変身!!転生架空馬 チョコエクレール!!   作:よみびとしらず

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前回のお話から急展開してしまいました。本当はさらっと流すシーンでしたが競馬初心者のチョコちゃん向けにテキの競馬講座を書いたら非常に長くなってしまいました。

筆者も競馬のルール勉強兼ねてネットの資料読みながら書いてて「へぇーそうなんだ!」と驚きました。


第3話 「次のレースは」

 

 お父さんの手に運ばれ私の目の前に「TOURAKU」と文字が付いた可愛らしい馬のディフォルメイラストが描かれたマグカップが置かれる。お父さんが言うのは前世の私が愛用していた物で、以前人間だった頃に遊びに来た時、私が厩舎に置いて行ったそうだ。

 湯気が上る白い液体、ホットミルクを私は()()()()()()口に付ける。こくん、こくん、と喉を鳴らして飲んで行けば温かい温もりが()()に広がっていく。

 

 「美味しい……」

 

 思わずそう呟くと、テーブルを挟んで反対側に座る同じく湯気の上るマグカップを持ったお父さんが微笑む。お父さんのマグカップに入ってるのは白湯と言う温めたお水だそうだ。

 

 「そうか、それは良かった。慌てずゆっくり飲みなさい千代子」

 

 「うん……」

 

 私がホットミルクを飲んでいるのをお父さんが見つめ続ける。私が飲んだり食べたりしてる様子を見られるのはちょっと恥ずかしい。昼間の馬の時もそうだけど、今の人間――お父さんが言うにはウマ娘と言う競走馬のゲームのキャラクターだそうだ――の時だと何だかとても視線がくすぐったくて身体がとても熱くなる気がする。恥ずかしいやら嬉しいやら複雑な感情が渦巻いて変になりそうだ。

 

 私は今、変身して厩舎の事務所に居る。夕方お父さんに「大事な話があるから、今夜()()()()()()()()()()()()」と言われた。事務所に行くには変身して馬房を抜け出して行かないといけないから「事務所に来なさい」とは「人間に変身しなさい」と言うのと同義語なのだ。

 

 「ねぇ、お父さん。大事な話ってなあに?」

 

 ホットミルクを飲み干して、無言で微笑み見つめ続けるお父さんの視線に何だか気分がおかしくなりそうだったので誤魔化そうと私からお話を切り出すことにした。

 

 「ああ、大事な話と言うのは次のレースの話だ」

 

 「次の、レース??」

 

 「ああ、お前が、競走馬チョコエクレールが出るレースだ」

 

 「あっ!そうか……そうだよね……えへへ」

 

 こうして夜中にお父さんと二人っきりで過ごしていると時々私が競走馬であることを忘れてしまう事がある。私は本当に人間で、お父さん――御手洗調教師の一人娘、御手洗千代子ではないのかと――。

 でも現実は違う。偶々不思議な力で夜の間だけ人間、それも馬耳と尻尾の生えた変な女の子に変身出来るだけで、私の本性は競走馬チョコエクレールだ。

 

 「すまない千代子」

 

 突然お父さんが私に頭を下げる。

 

 「本当はお前にこんな事をさせたくは無いんだ」

 

 「お父さん……」

 

 きっとお父さんは私をレースに出すのを躊躇っているんだ。

 お父さんにとって私は人間の一人娘、御手洗千代子だ。そんな娘に人間を乗せ、鞭で叩き綱で顔をひっぱりながら2000mも走らせるなんて拷問を受けさせてるように感じるのだろう。

 競馬レースは事故が多い。レース中の事故で命を落とす馬や騎手さんも大勢いるとボスから聞いたことがある。大きくて重たい頑丈そうに見えて脆いカラス細工のような馬体を持つ私達は躓いたり転んだりしただけでも簡単に骨が折れ命を落としてしまう。

 でも私は――。

 

 「お父さん、ありがとう。でも心配しないで」

 

 「千代子……」

 

 「私は競走馬チョコエクレール。お父さんの――御手洗調教師の管理馬。私の使命は一つでも多くのレースに出て優勝する事。優勝できなければせめて一つでも上の順位に入り、少しでも多くの賞金も持って帰る事」

 

 私達は競走馬として生まれたからには人間を乗せレースを走らなければならない。それが課せられた自分の命よりも大事な使命だ――。

 以前、ボスが言っていた。私達が勝たないとお父さん達が生きていけない事。私達がレースを走り、優勝賞金を持って帰らないと厩舎は運営と生活が成り立たないと。私達が勝たないと――、走らないと――、御手洗厩舎は消えてしまう。

 私は顔を向ける、事務所の壁の向こう、もぬけの殻になったお隣の厩舎を。私の厩舎を、お父さんを、国崎さんをあんな目には合わせてはいけない。いけないんだ。

 

 「私、お父さんのために走りたい。お父さんを勝たせてあげたい。だからお願い、私をレースに出させて!」

 

 身体を乗り出しお父さんの手を握りお父さんの顔を間近から見つめる。

 正直、レースを走るのはしんどいし辞めたいなと思った事が過去に何度もある。でも変身してお父さんと出会って打ち解けてからは違う。私はこの人のために走りたい!この人の為ならきっとどんな過酷なレースだって走れる。そんな熱い想いが身体の底から湧き上がってくるのだ。

 

 「千代子……ありがとう、ありがとう」

 

 目に涙を浮かべならお父さんが私の手を握り返してきてくれる。お父さんの手がとても心地よい。

 

 「あの……お父さん、それでレースの話って……」

 

 「あ、ああああ、すまなかった。そうだレースの話だったな」

 

 お父さんと手を取り合い見つめ合っていたらいつまでも先に進まないので私は声を掛けてそっと手を放す。お父さんの手の感触が消えて行くのがとても名残惜しい。

 

 お父さんがテーブルに何やら書類を何枚か並べて行く。書類にはレースの名前、日時と場所と距離、スタート地点とゴール地点が掛かれた競馬場のコースの図が書いてあった。

 

 「千代子、次のお前のレースだがどれが良い?今のお前が出走出来るレースの候補を何種類か用意したんだ」

 

 「うーん……」

 

 いきなりレースの書類を見せられても悩んでしまう。

 

 「悩むか?」

 

 「うん……」

 

 「普段なら管理馬の次のレース予定は前走結果や調教記録を元にオーナーと決めるのだが……折角こうやってお前と話が出来るんだ。お前の希望や要望が聞きたい」

 

 どれにしようかなと悩んでいて、ふとお父さんの「オーナー」と言う単語に反応してしまう。そうだ、お父さんに聞きたいことがあったんだ。

 

 「ねぇ、お父さん……今日来てた私達のオーナーさん」

 

 「湯原オーナーの事か?」

 

 「うん……」

 

 「何か気になる事があるのか?」

 

 「うん……、あの、お父さん。湯原オーナーって私に何か関係ある人なの?」

 

 「ち、千代子……」

 

 「オーナーが帰る時に私、目が合ったの。そうしたらドグンッて衝動が来たの。あの夜、お父さんと打ち解け合った時みたいに――」

 

 そう言ってふとお父さんの顔を見る。お父さんの顔は悲しみに染まっていた。

 

 「お、お父さん……?」

 

 「千代子……本当に何も憶えていないのか?」

 

 「う、うん……」

 

 「あの人……湯原オーナーはな、お前のおばあさんなんだ」

 

 「えっ?わ、私の……おばあ……ちゃん……???」

 

 「そうだ。お前の母親の母親に当たる人なんだ。お前は生まれて直ぐ母さんを亡くした後、あの人に――、湯原和子オーナーに引き取られて、ずっと一緒に暮らしていたんだ。あの人はお前にとって俺以外のもう一人の肉親で家族だった人なんだ」

 

 「そう……だった……んだ……」

 

 全然知らなかった。人間時代の記憶はまだまだ思い出してない事が多いんだなと感じた。

 

 「憶えてないのは仕方がない。お前がそれを気に病む事は無いだよ」……出来れば思い出さずに、ずっと俺のそばにいて欲しい

 

 「うん……」

 

 お父さんが最後何かつぶやいた気がするけど、何故かよく聞こえなかったから多分気のせいだろう。

 私は頭をかぶり振って雑念を追い出すと目の前のレースの書類に目を落とす。

 

 「話逸らしちゃってごめんねお父さん。それで次のレースの話なんだけど……」

 

 「ああ、そうだったな。千代子、次のレースだが、芝とダート、コースはどちらが良い?」

 

 「うーんどっちが良いのかなぁ……?」

 

 「芝はスピードが出やすく加速しやすいが脚に負担がかかる。それから人気があるから出走馬も多くてなかなか枠が取れない。出走する馬のレベルも高くて手強い事が多いな。ダートは加速に少し力が居るが脚にかかる負担は少なくて走りやすい。芝に比べて人気が低く出走枠も取りやすくて強豪メンバーも少ないが砂や土が飛んで来るから汚れやすい。中団より後ろだと前のゆく馬達が巻き上げる砂煙で視界が奪われることがある。沢山砂を被ることになり馬によっては嫌がる仔も居る」

 

 「むむぅ~」

 

 「ちなみに雨などで馬場が濡れて重馬場になれば逆になる。芝が走りにくなり、ダートは走りやすくなる。まぁ泥んこになってしまうがな」

 

 「天気によっても変わるんだ……」

 

 「そうだ。さすがに天気や馬場状態はレース当日やそれこそ発走直前までわからない。これだけはどうにもならないんだ」

 

 「難しいよぉ~」

 

 私は頭を抱える。芝とダート、どちらが良いのか、天気や地面の様子まで考えないといけないなんて……。

 

 「ハハッ、そう悩むな。そうだな、お前は賢いから芝とダートどちらも走れるだろう。これは好みの問題だからな」

 

 「そうなの…?」

 

 「そう言うもんだ。芝とダートの事はまずは横に置いて、大事なのは距離だな。これは適性があって、その馬に合った距離を選ばなければならない」

 

 「レースの距離?」

 

 「レースは走る距離の違いによって5種類に分けられる。1400m以下の短距離、1800m以下のマイル、2200m以下の中距離、2800m以下の中長距離、2800mを超える長距離とこの五つだ。この中からどの距離を選ぶか、これが一番大事なんだ」

 

 「レースには長さが違うの物があるんだね」

 

 「芝とダートは好みの問題で脚部に不安を持っていたり、よほど繊細で神経質な馬でもない限り調教次第でどうにでもなるが、距離適性はその馬によって最適な物があって基本変える事は難しい。合わない距離適性は勝てないどころか怪我や事故を招いてしまう」

 

 「そ、そうなんだ……」

 

 レースの距離なんて考えたことが無かった。自分に合わない距離を走れば危険な目に遭うなんて……。

 

 「まぁそんなに深刻に考えるな。これは俺が見極める。管理馬の距離適性を見つけるのが調教師の本分だ。そうだな…………今までの調教時の様子や出走したレースの結果を見てみるとお前は1600mから2400mくらいが合う感じがする。この間のお前が勝ったレースは1800mだ。走ってみてどうだった?思い出して見なさい」

 

 「うーん………」

 

 前のレース、私が勝った未勝利戦の時を思い出してみる。だけどあの頃は今と違ってまだ人間の言葉も世界も知らなくて、ただただ走るのに必死だったので1800mの距離がどうだったか記憶が曖昧である。

 

 「そう言えばお前は以前夜中にブルドッグとコタロウを厩舎から連れ出して調教馬場で走ってたそうだな?」

 

 「あぅ……ご、ごめんなさい」

 

 「ああ、責めているわけではない。確かにあれはやってはいけない事だがもう過ぎた事だ、この際忘れよう。それよりも二頭と走ってみてどうだった?コタロウは距離適性1200m以下の芝短距離型、ブルドッグは適正距離1600mのダートマイル型だ。二頭それぞれに乗ってみたんだろう?イメージが出来るんじゃないか?」

 

 「うーん……」

 

 確かにボスとコタロウの背に乗って深夜の調教馬場を駆け抜けた時、走り方に違いがあった気はする。でもあれはマイペースで伸び伸び走っていたのでレースとはまた違う気がするかもしれない。

 

 「まぁ、もしお前が違う距離を走ってみたいと言うなら試してみるのも悪くは無いな」

 

 「えっ!?でも合わない距離は事故や怪我をするって……」

 

 「それは本番のレースでの話だ。調教で使う馬場にコースがいくつかあるだろう?そこで本番と同じ距離を試しに走ってみるんだ。もし合わなければ直ぐに止めればいい、調教時ならそれが出来る。それにお前はこうやって人の姿を取り自分の気持ちと意思を言葉として正確に俺達に伝えてくれる。馬の時も喋れないだけで俺達の話す言葉や文字は理解できてるそうじゃないか。ならこれほどありがたいことは無い。大丈夫だ」

 

 お父さんがそう言ってくれる。私の変身能力がこんな良い影響があるなんて気が付かなかった。

 

 「お前が良ければ夜にこうやって調教の反省会やミーティングの機会を設けよう。必要なら国崎も同席させる。コタロウやブルドッグを連れて来てくれても構わない」

 

まぁその時はここじゃなくて厩舎になるけどな。そうお父さんが笑いながら付け加えていた。

 

 「あれ……?」

 

 「うん?どうした?」

 

 「うん、お父さんが出してくれた次のレースの候補、開催地がみんな東京競馬場なんだね」

 

 テーブルに並べられたレースの資料。よく見ると全部開催地が『東京』となっていた。

 

 「そうだ。今のこの時期は競馬が開催されているのが東京競馬場と阪神競馬場の二つだ。だか阪神はここから距離がある。移動には時間もかかるし競走馬には長距離輸送はかなりのストレスになり体調不良の原因になる。だから敢えて候補からは外したんだ」

 

 「そうなんだ……」

 

 確かにあの馬運車にずっと乗ってるのは退屈だし少し苦しいなと感じる事もあったような気がする。

 

 「それと東京競馬場にこだわるにはもうひとつ、お前の馬体に流れる血だ」

 

 「私の血……?」

 

 「競馬は別名ブラッドスポーツとも呼ばれてな、競走馬はその馬の両親の性格や能力を受け継ぐ事が多いんだ。父が誰か、母が誰か、さらにその上に居るそれぞれの親は誰か、それでその馬の能力や特色、時には馬の価値すらも決まってしまうんだ」

 

 「血で決まる……?私が……お父さんとお母さんの力を受け継ぐ……?」

 

 私がふとお父さんの方を見つめると、お父さんは一瞬きょとんとした後に、慌てたように両手を振り訂正のジェスチャーをする。

 

 「あ、いや、父母といっても俺や千代の事じゃない。もう一つのお前、競走馬チョコエクレールの馬の両親の事だ」

 

 「私の馬の両親……」

 

 そういえば今生の両親、馬の私を産んでくれた父馬と母馬の顔を私は知らない。コタロウの言う通りおばあちゃんにメチャクチャにされて連れ去られたからだろうか……?

 

 「お前には二つの大きな血が流れている。トニービンとステイゴールドだ。お前の走りを見てると競走能力はトニービン血統の特色が強く出てると見える」

 

 「トニービンさんの特色……」

 

 「トニービン血統の馬は差しや追い込み型が多く突出したスピード無い代わりに後方から確実に伸び続けるロングスパートを得意としている。だからコース全体が大きくゴール前の直線が長い東京競馬場や新潟競馬場との相性が良いんだ。特に東京競馬場では圧倒的ともいえる成績を残していてトニービンの血と能力を受け継ぎ東京競馬場で活躍する馬は"府中巧者"と呼び讃えれることもある」

 

 「そうなんだ……」

 

 「その反面、コーナーワークやいざと言う時の瞬時の加速などは不得意でそれが必要とされる小回りで直線が短いコース、例えば中山競馬場や福島競馬場とかは苦手とされてるんだ」

 

 そう言えば少しきついカーブを曲がるとき、凄く苦しくて恐怖感が感じる事がある。一度レース中にコーナーを曲がっていて後ろ脚が滑ってしまい、痛みと恐怖で力が出なくなり最下位でゴールしたのはいつだっただろうか……。

 

 「千代子、これを見てくれ。この紙に書かれているのはお前がデビューしてからのレース結果の一覧だ。ここが順位、ここが開催場所」

 

 お父さんが書類を1枚取り出して私の目の前に置く。その紙には私のデビューしてから出走した全部のレースの内容が表にして書いてあって、そしてその表の一部分に色のついたペンで丸を書いて行く。それを見ていてある事に気づく。

 

 「私……中山競馬場が駄目なの……?」

 

 表の開催場所が『中山』と書いてるレースの順位は他のレース場に比べて散々たるものだった。14着、16着、18着……。

 

 「一度、阪神へ遠征した時に輸送が原因でお前が熱を出したことがあってな。一時期は美浦から移動距離の短い中山を中心に使っていたことがあったんだ。あの頃はお前の馬体の毛色や造りからステイゴールドの血の方が強く出ていると見誤っていたんだ。すまなかった」

 

 お父さんが頭を下げる。私が「お父さんは悪くないよ」と声をかけるとお父さんは「千代子は優しいな」とほほ笑んでくれていた。

 

 「じゃあ、私は東京競馬場と新潟競馬場だけしか走れないの?」

 

 「そういうわけでは無いんだ。あくまで得意不得意の話だ。これは調教とレース戦略である程度はカバーできる。これは調教師の俺と騎手の浦木の仕事だ。だが折角の地と血の利があるんだ。利用しないわけにはいかない。ご先祖様から授かった力はどんどん利用して行こう」

 

 「うん!」

 

 お父さんと話してると勉強になるなぁ、そう私が考えているとふとお父さんの視線がチラチラと私の身体のある一部分に向けられている事に気づいた。

 

 「ねぇ、お父さん。()()()()()()()()()()()()()()

 

 「!?あっああああああ、そのいや、違う、違うんだっ、ちよっ、うわぁっ!?」

 

 私がふと気になった疑問を呟くと、お父さんの顔が一瞬で真っ赤赤になって、慌てふためいたお父さんは盛大に後ろへとずっこけたのである。

 

 「お、お父さん!?だ、大丈夫っ!?」

 

 慌ててお父さんのそばに駆け寄り、お父さんの身体を抱き起す。

 

 「あ、あああああ。大丈夫、大丈夫だから」

 

 顔が真っ赤になったまま視線を逸らすお父さん。どうしたんだろうか?

 何とか立ち上がったお父さんはソファに座り直すとコホンッと咳払いをする。

 

 「あー、そのなんだ……千代子、お前は服はそれしかないのか?」

 

 「えっ?私の服?」

 

 「そうだ、今着ている服だ」

 

 お父さんに言われて、私は自分の着ている服を見る。この服は私が人間の姿へ変身すると自動的に身に着けられる服で、煌びやかなドレス風の衣装だ。

 

 「この服しかないけど……ダメ……なの?」

 

 「いや駄目じゃないんだがな……まぁ色々目に毒、いや刺激が強くてな………

 

 お父さんが何かゴニョニョと呟いてるけど何だろう。

 

 「私はこの服でも構わないけど……お父さんが気になるのなら他の服……厩舎の作業服くらいかな。着てるの」

 

 厩舎から抜け出すとき、ウマ耳と尻尾が見えるのはマズイとボスから忠告されて以来、厩舎から外へ出る時は作業着を着ているのだけど、サイズが合わないのとウマ耳と尻尾を帽子とズボンの中へ隠すのがとても窮屈に感じるのであまり着たくないのが本音である。

 誰にも見られない真夜中の厩舎内ではこの姿で居たいのだけど……。

 

 「厩舎の作業着か……。あれはお前だとサイズが合わないから動きにくいだろう。かと言って尻尾と耳が見えるのも不味いしな。もう少し違う服があれば着てみるのはどうだ?」

 

 お父さんにも馬耳と尻尾の事を指摘される。そう言えばお父さん、私の肩と脚の付け根から太もも辺りをチラチラ見てたような気がしたけど、ただの私の勘違いでウマ耳と尻尾を見てたんだなと変に納得してしまう。

 

 「違う服って……どこにあるの?」

 

 「ここには無いな。外の店に行けばあるのだろうがお前を昼間に連れ出すわけにいかないし、俺は女物の服には詳しくないからなぁ……」

 

 困ったなと悩み顔を浮かべていたお父さんだったけど、ふと何かを思いついたような表情を浮かべる。

 

 「千代子、お前のその姿、何時くらいまでしていられるんだ?」

 

 「この姿?うーん、いつもお父さんや国崎さんが来る頃位までかなぁ……変身が自動で解けるのもそのくらいの時間だし……」

 

 「大体午前4時くらいまでか……今は22時30分……なら5時間半か……ギリギリ行けるか?」

 

 「お父さん?」

 

 何かを決意したのかお父さんが私を真剣に見つけて答える。

 

 「千代子。お前が良ければこれから車で遠出をしてみないか?」

 

 「遠出……?」

 

 「ああ、そうだ。お前が人間だった頃住んでいた家、湯原オーナーの家へ行くんだ。もしかしたら人間だった頃のお前が着ていた服が残っているかもしれん。それに……」

 

 「それに……?」

 

 「お前が住んでいた家へ行けば何か思い出すかもしれない。お前が人間だった頃の記憶を――」

 

 「――!!」

 

 

(つづく)

 

 




・お話冒頭でチョコちゃんが持っていたマグカップの元ネタ。
 https://suzuri.jp/getuyoubi5
 ナト先生の描くUMAシリーズとても好きです。

・チョコエクレールちゃんの血統
 作中でチョコエクレール号はトニービンとステイゴールドの血を引くと言いますがどちらか父系母系かは決めかねている状態です。これは作者が競走馬の血統関係の知識がまだ少なく上手くイメージが出来てないのが原因です。夢日記の元になった架空馬夢の中でもその辺りはぼんやりとしていて「トニービンとステゴの血を引いている」としか表現なされてませんでした。当初はチョコちゃんの生まれた年代(2018年生まれ)的に「父ステゴ・母父トニービン」と考えていたのですが、夢日記版を公開後読者さんから「逆で父トニービン、母父ステゴなのでは?」指摘を受けました。
どうやら父系は競走能力、母系は馬体の造りにでるらしく、競走馬チョコエクレールさんの特徴は「馬体はステイゴールドにそっくり、走るスタイルはトニービンそっくり」なので確かにそちらがあってるなと思いました。ちなみに年代的にさすがに直産駒ではなくて孫やひ孫世代になります。
 血統ネタは苦手なので何か参考ネタある方は感想欄若しくは活動報告にて教えて頂けると助かります。


・「ねぇ、お父さん。さっきからどこを見ているの?」
 ①まずはウマ娘公式のナリタトップロードさんの勝負服を全身しっかりと目と脳に焼き付けましょう。
 ②チョコエクレールちゃんの勝負服は色と模様が違うだけでトプロさんと同じデザインです。
 ③テキは実は千代子(チョコエクレール)ちゃんを一人の女性として見てます。恋愛対象として、さらに無意識下では性の対象としてすら見てます。
 ④テキが見ていたのは千代子(チョコエクレール)ちゃんの肩と両足の付け根から太もも辺りです。これを踏まえてもう一度トプロさんの勝負服を見ましょう思い出しましょう。
 ⑤えちちコンロ点火! エチチチチチチチ\勃/!!
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