ってあったしなぁ。そこまで考えて起き上がると外に出た。そして虚空から剣を一振り持ち出した。剣欲しいなあって思ったら剣が出てきたことに軽く驚きながらもスキルだと割り切る。
眠れない、というか眠る必要性がないとくればやることは単純、そう、鍛錬である。俺は陸上や柔道、ボクシングなどおさわり程度とは言えある程度の武術に心得はあっても剣術は一回もない。確かに原作でのベルくんも武器の心得はなかったが、こちとら文明の利器に甘えまくった一般人。多分だが体を動かせばベル君のほうがよく動けると思う。
故に純粋に差がある以上、鍛えるのだ。寝る必要性がないのであれば最大限それを利用してやろうではないか。というわけなのだが、
武器が、重い。
こっち来てからずっと思ってたけど武器が重い。そりゃ鋭いとは言え元を辿れば鉄の塊。重くないはずがないわな。しかもこれに盾と杖でしょ?キッツイなぁ。まあ、先のことはあと考えるとして今は今のことをやってみようか。
少し細めの武器の持ち手を剣道の構えのように両手で持ち試しに振り下ろしてみる。が、
「なんか……ええ?」
これじゃない感がすごい。振ったこと一度もないけど明確になんか違う感が湧き出てくる。ま、まぁ想像以上に武器の扱いが下手くそだったのは置いといて次はスキルの仕様だな。確か、魔力を込めたら使えるんだっけ?……魔力の込め方がわからないんだけど。割と行き詰まりそうだけど大丈夫か?これ。あーでもないこーでもないと悩みながらも取り敢えずは集中してみる。
「お?なんだ?」
体にナニカを感じられた。もしかしてこれが魔力か?感じ取ったナニカを武器に巡らせる。すると、誰に言われてもないのに体が知っているかのように自然と構えをとり始める。そして、
斬ッ!
そんな効果音がしそうなほど見事な踏み込みからの切り上げを放った。一瞬、俺が放ったことだと気づかずにいたがやがて俺が放ったことに気づくと、
「ヤッバ……」
武器を握りしめる両手を見ながら思わず呆然と呟いてしまった。ヤバイ今のは完璧だった。武器のイロハはまるで知らない素人だけど今のは確信してそう言い切れるくらいに良かった。まいった、凄い楽しい。手に当てなくても胸がドキドキしてるのがわかる。
「ハハ!」
笑みが自然と溢れるながら武器を振り続ける。斬り上げてからの振り下ろし。重心を低くしてから放つ回転斬りなど調子に乗って何度も何度も放ちまくった。すると、
「ぅ、ん?」
視界が傾き始めた。踏ん張ろうにも足が酔っぱらった時みたいにおぼつかない。地面が起き上がって迫ってくる。目に映ったのはそれが最後だった。
〜30分後〜
「馬鹿なのか……俺は…」
痛む体を立ち上げて真っ先に思ったのはこれだった。うん、調子に乗りすぎたわ。魔力の放ちすぎでおこるこの現象、恐らくだが
でも、これで自分の鍛え方の方針は決まった。初めに何度か戦技を放つ。そして何回かしたら
このあと、滅茶苦茶武器を振るった。
ダンジョン回は明日になりました。
因みに主人公の装備は以下の通りです。
頭:【虜囚の鉄仮面】
胴体:【虜囚の服】
手:【裂け目の盾】
足や腰:【虜囚のズボン】、【虜囚の靴】
武器その1:【君主軍の直剣】
武器その2:【隕石の杖】