変身!!転生架空馬 チョコエクレール!!   作:よみびとしらず

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チョコエクレールちゃん、府中に降り立つ!!


チョコエクレールちゃんがジャパンカップで盛り上がる国際G1デーの東京競馬場で条件戦(1勝クラス)を走るお話です。12,000文字書いても終わる気配が無いため分割して先行公開します。

装鞍所でのやり取りが見つからなかったため空想で書いてます。実際の装鞍所でのやり取りと違う可能性がありますのでご了承ください。


第二章 第二節 「国際G1デー下の条件戦」
第1話 「朝、東京競馬場にて」


 

 競馬場の出張馬房から連れ出され、競馬場の敷地内を私は歩く。

 すっかり季節は冬になり冷たく透き通った空気が馬体を撫で、息を吸えば肺を震わせる。

 ブルッ、ブルルッ、と鼻から噴き出す息は薄く白く染まってて、左を歩く国崎さんの頭に掛かってる。くすぐったくは無いんだろうか。

 

 装鞍所と呼ばれる馬具を装着する場所へと入ると空気が一気に変わる。

 ここにはレース出走前の競走馬達が集められて馬具を装着して待機する場所。

 私達以外には調教師さんと騎手さんと厩務員さんしか入れなくてJRAの職員さん達が不正が無いか厳しくチェックするとても厳正な場所である。

 

 「次、チョコエクレール号、前へ」

 

 「はい」『はい』

 

 JRAの職員さんに呼ばれて前へ進む。体重計に乗って今日の自分の重さを見られる。小さな箱に表示された数字を見て私は進む。

 その後は職員さんに囲まれて体の隅々まで見られる。この瞬間はとても緊張する、昔は知らない人間が近づき触れて来るから、今はお父さん以外の男の人が私の身体に触れるから――。 

 似てるようで違う嫌悪感の混じった緊張に馬体を強張らせていると検査に立ち会いしていたお父さんがそっと寄って来て撫でてくれる。その優しい手の感触が強張る私の心と身体を解きほぐしてくれるのであった。

 

 「お待たせしました!」

 

 「おお、悪いな浦木」

 

 「いえいえ。では自分は戻りますんで。――チョコ、後でな!」

 

 『はいっ!』

 

 鞍や馬具一式を抱きかかえて浦木さんがやって来てお父さんに渡すと、私の鼻筋を優しく数度撫でて、再び駈け出していった。浦木さんは私達以外にも色んな厩舎の馬に乗っているのでそちらの準備の方へ向かうのだろうか。忙しそうだ。

 

 

 JRAの職員さんに見つめられる中、お父さんと国崎さんが手際よく馬具を着けて行く。私の馬体に馬具が載せられ、閉められる度に否応なしに気持ちが高ぶっていく。期待と不安が入り混じった複雑な感情が言い表せない塊となって私の中で渦巻いていく。

 

 「よし。出来た。……うん?震えてるのか?大丈夫……大丈夫だ……千代子」

 

 お父さんが優しく声を掛けてくれる。馬具装着後、JRAの職員さん達が馬具のチェックももう一度しっかり見た後、私は国崎さんに連れられ、装鞍所の真ん中で輪乗りしてる仲間達の輪へ加わる。やがて職員さんの指示て一列の隊列となってパドックへと向かって行くのであった。

 

 

 


 

 

 『うわっ!す、すごい人……』

 

 

 誘導馬さんに先導されて、地下馬道から地上へ上がると見た事もない位大勢の人間達が居た。

 

 パシャシャシャシャシャシャ――、カシャシャシャシャシャシャ――、カタチャチャチャチャチャチャ――。

 パシャッ!カシャッ!ピンピロリンッ――。

 

 煩いぐらいに色々な方向から無数に聞こえてくる音。人間達が私達の姿を納めるカメラと言う機械の音らしい。見れば大きくて多くの白や黒の筒のような物、小さく短い筒の付いた物を。あとは浦木さんが持っているスマホと同じような物や人間の顔位ある大きなスマホのような物も向けている人も大勢居た。スマホって私達の姿を納める事が出来るのだろうか?

 

 「…………」

 

 五月蠅いわけじゃないけどそれでも多くの人達の息遣いや視線が熱気や圧力となって私を包み込んでいく。

 どうして今日はこんなに人間達が居るんだろうか?人間が一番多く住む東京の競馬場だから?

 いや、ここには以前ここには来たことがある。パドックを見て思い出した。でも、以前に東京競馬場へ来たときはこんなに人なんて居なかったのに……。何があるのだろうか?なんだか大勢の人間の視線を浴びて馬体が火照って来て落ち着かない。

 

 

 「千代子お嬢様、いけません。前を向いてしっかり歩いてください」

 

 私の横に付いて歩いてくれる国崎さんが引き綱を引っ張って私に小声で注意を促す。いつの間にか首を高く上げて周囲をキョロキョロとしていたみたいで引っ張られた拍子に首が下がる。

 そうだ、パドックは人間達が私達を見て評価する場所だ。私達の姿や歩き方を見てどの馬にどのくらいお金を賭けようか決める場所。みんなが賭けたい、応援したいと思う馬には人気が集まり、確か順位があったはず――。そしてその順位が名前ととにパドックの何処かに見える場所があるってボスが言っていた気がする。

 

 ふと見ると、私の歩く方向の先右側に何か大きな物がある事に気づいた。よく見ると黒い部分に文字と数字のような物が映し出されているみたいで、きっと以前の私なら気にせず素通りしていただろう。でも、今は違う。今の人間の言葉と文字が理解できる私にはわかる。

 

 『もしかしてこれが"デンコウケイジバン"?』

 

 ボスが言っていたパドックにある私達の人気順位やレースの事について色々書かれているモノだ。これを見れば私の順位が判るのだろうか?私は自分の馬名を探そうと首を伸ばして――。

 

 「千代子お嬢様――」

 

 国崎さんの少し強い圧言葉が掛かり、慌てて私は首を下げ前を向く。いけない、いけない……。

 

 「…………もしかして、ご自身の人気順位が気になるのですか?」

 

 私が慌てて前を向き直して歩き始めると国崎さんが前を向いたまま私に尋ねて来る。どうして気づいたんだろうか?

 

 「ヒィン」

 

 私が小さく啼くと、国崎さんはチラリと横目で私の方――正確には私の向こう側にある電光掲示板を見たのだろう、すぐに視線を戻し少し躊躇うような感じで間を置き答える。

 

 「千代子お嬢様は、……現在、16頭中12番人気です」

 

 12番目の人気なのか……、みんなの中で真ん中より少し下くらいなのかな?もう少し低い評価だと思っていたから、この評価は高く評価してもらってるんだろうか?周りの仔達、何だかとても強そうな感じがするし……。

 

 「……もしかしてご不満でしょうか?」

 

 私が考え込んでいると、国崎さんが横目で私の顔を伺ってくる。考え込んでいる私が評価に不満があるように見えたのだろうか?

 

 「……ご心配はいりません。この評価はあくまで人間達が勝手に決めつけている事。人気の結果はすべて人間側の事で千代子お嬢様ご自身には関係が無く一切気にする必要はありません。評価がレースの結果に結びつくとは限らず、賞金の金額に影響する事もございません」

 

 そうか、この評価は私達の成績には関係ないんだ。人間達が一喜一憂してて何やらお金の話をしていたから、私達の賞金に影響があるのかなと私は少し不安になっていたんだけど、それなら安心だ。

 

 「それに……人気の低い馬が上位馬を打ち破れば、その人気差が大きければ大きいほど、()()()()()()()()()()()()()。もし、千代子お嬢様が先頭でゴールを駆け抜けたら、その時はお嬢様の勝利を祝う祝福の白い紙吹雪(ハズレ馬券)が大輪を咲かせるでしょう――。お嬢様の実力を見抜けず、端金すら賭けなかった哀れな人間の悲鳴を添えて――」

 

 ニヤリと不気味な微笑を浮かべる国崎さんに思わず身震いしてしまう。国崎さんがこんな不敵な笑みを浮かべるのは初めて見た気がする……。

 

 

 「とまーーれーーー!」

 

 白いズボンに赤い服を来た職員さんが号令を掛けて私達は立ち止まる。パドックの端にあるガラス張りの部屋からスーツ姿の人達――調教師さんと馬主さんがそれぞれの管理馬・愛馬達の傍へとやって来る。その中にお父さんとそしておばあちゃんの姿があった。――うん?――えっ!?おばあちゃん……!?

 

 「お、オーナー!?……どうされたんです??」

 

 国崎さんも驚いている。いつも以上におめかししているおばあちゃんが私のすぐそばに居た。今までも一度もパドックどころか競馬場にすら来た事無かったのに……。

 

 「あら国崎さん。祖母が可愛い孫娘の晴れ舞台に来ちゃいけないのかしら?」

 

 うふふ、と笑うおばあちゃん。あの一件以来おばあちゃんはすっかり人が変わってしまった。でもお父さんや国崎さんと打ち解けたようで私は嬉しい。

 

 「ええええっ!?お、オーナー!?どうされたんですかっ!?」

 

 大きな声がしてビクッとしつつ振り向くと、勝負服とヘルメットを身に着けステッキを持った浦木さんが来ていた。

 

 「おや浦木さん、オーナーが可愛い愛馬を見に来ちゃいけないのかしら?」

 

 国崎さんと同じように浦木さんにも微笑みかける。私を示す言葉が少し違うのは浦木さんは私のもう一つの姿を知らないからだ。どうしてか浦木さんには秘密のようだ。

 お父さんが横に来て浦木さんを持ち上げて私の背に乗せる。ズシッと浦木さんの重みが私に伝わる。

 

 「浦木良いか、さっき説明した指示通りに行ってくれ。ただ、大きく状況が変わった場合はお前に任せる。無茶だけはするなよ」

 

 「はい!」

 

 浦木さんとお父さんが何やら最後の打ち合わせをしている。私はおばあちゃんが鬣を撫でて来るので首をさげる。私の耳元でおばあちゃんが囁いてくる。

 

 「いいかい千代子。しっかり走ってくるんだよ。あなたなら必ず勝てるわ。――でも無理だけはしないでおくれ。元気に怪我無く周ってくるんだよ」

 

 『うん、私頑張ってくるよ。ありがとうおばあちゃん』

 

 おばあちゃんに何度も顔を寄せて撫でて、私は離れる。

 

 

 「前へっ!!!」

 

 

 職員さんの号令で誘導馬さんを先頭に私達の隊列は動き始める。パドックを離れ、地下道へ潜り、いざっコースへ!!!

 

 

 

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