変身!!転生架空馬 チョコエクレール!!   作:よみびとしらず

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 チョコちゃんとテキが東京の湯原オーナーの自宅目指して深夜ドライブするお話です。
次のお話が非常に長く、区切るタイミングがなかったため、この話は短めです。
 お話がブツ切りになって申し訳ないです。

 テキが通ったルートはgoogleマップで出発地「美浦トレセン」・到着地「東京都大田区田園調布」で検索して出たルートを元にYoutubeの車載動画を見ながら書きました。

 美浦トレセンの輸送担当している日本馬匹輸送自動車様のPR動画を見てると早い段階から高速へ入っているので恐らく馬運車もこのルートを通っているんだろうなと妄想してました。


第4話 「父と娘の深夜ドライブ」

 ボスとコタロウに出かけてくる旨を伝えて私は厩舎の外でお父さんを待つ。

 後ろでは私を心配するコタロウの嘶きが厩舎から漏れて聞こえて来ていた。

 

 暫くすると一台の黒い自動車が静かな音で入ってきた。ドアが開き中からお父さんが出て来る。

 

 「千代子待たせたな。時間が無い、早速乗ってくれ」

 

 「うん!」

 

 私はそう言うと車の後の大きなドアを開けて乗ろうとして――。

 

 「こらこら、馬運車じゃないんだからそこは乗るところじゃないぞ。乗るのはこっちからだ」

 

 お父さんが困り笑顔を浮かべて手招きしている。

 

 「あぅぅっ……」

 

 私は恥ずかしくなって後ろのドアを閉めると、お父さんの立っている位置とは車を挟んで反対側のドアに回る。ドアを開ければ変わった形のソファーのような椅子があり、それに座る。乗るときに「天井が低いから乗るとき頭をぶつけないよう気を付けろ」とお父さんが言うのと私が自動車の天井に盛大に頭をぶつけるのが同時と言うハプニングも添えて。

 椅子に座るとお父さんの見よう見まねでシートベルトと言う物を身体に付ける。私達競走馬が馬運車に乗るときは顔の頭絡を両側から綱で接続して固定するのだけど人間は身体の胴体部分と椅子を幅の広いベルトで密着させるそうだ。同じ車の乗り方でも馬と人間ではこんなに違うんだなと私は驚いていた。

 

 お父さんの運転する車がゆっくりと走り出す。トレセンの出入り口のゲートで職員の人間と一言二言言葉を交わすとゲートが開き、私達はトレセンの外へと出た。

 暫く街の中を走った後、トレセンのゲートと少し似た感じのゲートを潜り大きな道へと入る。お父さんが「ケンオウドウ」と呼ぶ、真っすぐで真っ暗な時々オレンジ色の照明がある不思議な道だ。

 

 「千代子、圏央道に入ったから帽子を脱いでも構わないぞ。耳、窮屈だろう」

 

 「えっ、良いの?」

 

 「ああ、ここならお前の馬耳に気づく奴も居ないし、車の窓から頭を出したりしない限り見える事も無いからな」

 

 「じゃあ……」

 

 お父さんに言われて私は帽子を脱ぐ。ぴょこんとウマ耳が跳ねて、頭と耳を覆っていた窮屈感が消えてとても楽になる。

 

 「うわあ……風の音がすごい。それに景色が凄く速く流れている!」

 

 耳を覆っていた窮屈感が消えて周りの音がはっきりと聞こえてくる。聞いたことが無い様な強い風切り音と暗くて気づきにくかったが景色がものすごい速さに前から後ろへと流れて行く。

 

 「この道は普段、美浦から東京競馬場へ行くときに使う道なんだ。千代子たちは普段馬運車だから分からなかっただろう」

 

 「うん、こんな景色があるなんて知らかった!」

 

 お父さんが言うには競走馬は自分の意志や力以外で動く景色や高速で流れる景色が苦手で、時にはパニック状態になるので、それを防ぐために普段は外の景色は見れない様になっているそうだ。馬運車の私達が乗る部分にも窓がついてるが基本換気用で小さく、私達の視点からは外の景色が見えない様になっている。

 

 「まだ驚くのは早いぞ」

 

 「へ?」

 

 お父さんが楽しそうに私に語り掛ける。まだ何かあるのだろうか。

 

 

 


 

 

 

 「うわっ!!うわあっ!!お父さん!!おとーさん!!!」

 

 「はははっ、はしゃぎ過ぎだぞ千代子」

 

 「お父さん!!お父さん!!だって!だって!!外の景色が!!外の景色が!!!」

 

 楽しそうに笑うお父さん、私はそれどころでは無かった。

 目の前には見た事もない眩しい世界が広がっていたからだ。

 "ケンオウドウ"から"ジョウバンドウ"、さらに"シュトコウロクゴウセン"と言う道に入ると世界が激変した。

 小さな光が規則正しく無数に並ぶ巨大な柱のような建物が何本も現れ、視線を下げれば緑がみえないくらいの家が立ち並ぶ光景。

 真っ暗だった道路もオレンジの照明が規則正しく一定間隔で並び、前から後ろへと流れて行く。

 右から左から上から下から蛇のような形の道路が現れ合流し再び離れて行く、その他所の道から吐き出されるように現れる沢山の色んな大きさや形や色をした自動車が私達の乗る自動車の周りに並び、時には追い抜き、時には追い越していく。

 色とりどりの無数の光が溢れ、まるで地面に星空が広がってるようだ。

 見た事無い景色が目まぐるしく現れ流れて行く光景に私は興奮気味に窓に張り付き外を眺めた。何か見えるたびに運転しているお父さんに「あれは何?これは何?」と質問を畳みかけてお父さんがそれを教えてくれる。

 

 「こんな!こんな世界があったなんて!これがお父さんたち人間が住んでる世界なの!」

 

 「そうだ。東京と言ってな、この国で一番人間が多く住む街なんだ」

 

 「すごい!すごい!すごくすごい!!」

 

 もう"すごい"しか言葉が出なかった。数えきれない無数の光。きっとこの中にこれから向かうおばあちゃんの家もあるのかなと思うとドキドキが止まらないのであった。

 

 "シュトコウソク"と呼ぶ道を降りて私達の車は東京の街の中を走る。

 東京の街はとても眩しくて賑やかで横を見ても上も見上げても人間達の住む大きな建物しか見えない。

 信号機もいっぱいあって。もうずいぶん真夜中の時間帯なのに人も車もいっぱい居て賑やかだった。

 時折通行人や隣を走る車に乗っている人間達が私を不思議そうな目で見るのでウマ耳がばれてるのかなと帽子を深く被り直してみたりするけど、ウマ耳が見えてるのではなくて私が興奮気味にはしゃいている姿が外から丸見えで目立っているのだそうだ。

 

 「千代子、はしゃぎたい気持ちは分かるが少し落ち着きなさい」

 

 「う、うん……」

 

 なんだか急に恥ずかしくなって、私はシートと呼ばれる車の座席で大人しくしていた。そうすれば他の人間達の視線は直ぐに消えたのであった。

 

 

(つづく)

 

 




次回、湯原オーナー自宅訪問の巻、かなり文書量増えます。申し訳ありません。


・テキの黒い自動車
 2019年式TOYOTA プリウス(ZVW55) A プレミアム ツーリングセレクション E-Fourです。チョコちゃんを預ける時に自動車を持っていなかったテキに湯原オーナーが買い与えた車です。ハイブリットカーで燃費も良く、低速時はモーターで走るので自動車の音に敏感な競走馬の居るトレセン内も静かに移動できる優れものです。

・乗る場所を間違えるチョコちゃん

 自分達競走馬が乗る自動車=馬運車なので自動車に乗るのには真後ろのドアを開けて入ると言う先入観があるせいか、違和感を感じつつも真後ろのハッチドアを開けて乗ろうとするチョコちゃん。ちなみに馬運車に似てるトラックやワンボックスやミニバンだとほぼ100%間違えて荷室ドアから入ろうとします。むしろここのドア以外から入ろうとすると違和感を覚えるくらいらしいです。
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