変身!!転生架空馬 チョコエクレール!! 作:よみびとしらず
果たしてその判定結果は――。
遅くなりました。第二章二節の三話になります。6000文字超えて完成できそうにないのでまずは区切りの良い所まで公開します。今回は文章が短めで物語もあまり進みませんが読んで頂けると幸いです。
「千代子っ!!千代子っっ!!」
地下馬道を歩いて検量室と呼ばれる部屋とその部屋の前の広いスペースへ向かうと、向こうから駆け寄ってきたお父さんが私に抱き着いて来た。
「よくやったっ!!本当によく頑張ったっ!!」
涙を流しながら私にしがみついてくるお父さん。
「本当にお疲れ様、よく頑張ったわね千代子……」
目に涙をうかべたおばあちゃんが私の身体を撫でてくる。
「ど、どうしたんですか、テキにオーナー。随分大袈裟ですね……それに"ちよこ"って………」
ふと疑問を口にする浦木さん直ぐに国崎さん割って入って来る。
「気にするな浦木。それよりもよくやったな!相手は府中ダート1600mの巧者リュベールだぞ」
「ハハッ、いやあっ俺もまさかリュベールさんに追い付けるとは思いませんでした。ほんと、コイツが最後頑張ってくれたおかげです。ありがとなチョコ」
浦木さんも私を撫でて来る。とても嬉しい、苦しかったけど頑張って良かったとしみじみと感じる。
「さぁ浦木、検量室行ってこい。そろそろ判定も出る頃だろう」
「はいっでは!チョコ!またなっ!!」
馬具を外してくれた浦木さんが私をポンポンと2回ほど叩いて検量室と呼ばれる部屋へ入っていく。
私は引き綱をつけた国崎さんに曳かれてグルグルと検量室の前を周る。
「千代子お嬢様、お疲れでしょうが、両脚をしっかり動かして、今しばらく歩いてください。馬の身体は脚を動かすことで血流が良くなり脚の筋肉の痛みや身体の疲れが早く取れるようになります。ゆっくりで構いません、落ち着いて、呼吸を整えて下ださい」
歩きながら国崎さんが教えてくれる。レース後にグルグルと歩かされるのにはこんな大事な意味があるなんて知らなかった。
「千代子お嬢様。どこか気になる違和感や痺れや痛む所などはございませんか?……もしあれば私の肩を軽く噛んで教えてください」
国崎さんがそう言ってくれる。歩きながら私は自分の脚に意識を向ける。少し痺れると言うか疲れて感覚が鈍くなっている気がするが多分大丈夫だろう。実際、痺れや疲れも少しずつ収まってきているし――。
私は『大丈夫ですよ』と伝えるために国崎さんの肩に頭を数度擦り付ける。
「わかりました。また何かありましたら教えてください。もうすぐ判定結果も出るでしょう」
国崎さんにそう言われて、私は歩きながら息を整えて行く。レースの結果はどうなったんだろうか?
「やったぁああああああ!!」
検量室の中から浦木さんの雄叫びが聞こえ私はビクッと震えてしまう。顔をそちらに向けるのと同時に検量室を飛び出してきた浦木さんが私に駆け寄って来る。
「やった!やったぞぉ!!チョコ!勝った。俺達勝てたんだぞ!!一着だ!!チョコエクレールが一着だっ!!」
浦木さんが私の首に抱き着きながら喜びの声を上げる。
「チョコ!チョコッ!!よく頑張った!よく頑張ったなぁ!!」
――ピンポンパンポン~♪
『東京第5レース、写真判定の結果をお知らせいたします。東京第5レース、決勝写真を参考にした結果、第1位11番、第2位16番となりました。繰り返しお知らせいたします――』
目に涙を浮かべながら「勝ったんだ。お前が勝ったんだよ」と繰り返す浦木さんと天井から聞こえてくるアナウンスを聞いて私はようやく自分が勝ったんだと実感するようになってきた。
『私、勝てたんだ……勝てたんですね………うれしいよぉっ……』
ありがとう浦木さん、ありがとうお父さん、ありがとうおばあちゃん、ありがとう国崎さん、ありがとうボス――コタロウ――。
皆の顔を思い浮かべながらヒィンヒィンと私は涙を流すのであった。
検量室から再び地上へ上がり、勝利の口取り写真を撮った。ウィナーズサークルと呼ばれる囲いの中で私を中心に横一列に並んで写真を取る。
私の口元から延びる二本の引き綱を片方をおばあちゃんが、もう片方をお父さんと国崎さんが持って、さらにその横では浦木さんが私が身に着けていたゼッケンを両手で持って笑顔を浮かべてる。わたしはどうしようか――。
「千代子お嬢様、お顔を前へ向けてください。前方に人間が居るのがお判りでしょう。彼らの持つカメラ――黒や白の筒のような物です、その中心を見つめるように視線を合わせてください。美しいお嬢様の姿を写真に収めることが出来ます」
国崎さんが私に小声で話しかけて来る。前を向けば白や黒の筒――カメラを持って構えている人間が沢山いた。心なしか前のレースの時よりも人数多い気がする。国崎さんは視線を合わすように言うけどカメラが何個もあってどれに視線を合わせれば良いのかな?
「もしかしてどのカメラに視線を合わせばよいかお悩みですか?千代子お嬢様はお優しいですね。――視線を向けるカメラでしたらどれでも構いません。正面の居るカメラマン――カメラを持つ人間の事を指す言葉ですが、そのカメラマンのうちお嬢様が視線を合わせやすい者のカメラ一つに合わせるだけで十分ですよ」
そうなんだ、いっぱいあるカメラ全部に視線を向けないといけないのかなと思っていたから少し気が楽になった。国崎さんにそう言われて私は真正面に居るカメラマンさんの中で白色で赤い線の入った短くて大きい筒の付いたカメラに視線を合わせる。するとそのカメラを持っていた人間が一瞬驚いた表情を浮かべてカメラから顔を離して私を見つめると再びカメラに顔を付けてボタンを押している。
「千代子は大人しくて我慢強い子だから口取り写真を撮るのも楽でいいわね」
「ええ、普通の馬は両サイド人間に囲まれ、さらに正面も人間に囲まれた状態で長時間ジッとは出来ませんからね。恐らく千代子お嬢様だけでしょう。これならカメラマンや見物客が増えて撮影に時間のかかる重賞――いえ、G1レースの口取りも出来るでしょう」
「ふふっそうね。千代子のG1優勝、楽しみにしてるわ」
「それは責任重大ですね。千代子お嬢様なら可能性は十分ありますから」
「期待してるわ、国崎さん」
私を挟んでおばあちゃんと国崎さんが楽し気にお話してる。少し前だと信じられない事でこんな日が来てくれるなんて本当にうれしい。他の仔は口取り写真の時は中々ジッと出来ずに暴れたりする仔も多いそうなので私はかなり珍しい方らしい。これから上のレースに勝てば口取り写真ももっと大勢で時間も長くなるらしいのでレースも写真撮影も頑張らないといけないなと私は思うのであった。
(つづく)