変身!!転生架空馬 チョコエクレール!! 作:よみびとしらず
作者初の競馬レースシーンでございます。実際のレースの中継動画を何度も繰り返し見て4日掛かって書きあげました。読んで頂けると幸いです。
実在するレースを参考に書いている史実改変回です。実在の勝利馬・勝利騎手が勝ち鞍をひとつ失っています。アンチ・ヘイトに相当するそうなので閲覧の際は十分ご注意ください。
・実在するレース(2021年11月28日東京5R 3歳以上1勝クラス)
https://race.netkeiba.com/race/result.html?race_id=202105050805&rf=race_list
『第5競走、出走各馬入場です。東京第5レースは3歳以上1勝クラス。ダート1600m、16頭です』
地下馬道を上がって、地上へと上がる。風に乗って初めて聞く音楽とアナウンスの声が聞こえてくる。
「では千代子お嬢様。私はここで失礼します。どうかご武運を――。浦木頼んだぞっ!!」
「はい!行ってきますっ!」
『ありがとう国崎さん。行ってきます!!!』
国崎さんが引き綱を外すと、浦木さんの手綱の合図で私は馬場へと躍り出る。
すでに馬場には先に出た3番と5番と6番の仔が力強く駈け出していた。
『ねーねー。お兄さんたちは走らないの?一緒に走ろうよ~』
ラチ沿いをゆっくり歩む誘導馬さん達の間に入りながら歩いてる2番の仔。
『ねぇ~まだ。早く私と走りましょうよ~』
そんな2番の仔を後ろに並んで急かす7番の仔。
『はっ、放せ~~!!!邪魔だっ!!どけろっ!!上の人間も降りろっ!!俺は一人で走りたいんだっ!!痛てぇ!!引っ張るなっ!!』
地下馬道の出口では10番の仔が数人の職員さんや厩務員さんに囲まれて暴れていた。大丈夫なんだろうか……?
「ほらっ、行くぞチョコ」
浦木さんに言われて、私は脚に踏み込む力を加えて駆けだしていく。ただ走るのではなくて4本の脚に纏わりつく砂の硬さや重さ、沈み込む感覚をしっかりと感じ覚えて行く。レースで走るとき、自分が駆けて行く姿を思い浮かべながら。
『――11番、チョコエクレール。458kg、プラス8kg。浦木巧、55kg』
風に乗って微かに私達の事が読み上げられるアナウンスの声が聞こえた、そんな気がした。
『はい!!チョコエクレール!!頑張りますっ!!!』
顔を上げて口を開けて首を縦に数回振って返事をして私達はゲートへと向かって行ったのであった。
『――の騎乗です。以上の16頭立て、東京第5競走、3歳以上1勝クラス。発走までもうしばらくお待ちください』
ゲートの付近に集まり、グルグルと私達は輪乗りを始める。暫くすると私達が来た方に人間達が白いロープを張って戻らない様に仕切りを作る。ゲートの方から緑色の硬そうな服と黄色い固い帽子――ヘルメットを被った人が達が近づいてくる。発走委員と呼ばれるゲート担当の職員さんだ。
「チョコエクレール号、浦木騎手こちらです」
一人の職員さんが近づいて来て私の頭絡に引き綱をつけて引っ張る。
『わっわわっ……おっとっとっと……』
国崎さんと違って強い力で引っ張るので少しよろけそうになる。少し乱暴の気がするけど仕方がない、こうしないと馬の力で振りほどけられるからだ。私はそんなことしないのに。
職員さんの動きに体の力を緩めて合わせて「あなたには逆らいませんよ。素直に歩きます。だから少し引き綱を引く力緩めて貰えませんか?」とアピールしてみる。職員さんは綱の手応えに少し違和感が感じているものの、引く力は変わってくれない。
『ゲートに入れてくれのも国崎さんだったら良かったのに……』
そう独り言ちながら時間を待つ。
ぐるぐると輪乗りしているとゲートの向こう側のコースのラチの外へある自動車の後で人を乗せた箱が上に伸びて居て行くのが見えた。箱に乗ってる人が赤い小さな棒に付いた赤い布――旗を振るとファンファーレと呼ばれる音楽が聞こえてくる。すると続々と競走馬達が係員さんに曳かれゲートの中へ入っていく。
『東京競馬第5競走。3歳以上1勝クラス、ダート1600m16頭で争われます。2コーナー引き込み線からのスタートです。枠入りが、始まっています。』
確か1,3,5,7,9,11,13,15と言った奇数と呼ばれる数字の仔達が先に、2,4,6,8,10,12,14,16と言った偶数と呼ばれる数字の仔が後に入ると言う。私は6番目かなと、考えていたら――。
『嫌ッ!!嫌よ!!あんな場所に私は入りたくないのっ!!!痛いっ!痛い!引っ張らないで!!』
コースの端でイヤイヤしている15番の仔が居た。人間達は何故か私達よりもその仔を先に入れようとしてるようだ。15番は奇数番だけど私の後のような気がするけどどうしてだろうか?ゲートには1番,3番,5番の仔がすでに入ってて、あっ!どさくさに紛れて今9番の仔が入っていた。
『まずは……3頭ほどがゲートの中、馬体を収めて……これから15番デリシュレーヌが向かいます』
時間掛かりそうなのかなと後ろで眺める。どこかで見た顔と聞いた声、きっと同じトレセンの仔なのかな?そういえばこのレースの仔達もトレセンで見た事がるような仔達ばかりだ。もしかしてこのレースの参加馬みんな同じ美浦の仔達ばかりなのかな?こんな事もあるんだ。
『デリシュレーヌ……、後ろに、ロープが巻かれて……これから15番ゲート。後ろでは偶数番号の各馬が待っています。』
係員さんが何とか引っ張って15番の仔――、デリシュレーヌさんをゲート前まで引っ張っていく。しかしゲートの後のドアのとこで完全に止まってしまう。係員の人がロープを持って集まり囲んでいく。
『嫌よっ!!誰がこんな暗くて狭い所入るもんですかっ!!痛いッ!!止めてっ!引っ張らないでよぉっ!!』
『15番デリシュレーヌ、……ゲートの直後、ジョッキー促します。ゲートの後で立ち止まって、中々前へ進みません。後ろでは輪乗りで各馬が待っています』
係の人達に思いっ切り牽かれ、上に乗っている騎手さんが首を押したり尻尾を持ち上げて引っ張ったりと色々するものの頑なにゲート入りを拒み続けるデリシュレーヌさん。そんな彼女を後ろから見てて何だかコタロウを思い出す。
『コタロウ以外にもあんなにゲート嫌がる仔、居るんだ』
今まで育成牧場やトレセンでのゲート訓練と試験でゴネている仔は見かけた事はあったが本番レースでゴネて居る仔は初めて見た。うーん、どうしようか。コタロウみたいに横に行って話しかければ安心してゲート入ってくれるかな?そう思って私は彼女に近づくために前へ歩こうとするけど――。
「うわっ!?……とっと、ストップストップ」
「チョコ!待て!止まれ!止まれ!」
私の引き綱を持っている人と浦木さんに手綱を引っ張られ止められて前に進めない。お願い!前に行かせて、デリシュレーヌさんの傍へ私を行かせて!!
「チョコ、お前、もしかしてデリシュレーヌが牝馬だから気になるのか?――ああっ、だめだめっ!だったら尚更牡馬のお前を行かせられない」
酷い、私そんな下心なんて無いのに……純粋に心配して安心させてあげたいなと思っただけなのに……。
『さぁ、身体半分、今ようやく馬体を収めた15番デリシュレーヌ』
私が係員さんと浦木さんと押し問答している間にデリシュレーヌさんは何とかゲートの中に入ったようだ。あれだけ嫌がっていたのにゲートに収まると少し落ち着いたように見えるのでもう大丈夫なのかな?
ひとまず安心しているといきなり引き綱を引っ張られて前のめりになりそうになる。
『わっわわわっ、な、なにっ!?』
「すみません!前に行きたがってるので、チョコエクレール号から先に入れまーす!」
「了解~!」
私の引き綱を係員さんが他の係員さんに声を掛けて私をゲートへと引っ張っていく。係員さんは私が早く動きたいと勘違いしてるのかな?
『待っていた各馬が向かいます。11番チョコエクレール、13番タシロ。それから7番のブルーカルセドニー、奇数番号の各馬が向かいます。』
係員さんの誘導でゲートの中へ滑り込む私の馬体。実はゲートに入る瞬間は今でも少し緊張してしまう。馬の独特の視界だと狭い隙間に勢いよく突っ込んでいくように感じるのでゲートの柱にぶつからないか少し不安にからだ。
『7番のブルーカルセドニー、ゆっくりとゲートに収まって、続いて偶数番号の各馬』
私の馬体の後のドアが閉まって完全にゲートの中に私は収まる。他の仔達が皆ゲートに入って前の扉が開くまでの短くて長い時間だ。
以前はこの時間が退屈で窮屈で落ち着かなかったけど――。
『ボスの言う通りだ。何だか少し落ち着くかな?』
以前ボスにゲートの中にずっと待機してて窮屈じゃないのかと聞いたことがある。ボスから帰ってきた答えは「いや、そんなことは無いかな?むしろ落ち着く」と言う意外な返事だった。この
『きっと私が人間だった頃を少し思い出したからかな?』
ボスも私と同じ前世が人間だった馬だ。きっとこの感性は人間由来な物なんだろう。
『2番のセイウンオードリー、6番クラウドスケープ、12番ビントミューレ、8番ロンコーネこれから向かいます。10番フォーチュネイト、偶数版の各馬順調に馬体を収めて行って最後16番オブデュモンド』
心を落ち着かせ、何も考えこまない様にする。もちろん、両耳を立てて周りの音や気配に十分注意する。ゲートはいつ開くか分からない。誰も教えてくれないし、合図も無いから。分かるのは最後の仔が入って異常が無かったらすぐスタートする。スタート直前に係員さん達がゲートから一斉に離れる。
『一番外16番ゲート、オブデュモンド向かいます』
最後の仔がゲートに入ろうとしてる微かな音と気配を感じる。
そうだ。ボスに教わったあの呪文を使ってみよう。人間達の世界には私達みたいに人間達が走るレースがあるそうだ。競馬ならぬ競人競走というのだろうか。それで使われるスタートがし易い人間達しか知らない呪文――。
『少し勢いをつけて収まって、係員が離れます。』
『位置について――、よぉーい……』
――ガコンッ!! 『ドンッ!!!』
『スタートしました!!ちょっとバラっとしたスタートです、』
――わわっ!!とっとっとっ……
ゲートが開いた瞬間、少し脚に力を入れ過ぎたみたいで一瞬僅かに滑ってしまった。気づいた浦木さんが少し強めに手綱を引いてくれたおかげで直ぐに体勢を直せて飛び出すことが出来た。なんとか先頭集団の後に離れずに付く事が出来た。
『うわっ!?や、やばいっ!!やっちゃったぁああーー!!』
スタートダッシュ失敗したのか、私の斜め後ろから2番の仔の悲鳴が聞こえる。一瞬振り向きそうになるけど耐える。後ろへと小さく消えて行く悲鳴に『ごめんね』と心の中で謝りつつ私は前方に意識を向ける。ゲートから飛び出てコースに出ればもうそこは闘いだ。
『2番セイウンオードリー最後方、さぁ先行争いまだ固まっています。』
耳に響く脚音の音色が少し変わり、前を行く仔達の足元から砂煙が立ち上がる。芝からダートへ切り替わる。勢いを殺さない様に私もダートに突っ込んでいく。脚に掛ける力加減をダートのそれに切り替えて走る。ここは少し下り坂、力み過ぎないように気負付けながら走る。
『ダートに入って、10番のフォーチュネイト、しかし内から1番トミケンレゲンダ、3番のアルバミノル、2頭が出て行きました。8番ロンコーネ、さらに外には9番フライオールデイズ、その外に12番ビントミューレ5番手、1馬身外11番チョコエクレール、内が10番フォーチュネイト、外から迫る14番ルピナステソーロ、内から上がっていく16番オブデュモンド、その直後に13番タシロの追走、その後ろは2馬身と離れて、間からすーっと7番ブルーカルセドニーが上がって外には15番のデリシュレーヌ、それから4番のワンダフルライフ、6番クラウドスケープ、外から並んで行く5番のインヴァリアンス』
下り坂が一旦緩んで少し上がったかなと思ったら最初のカーブが見えてきたところで再び下りだす。再び脚に勢いが乗り、カーブを突入して曲がっていく。
『各馬第3コーナーのカーブを周って行きます。3馬身空いて2番のセイウンオードリー、これが最後方、3~4コーナー中間へ。』
東京競馬場の大きな半円を描くカーブを私は曲がっていく。スタートから減速する事無く進むハイペースに乗せられた馬体が遠心力で外へ行こうとするので逆らおうと内へ行きたいと心がざわつく。
それに気づいたのが浦木さんからの指示がハミから伝わってくる。「このまま、まだこのまま。耐えろ、外へも内へも行くな」と。浦木さんの指示を頭の中で反復してざわつく心を抑える。
『おりゃっ!!行くぜぇぇぇ』
3番の仔が咆哮を上げて遠心力に逆らい勢いに乗り馬体を傾けて内へと切り込み先頭に躍り出る。
『先手を取ったのは3番アルバミノル、リードは1馬身半、2番手1番トミケンレゲンダ、外から9番フライオールデイズ、さらに12番のビントミューレが外から差を詰めて行って4コーナー、そのインコースに8番ロンコーネ』
まだかな?まだかな?もう加速して良いのかな?そわそわしてると周りの騎手さん達が手に持ったステッキ――鞭を一斉に構える動作をする。"叩くぞ!もうすぐ叩くぞ!"と鞍下の愛馬達に教える動作、"見せムチ"と言うらしい。
浦木さんの腕が上がる。その腕には彼の愛用のステッキがあった。"見せムチ"続いて浦木さんの手綱の持つ力が少し変わった事をハミが伝えて来る。"もうすぐ追い込みをかける。汝、心準備せよ"と。
『了解です!!行きましょう浦木さん!!』
視界にはカーブの終わりと――、『6』と青い文字で書かれた標識、そしてその向こうに長い長い府中の直線が見え始めていた。
『4コーナーカーブ直線へ、外からは16番オブデュモンド』
「――っっ!!」
浦木さんが大きく息を吸うのがわかった。鞭が私の右前脚の付け根をパンッパンッと二度叩き、手綱を短く持ち両腕で首を押してくる。加速せよ!加速せよ!!全力で追い抜けっっ――!!
『いっっけぇぇぇぇぇーーーー!!!!』
私の四本の脚が砂を搔き蹴り上げて前へ、前へと押し進めて行く。カーブを抜けるとそこは果てしなく、果てしなく長い最後の直線コースが目の前に広がる。
『直線に向いて、さぁ内から1番トミケンレゲンダ、3番のアルバミノル』
浦木さんの手綱から指示が出る。僅かに片方だけ引かれた手綱に合わせて視線を向けるとその先に16番の仔が居た。"奴をマークしろ。目を離すな、差を付けさせるな!!"
必死に16番の仔に食らいつく。どんどん周りの馬達を掻き分けて前へ行く16番、私が必死に走っているのに彼の背が近づかないっっ!!少しでも気を緩めると離されるっっ!!
長い長い府中の直線、緩くてなだらかなはずの上り坂が終りが見えずまるで壁の様に感じて来る。
――苦しいっ!!苦しいよぉっ!!!
浦木さんが何かを叫び、私の手綱を押してくる。前へ行け!!前に行け!!――と。でも追い付かないっっ!!!追い付けないっっ!!!
『400を通過、ロンコーネ!そして外から12番ビントミューレ、その外躱す!?16番オブデュモンド、さらに11番チョコエクレールが伸びて来た!おおっ外から7番ブルーカルセドニーが追い込んで来る!!』
前の16番――、オブデュモンドさんの背が近づかないのに、後ろから強烈なプレッシャーが来る。追われてる!!私、追われてる!!オブデュモンドさんの背は全然近づかないのに後ろから来るプレッシャーの塊はどんどん近づいてくる
思わずに後ろを振り向きそうになって、手綱に無理矢理引っ張られて前を向く。浦木さんには珍しく容赦のない強めの鞭が入る!!
浦木さんが何かを叫んでいるけど聞こえない、でも私を叩く鞭が伝える。『後ろを見るな!前を見ろ!最後まで足搔け!!』と。
気が付けば坂を抜けて『2』の標識が通り過ぎる。少しずつ、オブデュモンドさんの背が近づいてくる。尻尾、後ろ脚、鞍上の騎手さん――、その向こう視線の先にはゴール板が見え始めていた。
『残り200を切って16番オブデュモンドと11番チョコエクレールが抜けた!!8番ロンコーネ、大外7番のブルーカルセドニーが負けじと2番手に接近してくる!!』
――パチンッ!!パチンッ!!
風きり音で何も聞こえない、視界もぼやけて来た。でも浦木さんの鞭が私を叩く音がやけにはっきり聞こえて来た。身体が熱くなる!!湧き上がる闘志が弱りかけてた身体に力を流し込んで切る。
走れ!走れ!勝て!勝つんだ!お父さんが見てる――、おばあちゃんが見てる――、国崎さんが見てる――、競馬場の出張馬房でお留守番しているボスとコタロウもラジオと言う競馬場の様子が聞こえる小さな機械で私のレースを見てくれている。
視界の右側に無数の人間達が見える。きっと私の馬券を買って応援してくれてる人間が居る。私なんかにお金を出してくれて12番人気にまでしてくれた人たちがいる。応えなきゃ――、応えなきゃ――、勝って――、優勝して皆に応えなきゃ!!
オブデュモンドさんの騎手さんがゴーグル越しに驚いた表情を浮かべているのが見えた。オブデュモンドさんの顔を私の顔が遂に並ぶ。
『邪魔だ!!後ろへ下がれっ!!この
――カチン
『私は
『並んだ!並んだ!チョコエクレール、オブデュモンド並んだ!!3番手とは2馬身のリード!どちらが抜き返す!チョコエクレールかオブデュモンドか!!!チョコエクレール!!オブデュモンド!!チョコエクレールオブデュモンド2頭並んでゴールイン!!!!』
――
身体が熱い……視界がぼやけてクラクラする。体中が酸素を欲しがって、水分を欲しがっている。足が痺れて感覚が無くなりそうだ……
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ……」
私の背の上の浦木さんも方で大きく息をしていて、被っているヘルメットの間から垂れた汗が私の鬣と馬体を濡らしていく。
徐々にスピードが落ちて来て速歩まで落とすと、浦木さんも呼吸が落ち着いて来たのか、手綱を引っ張りUターンするように指示を出す。
向きを変えて元来た道を戻りながら、徐々に近づいてくる観客席を方を見ると、何だか人間達は不思議そうな少し困った表情でざわざわとしていた。
何かあったんだろうか?地下馬道へ降りる少し前に大型の掲示板を見ると『写真』と書いてあり、一番目と二番目には何も表示されていなかった。
『写真ってなんだろう……』
私はどうなったのだろうか、勝てたのか、負けちゃったのか――。
『――順位が確定するまでお手元の勝ち馬投票券はお捨てにならない様にお願い申し上げます』
レースの実況アナウンスとは違う、男の人の淡々とした声を聞きながら私は地下馬道へと降りて行った――。